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家族が告発された場合に取るべき対応とは? 弁護士に相談すべき理由
令和3年3月、香川県内に住む高校生らが地元警察に告発状を提出したというニュースが報じられました。条例制定に関するパブリックコメントの一部に偽造されたものがあるとの疑いであり、警察は正式受理の可否を検討するとのことです。
このニュースで高校生らが取った手続きは「告発」と呼ばれる手続きです。しかし、なぜ高校生らが捜査を求めることができるのか、そもそも告発にはどのような意味があるのかなど、疑問を感じる方は多いでしょう。
このコラムでは、刑事事件における「告発」について、告発の意味や告訴・被害届との違いなどを弁護士が解説します。あわせて、告発を発端とした刑事事件の流れや告発を受けて逮捕される可能性についても見ていきましょう。
1、刑事事件における告発とは
会社内の悪事や不正などを世間に公表することを一般的に「内部告発」と呼びますが、法的な意味での「告発」とは意味が異なります。まずは刑事事件における告発の意義を確認していきましょう。
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(1)刑事事件における「告発」の意義
刑事事件における告発とは、犯罪の被害者や告訴権者ではない人が、捜査機関に対して犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求める手続きを意味します。
通常、警察などの捜査機関に対して犯罪の事実を申告できるのは被害者本人や法定代理人などに限られますが、告発は刑事訴訟法第239条1項に明記されているとおり「何人(なんぴと)でも」可能です。つまり、事件に無関係の人であっても「犯罪がある」と思料する限りは誰もが告発する権利を有しています。 -
(2)親告罪の場合
犯罪のうち一部は「親告罪」として規定されています。親告罪とは、検察官が起訴する際には被害者や配偶者、法定代理人などの告訴権者による告訴が必要となる犯罪です。名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪のように事件捜査や刑事裁判が被害者のプライバシーを侵害し二次被害を生じさせてしまうおそれがある犯罪のほか、親族間での窃盗罪などが対象となります。
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2、告発・告訴・被害届の違い
告発と近い意味をもつ手続きに「告訴」と「被害届」があります。告発・告訴・被害届の共通点や違いを確認しましょう。
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(1)告発・告訴・被害届の共通点
告発・告訴・被害届は、すべて「捜査の端緒(たんちょ)」として、犯罪捜査が始まるきっかけとなるという点で共通しています。どの手続きで捜査が始まった場合でも、進展すれば被疑者に対する取り調べが実施されます。
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(2)告訴との違い
告訴とは、犯罪の被害者本人や配偶者・直系親族などの告訴権者が、捜査機関に対して犯罪の事実を申告して犯人の処罰を求める手続きです。犯人の処罰を求めるという意思がある点や、警察が受理した場合は必ず検察官に捜査書類や証拠品を送付しないといけないという点でも、告発に近い手続きだといえます。
告訴と告発における大きな違いは、届け出ができる方が異なる点です。告訴できる方は、被害者本人・法定代理人・被害者が死亡したときは配偶者や直系親族または兄弟姉妹などに限られます。告発は、これらの告訴権者に該当しないすべての人に認められています。
なお、被害者が死亡する前に「告訴しない」旨の意思を示している場合は、被害者の死後に配偶者などの告訴権者が届け出ようとしても告訴が認められません。 -
(3)被害届との違い
被害届とは、犯罪捜査規範第61条の規定に従い、被害者本人が提出するものです。告発が「犯人の処罰」を求める強い意志をもつ手続きであるのに対して、被害届は「犯罪被害に遭った」という事実を申告するにとどまります。
また、被害届を端緒とした事件では、捜査を進めるかどうかは警察の判断に委ねられるという点も異なります。
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3、告発を発端とした刑事事件の流れ
告発を発端として捜査が始まった刑事事件は、どのような流れで手続きが進むのでしょうか?
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(1)告発状の作成と提出
刑事訴訟法第241条1項の規定によると、告発は「書面または口頭」によって行われなければなりません。
ただし、実際には、どのような犯罪が存在しているのか、犯人だと特定した理由はあるのか、証拠はあるのか、なぜ告発に至ったのかの明示を求められるため、口頭ではなく告発状によって受理されるのが一般的です。 -
(2)告発事実に関する捜査
告発を受理した捜査機関によって、告発事実についての捜査が進められます。目撃者や参考人に対する事情聴取、関係者への取り調べなどが行われますが、告発人はさらに捜査機関からの求めがあれば追加資料の提出など捜査協力に応じなければなりません。
なお、告発事実に関する捜査は秘密裏に進められるのが一般的です。告発を受けても、当事者に「あなたに対する告発があった」と通知されることはありません。 -
(3)逮捕・勾留
告発事実に関する捜査によって容疑が濃厚となり、逃亡・証拠隠滅を図るおそれがあると判断された場合は、裁判所が発布した逮捕状に基づいて逮捕されます。
逮捕されると、警察段階で48時間、検察官の段階で24時間の身柄拘束を受けたうえで、必要があればさらに勾留によって最長20日間の身柄拘束を受けます。逮捕・勾留による身柄拘束を受けている間は、自宅へ帰ることも、会社や学校に通うことも許されず、外部と連絡を取ることも認められません。 -
(4)刑事裁判
取り調べをはじめとした捜査の結果を受けて検察官が起訴した場合は、刑事裁判へと移行します。起訴前までは被疑者だった立場は、起訴によって被告人へと変わり、保釈されない限りは身柄拘束が解かれません。
刑事裁判では、裁判官が証拠を基に審理したうえで判決を下します。極刑である死刑を頂点に、懲役・禁錮・罰金・拘留・科料といった処分が決定します。
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4、告発による影響
告発されてしまうと、どのような影響を受けるのでしょうか?
