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詐欺罪の懲役刑での刑期はどう決まる? 詐欺の種類や回数との関係は?
現代では電話やメール、インターネットのサイトなどを通じて、誰でも気軽に物や権利の売買ができるようになっています。しかし、一般人同士の取引には思わぬ落とし穴もあります。
たとえばグッズなどの空売りや架空請求といった行為は、詐欺罪に当たる可能性が高いものです。もし知り合いや友人がそうした行為に手を染めていたとしたら、逮捕されるリスクを伝え、なんとかして止めさせるのが望ましいでしょう。
そこで今回は、詐欺とはどんな罪で、どのような刑罰が科されるのかを解説します。
1、犯罪の刑罰に関する基本知識
まずは刑罰にどのような種類があり、執行猶予とは何なのかを概観しておきましょう。
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(1)3種の刑罰
日本の刑罰は「生命刑」「自由刑」「財産刑」に分けられます。
生命刑とは人の生命を失わせる刑であり、死刑を指します。
自由刑とは行動や移動の自由を失わせる刑であり、懲役・禁固・拘留を指します。懲役とは刑務所に収監された受刑者が刑務作業を科せられる刑です。これに対して禁固は受刑者が収監される刑ではありますが、希望しない限り刑務作業は科せられません。また拘留とは1日以上30日未満の期間、身柄を拘束される刑です。
財産刑とは一定の財産を失わせる刑であり、罰金刑と科料を指します。罰金とは原則1万円以上の罰金を科される刑で、科料ではその額が1000円以上1万円未満となります。 -
(2)執行猶予
執行猶予とは、刑事事件において被告人に有罪の判決が言い渡された場合に、一定の要件のもとに様々な情状を鑑みてその刑の執行を猶予し、その猶予期間を無事に経過すれば刑の言い渡しの効力を失わせる制度です。一定の要件を充たす者に対し、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金を言い渡すときに付けることができます。
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2、詐欺罪の種類や成立要件、法定刑について
次に詐欺罪について詳しく見ていきましょう。
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(1)4つの成立要件
詐欺罪が成立するには、欺罔行為、錯誤、交付(処分)行為、財産の移転という4つの成立要件が因果関係で結ばれている必要があります。
欺罔行為とは騙す行為で、お金を返すつもりがないのに「絶対返す」と言うようなことを意味します。錯誤とは騙されて事実と異なる認識を持つことです。交付(処分)行為とは、財産や利益を渡したり処分したりすることです。相手に騙されてお金を貸す行為が該当します。財産の移転とは、実際に財産や利益が加害者や第三者に移ることです。返すつもりのないお金が渡されたら、移転がなされたことになります。 -
(2)主な種類と法定刑
詐欺は騙し方の手口や騙し取るものによって、さまざまな種類に分けることができます。その中でもとりわけ多いのが「振り込め詐欺」です。
振り込め詐欺とは電話やメールなどで知り合いや身内などを装って、金銭の振り込みを求める特殊詐欺の類型です。
詐欺の法定刑は10年以下の懲役であり、罰金刑はありません。
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3、詐欺罪の刑期はどのように決まるのか?
法定刑には「10年以下の懲役」とあります。上限しか定められていませんが、有期懲役の下限は1か月なので、正確には1か月以上10年以下ということになります。では、具体的な刑期はどのように決まるのでしょうか。
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(1)犯行の態様と再犯可能性
一般に、判決によって示される刑期の長さはさまざまな要素の総合的な衡量で決まりますが、その中でも犯行の態様と再犯可能性が大きく影響すると考えられます。
犯行の態様とは言い換えれば犯罪の重さであり、その犯罪によって発生した被害の大きさや悪質性、犯行動機、危険性、計画性、凶器の有無などが基準となります。
また、再犯可能性とは、再び同じ罪を犯すことはないかという判断基準です。再犯の可能性が低いと判断された場合、刑期が短縮される可能性もあります。 -
(2)詐欺罪の場合
犯行の態様の中でも、詐欺罪においては被害額によって刑期が大きく変動する傾向にあります。
宝石や美術品といった高価なものを騙し取った場合や多額の現金を振り込ませた場合で、被害者への弁償や示談も行われていないのであれば、上限に近い長期刑を科される可能性もあります。できるだけ刑期を短くするには、なるべく早めに被害者へ与えた損害の賠償を行うことが重要です。
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4、詐欺罪の刑期は初犯と2回目以降(累犯)で異なる?
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(1)詐欺罪の初犯と懲役
一般に初犯だった場合には、罪や刑罰が軽くなると思われがちです。しかし、詐欺で懲役が短くなるかどうかという点については、初犯かどうかはあまり関係ありません。
手口が巧妙で多額の金額を騙し取っていた場合や多くの被害者を騙して金銭を得ていた場合のように、悪質性が高いと見られるケースでは、たとえ初犯だったとしても長期の懲役刑が科されることは充分に考えられます。
逆に、被害弁償が済んでいる場合や深く反省している場合など、悪質性がさほどでもないと判断される事件では、短めの懲役刑が科されたり執行猶予が付いたりすることもあります。 -
(2)累犯(再犯)と刑期
刑法上の「再犯」とは、懲役に処せられた者が、刑の執行が終わった日または執行の免除を得た日から5年以内に罪を犯し、有期懲役刑が科された場合のことを指します(刑法第56条)。再犯の刑は、その罪で定められている懲役の長期を2倍した長さ以下の刑期とされています(刑法第57条)。
詐欺罪の懲役については、長期は10年なので、それを2倍して最大で20年の懲役となる可能性もあるのです。
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5、詐欺の種類によって刑期は異なる?
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(1)詐欺の種類と刑期の関係
詐欺には結婚詐欺やフィッシング詐欺、寸借詐欺などさまざまな種類があります。
しかし一般的に、詐欺の種類が刑期の決定的な要因となることはありません。なぜなら、詐欺罪の刑期は犯行の態様や再犯の可能性等をもとに決められるので、どのような種類の詐欺を行ったのかは重要ではないからです。
ただ、たとえば特殊詐欺のように社会問題化していて、全国的に被害も多発しているようなケースでは、詐欺の種類が裁判所において事件の悪質性を判断する際の考慮要素となる可能性はあるでしょう。 -
(2)悪質な詐欺とは?
事件の悪質性を判断するポイントとしては、被害額や被害者の人数、詐欺を行っていた期間、犯行の組織性などが一般的には挙げられます。特に近年では、時代の変化と共に仮想通貨詐欺やワンクリック詐欺などが登場しており、被害額が多額にのぼるケースも珍しくありません。
詐欺集団として組織的に犯罪を行い、受け子や運び屋を利用して利益を上げているような場合にも、悪質性が高いと判断されるでしょう。
いずれの場合も、きちんと反省し、騙し取った金銭を賠償して示談を行うことが、刑期を短くするための対処法といえます。
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6、まとめ
今回は、詐欺罪の刑罰として定められる懲役刑において刑期がどう決まるのか、また詐欺の種類や累犯(再犯)と刑期の関係などを説明しました。
なお、刑期の判断はさまざまな要素から行われるため、証言や供述1つで不利になってしまう可能性も考えられます。まずは弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめいたします。弁護士をお探しの場合はベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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