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賭博罪とは? 賭け麻雀やオンラインカジノは処罰されるのか?
近年にニュースでもよく取り上げられる「カジノ法案」は、従来の日本の法律では禁止されてきた「カジノ」の合法化を趣旨としています。これまで、カジノは刑法の「賭博罪」が適用され、運営側だけでなく参加者にも厳しい罰則が科せられてきました。
賭博罪は、ギャンブルをはじめとした賭けごとを規制する犯罪です。このように定義づけると、「家族や友人との間で少額の金銭やジュースを賭けて、麻雀などのゲームで勝負することも規制を受けるのか?」と気がかりになられる方も多いでしょう。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所の弁護士が「賭博罪」について解説します。どのような行為が規制されるのか、実際に規制を受けた事例なども交えて紹介いたします。
1、賭博罪とは
「賭博」に関する行為は、刑法第23章「賭博及び富くじに関する罪」にて規定されています。ひとくちに「賭博」といっても、どのような賭博行為にかかわったのかによって、適用される罰条が異なるのです。
賭博罪の種類と、それぞれの内容について解説いたします。
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(1)賭博罪の種類
賭博罪のなかでももっとも基本的なものが、刑法第185条の「賭博罪」です。この罰条は、ほかの賭博を罰するものと区別するために「単純賭博罪」とも呼ばれます。
また、常習として賭博行為をはたらくと刑法第186条1項の「常習賭博罪」に、賭博を主催すると同条2項の「賭博開帳図利罪」に問われることになるのです。 -
(2)単純賭博罪
賭博をした者は「賭博罪」に問われます。上述したように、賭博罪は常習賭博罪・賭博開帳罪と区別するために「単純賭博罪」と呼ばれることもあり、法定刑は50万円以下の罰金または科料となっています。
この規定は「賭博に参加した人」を罰するために設けられています。ただし、条文には「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときはこの限りでない」と明記されており、すべての賭けごとを罰するものではないのです。
「賭博=賭けごと」と定義すれば、たとえば「じゃんけんで負けたほうが食事をおごる」「コインを投げて裏表を当てたらジュースをおごってもらえる」といったゲームも単純賭博罪となりそうなものです。
しかし、食事やジュースなどのように関係者が一時の娯楽のために消費する物やその費用負担のために金銭を支出させる行為は「一時の娯楽に供する物」と解釈されるため、犯罪を構成しないのです。 -
(3)常習賭博罪
常習として賭博をすると「常習賭博罪」が成立し、3年以下の懲役が科せられます。ここでいう「常習」とは、賭博を反復する習癖があることを意味しています。賭博の開催者と密接に関係するギャンブラーなどに限るわけではない、という点に注意してください。
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(4)賭博開帳図利罪
賭博を開帳すると「賭博開帳罪」が成立します。
賭博開帳図利罪が成立すると、3か月以上5年以下の懲役が科せられます。
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2、賭け麻雀は賭博罪で逮捕される?
日常のゲームや賭けごとのなかでも、多くの人が娯楽に興じているのが「麻雀」でしょう。麻雀では、点棒によって獲得した点数を精算し、金銭のやり取りが行われることもありますが、このような場合には賭博罪が適用される可能性は高いと考えるべきでしょう。
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(1)実際に賭け麻雀が事件化された事例
麻雀愛好者のなかには、「金銭を賭けてこそ。ゲーム性が増して麻雀が楽しくなる」と考えている人もいますが、賭け麻雀は事件化されるおそれが高い行為です。
令和2年には、検察関係者が新聞記者らとともに賭け麻雀をしていた問題が明るみに出て刑事告発されました。
獲得した点数1000点に対して100円が支払われる、いわゆる「テンピン」と呼ばれるレートで、1回につき数千円~2万円程度の金銭が動いたといわれています。
この事件で地検は不起訴処分を下しましたが、検察審査会は「社会の信頼を裏切った影響は大きい」として起訴が相当であるとの判断を下しました。
平成10年には、バラエティ番組などにも出演していた漫画家が雀荘で賭け麻雀に興じていたところを逮捕されています。
この事例では、1000点200円の「テンリャンピン」で金銭が動いており、逮捕時点では9000円の勝ち分を得ていたようです。 -
(2)賭け麻雀は事件化されるのか
ここで紹介した2つの事例と同等のレートで賭け麻雀に興じた経験がある人も、少なくないと思われます。
誰でも自由に参加できる「フリー」で雀荘を利用した場合、テンピン程度までのレートでゲームが進むのは相場の範囲ともいえます。それでもあえて事件化されたのは、関係者の社会的な立場が大きくかかわっていることがひとつの要因です。
社会的な影響が大きい立場にあって賭け麻雀に興じていれば、事件化されてしまう可能性が高いといえるでしょう。
また、そもそも、金銭は、その性質上、「一時の娯楽の用に供する物」には該当しないとされる傾向があるので、賭け麻雀を行った場合は事件化される可能性も否定できないといえるでしょう。
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3、オンラインカジノや裏カジノは賭博罪で逮捕される?
