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接見とは? 家族の面会との違いや弁護士がサポートできること
刑事事件の被疑者や被告人と面会することを「接見」といいます。接見には、「弁護士の接見」と家族や友人など弁護士以外の方との「一般面会」があります。家族や友人が逮捕・勾留されたら、直ちに本人と会って、詳しく事情を聞いたり、言葉をかけたりしたいと思うでしょう。
しかし、弁護士は原則として自由に接見できますが、一般面会には制限があり、事件の内容によっては接見が禁止されることもあります。
本記事では、接見とはどういうものか、弁護士の接見と一般面会の違い、接見が禁止されるのはどんな場合か、接見で弁護士がサポートできることなどを詳しく解説します。
1、接見とは
まずは「接見」とはどのようなものなのかを確認しましょう。
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(1)接見の定義
「接見」とは、刑事事件で逮捕・勾留されている被疑者・被告人と外部の方が面会し、書類や物品の授受を行うことです。被疑者・被告人が弁護士と接見できる権利を「接見交通権」といいます。「接見交通権」について、刑事訴訟法第39条1項は次のように定めています。
刑事訴訟法第39条1項
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる
「弁護人」とは、被告人・被疑者から受任して刑事事件の弁護活動をする弁護士のことで、「弁護人となろうとする者」とは受任前の弁護士のことです。
接見交通権は、警察官などの立会人なしで行えることから、「秘密交通権」ともいわれます。接見交通権は、憲法第31条が定める「適正手続の保障」と第34条が定める「不当な抑留・拘禁からの自由」に由来します。被疑者・被告人が弁護士による援助を受けるための重要な権利です。 -
(2)家族との面会はできるの?
弁護士との接見は法律で保障されていますが、家族との面会は法律でどのように決められているのでしょうか。被疑者・被告人と弁護士以外の方との接見について、刑事訴訟法第80条は次のように定めています。
刑事訴訟法第80条
勾留されている被告人は、第39条第1項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる
この条文は「被告人」についての規定ですが、刑事訴訟法第207条1項により、「被疑者」の場合でも同様となります。
つまり、法令の範囲内という制限はあるものの、家族や友人など、弁護士以外の方も被疑者・被告人と接見することができます。家族や友人などの接見は、弁護士の接見とは区別して「一般面会」または「一般接見」といいます。
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2、弁護士の接見と一般面会の違い
刑事訴訟法の規定に従えば、弁護士の接見だけでなく、家族などによる一般面会も認められていますが、両者の扱いには明確な差があります。
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(1)弁護士は逮捕直後でも接見できる
刑事事件で逮捕された場合、警察は逮捕から48時間以内に取り調べを行い、検察官へと送致します。送致を受けた検察官は、警察から引き継がれた資料や取り調べの結果をもとに、送致から24時間以内に勾留するかどうかの判断を下します。
勾留が決定するまでの72時間は、弁護士の接見以外は認められず、たとえ家族であっても面会することはできません。 -
(2)弁護士の接見は立会人なしでできる
一般面会は、警察官(拘置所では職員)の立ち会いのもとで行われ、会話内容が記録されます。会話の内容によっては、面会が打ち切られることもあります。
しかし、弁護士の接見は接見交通権により立会人なしで行うことができ、被疑者・被告人も安心して自由に話すことが可能です。 -
(3)弁護士の接見はいつでもできる
一般面会が認められているのは、1日1回、1組(3人まで)です。もし、他の人が面会していたら、同じ日に面会することはできません。
面会できるのは平日のみで、土日祝日は面会不可です。面会できる時間帯と面会時間は警察署や拘置所にもよりますが、警察署は午前9時から午後5時まで、拘置所は午前8時30分から午後16時までという制限があります。また、昼休みの時間に面会することはできません。
これに対して弁護士の接見は、警察署では1日何回でも、土日祝日、早朝、深夜を問わず、いつでもできます。拘置所でも1日何回でも接見することはできますが、夜間および休日については、法務省と日本弁護士連合会との申し合わせにより、時間帯や条件が設けられています。 -
(4)弁護士の接見には時間制限がない
一般面会できる時間は、警察署では15~20分程度です。拘置所では30分を下回らない範囲で各拘置所が決定するとされていますが、面会室の数に制限があり、面会希望者が多くなった場合などには、30分以下となってしまうことがあります。
一方、弁護士の接見には、時間制限がなく、じっくりと話すことができます。
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3、接見が禁止される場合
接見禁止処分となったときであっても、弁護士の接見はできます。しかし、家族の方は面会することができなくなり、手紙や写真などのやりとりも禁止となります(刑事訴訟法第207条1項、第81条本文)。
接見禁止は、外部の者と接触して証拠隠滅や口裏合わせなどを依頼するおそれがある場合に、それを防ぐために下される処分です。接見禁止処分は、裁判官が職権で行うこともできますが、通常は検察官の請求により行われます。
接見禁止処分を下すには、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」が必要とされています。
具体的には、次のような事情がある場合には、接見禁止処分になりやすいでしょう。
- 住居不定や定職についていないため、逃亡のおそれがある
- 重要な証拠が確保されていない
- 殺人などの重大事件で容疑を否認している
- オレオレ詐欺などの詐欺事件、薬物事件、暴力団に関する事件などの組織犯罪である
- 共犯者がいる、または共犯者がいる疑いがある
- 友人などを通じて、被害者や目撃者を脅し、口封じなどを画策するおそれがある など
接見禁止の期間については法律による定めがなく、裁判官の判断によります。通常は、証拠隠滅のおそれが低くなる起訴と同時に解除されますが、共犯者がいる事件で、共犯者の捜査が続いている場合などには、起訴後も接見禁止処分が続くことがあります。
