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ワンクリック詐欺とは? 詐欺罪が成立する要件と該当する犯罪例
平成29年2月、アダルト動画サイトの退会料名目で電子マネーの利用番号を聞き出して不正に得た男ら6人が逮捕される事件がありました。男らが運営していたサイトでは、平成27年8月以降の被害額は6億円を超えていたといいます。
このような詐欺の手口を「ワンクリック詐欺」といいますが、インターネットが発達した現代社会では誰もが被害者となる危険性があると同時に、人をだます加害者になってしまう可能性もあります。
もしも自分の家族がワンクリック詐欺をした疑いで逮捕されてしまったら、残された家族として何をするべきなのでしょうか? 本コラムではワンクリック詐欺の概要を説明したうえで、詐欺罪の成立要件や刑罰の内容、家族が起こすべき行動などについて解説します。
1、ワンクリック詐欺は特殊詐欺の手口のひとつ
最初に、ワンクリック詐欺とはどのような詐欺なのかを解説します。
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(1)ワンクリック詐欺とは
ワンクリック詐欺とは、ウェブサイトや電子メールに記載したURLをクリックさせるなどし、一方的に契約を宣言して多額の架空料金を請求するタイプの詐欺です。
インターネットが普及した当初はパソコンの利用者を主なターゲットとしていましたが、近年はスマートフォン利用者をターゲットにしたケースも増え、多様な手口が存在します。
- パソコン版のワンクリック詐欺 アダルト系や出会い系のサイトに誘導して画像・コンテンツをクリックさせる、パソコンにウイルスを感染させたと装い、解除キー発行のために入金を求める など
- スマートフォン版のワンクリック詐欺 スマートフォンアプリや動画をダウンロードさせる、ツイッターのつぶやきやスマートフォン向け広告にURLを貼り付けてクリックさせる など
ワンクリック詐欺は、電話やメールなどの対面以外の方法で面識のない相手から金銭を交付させる「特殊詐欺」の一種です。
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(2)ワンクリック詐欺以外にもある特殊詐欺の例
警察庁では特殊詐欺を「オレオレ詐欺」「預貯金詐欺」「架空請求詐欺」「還付金詐欺」「融資保証金詐欺」などの10類型に分類しています。
ワンクリック詐欺はこの中で「架空請求詐欺」に該当します。
ワンクリック詐欺を含む特殊詐欺は、複数人のグループで実行する組織的犯罪であることが大半です。被疑者として逮捕されると、共犯者との口裏合わせを疑われて勾留期間が長引く、悪質性が高いとみなされ処分が重くなりやすいといった特徴があります。
2、詐欺罪はどういうときに成立するか?
ワンクリック詐欺は「詐欺」という言葉が付くため「詐欺罪にあたるのではないか?」との疑問が生じるでしょう。そこで詐欺罪の成立要件を見ていきます。
詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させ、あるいは財産上不当の利益を得る、または他人にこれを得させる犯罪です(刑法第246条)。
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(1)欺罔行為
欺罔(ぎもう)行為とは、財物を交付させるために人をだます行為をいいます。ワンクリック詐欺でいえば、嘘の情報を記載した画面を表示させる、料金請求サイトのURLを添付した電子メールを送信するなどの行為が該当するでしょう。
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(2)錯誤
欺罔行為によって、相手が錯誤(だまされている状態)に陥っていることが必要です。
欺罔行為はあったが相手がだまされなかった場合や、「どうせ詐欺だろうが後で警察に通報すればいい」などと思ってだまされたふりをしていた場合は、錯誤に陥っていないため詐欺罪は成立しません。 -
(3)処分行為
詐欺罪の処分行為とは、だまされた相手が自分の意思で財産や利益を手放すことをいいます。契約が成立したと信じて現金を振り込む、電子マネーの暗証番号を伝えるなどの行為です。
相手の見ていないところでクレジットカードを盗み取ったり、脅迫・暴行したうえで金銭を無理やり差し出させたりしても、相手方に処分意思がないことから詐欺罪は成立しません。この場合は窃盗罪や恐喝罪などが問題になります。 -
(4)財産や利益の移転
被害者による処分行為によって加害者または第三者に財産・利益が移転し、被害者に損害が発生すると詐欺罪が既遂となります。
一方で、被害者が振込先の口座番号や電子マネーの利用番号を間違えてしまい、加害者の手に財産・利益が移転しなかった場合でも、未遂として処罰されます。
3、ワンクリック詐欺で問われる罪
ワンクリック詐欺をすると刑法が定める詐欺罪や恐喝罪、または未遂罪に問われる可能性があります。この場合、どのような刑罰を受けることになるのでしょうか?
