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万引きで逮捕されるケースとは? 刑罰を決める基準とは
万引きは、スーパーや量販店、本屋など、社会生活に密接する場所でおこなわれる事例が多く、ごく身近で発生しやすい犯罪といえます。
しかし、身近な場所で起きるからといっても、「軽い行為」というわけにはなりません。万引きは、逮捕されて刑罰を科される可能性がある、れっきとした犯罪行為です。
本コラムでは、万引きが発覚してから逮捕されるまでの流れ、万引きが犯罪として成立する要件や刑罰の内容、量刑判断の基準などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
1、万引き行為で逮捕される3つのパターン
逮捕には「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類があります。
それぞれの逮捕の意味に触れながら、万引きで逮捕されるまでの流れを解説いたします。
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(1)現行犯逮捕のケース
現行犯逮捕とは、現に罪をおこない、または現に罪をおこない終わった者を、逮捕状なしに逮捕することをいいます(刑事訴訟法第212条、同法213条)。
また、罪をおこない終わってから間もないことが明らかな場合を準現行犯といい、現行犯逮捕として扱われます。
具体的には、「待ちなさい!」と犯人として追いかけられている場合などです。
万引き事件では、現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)されるケースが大半です。
警官以外でも逮捕が可能
現行犯逮捕は、犯行が明らかで犯人を見間違うおそれが低いこと、身柄を確保する必要性が高いことなどから、逮捕状は必要なく、警察官ら以外にも私人による逮捕が可能です。
万引き事件では店内を巡回中の警備員や、いわゆる万引きGメンに犯行を目撃され、現行犯逮捕される事例があります。
私人に現行犯逮捕された後は、通報を受けた警察官がやってきて身柄を確保されることになるのです。 -
(2)通常逮捕のケース
通常逮捕とは、裁判官が発付した逮捕状にもとづく逮捕です。
逮捕は被疑者の身体を拘束する強力な措置であるため、その人権を保障する観点から、逮捕の理由と必要性がある場合に限って許されます(刑事訴訟法第199条、刑事訴訟規則第143条の3)。
「逮捕の理由」とは- 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 「逮捕の必要性」とは被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれがあること
をいいます。
逮捕できるのは、逮捕権限がある人だけ
通常逮捕できるのは警察官や検察官などの逮捕権限がある人に限られています。
そのため、現行犯逮捕のように私人による逮捕は許されていないのです。
通常逮捕になるきっかけ
万引きで通常逮捕にいたるケースとしては、- 店舗に設置された防犯カメラの映像から犯人として特定された
- 店員や買い物客などの目撃証言から身元が特定された
といったケースなどが考えられるでしょう。
また、防犯カメラの映像などの犯行を示す証拠にもとづいて、事後に警察に通常逮捕される場合もあります。
主に店側からの通報で逮捕に至る
通常逮捕のきっかけになるのは、主に店側の通報です。
棚から商品がなくなっていることに気づいた場合や、万引きを見かけたが犯人が逃亡した場合などに、店側が警察に被害届を提出します。
その後は警察が捜査を開始し、犯人を特定すると裁判所へ逮捕状を請求したうえで、通常逮捕にいたるという流れになるのです。
このような場合には、ある日突然警察官が自宅などにやってきて、逮捕状を面前に示され、逮捕の理由が告げられたうえで警察署に連行されることになります。 -
(3)緊急逮捕のケース
緊急逮捕とは、死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる犯罪で、罪を犯したと疑うに足りる充分な理由があり、急速を要するため裁判官へ逮捕状の発付を求めることができない場合になされる逮捕です(刑事訴訟法第210条)。
窃盗罪の法定刑は緊急逮捕の要件を満たすため、緊急逮捕される可能性は存在します。
2、窃盗罪の4つの成立要件
窃盗罪は、以下の4つの要件を満たすことで成立します。
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(1)他人の占有する財物であること
「占有」とは財物を事実上支配している状態をいいます。
手元に持っている場合はもちろん、自宅や店舗、車のなかに置いてある場合なども占有にあたります。
「財物」とは基本的には財布や時計など形のある有体物を指しますが、電気のように管理できるものであれば、無体物であっても財物とされます -
(2)窃取すること
「窃取」とは、占有者の占有を排除し、自己や第三者の占有に移すことをいいます。
万引きのように密かに盗み取る場合のほか、ひったくりのようにあからさまに強奪した場合でも、「窃取した」とみなされます。 -
(3)故意があること
「故意」とは、犯罪行為であることの認識がありながら行為におよぶことです。
万引き事件では、店の商品を盗むことを認識して犯行にいたった場合に、「故意があった」とみなされることになります。
一方で、誤って会計前の商品を店外に持ち出してしまった場合には、故意がないため窃盗罪は成立しないのです。 -
(4)不法領得の意思があること
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物としてその経済的用法にしたがい、利用または処分する意思のことを指します。
つまり、「持ち主が使えない状態にして、自分の物として好きに扱おうとする」という意思のことです。
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3、万引きは未遂でも逮捕の可能性がある
窃盗罪は未遂も罰せられます(刑法第243条)。
未遂とは、犯罪の実行行為に着手したが結果が生じていない状態をいいます。
万引きの場合は、万引きをしようと決意して店の商品をかばんに入れたところ、やはり悪いことだと感じて商品を棚に戻したケースなどが挙げられるでしょう。
したがって、万引きをしようとしたが、実際には財物を窃取できなかった場合にも逮捕される可能性があるのです。
4、未成年の万引きはどうなる?
