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公判請求とは? 刑事事件の一連の流れと併せて解説
新聞や報道番組などで“公判請求”という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
公判請求は、刑事事件における一連の手続きの中でおこなわれる起訴手続のひとつです。刑事事件において犯罪の疑いをかけられた者(被疑者)が公判請求されると、一般に公開された法廷で審理を受けることになります。
本コラムでは公判請求とは何かをテーマに、略式起訴との違いや公判手続の流れを解説します。事件が発生してから公判・判決に至るまでの流れも確認しましょう。
1、公判とは
公判とは、裁判所において、裁判官、検察官、被告人、弁護人が出席し、原則として誰でも傍聴できる公開の法廷で審理をおこなうことです。
よくテレビドラマなどで見るような裁判のシーンは、公判のイメージに基づいて作られていることが多いでしょう。
なぜ、誰でも傍聴できるのかは、一般に公開することで、公正な裁判がおこなわれることを保障するためです。憲法第37条では、刑事事件において、検察官から起訴された者(被告人)は、「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」ことを定めています。
なお、公判をおこなう日を公判期日といいます。公判では、証言や物的証拠による証拠調べ手続、検察官と弁護人による弁論手続がおこなわれます。これらを基に、裁判官は被告人が有罪か無罪か、有罪の場合の刑はどれくらいかを判断して言い渡します。
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2、公判請求とは
公判請求とは、検察官が裁判所に対し、公判、つまり法廷での審理を求めることをいいます。審理とは、裁判所を介した取り調べにより、事実関係や法律関係などを明らかにすることです。
日本では公判請求を含め、起訴できる権利があるのは検察官だけです。被害者や警察官などが起訴することはできません。
また、裁判所に審理を求める訴えをすることを起訴といいますが、公判請求は、起訴のひとつです。起訴には、公判請求の他に、“略式命令請求(略式起訴)”“即決裁判請求”があります。
即決裁判請求とは、比較的軽微な事件において利用される手続きで、初公判と同日に判決が言い渡されます。略式起訴については、以下より詳しく解説していきます。
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3、略式起訴との違い
刑事事件で公判請求されるよりも多いのが、略式命令請求(略式起訴)されるケースです。公判請求と略式起訴はどんな違いがあるのでしょうか?
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(1)略式起訴とは?
略式起訴とは、書面のみの簡略化した裁判を求める起訴手続のことです。
犯罪統計によれば、令和2年における刑法犯の認知件数は61万4231件でした。これに対してすべての事件を公判請求すれば、裁判に要する人員やコストの負担が増大し、迅速な裁判ができなくなるおそれがあります。
そこで一定の軽微な事件については略式起訴が適用され、簡易かつ迅速な事件の解決が図られています。 -
(2)公判請求と略式起訴の違い
略式起訴の対象となるのは、簡易裁判所が管轄する、100万円以下の罰金または科料の事件です。
殺人や強盗、強制わいせつなどの重大事件は死刑や懲役刑しか予定されていないため略式起訴は適用されず、公判請求されます。
また、略式起訴することについては、被疑者の同意が必要です。死刑や懲役、禁錮などは回避できる一方で、必ず有罪となるためです。略式起訴されると事件について争うことはできず、罰金か科料のどちらかが言い渡されることになります。 -
(3)略式起訴になることが多い犯罪
略式起訴が適用されることが多いのは、たとえば次のような犯罪です。
- 窃盗罪
- 公然わいせつ罪
- 公務執行妨害罪
- 道路交通法違反
- 過失運転致傷罪
- 過失運転致死罪
など
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4、刑事事件の流れ
事件が発生してから公判・判決までの流れを確認しましょう。
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(1)刑事事件における手続きの流れ
刑事事件の手続は以下の流れで進められます。
- ① 犯罪発生
- ② 捜査
- ③ 逮捕
- ④ 検察官送致(または釈放)
- ⑤ 勾留(または釈放)
- ⑥ 起訴(または不起訴)
- ⑦ 公判
- ⑧ 判決
以下より、各項目について詳しくみていきましょう。
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(2)犯罪発生から捜査、逮捕
犯罪が発生すると被害者や目撃者からの通報、被害届の提出などをきっかけに捜査が開始されます。捜査の結果、被疑者として特定され、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると逮捕に至ります。これを、身柄事件といいます。
一方、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ在宅のまま捜査が進められます。これは、在宅事件と呼ばれます。 -
(3)検察官送致
逮捕後48時間以内に警察が取り調べをおこない、被疑者の身柄と事件の書類・証拠物を検察官に送致します。送致とは警察から検察に事件を引き継ぐことです。
