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出来心で万引きしてしまった! 自首はするべきか?
昨今、コンビニやスーパー、書店などの小売店に「万引きは犯罪です」といったポスターが掲示されている光景をみかけたことがある方もいるかもしれません。
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中に認知された81万7338件の刑法犯のうち、71.2%にあたる58万2141件が窃盗事件でした。さらにその内訳をみると、非侵入窃盗のうち17.1%が「万引き」で、窃盗犯全体のなかでも万引きが占める割合は非常に高いことがわかります。
また、「クレプトマニア」という言葉が浸透しつつあるように、万引きに対する世間の認知度・関心が高まっているということができます。このコラムでは、つい出来心で万引きをしてしまった場合の解決法についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、万引きは法律上で窃盗罪にあたる行為
「万引き」と聞くと、「ささいな非行」という程度のイメージをもっている方もいるでしょう。
しかし、万引きは、法律によって刑罰が定められている犯罪行為です。決してささいな非行などではありません。
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(1)万引きは窃盗罪である
万引きは、他人の住宅などに侵入して金品を盗む「空き巣」や通行人のすきをみて財布などを盗む「すり」などと同じく、刑法第235条に規定されている「窃盗罪」にあたる行為です。「万引き罪」という犯罪はありません。あくまでも、窃盗罪のひとつのバリエーションです。
同条は「他人の財物を窃取した者」について窃盗罪とすることが規定されています。刑罰は、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。 -
(2)被害金額は量刑判断の基準のひとつ
窃盗罪で罪に問われた場合、実際に下される刑罰を意味する「量刑」は、さまざまな要素が影響を与えます。
大きくは「どのくらいの被害金額が生じたのか」という点が基準になりますが、ほかにも素直に反省して犯行を認めている、盗んだ金品を返還して被害を回復しているなど、前科の有無など総合的な状況をみて判断されます。
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2、万引きの成立要件とは
前述のとおり、万引きは窃盗罪の手口のひとつです。万引きが成立するかどうかは、窃盗罪の成立要件に照らすことで判断できます。
窃盗罪の要件は以下のとおりです。
- 他人の占有する財物を対象としている
- 不法領得の意思に基づいている
- 窃取の実行行為がある
窃盗といえば「他人のものを盗む」という行為が該当するものというイメージがありますが、実は「他人の占有する財物」が対象です。つまり、本来は自分が所有するものであっても、他人に貸している・預けているものであれば占有は他人のもとになるので、これを奪えば窃盗罪が成立する可能性があります。
また、窃盗の成立要件として非常に重要なのが「不法領得の意思」です。
不法領得の意思とは「権利者を排除して他人の財物を自己の所有物と同様に、その経済的用法に従って利用・処分する意思」と解釈されています。簡単にいえば「自分のものとする意思」という意味です。この要件が存在することで、他人の財物を隠す・壊すといった毀棄・隠匿行為と窃盗とが明確に区別されます。
万引きをした場合には、通常上記の要件をいずれも満たしますので、万引きをしたにもかかわらず、窃盗罪が成立しないケースというのはほとんど存在しないと言って良いでしょう。
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3、万引きで逮捕されるケース
万引き事件の多くは「現行犯逮捕」という方法で身柄を確保されます。
ただし、すべてが現行犯逮捕されるわけではなく、ほかの方法が採られることもあります。どのように逮捕されるのか、見ていきましょう。
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(1)現行犯逮捕
刑事訴訟法第212条は「現に罪をおこない、または現に罪をおこない終わった者」を現行犯人とすると明記されています。以下のようなケースでは、現行犯逮捕が適用されるのです。
- 万引きの現場を店員や警備員に見つかって取り押さえられた
- 商品をもって店外に出たところで引き止められた
また、その場から逃走した場合でも、準現行犯として扱われることがあります。具体的には、以下のようなケースです。
- 「泥棒!」と叫ばれながら逃げている
- 盗んだ商品をもっている
- 逃走時に防犯用のカラーボールを投げつけられて衣服に付着している
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(2)通常逮捕
万引きをしたものの店員などに発見されず、その場から逃げおおせたとしても逮捕の可能性は残っています。
逮捕の基本は、刑事訴訟法第199条に規定された「通常逮捕」です。同条は「検察官、検察事務官、司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる」と定めています。
防犯カメラの映像記録や目撃者からの証言、鑑識などの捜査によって被疑者として特定された場合、逮捕状が発せられて通常逮捕されるでしょう。
通常逮捕までの期間は、警察の捜査状況によって変化します。数日後に逮捕されることがあれば、数週間、数か月後に逮捕されることもあるので、不安な日々が続くことになります。
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4、万引きで逮捕された場合に科される刑罰内容