賭博といえば、時代劇や任侠映画などで描かれる「賭場」のイメージが強い犯罪ですが、実際に賭場がどこで開かれているのかを知ることは難しいでしょう。
しかし、近年ではインターネットを利用した「オンラインカジノ」や、比較的に出入りしやすい「裏カジノ」も存在するため、一般人でも賭博罪が適用されてしまう可能性があるのです。
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(1)オンラインカジノに賭博罪が適用されるケース
オンラインカジノとは、インターネットを利用してカードゲーム・テーブルゲーム・スロットなどで遊戯できるものです。クレジットカード決済や電子マネー決済などによって運営者に入金し、入金分によってゲームに参加できる形態がとられています。
インターネットで検索すると「合法」とうたうオンラインカジノが数多くヒットするでしょう。
これらのほとんどが、海外にサーバーを置き、現地政府が発行しているライセンスを得て運営している「海外カジノ」です。
現行法規では、純然と海外カジノを利用したケースを罰する規定が存在しません。そのため、海外カジノにアクセスするオンラインカジノに賭博罪が適用される可能性は低いといわれています。
ただし、海外では適法となるオンラインカジノでも、日本国内で運営が行われている場合は日本法が適用されるため、刑法の賭博罪で罰せられる可能性があります。
国内の店舗で備え付けの端末から海外のオンラインカジノにアクセスする「カジノカフェ」といった形態は、賭博罪の適用を避けられません。
また、従来の考え方では合法とまではいえなくても処罰の対象ではなかったオンラインカジノでも、今後の法整備によって明確に違法化されるおそれがあるので、利用は控えたほうが賢明です。 -
(2)裏カジノは逮捕される可能性が高い
現在、カジノの運営は国内法では禁止されており、運営者は賭博開帳罪の処罰対象となります。暴力団関係者による運営が主体である非合法の「裏カジノ」を利用すれば、一斉摘発などによって、参加者であっても賭博罪が適用され逮捕・刑罰を受ける可能性が高いでしょう。
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4、単純賭博罪は略式起訴になることが多い
単純賭博罪の法定刑は50万円以下の罰金または科料です。
罰金・科料のみが規定されている犯罪は「略式起訴」の条件を満たすため、単純賭博罪で罪に問われた場合も、略式起訴となる可能性が高いでしょう。
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(1)略式起訴とは
刑事事件を起こしてしまうと、警察・検察官による捜査の結果から「罪に問うべき」と判断された場合に起訴されて、刑事裁判が開かれて有罪・無罪と量刑が決まります。
これが原則的な刑事手続きの流れですが、一部の軽微な犯罪については、通常の手続きを省略して迅速に事件を終結させる「略式手続」の対象となるのです。
略式手続のうち、検察官による起訴を「略式起訴」と呼びます。略式起訴が可能な事件は、簡易裁判所が管轄する事件のうち、100万円以下の罰金または科料に相当する犯罪です。
また、略式起訴は、犯罪の事実に争いがなく、被疑者が略式手続に同意している場合にのみ認められます。被疑者が略式起訴に同意しない場合は、正式な起訴によって刑事裁判を受けることも可能です。 -
(2)単純賭博罪は略式起訴される可能性が高い
たまたま客として賭博に参加したなど、常習性のない賭博行為については単純賭博罪に問われます。単純賭博罪の法定刑は50万円以下の罰金または科料なので、略式起訴の対象です。
単純賭博罪は「賭博をした」という事実があれば成立する犯罪であり、事実の存否を争う余地が少ない犯罪だといえます。
略式起訴を受けた場合、逮捕されていたとしても、すみやかに罰金・科料の判決が下されて身柄が解放されます。そのため、逮捕されている場合は略式起訴を受け入れるという選択肢もあり得ます。
ただし、略式起訴は書面のみで審理されるため、事実を争うことができません。略式起訴を受け入れると前科がついてしまうので、単純賭博罪の適用が相当ではないと考えられるなら、通常の起訴によって裁判で争うことも検討したほうがよいでしょう。
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5、賭博罪は現行犯逮捕の可能性がある
逮捕には、犯行のその場で逮捕される「現行犯逮捕」と裁判官が発付した逮捕状に基づく「通常逮捕」がありますが、賭博事件で逮捕される場合は現行犯逮捕のケースも多いです。
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(1)賭博罪の立件は難しい
賭博罪は、数ある犯罪行為のなかでもとくに証拠が残りにくいという特徴があります。賭博行為は密室などで行われることが多いので、目撃証言が得られません。目撃者がいないため、いつ、誰が賭博をしていたのかという事実の証明が難しくなるのです。
また、賭博には被害者が存在しないため、そもそも賭博行為そのものが発覚しにくいという特徴もあります。
賭博が発覚するのは、主に関係者や参加者からの密告です。とくに、賭博によって大金を失った参加者が「イカサマをしているに違いない」などと密告するケースが目立ちます。とはいえ「いつ、誰が賭博をしていたのか」という情報まで詳しく説明できる参加者はほとんどいないものです。
密告を受けた情報から警察が内偵捜査を進めて、賭博が行われているその場に踏み込まないと、「賭博をした」という事実をつかむのは困難といえるでしょう。 -
(2)現行犯逮捕の流れ
賭博の情報を得た警察は、内偵捜査を進めて賭博が行われていることを疑うに足りる証拠を集めます。そのうえで、裁判所から捜索差押の許可を得た一斉検挙、いわゆる「ガサ入れ」が敢行されるのです。
まずはその場で「開催者側としてかかわったのか、それとも参加者としてかかわったのか」を確認されたうえで、立会人として現場写真の撮影などに協力することになるでしょう。その後、運営者・参加者を含めて身柄を拘束されたうえで、証拠となるものはすべて押収されて、警察署に連行されて詳しい取調べが実施されるのです。
一時帰宅や家族などへの連絡は許されないので、周囲に大変な心配をかける事態は避けられません。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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6、まとめ
家族や仲間内で楽しむゲームでも、多額の金銭がやり取りされる場合や関係者の社会的な立場によっては賭博罪が適用されるおそれがあります。参加者であれば罰則は比較的に軽微ですが、前科がついてしまえば失職するなどの不利益を被ることがあるため、決して軽視はできません。
賭博罪の容疑をかけられて刑事事件に発展してしまった場合は、スピード感の高い刑事弁護が必要です。逮捕の回避や早期釈放・不起訴処分の獲得を目指すなら、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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