なお、マスコミでは身柄事件の送致を“身柄送検”、在宅事件の送致を“書類送検”と呼んでいますが、正しくはどちらも“送致”または“検察官送致”です。 -
(4)勾留
検察官は、送致から24時間以内に取り調べをおこない、裁判官に勾留を請求するかどうかを判断します。勾留とは、引き続き捜査の必要があり、被疑者の逃亡・証拠隠滅を防ぐためにおこなわれる身柄拘束の手続きをいいます。勾留期間は原則として最長で20日間です。
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(5)起訴または不起訴
勾留日が満了するまでに、検察官は起訴または不起訴を判断します。
前述のとおり、起訴とは検察官が裁判所に対して事件の審理を求める手続きをいい、公判請求や略式起訴があります。公判請求されると公判期日まで身柄を拘束されます。略式起訴された場合は、罰金または科料を納付して釈放となります。
一方、不起訴とは起訴しないことです。不起訴の主な理由は以下のとおりです。- 嫌疑なし……犯罪の疑いが完全に晴れた場合の処分
- 嫌疑不十分……犯罪の疑いは残るが、裁判で有罪を証明するだけの証拠がない場合の処分
- 起訴猶予……犯罪の疑いが濃厚で、裁判で有罪を証明することもできるが、犯罪の情状や犯罪後の状況などと照らし、検察官の裁量であえて起訴しないとする処分
不起訴を得るためには有利な証拠の収集や被害者との示談、検察官への的確な主張などが必要なので、弁護士のサポートが不可欠です。
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(6)釈放
ここまでの流れの中で、釈放されるタイミングがいくつかあります。
● 送致されずに釈放
被疑者は原則として送致されますが、一定の軽微な犯罪については送致されず、警察限りで釈放される場合があります(微罪処分)。真犯人が見つかったなど誤認逮捕だった場合も釈放されます。
● 勾留されずに釈放
検察官が勾留を請求しない場合、または裁判官が勾留を認めない場合には釈放されます。
● 不起訴処分となって釈放
不起訴処分となれば、即日で身柄を釈放されます。
● 保釈が認められて一時的に釈放
保釈は被告人を公判期日まで一時的に釈放する制度です。保釈も釈放の一部ですが、起訴「後」にしかない制度であって、保釈条件を満たすこと、保釈金を裁判所に預けることが必要となります。
弁護士に依頼することで、身柄拘束の必要性がない旨を検察官・裁判官に対して的確に主張してもらえるため、釈放の可能性を高めることができます。 -
(7)公判・判決
公判期日の手続きが終わると判決が言い渡されます。内容に不服がなければ、およそ2週間後に判決が確定します。
判決に不服がある場合は、判決の取り消しや変更を求めて高等裁判所に控訴できます。第二審(控訴審)が開かれ、その判決にも不服がある場合は最高裁判所に上告できます。
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5、公判手続き(刑事裁判)の流れ
公判手続は、冒頭手続、証拠調べ、弁論手続、判決の流れで進んでいきます。
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(1)冒頭手続
最初に、裁判官が被告人に氏名や本籍、住所、生年月日、職業を聞く人定質問があり、人違いではないことを確認します。
次に、検察官が起訴状を朗読して被告人が犯した罪の内容を明らかにし、裁判官から被告人に対する黙秘権の告知がおこなわれます。
最後に、被告人・弁護人が起訴状に書かれた事実を認めるのか、認めない場合はどの部分をどのような理由で認めないかを述べる罪状認否があります。 -
(2)証拠調べ手続
まずは検察官が証拠によって証明しようとする事実を述べる冒頭陳述をおこないます。次に検察官、被告人・弁護人がそれぞれ裁判官に対して証拠の取り調べを請求します。
裁判官は双方の意見を聞いたうえで請求された証拠を取り調べるかどうかを決定します。証拠調べは物証や書証(供述調書や示談書、反省文など)の取り調べ、証人尋問などがあります。また弁護人や検察官、裁判官から被告人に対して、事件に関して任意の供述を求める被告人質問もおこなわれます。 -
(3)弁論手続
まずは検察官が証拠調べの結果によって明らかになった事実および法令の適用について意見し、どれくらいの刑罰が必要かを述べます(論告・求刑)。
次に弁護人が被告人に不利益な証拠に対する反論や有利な事情を述べ、被告人が罪を認めている場合には執行猶予などの寛大な処分を求めます(最終弁論)。
最後に被告人自身にも意見を述べる機会が与えられます(最終陳述)。 -
(4)判決
ここまでの手続が終わると、あとは判決を待つだけです。判決の宣告は通常、公判期日とは別の日におこなわれます。単純な自白事件などであれば、公判が結審してから約2週間後に判決となります。
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6、まとめ
公判請求とは、刑事事件において検察官が裁判所に審理を求めることをいいます。逮捕・勾留されたまま公判請求されると、保釈されない限りは判決まで身柄拘束が続き、社会生活への影響が甚大です。また日本の司法では極めて高い確率で有罪判決がくだされるため、前科がつくおそれも大きいでしょう。
しかし早期に弁護士へサポートを依頼することで、逮捕・勾留から釈放される可能性や、公判請求される前に不起訴処分となる可能性を高めることができます。ご自身や身近な方が刑事事件の被疑者となってしまいお困りであれば、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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