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(1)ワンクリック詐欺は詐欺罪にあたる
ワンクリック詐欺は、相手方との契約が成立していないのに、あたかも成立したと錯誤に陥らせて金銭を交付させる詐欺の手口です。したがって、詐欺罪が成立します。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。罰金刑は設けられていないため、有罪になれば必ず懲役刑が言い渡されます。また別の詐欺事件を起こして有罪になった場合は併合罪となり、刑期の上限が15年に加重されます(刑法第47条)。 -
(2)恐喝罪にあたるケースもある
恐喝罪は、脅迫や暴行を用いて財産を交付させ、または財産上不法の利益を得る犯罪です(刑法第249条)。
ワンクリック詐欺の場合でも、脅迫や暴行がともなえば恐喝罪に該当する可能性があります。たとえば「住所を把握しているので自宅まで集金に伺います」「○日以内に支払わないと裁判を起こします」など不安をあおる言葉を用いて金銭を請求したようなケースが該当するでしょう。恐喝罪の刑罰も詐欺罪と同じ「10年以下の懲役」です。 -
(3)未遂罪が成立するケース
詐欺罪と恐喝罪はそれぞれ未遂罪が規定されているため、金銭を交付させるという目的を達成しなくても罪に問われます(刑法第250条)。
詐欺罪では、欺罔行為はあったが相手がだまされなかったケース、恐喝罪では脅迫や暴行はあったが相手が金銭を交付しなかったケースが該当するでしょう。
詐欺罪・恐喝罪における未遂罪の量刑は既遂の場合と同じ「10年以下の懲役」の範囲で決定するため、未遂に終わったからといって軽い罰で済むわけではありません。ただし刑法第43条の未遂減免の規定により、任意で刑が軽減される可能性はあります。
4、詐欺罪の量刑の判断はどのようにされる?
詐欺罪の法定刑である10年以下の懲役は、最短で1か月、最長で10年と非常に幅があります。そこで気になるのは実際に何年の刑が言い渡されるのか、また執行猶予が付くのかということでしょう。
ワンクリック詐欺の量刑について解説します。
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(1)詐欺罪の量刑に考慮される要素
詐欺罪の法定刑の範囲で実際に言い渡される刑(量刑)は、以下のような要素を総合的に判断し、裁判官が決定します。
- 詐欺行為の悪質性
- 結果の重大性
- 前科前歴の有無
- 被害弁償や示談の有無
- 被害者の処罰感情 など
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(2)懲役刑が長くなるケース
被害金額が多額なケースは結果が重大であり、被害弁償や示談も難しくなるため、刑期が長くなる可能性があります。組織的・計画的に実行された場合も悪質性が高いとみなされ、実刑や長期の懲役刑となる可能性が高いでしょう。
前科前歴があるケース、特に詐欺罪や恐喝罪など財産犯の前科前歴があるケースも、社会の中での更生が難しいと判断されて実刑となる可能性が高いと考えられます。 -
(3)執行猶予が付くケース
初犯で被害金額も少額であり、本人に深い反省も見られるようなケースでは、判決に執行猶予が付く可能性があります。
ただし、初犯であっても悪質な手口で被害金額も多いケースなど、事件の様態によっては実刑判決となる場合があります。初犯であることのみで量刑が軽くなるわけではない点は、理解しておくべきでしょう。
5、ワンクリック詐欺の容疑者として家族が逮捕された場合の対応方法
自分の家族がワンクリック詐欺の疑いで逮捕されてしまったら、残された家族としてどのような対応とればよいのでしょうか。
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(1)弁護士に相談する
まずは早急に弁護士に相談しましょう。
逮捕直後に実施される取り調べで自身に不利な発言・態度をすれば後の展開に影響を及ぼすおそれがあるため、弁護士のアドバイスを受けて適切に対応する必要があります。
ご家族が何らかのアドバイスを与えようにも、逮捕直後の72時間は原則、面会が許されません。弁護士だけが唯一、逮捕直後から面会でき、法的観点から有効なアドバイスをすることができます。
同時に、弁護士は検察官に対し、本人が深く反省していることや被害金額も多くないことを客観的資料にもとづいて伝えるなど、不起訴処分の獲得に向けた活動を実施します。
起訴されて裁判になった場合でも、執行猶予付き判決の獲得や刑の減軽に向けてサポートします。 -
(2)日常生活への影響をできるだけおさえる
逮捕・勾留されると最長で23日間もの身柄拘束を受けることになり、日常生活への影響が懸念されます。長期にわたって会社や学校が無断欠勤・欠席になれば解雇や退学などの厳しい処分を受けるおそれがあるでしょう。
これを回避するために、勤務先や学校に事前の連絡を入れることが大切です。早期に身柄を解放されれば解雇・退学処分を回避できる可能性が高まり、本人が更生するための環境確保につながります。
ご家族だけで説明・説得が難しい場合は、弁護士に相談してサポートを受けるのがよいでしょう。 -
(3)被害者との示談交渉を進める
詐欺事件では被害者との示談の成立が、不起訴処分や執行猶予付き判決の可能性を高める大きな要素となります。被害者へ謝罪と被害弁償をし、示談が成立すれば、被害者から一定の許しが得られた証しとなるため、検察官や裁判官もこれを評価する可能性が高いといえます。
ただし、ワンクリック詐欺では被害者が不特定多数におよぶため、被害者の特定が難しい、特定できても加害者本人やご家族からの交渉は拒否されやすいなどの難しさがあります。示談交渉についても弁護士に相談するのが賢明です。
6、まとめ
ワンクリック詐欺はウェブサイトやアプリの利用料・登録料などを名目に金銭をだましとる詐欺の一種です。詐欺罪や恐喝罪に該当する可能性があり、最長で10年の懲役という厳しい罰が規定されています。
家族がワンクリック詐欺をしたとして逮捕された場合は早急な対応が求められるため、詐欺事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご連絡ください。
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