20歳未満の少年(少女も含む)が万引きをした場合には、年齢によって逮捕の有無や処分の内容が異なります。
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(1)14歳未満の未成年
14歳未満は刑事責任を問われないため、逮捕されることや、刑罰を受けることがありません。
ただし何事もなく自宅に帰されるわけではなく、- 警察から事情を聴かれる
- 児童相談所へ送致されて注意や一時保護を受ける
といった可能性があります。
また、保護者が警察や児童相談所から注意を受ける場合もあります。 -
(2)14歳以上の未成年
14歳以上の未成年であれば、刑事責任を問われます。
成人と同様に逮捕・勾留される可能性もあるのです。
ただし、殺人などの凶悪犯罪を除き、未成年は原則として刑事裁判にかけられることはないため、万引き行為のみで刑罰を受ける可能性は低いでしょう。
なお、14歳以上の未成年は、捜査機関による捜査が終わるとすべての事件が家庭裁判所へ送致されます。
家庭裁判所に送致された後は、必要に応じて最長で8週間(通常は4週間程度)の観護措置を受け、少年鑑別所へ収容される可能性があります。
その後は家庭裁判所が家庭環境などの調査を実施し、審判に付すべきと判断すると、少年審判が開かれて、処分が決定するのです。
少年に対する処分には、少年院送致のほか、社会のなかでの更生を図るための「保護観察処分」があります。
5、万引き行為による刑事処分
万引き行為の罪が発覚した場合に受ける可能性のある刑事処分や、「前科」と「前歴」の違いなどについて、解説いたします。
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(1)前科と前歴
前科
「前科」とは犯罪行為をして有罪判決がくだされたという事実を指す言葉です。
前歴
一方、「前歴」とは、被疑者として捜査の対象になったという事実を指す言葉です。
「逮捕されたら、前科がつく」と誤解されることもありますが、実際には、逮捕された事実だけで前科がつくことはありません。
逮捕された後に起訴されて刑事裁判が開かれ、有罪判決が確定すると前科がついた状態になるのです。
前科がついた場合の影響
前科がついても、ただちに生活に支障がでるということはありません。
ただし、- 一定の職業に制限がかかる
- 就職活動中に提出する履歴書の賞罰欄に記載する必要がある
- 特定の国へ入国する際に手続きが必要になる
などの影響が生じる場合はあります。
前歴がついた場合の影響
前歴については、あくまで捜査の対象となっただけであり有罪判決は受けていないため、前科のような影響はありません。 -
(2)微罪処分となるケース
警察が犯罪の捜査をしたときは、原則として事件を検察庁へ引き継がなければなりませんが(送致)、例外的に警察限りで処理する場合があります。これを、微罪処分といいます(刑事訴訟法第246条但し書き)。
微罪処分の場合は逮捕されず、警察から厳重注意を受けて書類手続きのみで済まされます。ただし、前科はつきませんが、前歴として捜査機関に記録が残ります。
犯罪捜査規範第198条によれば、微罪処分とできるのは「犯罪事実がきわめて軽微」で、かつ「検察官から指定されたもの」です。
どのような犯罪が「軽微」といえるかについて一律の基準はないものの、おおむね以下が判断基準となっています。- 被害の金額が2万円以下
- 犯情が軽微
- 被害回復がなされている
- 被害者が処罰を望んでいない
- 素行不良者ではない
これに照らすと、初犯で被害額も少なく、被害者に弁償して示談も済んでいる万引き事件では、微罪処分となる可能性があります。
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(3)不起訴処分となるケース
逮捕され、または在宅事件として扱われて検察庁へ送致されると、検察官が起訴・不起訴を判断します。
起訴とは検察官が裁判官に対して刑事裁判を求める手続きのこと、不起訴とはこれをしないことです。不起訴になると、逮捕されている場合は即日で身柄を釈放され、在宅事件の場合もそこで事件が終結します。
検察官は次のような複数の要素から、起訴とするか不起訴とするのかを総合的に判断します。- 初犯か再犯か
- 反省の姿勢が見えるか
- 余罪はないか
- 適切な身元引受人がいて監督に期待できるか
- 被害者への弁償や示談が済んでいるか
