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結婚詐欺で科される可能性がある刑期は? 処罰内容や執行猶予も解説
詐欺罪には数多くの手口が存在します。振り込め詐欺をはじめとした特殊詐欺、不動産詐欺、取り込み詐欺など、さまざまな場面で人をだまして金品を奪い取ります。そのような詐欺の手口のなかでも特に有名なのが「結婚詐欺」です。
ドラマなどでは、時にひきょうに、時にコミカルに描かれることが多い結婚詐欺ですが、実際にはたらいてしまえば重い刑罰が科せられます。本コラムでは「結婚詐欺」をテーマに、想定される刑罰や逮捕されたときの流れを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、結婚詐欺の量刑について
結婚詐欺とはどのような犯罪で、どの程度の刑罰を受けることになるのでしょうか?
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(1)詐欺罪に問われる可能性がある
結婚詐欺は、刑法第246条に定められている詐欺罪の手口のひとつです。詐欺の手口はほかにもたくさんありますが、刑法に照らせばすべて「詐欺罪」によって処断されます。
ただし、多くの方が勘違いしやすい点があります。「結婚するといっていたのに、ほかに本命の彼女がいた」というだけでは結婚詐欺は成立しません。刑法によって裁かれる結婚詐欺は、詐欺罪が成立するために必要な以下の要件を満たしたケースに限られます。
<結婚詐欺が刑事事件として成立する要件>- ①欺罔(ぎもう)行為……相手に結婚するとウソをつくとともにお金などが必要だと主張する
- ②錯誤……あなたのウソによって相手が、あなたは自分と結婚するのだと思い込む
- ③処分行為……あなたと結婚できると信じた相手が、自らの財産を貸そうとする・渡そうとする
- ④財産の移転……相手のお金や財産が、あなたや第三者に受け渡されること
- ⑤①~④で起きた出来事の間に因果関係があり、①の時点であなた自身が①~④の出来事が起こるよう意図していたこと(故意および不法領得の意思)
上記のとおり、刑法で処罰を受ける可能性がある結婚詐欺は、結婚するつもりはないのに相手に「将来的には結婚してくれる」と思い込ませたうえで金品をだまし取る(だまし取ろうとする)行為を指すのです。
刑法によって取り締まりを受ける結婚詐欺と、「結婚するといっていたのに本当はする気がなかった」という感情のもつれのみに限られるケースの間には大きな隔たりがあることを理解しておきましょう。 -
(2)罰金刑はなく、懲役刑
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。したがって、刑事裁判で有罪になれば、1~10年の範囲内で刑期が決まります。
ほかの犯罪では「◯年以下の懲役または◯◯万円以下の罰金」というかたちで罰金刑も設けられていることがありますが、詐欺罪では罰金刑が規定されていません。つまり、結婚詐欺事件の被疑者となり、有罪判決を受ければ確実に懲役刑になり、執行猶予が与えられない限り刑務所に収監されてしまう可能性がある犯罪なのです。 -
(3)執行猶予がつく場合もある
判決が懲役3年以下だった場合は、裁判官の判断で執行猶予がつくことがあります。執行猶予とは「刑の執行を猶予する」という意味です。たとえば「懲役3年、執行猶予5年」であれば、5年間は刑務所に収監されることはありません。この場合、5年の執行猶予の期間中、何事もなく過ごすことができれば罪を償ったこととみなされることになります。改めて刑務所に収監されることもありません。
ただし、その5年間で何らかの罪を犯せば執行猶予の効果が失われ、3年間の懲役刑を受けることになります。
事件を起こしたことに十分反省している、未遂に終わっており実害はない、すでに被害者との示談が成立しているなどのケースでは執行猶予がつきやすいでしょう。
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2、刑期は判決により異なる
前述のとおり、結婚詐欺をはたらいて事件化された場合は、詐欺罪の被疑者・被告人として10年以下の懲役刑に処されます。ただし、ひとくちに結婚詐欺をはたらいたといっても、一律に同じ刑期の懲役刑が下されるわけではありません。各個別の事件によって実際に下される刑期は異なることになります。
刑事裁判では、裁判官が法定刑の範囲内でどの程度の刑罰が適切かを判断します。実際に下される刑罰を「量刑」といい、量刑は複数の要素から総合的に決定されます。
量刑判断の基準となるのは、次の要素が挙げられます。
- 犯行の悪質性
- 犯行の動機と経緯
- 詐欺罪の常習性、同種前科の有無
- 被害金額
- 謝罪や弁済の有無
- 被害者の処罰感情
- 加害者の反省の有無、更生の可能性
結婚詐欺では、特に悪質性・常習性・被害金額が重要なポイントになるでしょう。
