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累犯とは? 執行猶予の要件や再犯・常習犯との違いを説明
過去に罪を犯して刑罰を科されたにもかかわらず、再び犯罪をした人が一定の要件を満たすと、「累犯」となり、厳しく処罰されることになります。累犯という言葉をどこかで見聞きしたことはあっても、詳しい意味まで理解している方は少ないでしょう。
本コラムでは累犯が成立する要件と再犯、常習犯との違いを説明しながら、累犯による刑の加重や執行猶予の可能性などについて解説します。自分の家族が累犯で逮捕された場合に、残された家族は何ができるのかも確認しましょう。
1、累犯とは
累犯とは、罪を犯して懲役の実刑に処せられていた者が、懲役の執行が終わってから5年以内に新たな罪を犯し、有期懲役に処せられることです。他にも、より広義の意味で、確定判決を受け、その後に犯した犯罪のことを指すこともありますが、本稿では、累犯を上記の意味(狭義の意味)で解説していきます。
累犯には、「再犯」と「三犯以上の累犯」の2種類があります。
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(1)再犯とは
一般的な言葉で再犯とは、前に罪を犯した者が再度罪を犯すことを指すと認識されていますが(広義の意味の累犯)、法律上の再犯が成立するには要件があります。その要件とは、以下の3つです(刑法第56条第1項)。
● 懲役に処せられて刑務所に収監されていたこと
「懲役に処せられ」とは、いわゆる実刑のことをいいます。前に犯した罪について執行猶予がついていた場合には、再犯の要件を満たしません。
● 懲役刑の執行が終わった日、または執行の免除があった日から5年以内に新たな犯罪を行ったこと
前の罪で服役中に仮釈放された場合は、執行が終わったわけではないので、再犯の要件を満たしません。また、新たな犯罪は犯罪の実行の着手を行えば再犯となり、犯罪の実行行為自体が5年を経過しても再犯の要件を満たすこととなります。
● 新たな罪について有期懲役を科されること
新たな罪が罰金刑や禁錮刑だった場合は再犯の要件を満たしません。 -
(2)三犯以上の累犯とは
上記再犯の状態が3回以上続く場合は、「三犯以上の累犯」となります。(刑法第59条)。
三犯は、初犯と再犯、再犯と三犯、初犯と三犯の間で、上記条件をすべて満たした場合を指します。なお、累犯は刑が加重されますが、再犯と三犯以上の累犯で加重の程度に差があるわけではありません。
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2、累犯と常習犯の違い
常習犯とは、一定の種類の罪を反復して行う犯罪類型のことです。常習犯の場合には、一定の種類の罪について、刑法や特別法で、通常の場合よりも処罰を厳しくする規定が設けられています。
一定の種類の罪とは、賭博罪や窃盗・強盗罪、傷害罪などを指します。
たとえば賭博罪の場合、法定刑は「50万円以下の罰金又は科料」(刑法第185条)ですが、常習として賭博をした者については「3年以下の懲役」に加重されます(同第186条)。
窃盗罪の常習犯の場合には、通常の刑法ではなく「常習累犯窃盗罪」(「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」第3条)にあたります。窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法第235条)ですが、常習累犯窃盗罪に該当すると「3年以上の懲役」に加重されます。(なお、有期懲役の上限は、刑法第12条により、20年になります)。常習累犯の強盗罪(「盗犯等ノ処罰ニ関スル法律」第3条)の場合ですと、「7年以上の懲役」に加重されます。
累犯と常習犯はよく似ていますが、両者は必ずしも合致せず、累犯でなくても常習犯と認定される場合があります。累犯は、以前の罪と新たな罪が異なる罪であっても成立するのに対し、常習犯は一定の種類の同じ罪を重ねた場合に成立します。
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3、累犯による刑の加重
累犯(再犯)に該当すると刑の上限が加重されます。すなわち、初犯の場合と比べ重い刑に処せられる可能性が高くなります。
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(1)再犯加重
法律上の再犯に該当すると、その罪について定めた懲役刑の上限が2倍になります(刑法第57条、もっとも、刑法第14条2項により、上限は30年までになります)。下限は変わりません。たとえば強制わいせつ罪(刑法第176条)の法定刑は「6か月以上10年以下の懲役」なので、再犯に該当すると刑の上限が10年の2倍、20年にまで加重されます。なお、三犯以上の場合でも、加重されるのは最大で2倍までです。
実際に言い渡される刑は、犯行態様の悪質性や被害の大きさなど、さまざまな要素をもとに決定されます。したがって、刑の上限が2倍になっても、実際に科される刑も必ず通常の2倍になるわけではありません。もっとも、初犯の場合と比べて厳しい刑に処せられる可能性は高まるでしょう。 -