窃盗罪には「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。では、万引きで逮捕された場合には、実際、どのような対応がとられるのでしょうか。
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(1)微罪処分となるケース
万引きが初犯で被害金額も軽微であり、かつ、被害者が許しているのであれば、「微罪処分」となる可能性があります。
微罪処分とは、事件を警察限りで処理し、検察庁へは送致しない手続きです。検察庁へは微罪処分を受けた者の氏名などを名簿で報告するだけで、刑事裁判に発展することも、刑罰が科せられることもありません。
そのため、有罪判決を受けて刑罰を科された人につく「前科」がつくこともなく、微罪処分は、もっとも今後の生活への影響が少ないケースといえます。
ただし、初犯・被害僅少といった状況があっても、必ず微罪処分が適用されるわけではありません。また、被害者が「処罰を求める」と主張すれば微罪処分は適用されない可能性が高いので、真摯な謝罪や弁済は必須です。 -
(2)罰金刑となるケース
万引きが初犯である、被害金額が高額ではないなどの状況があれば、罰金刑で済まされるケースも少なくありません。
ただし、罰金刑は微罪処分とは異なり、有罪であることを前提としたものですから、刑事裁判や公判が開かれない略式手続のいずれかであったとしても、前科がつくことになります。 -
(3)懲役刑となるケース
繰り返し万引き行為をはたらいている、被害金額が高額である、被害者と示談が成立していない、といった状況がある場合は、厳しい懲役刑が科せられる可能性があります。
特に、万引きを繰り返してしまうケースを「クレプトマニア」と呼んでいますが、このようなケースでは、裁判所も厳しい刑罰を下す傾向があります。
懲役刑が下されると、執行猶予がつかない限りは刑務所に収監されることになります。 -
(4)不起訴処分
警察に逮捕され、検察庁に送致されたとしても、すでに被害者との間で示談が成立しているなどの状況があれば不起訴処分が期待できます。
不起訴処分とは「起訴をしない」という決断です。刑事裁判に発展しないため、刑罰を科せられることもありません。
ただし、不起訴処分の場合、刑罰は科されないため前科はつきませんが、逮捕をされた事実から前歴はついてしまうため、注意が必要です。
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5、万引きをしてしまった場合の対応方法
つい出来心で万引きをしてしまった場合は、どのような解決策を講じるべきなのでしょうか?
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(1)謝罪と商品代金の支払いを行う
すでに被害者に犯行が知られてしまっている場合も、まだ犯行が発覚していない場合でも、まずは謝罪と商品代金の支払いが大切です。
真摯に謝罪し、商品代金を支払って被害が回復すれば、被害者が被害届の提出を取りやめたり、すでに提出している被害届を取り下げたりしてくれる可能性があります。 -
(2)再発防止に努める
平成26年版の犯罪白書によると、前科のない万引き事犯者の再犯率は「窃盗再犯あり」で24.9%にのぼっています。万引きは非常に再犯率の高い犯罪なので、今後はどのように再犯を防いでいくのかの対策を明確にすることも大切です。
家族が監督しながらひとりきりで買い物にはいかないといった対策のほか、窃盗癖を治療するための専門医によるカウンセリングや治療も有効でしょう。 -
(3)自首を検討する
万引きをしても店員などに発覚することなくその場から逃げおおせたというケースでも、その後の棚卸しや防犯カメラのチェック、目撃者による申告などによって犯行が発覚し、後日になって逮捕されるおそれがあります。
逮捕に不安を感じているなら「自首」を検討するべきです。
刑法第42条1項は「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したとき」について、その刑を減軽できると定めています。自首には、逃亡や証拠隠滅のおそれを否定し、自らすすんで捜査に協力する姿勢を示す効果があり、強制手段である逮捕を回避できる可能性が生じるのです。また、自首は刑の減軽事由とされているため、自首しない場合と比べて必ず刑が軽くなる扱いとされています。
ただし、自首が適法に認められるかどうかは、犯行状況や捜査の進捗などによって変化するため、個人での判断は難しい面があります。自首を検討する場合はまず弁護士に相談し、自首が認められる状況なのかのアドバイスを受けましょう。
捜査機関が自首を受け付けてくれるのか不安なら、弁護士に自首の付き添いを依頼することも可能です。 -
(4)被害者と示談を交渉する
被害を受けた店舗の方針や被害額によっては、加害者個人が謝罪・弁済をしようと話し合いをもちかけても応じてもらえないおそれがあります。
弁護士が代理人となって示談交渉に臨めば被害者の警戒心が和らぎ、話し合いが進むことも期待できるでしょう。示談が成立して被害届の提出取りやめや取り下げがかなえば事件化を回避でき、逮捕や刑罰の不安が解消できるはずです。
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6、まとめ
「ちょっとした出来心」が原因だったとしても、万引きは窃盗罪が適用される犯罪行為です。その場で発覚せず現行犯逮捕が避けられても、防犯カメラの映像や目撃者の証言などによって逮捕状が発付され、後日になって逮捕されてしまうおそれがあります。
自らの犯行を打ち明けて謝罪・弁済によって解決を目指すほか、警察への自首といった解決方法もありますが、いずれにしても個人では対応が難しいでしょう。
万引きをしてしまい、被害者との示談や警察への自首を検討しているなら、ベリーベスト法律事務所にお任せください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が全力でサポートします。
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