なお、不起訴処分の場合も微罪処分の場合と同様で、前科はつきませんが前歴が残ります。
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(4)刑罰の内容
微罪処分にも不起訴処分にもならずに起訴された場合は、裁判で有罪か無罪か、またどのくらいの刑なのか(量刑)を言い渡されます。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(刑法第235条)。量刑はこの範囲で裁判官が決定します。
懲役とは刑務所に収監され刑務作業に服する刑を、罰金とは金銭を徴収される刑をいいます。いずれも前科がつきます。
6、万引きの初犯や常習犯の場合
初犯の場合と常習犯の場合、それぞれにおける起訴や量刑の影響について、解説いたします。
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(1)初犯でも逮捕・起訴される可能性がある
初犯である場合は、社会のなかでの更生に期待できることから、処分の決定に際して有利にはたらきます。
ただし、初犯だからといって必ず逮捕されない、処分が軽く済む、というわけではありません。
逮捕とは逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合になされる措置なので、初犯でも、これらの要件を満たせば逮捕されることになるのです。
処分の決定に関しても、初犯であることのみをもって判断されるわけではないため、事件の内容によっては、初犯でも起訴され重い刑を言い渡される可能性があります。
一方で、初犯であること以外にも有利な事情が複数あれば不起訴処分となる可能性が高まります。
たとえば被害額が少なく、被害者と示談が成立して宥恕意思(許すという意思)が得られている事例には、不起訴処分となる可能性が高くなるのです。 -
(2)万引き常習犯は、厳しく処罰される
「常習累犯窃盗」として厳しく処罰されます。
常習累犯窃盗罪は次の要件を満たすと成立します。- 常習として窃盗をしたこと(未遂を含む)
- 過去10年間で窃盗を3回以上おこない、6か月以上の懲役刑(執行猶予を含む)を受けていること
常習累犯窃盗罪に該当した場合の法定刑は「3年以上の懲役」です。
通常の窃盗罪のように罰金刑は設けられていないため、必ず懲役刑が言い渡されます。
執行猶予がつく可能性は残されていますが、社会のなかでの更生に期待できないことから、実刑判決となる可能性が高くなってしまうのです。
7、万引きと執行猶予
万引きと執行猶予の関係について、解説いたします。
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(1)執行猶予とは
執行猶予とは、罪を犯して有罪になったが、一定の期間だけ刑の執行が猶予される制度です。
たとえば「懲役2年、執行猶予3年」と言い渡された場合、本来であれば2年間は刑務所へ収監されるところ、執行猶予期間中の3年間に罪を犯さないことを条件に、ただちには刑務所へ収監されず社会のなかでの更生を許されることになります。
執行猶予期間を何事もなく過ごし終えた場合には、判決の言い渡しの効力が消滅するのです(刑法第27条)。 -
(2)執行猶予がつくかは、きわめて重要
実刑判決がくだり刑務所へ収監されると、生活の自由がなくなるだけでなく、刑期が満了するまで社会から隔離されて、社会復帰も難しくなります。
一方、執行猶予がつくと基本的に普段通りの生活を送れるため、社会復帰を円滑にすすめられる可能性が高まるのです。
したがって、判決に執行猶予がつくかどうかは、万引きをした本人や家族にとってきわめて重要だといえるでしょう。 -
(3)執行猶予つきの判決を得るためには
判決に執行猶予がつくためには、次の条件を満たしている必要があります(刑法第25条1項)。
- 判決が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金である
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、その刑の執行が終わってから5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない
たとえば万引きの初犯の場合や、再犯でも以前は罰金刑だった場合、再犯で以前は懲役刑だったがすでに5年以上が経過している場合などが該当します。