(2)累犯の刑が加重される理由
累犯(再犯)の刑の上限が加重されるのは、以下のいずれかを理由とする説、あるいは両方を理由とする説があります。
- 一度罪を犯して懲役刑に処せられたにもかかわらず、再度罪を犯した事実が、強い非難に値するから
- さらなる犯罪を予防するため、保安的観点から刑を重くする必要があるから
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4、執行猶予はつくのか、勾留の可能性は高いのか
累犯の場合に執行猶予がつくのか、また勾留されるおそれが高いのかについて解説します。
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(1)執行猶予はつかないのか
累犯の場合でも、執行猶予がつく可能性はゼロではありません。改めて累犯の要件を確認すると、懲役刑で刑務所に収監されていた者が、「刑の執行を終わってから5年以内に新たな罪を犯し」、新たな罪が有期懲役の場合に成立します。
次に、執行猶予をつけることができる要件を確認すると、そのひとつに、「禁錮以上の刑の執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない」というものがあります(刑法第25条第1項第2号)。ここでいう「禁錮以上の刑に処せられたこと」とは、裁判で禁錮以上の確定判決の言い渡しを受けたことです。
そのため、ある罪で懲役刑となって刑務所に収監され、出所から5年以内に罪を犯せば累犯にあたり得ますが、新たな罪を犯した日時が、禁錮以上の刑を言い渡された時期が出所から5年以内であっても確定判決の言い渡し時期が出所から5年を経過していれば、法律上、執行猶予がつく可能性はあります。
もっとも、これは可能性があるというだけであって、必ず執行猶予がつくわけではありません。執行猶予は、社会の中での更生に期待できる場合につくものなので、再犯のおそれがない旨を、客観的な証拠とともに裁判官に示し認められる必要があります。 -
(2)勾留は避けられないのか
勾留は、被疑者・被告人の身柄を拘束する強制処分です。被疑者の勾留は、最長20日間という長期にわたることもあるため、厳格な要件が設けられています。以下3つのうち、どれかに当てはまると勾留を受ける可能性があります(刑事訴訟法第60条)。
- 罪を犯したと疑うに足りる相当の理由がある
- 定まった住居を有しないとき
- 逃亡または証拠隠滅を図るおそれがある
確かに累犯の場合は厳しい刑が予想されることから、逃亡のおそれがあると判断されるひとつの要素にはなります。しかし、逃亡防止の措置や証拠隠滅防止の措置がしっかり講じられていれば、累犯であるというだけで、必ず勾留されるというわけではありません。
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5、累犯で逮捕された場合に家族ができること
累犯(再犯)で逮捕されると、初めて罪を犯した場合と比べて勾留されるおそれや、刑が重くなるおそれがあります。執行猶予がつかない実刑判決となる可能性も高いでしょう。そのためご家族は、早急に弁護士に相談し、適切な対応を依頼することが大切です。
弁護士は、裁判官との面談や準抗告などの手段により、勾留の必要性がない旨を主張し、勾留を回避するよう働きかけることができます。勾留されなければ在宅のまま捜査が進むため、身体拘束による負担や会社・家庭など社会生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。ほかにも、被害者との示談を成立させたり、裁判官に対して具体的な再犯防止策を示したりすることで、刑の減軽や執行猶予つき判決の可能性を高めることができます。
また累犯の場合は再び罪を犯すおそれが高いため、量刑判断への影響や本人の更生を考えれば、ご家族が中心となって本人をサポートし、再犯防止策を講じる必要もあるでしょう。生活環境を整えて本人を監督する、コミュニケーションを取って精神的な支えとなる、クレプトマニア(窃盗症)などの精神疾患の場合は医療機関での治療を促すなど、ご家族ができることは数多くあります。
何をすれば分からない場合でも、弁護士に相談すれば、再犯防止のためにご家族ができることについてアドバイスを受けることができます。逮捕後の対応も含めて、早めに相談するのがよいでしょう。
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6、まとめ
犯罪を繰り返して一定の要件を満たすと、法律上の累犯(再犯)が成立し、新たな罪について刑が加重されます。勾留の可否や量刑の判断において、累犯が不利な事情であるのは間違いありませんが、弁護活動によっては勾留を回避し、刑の減軽や執行猶予つき判決を得られる可能性も残されています。
不利な状況だからこそ、刑事弁護の経験豊富な弁護士のサポートが不可欠です。自分やご家族が累犯をしてしまいお困りであれば、多数の刑事事件を解決してきた実績のあるベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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