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(1)捜査機関による取り調べを受ける
犯罪の被疑者として告発されると、捜査機関による取り調べを受けることになります。告発事実の認否、真実であれば犯行の動機や方法などについて厳しく追及を受けるでしょう。
取り調べの結果は、供述調書という書類に録取されます。供述調書は取調官が供述内容を聴き取って文章にまとめたものです。刑事裁判でも重要な証拠として採用されるため、取調官は犯行を認める内容を録取しようとします。
録取し終わり供述人が内容確認したうえで署名・押印した供述調書は、修正や改ざん、廃棄ができません。取調官が勝手に修正できないのはもちろんですが、供述人の要請があっても修正はできないため、慎重な確認が必要です。
もし供述人が修正を望む場合は、新たに別の供述調書の録取を求めなければなりません。 -
(2)必要に応じて逮捕されることもある
犯罪捜査の基本を定めた犯罪捜査規範の第99条には「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない」と明記しています。つまり、告発を受けたとしても在宅のまま任意の取り調べを受けるのが原則です。
ただし、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると認められる場合は、裁判官への請求によって発布される逮捕状に基づいて逮捕される可能性があります。
逮捕されてしまうと、起訴・不起訴の判断までに最長23日間の身柄拘束を受けます。身柄拘束中は自由な行動が大きく制限されるほか、逮捕直後の72時間は家族との面会も認められないなどの制限が課せられることになります。
場合によっては実名報道されてしまうことがあるため、社会生活に甚大な悪影響を及ぼす可能性は否定できません。
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5、家族が告発されたら、弁護士へすぐに相談すべき理由
あなたの家族が告発された場合は、直ちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。
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(1)被害者との示談交渉を依頼できる
被害者が存在する事件であれば、弁護士に依頼して被害者との示談交渉を進めることで逮捕や刑罰の回避が期待できます。
告発は誰でもできる手続きですが、被害者に処罰意思がないことが確認できればあえて処罰を与える必要はないと判断される可能性があります。
また、告発が正式に受理されたとしても、示談が成立していれば、弁護士が捜査機関にはたらきかけることで、逮捕の回避や早期の身柄釈放につながるでしょう。示談が成立していれば、たとえ起訴されてしまった場合でも示談成立の事実が裁判官に評価され、厳しい刑罰を避けられる可能性がでてきます。 -
(2)取り調べなどへの対応のアドバイスが受けられる
告発を受けると、捜査機関による取り調べは避けられません。弁護士に相談すれば、取り調べに際してどのように供述すべきか、供述調書の録取にはどのように対応すればよいかの具体的なアドバイスが得られます。
特に、逮捕直後の72時間は弁護士しか面会できません。家族であっても連絡を取ることができなくなるのです。したがって、取り調べに際しての対応を直接アドバイスできるのは弁護士だけに限られることになります。また、弁護士は、家族や職場などからのメッセージを伝えたり、ご家族から預かった差し入れを渡したりすることも可能です。取り調べのサポートだけでなく、精神的なサポートも行います。 -
(3)処分の軽減を目指した弁護活動が期待できる
告発事実に間違いがなければ、検察官が起訴して刑事裁判に発展してしまうおそれがあります。弁護士に対応を依頼することで、悪質な犯行ではないこと、本人が深く反省していることなどを裁判官にはたらきかけてもらうことができます。
弁護士に依頼することで、重すぎる罪に問われてしまう事態に陥らないよう対応できるだけでなく、長期にわたる身柄拘束を回避できる可能性が高まるでしょう。
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6、まとめ
告発は、犯罪の存在を知る人であれば誰でもできる手続きです。被害届を端緒として始まった事件よりも手続きが早く進むおそれもあり、逃亡や証拠隠滅が疑われてしまえば逮捕されることもあります。
逮捕による身柄拘束や厳しい刑罰を回避するためには弁護士のサポートが欠かせません。告発を受けてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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