警察庁が公表しているデータによると、令和元年中に認知された特殊詐欺の件数は1万6851件、被害額は315.8億円でした。件数・被害額ともに減少傾向にありますが、依然として高額の被害が発生しており、取り締まりはますます強化されています。
特殊詐欺にはさまざまな役割があります。そのなかでも「受け子」や「出し子」といった末端のメンバーは、アルバイト感覚で犯行に関与してしまったという方が多くいます。このような方でも、特殊詐欺に関わった者として、重い刑罰を受けてしまうケースも少なくありません。
本コラムでは、特殊詐欺の受け子として逮捕された場合の刑罰や、弁護士への依頼で期待できる弁護活動について解説します。
1、特殊詐欺と受け子の関係性
特殊詐欺事件には「受け子」という役割が登場することが多くあります。まずは特殊詐欺と受け子の関係性について触れていきましょう。
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(1)特殊詐欺の定義
特殊詐欺とは、電話やはがきといった非対面の方法で、不特定多数に対して親族や公共機関の職員などを名乗って被害者を信用させ、現金やキャッシュカードなどをだまし取る行為です。現金・キャッシュカードを受け取る方法としては、指定口座に振り込ませる、指定住所に郵送させるほか、公共機関など信用ある施設の職員などを名乗るグループの一員が直接受け取りに現れることもあります。
なお、近年に流行しているキャッシュカードすり替え式の場合は、窃盗罪に問われる可能性があります。 -
(2)受け子は詐欺における役割のひとつ
「受け子」とは、被害者と接触して現金やキャッシュカードを手渡しで受け取る役割の通称です。被害者の面前に現れ、自分の顔をさらすことになりますから、警察の「だまされたふり作戦」では、真っ先に身柄を押さえられる立場です。多くの場合は、特殊詐欺グループの詳細などは特に知らされておらず、ただのアルバイト感覚だったという方も多いところです。
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2、初犯でも実刑? 受け子の刑罰の内容
特殊詐欺の受け子として逮捕されてしまった場合、たとえ初犯でも実刑判決を受けて刑務所に収監されてしまう可能性はあるのでしょうか?
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(1)刑罰の内容
一般的なケースでは、受け子は、詐欺罪の重要な要件となる「(財物の)交付」を受ける役割を負っています。つまり、受け子は詐欺罪に問われる立場です。
詐欺罪は刑法第246条の規定に従って「10年以下の懲役」に処されます。
なお、キャッシュカードと別のカードをすり替えた場合は窃盗罪が適用されるため「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。 -
(2)初犯で逮捕された場合
これまで別の犯罪で逮捕・刑罰を受けたことがない「初犯」の場合、量刑判断において有利にはたらくことがあります。まだ犯罪に染まり切っておらず、今回の逮捕・刑罰によって十分に反省と更生が期待できると考えられるからです。
ただし、必ずしも「初犯なので不起訴・執行猶予に」と判断されるわけではありません。
特に、特殊詐欺に対しての社会の目は非常に厳しくなっており、初犯であっても検察官・裁判官の判断が厳しいものになる事例もあります。初犯だからといって、軽く済むわけではないのです。
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3、執行猶予がつく可能性はある?
特殊詐欺の受け子として逮捕・起訴されてしまった場合でも、刑事裁判で執行猶予がつく可能性があります。執行猶予がつけば、たとえ懲役刑を受けても直ちに刑務所に収監されることはなく、問題を起こさずに一定期間が過ぎれば、懲役刑を受けることもなくなるのです。
では、どのような場合に執行猶予がつく可能性があるのでしょうか?