中でも、過去に結婚詐欺を含めた詐欺の前科があり、常習的に詐欺を繰り返している、いわゆる「詐欺師」の犯行の場合も、量刑は重くかたむきやすくなります。前回の犯行との間隔が近ければ近いほど、厳しい処分が待っていると考えるべきです。
反対に、前科のない初犯であれば、更生が期待されるため量刑が軽くなりやすく、執行猶予もつきやすいといえます。さらに、詐欺事件では被害金額も非常に重要です。だまし取った金額が高ければ量刑が重くなりやすいでしょう。
刑事事件の量刑判断では、結果が重大であればそれだけ重い処分が下されるのが基本です。被害金額が高いと懲役の年数が増えてしまいます。
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3、初犯の場合の処遇について
これまでに犯罪事件を起こして刑罰を受けた経歴のない、いわゆる「初犯」の場合は、量刑判断のうえで有利にはたらく可能性が高いでしょう。
量刑判断では「同種犯罪」の前科が重視されます。たとえば「数年前にケンカをして相手にケガをさせ傷害罪の前科がついた」などのケースは、結婚詐欺の量刑判断には影響しない可能性があります。ただし、同種犯罪の前科がなくても、何度も刑罰を受けていると「反社会的な人物」ととらえられてしまう可能性は否定できません。
初犯であることが量刑判断のうえで有利なのは事実ですが、だからといって確実に有利な処分が得られるわけでもありません。悪質性が高い、被害額が高額である、被害者との示談が成立していないなどの状況があれば、初犯でも執行猶予がつかず、すぐに実刑判決を受けるおそれがあるでしょう。
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4、結婚詐欺で逮捕されたときの流れ
結婚詐欺で逮捕されてしまった場合は、どのような流れで刑事手続きを受けるのでしょうか?
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(1)逮捕から送致へ
警察に逮捕されると、取り調べを受けながら警察署の留置場などで身柄を拘束されることになります。罪を犯した容疑が否定できない場合は、事件やその身柄を逮捕から48時間以内に検察庁へと送致されます。
送致を受けた検察では、24時間を上限に、さらに被疑者を取り調べたうえで起訴・不起訴を判断します。ただし、この段階では事件のすべてが解明されていないことが多く、検察官が判断を下す材料が足りません。そのため、引き続き身柄を拘束したまま取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」を行うべきかどうかが判断されることになります。
結婚詐欺事件の被疑者として逮捕されれば、逮捕から最長72時間のあいだ、自由な行動や外部との連絡が制限されるということです。しかもこの間、たとえ家族であっても顔を合わせて話すことはもちろん、電話もできません。この期間に被疑者との自由な接見が許されるのは弁護士だけに限られます。 -
(2)勾留
検察官は、逃亡の危険性がある、証拠隠滅を行う可能性があるなどの事情があるとき、引き続き身柄を拘束の延長を求めて裁判所に勾留を請求します。勾留が認められると、原則10日間、延長を含めて最長で20日間の身柄拘束が許可されます。
一般的に、家族などの面会が許されるようになるのはこの段階からです。勾留期間は警察に身柄が戻されて、再び留置場で身柄拘束を受けながら取り調べが続きます。逮捕を含めて最長23日間の身柄拘束を経て、勾留満期の日までに起訴・不起訴が決定します。
ただし、組織的な犯罪にかかわったなどの疑いがある場合は、口裏合わせなどによる証拠隠滅を回避するため、面会さえ許されないことがあります。 -
(3)弁護士による活動について
被疑者の弁護について依頼を受けた弁護士は、被疑者との接見や被害者との示談交渉を通じて、身柄の早期釈放や検察官による不起訴処分の獲得を目指します。起訴されて刑罰が下されることが確実であっても、執行猶予の獲得や刑罰の減軽を目指して有利な証拠を裁判官に提示することも可能です。
できるだけ早い段階で弁護士を選任し、重すぎる処分を下されないようにするためのサポートを受けることをおすすめします。
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5、まとめ
結婚詐欺では、事件の悪質性や前科の有無、被害額の大小など、さまざまな要素を総合的に判断して刑罰の重さが変化します。たとえ初犯でも実刑判決が下される場合があるので、早急に被害者との示談を成立させることによって、過剰に重い処罰を受けてしまう事態を回避する可能性を高めることができるでしょう。
結婚詐欺事件を起こしてしまい、被害者との示談成立を目指しているのであれば、詐欺事件の刑事弁護において豊富な知見をもつベリーベスト法律事務所の弁護士にお任せください。不起訴処分や執行猶予の獲得を目指して、全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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