ただし、上記はあくまでも執行猶予がつくための前提条件です。
条件を満たしたからといって必ず執行猶予がつくわけではありません。
執行猶予をつけるかどうかは裁判官が決定しますが、その際は以下のような情状から、総合的な判断がくだされるのです。- 万引き行為を深く反省している
- 被害者との示談が成立している
- 同居の家族の監督に期待できる
万引き行為をして起訴された場合には、これらの情状から再犯のおそれが低いと主張して、執行猶予つき判決を目指すことになるでしょう。
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(4)執行猶予中に万引きをした場合
万引きで執行猶予がついたが、執行猶予期間中にふたたび万引きをして有罪判決を受けた場合は、執行猶予が取り消されます。
新たにした万引きでは原則として実刑判決がくだるため、前の万引きと新たな万引きで言い渡された刑を合算した期間、刑務所に収監されることになります。
たとえば前の万引きの刑が「懲役2年、執行猶予3年」、新たな万引きの刑が「懲役3年」だった場合の刑期は、5年となるのです。 -
(5)再度の執行猶予がつく場合
執行猶予期間中にした万引きでも、1年以下の懲役の言い渡しを受け、情状にとくに酌量すべきものがある場合には、ふたたび執行猶予がつく可能性があります(刑法第25条2項)。
ただし、最初の犯行で執行猶予がついたにもかかわらず再犯におよんだ状況から、社会のなかでの更生に期待できないため、再度の執行猶予は簡単にはつかない可能性が高いでしょう。
また、前の執行猶予に保護観察がついていると、再度の執行猶予はつきません。
8、万引きの量刑判断
裁判官が万引き事件の量刑を決める基準となる、「犯罪行為の悪質性」と「犯罪行為以外の情状」に関して、解説いたします。
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(1)犯罪行為の悪質性
犯罪行為の悪質性が高いかどうかは、万引きの被害額や動機の悪質性、計画性の有無、犯行様態などによって判断されます。
基本的に、悪質性が高いほど、量刑は重くなります。
被害額
被害額の大きさは量刑判断の重要な要素となります。
金額が大きいほど店が受ける経営上の不利益が大きく、被告人からの弁済も難しくなることから、より悪質だと判断されやすくなります。
たとえば、100円のパンを万引きした場合と10万円の時計を万引きした場合とを比較すると、後者の量刑が重くなるのです。
動機
経済的に苦しくて空腹を満たすために万引きした場合と、万引きしたものを転売して遊ぶ金をつくるつもりだった場合とでは、後者の動機のほうが悪質だと判断されます。
ストレス発散や遊び感覚で行った万引きも、悪質性が高いとみなされます。
計画性の有無
突発的にした万引きよりも、用意周到に計画して実行された万引きのほうが悪質だと判断されやすくなります。
犯行様態
巧妙な手口を使った、仲間と共謀したなどの場合には悪質であるとみなされます。 -
(2)犯罪行為以外の情状
犯罪行為以外の情状としては、以下のような点が考慮されます。
前科前歴の有無
前科前歴(とくに窃盗罪)があると、社会のなかで更生する可能性に期待できないと判断されて、量刑が重くなる可能性が高まります。
被害弁償や示談の有無
被害者に対して被害弁償を済ませており、被害者の処罰感情が緩和されて示談が成立している事例では、量刑が軽くなる可能性があります。
反省の有無や度合い
深く反省して再犯防止を誓っているか、素直に自白して捜査に協力しているか、といった点が考慮されます。
被告人の年齢や性格
たとえばまだ年齢が若く、普段の性格に衝動性などが見られない場合には、更生の可能性が高いとして、量刑が軽くなる可能性があるのです。
再犯防止策を講じたか
具体的な再犯防止策を講じていると、再犯のおそれが低いと判断され、量刑が軽くなる可能性があります。
9、まとめ
万引きは窃盗罪として処罰の対象となる犯罪行為です。被害額の大きさや動機の悪質性などによっては、初犯でも実刑判決がくだる可能性があります。
現行犯逮捕に限らず、犯行の後日に通常逮捕されるケースもあるため、万引き行為をしたのであれば早急に弁護士へ相談し、対応を依頼することをおすすめします。
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