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(1)被害金額が小さいなどの場合
詐欺事件における刑罰の重さを判断する材料のひとつとして「被害金額」が挙げられます。だまし取った金額が少額であれば、被害が小さいと判断され執行猶予がつく可能性があるでしょう。
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(2)被害者との示談が成立している場合
慰謝料や賠償金を含めた示談金を支払うことには、民事的な賠償責任の一部または全部を果たすという意味があります。これにより、被害者が「加害者を許す」「厳罰を求めない」などの意を示してくれることもあります。
こういった事情も、裁判官が執行猶予を検討するにあたって重要なものです。 -
(3)未遂の場合
被害者が途中まではだまされていたけれども、現金を手渡す時点で被害に気づいて未遂に終わったケースなどでは、実質的に被害が0円だったことになります。実害がなかったという状況から、執行猶予を付す事情になりうるかもしれません。
ただし、これらの事情があるからといって、必ず執行猶予がつくわけではありません。
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4、受け子で逮捕されてしまったときに弁護士にできること
特殊詐欺の受け子として逮捕された場合は、弁護士にサポートを依頼しましょう。弁護士から受けられるサポートの一例は、次のとおりです。
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(1)代理人としての示談交渉
弁護士に依頼すれば、加害者に代わって被害者との示談交渉を進めてくれます。
逮捕された加害者は、自由に行動することができません。そのため、自分で被害者との示談交渉を進めることは困難です。自分の家族などに交渉を進めてもらうことも可能ですが、多くのケースで、被害者は、直接加害者本人やその関係者と接触することを拒否します。交渉が難航してしまうか、無理に交渉を進めようとすることで事態を悪化させてしまう場合もあるでしょう。
弁護士に依頼することで、被害者は、加害者と直接連絡を取らずに済むという安心感を得ることができます。そのため、被害者が示談交渉に応じてくれる可能性、ひいては、示談が成功する可能性が高まります。 -
(2)取り調べ対応のアドバイス
何度も取り調べを受けているうちに自分が悪いという意識が強まったり、結果的に詐欺に加担してしまったという事実への罪悪感であったり、さまざまな気持ちの中で、「自分が認識していた事実」をうまく話すことができない方もいます。逆に、そうであったのかもしれない、と思い込んで、自分が認識していた事実と違う内容を話してしまう方もいます。
取り調べで作られる調書は、後々裁判では証拠として提出されます。つまり、調書には、きちんと「自分が認識していた事実」を書いてもらう必要があるのです。
弁護士に相談することで、事実関係を整理し、自分が話すべきことを把握して取り調べに臨むことができます。取り調べにおける適切な対応について、アドバイスが得られるでしょう。 -
(3)適切な方針を検討する
検察官の起訴を回避できれば、刑罰を受けることも前科がついてしまうこともありません。被害が僅少である、示談が成立しているといった事情の下では、不起訴処分を目指すことも考えられます。
「詐欺であると知ることができなかった」という事情があれば、詐欺の故意を認められないことになりますから、無罪を主張するための準備を行うことになります。ただし、たとえば、「荷物を受け取るだけで高額な報酬がもらえる。指示に従うだけでよい」という言葉を聞けば、多くの方は「これは特殊詐欺(に類する詐欺行為)ではないだろうか」と、頭をかすめるのではないでしょうか。こうして、詐欺に関わっている可能性を認識しながら受け子を引き受けた場合、その多くは「故意があった」という要件に当てはまり得るところです。
こういった、判断が難しい事実関係を整理して適切な方針を模索できることも、弁護士に依頼するメリットのひとつです。 -
(4)早期の身柄解放を訴求する
受け子をはじめ刑事事件の被疑者として逮捕されてしまうと、逮捕から起訴まで最長23日間にわたる身柄拘束を受けることになります。身柄拘束の期間が長いほど社会と隔離されている時間も長くなるため、仕事や学校、家族との生活にも悪影響を及ぼす可能性は高まっていくでしょう。
弁護士に依頼することで、身柄の早期釈放にむけた資料を収集することができます。勾留決定後の準抗告や勾留取消請求はもちろん、勾留前に、捜査機関等に対して、「身柄を拘束しなくても任意で対応できる」といった働きかけを行うなど、迅速な対応が期待できます。 -
(5)減刑・執行猶予を目指す
起訴された場合は、加害者の反省の念、事件の悪質性の軽重、再犯の可能性などの情状資料を収集し、減刑や、執行猶予を得る可能性を高めます。
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5、まとめ
警察・検察官・裁判官は特殊詐欺について非常に厳しい姿勢をもっています。アルバイト感覚で実行犯として巻き込まれてしまった加害者がひとりで立ち向かうには、非常に大きな負担であるといってよいでしょう。
特殊詐欺の受け子として逮捕されてしまった場合は、刑事事件に対応した実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。弁護士の依頼は、ご家族からも行えます。ひとりで悩まず、まずはお問い合わせください。
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