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4、接見が禁止されたときの対応
接見禁止処分となり、長い間、面会できない状態となるのは、被疑者や被告人だけでなく、家族にとってもつらいものです。接見禁止処分となったときには、まず、弁護士に相談しましょう。
接見禁止処分が下されても、弁護士なら接見することができるだけでなく、次のような方法によって、裁判所に対して接見禁止処分の解除などを働きかけることができます。
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(1)準抗告・抗告
「準抗告・抗告」とは、裁判官や裁判所の決定や命令に対する不服申し立ての制度となっており、裁判官が下した接見禁止の決定に対して正面から争う方法です。「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないので、接見禁止の決定は誤りである」と主張して、接見禁止処分の取り消しを求めます。
第1回公判よりも前に行う場合は準抗告、公判開始後は抗告となります。準抗告・抗告が認められれば接見禁止処分が取り消されるため一般面会が認められますが、準抗告・抗告が認められるケースは多くないのが現実です。 -
(2)接見禁止の一部解除の申し立て
「接見禁止の一部解除の申し立て」とは、準抗告・抗告が認められなかったり、証拠隠滅や逃亡のおそれを否定できなかったりする場合に、家族との接見だけでも認めてもらうように、一部解除を申し立てることです。
この申し立てには法律上の根拠はなく、いわば裁判所への「嘆願」のようなものです。解除を家族のみに限定した場合、逃亡や証拠隠滅のおそれはなく、接見を禁止される理由がないことを主張すれば、面会や手紙などのやりとりが認められることがあります。 -
(3)勾留理由開示請求
「勾留理由開示請求」は、裁判所に対して、勾留されている理由を開示するように請求する手続きで、憲法第34条後段を根拠としています。理由の開示は公開の法廷で行われるので、接見禁止となっている家族でも傍聴すれば被疑者や被告人の姿を見ることができます。
ただし、傍聴が認められるのみで会話や物品の授受などは許されません。
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5、接見で弁護士がサポートできること
刑事事件で逮捕・勾留された場合に、弁護士に相談して弁護活動を依頼すれば、次のようなサポートが得られます。
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(1)取り調べに対するアドバイスができる
弁護士に相談すれば、黙秘権や供述調書への署名を拒否する権利など、被疑者や被告人の権利についてアドバイスが得られます。
事件に関与しているのかどうか、関与している場合には事件の詳細を聴き取ったうえで、黙秘権の行使をするか、どこまで供述するかなど、取り調べに対する具体的な対処方法を知ることができるでしょう。
アドバイスを受けることで、虚偽の自白を強いられたり、不利な供述調書を取られたりする事態も避けられます。 -
(2)今後の見通しを説明できる
弁護士に相談することで、今後の捜査や刑事手続きの流れ、起訴・不起訴の見込み、釈放の可能性、量刑の見通しなどの説明が得られます。逮捕・勾留によって強い不安を感じている本人やご家族にとっては、心強いアドバイスとなるでしょう。
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(3)違法捜査や不当な処遇を抑止する
弁護士が接見することで、暴言や暴力などによる違法な捜査、留置施設における不当な処遇などへの抑止力になります。
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(4)勾留阻止・保釈請求ができる
本人から事情を聴き取り、証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断できれば、裏付けとなる証拠を用意して、検察官に対して勾留請求をしないように申し入れることが可能です。
また、勾留請求され起訴された場合でも、裁判所に対して保釈請求をして、公判前に身柄を解放するよう働きかけることが可能です。 -
(5)被疑者・被告人と家族の橋渡しとなる
逮捕直後には家族であっても面会することはできませんが、弁護士が接見することで、本人に家族や友人からのメッセージを伝えられます。
また、弁護士は土日祝日を問わず接見できるので、本人が望んだものをいち早く差し入れることも可能です。 -
(6)精神的な支えとなる
逮捕・勾留された本人は、外部との接触を制限され、精神的に不安な状態になるでしょう。
自分の味方となる弁護士から、取り調べに対するアドバイスや今後の見通し、家族からのメッセージなどを聞くことは、大きな安心となり、取り調べに立ち向かう上での精神的な支えとなります。
そのほか、弁護士は、被害者が存在する事件では被害者との示談交渉を進めたり、職場や学校と調整して懲戒解雇や退学を阻止したりするなど、さまざまなサポートが可能です。
勾留阻止や不起訴処分など早期の身柄解放や、減刑による執行猶予付き判決などをめざすには、逮捕直後からの弁護活動がとても重要になります。
家族や友人など、大切な人が逮捕・勾留された場合には、速やかに弁護士に相談して、接見を依頼してください。逮捕直後であれば、遅くとも逮捕の翌日までには弁護士と接見できるように依頼することが肝心です。
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6、まとめ
刑事事件で逮捕・勾留されたときには、家族や友人などの面会には制限があり、事件の内容によっては面会が禁止される場合があります。しかし、弁護士ならいつでも自由に接見して、さまざまなサポートを行い、精神的な支えとなることが可能です。
家族や友人が逮捕された場合には、なるべく早くベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事弁護の実績豊富な弁護士が、早期釈放や不起訴処分の獲得に向けて、全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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