- 財産事件
- 横領事件
横領事件とは? 横領罪で逮捕されるケースや弁護士に相談すべき理由
会社のお金を横領していくうちに被害額が大きくなり必然的にバレてしまうケースや、人事異動が発生し、後任に引き継いだタイミングで不正が見つかるケースなど、横領事件が発覚するきっかけはさまざまです。
本コラムでは業務上横領罪を中心に、横領罪の概要や逮捕されやすいケース、量刑に影響を与えやすい要素などについて解説します。
1、横領罪とは? どんな種類がある?
横領とは、他人から預かっている他人の物を、所有者でなければ許されない方法で処分する行為をいい、横領罪には3つの種類があります。混同されやすい犯罪との違いも含めてみていきましょう。
-
(1)単純横領罪
単純横領罪は、自己の占有する他人の物を横領する罪です(刑法第252条)。
刑法上の罪名では「横領罪」と表記されており、横領に関する罪のベースとなる犯罪ですが、ほかの種類の横領罪と区別するために単純横領罪と呼びます。
具体的には、友人から預かったブランド品を勝手に売却するようなケースが該当します。 -
(2)業務上横領罪
業務上他人の物を占有する者が、管理者としての権限を越えて処分した場合は業務上横領罪が成立します(刑法第253条)。
業務とは、社会生活上の地位にもとづき反復継続して行われるものであって、委託を受けて物を管理することを内容とする職業・職務をいいます。
会社の経理担当者が自社の売上金を着服した、運送業者が顧客の荷物を自分のものにしたなどのケースが代表的です。 -
(3)遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)
もとの所有者の占有を離れた状態の物を自分のものにすると、遺失物等横領罪が成立します(刑法第254条)。
典型的には、道ばたに落ちていた財布を拾ったが警察署に届け出ずに自分の懐に入れてしまうケースが該当します。 -
(4)窃盗罪や背任罪との違い
横領罪は自己が占有する他人の物を領得する犯罪であるのに対し、窃盗罪(刑法第235条)は他人が占有する他人の財物を領得する犯罪です。会社の金を自分のものにしたケースでは、経理担当者が自社の売上金を着服すれば(業務上)横領罪にあたりますが、管理を任されているわけではない売上金を自分のものにすれば窃盗罪が成立します。
また、管理している他人の物を勝手に処分すると横領罪が成立するのに対し、任された任務に背いて他人に財産上の損害を与えると広く背任罪(刑法第247条)が成立します。横領罪が他人の物を自分の自由に扱おうとする意思(不法領得の意思)を必要とする犯罪であるのに対し、背任罪は自分の利益だけではなく第三者の利益を図り、または本人に損害を与える目的があれば成立します。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
2、横領罪で逮捕されるのはどのような場合?
横領事件を起こすと逮捕される場合がありますが、そもそも横領が発覚し、警察の捜査が開始されるのは何がきっかけになるのでしょうか?逮捕されやすいケースとあわせて確認しましょう。
-
(1)横領が発覚するきっかけ
まず、被害者が横領の事実を把握するのは、顧問税理士からの指摘を受けた、担当替えで後任者が不正に気づいたなどがきっかけとなります。
次に、捜査機関による捜査の端緒となるのは、被害届の提出や告訴の受理、被害者以外の第三者による内部通報などです。業務上横領事件では被害者である会社の協力が不可欠であるため、会社の被害申告によって捜査が開始されるのが通常の流れでしょう。 -
(2)横領罪で逮捕されやすいケース
逮捕は、逮捕の理由と必要性(逃亡・証拠隠滅のおそれ)がある場合になされる強制手続きなので、逮捕されやすいかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがどの程度あるのかによって変わります。
次のようなケースは事案が悪質で重い刑が想定されることから、被疑者が逃亡・証拠隠滅を図ると判断され、逮捕の危険が高まるでしょう。
- 横領した金額が多額
- 被害弁済がされていない
- 手段や方法が巧妙・悪質である
- 常習性がある
- 余罪が多数ある
また、業務上横領事件は少額を複数回にわたり横領する、自分以外の名義の口座を利用するなど事案が複雑なケースが多く、捜査に時間がかかります。逮捕後の限られた時間での捜査が難しいことから、内偵捜査を行い、証拠が確保された時点で逮捕されるケースも少なくありません。横領してからずいぶん後になって逮捕される場合もあります。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
3、横領罪の量刑
法律の条文で定められた刑を法定刑といい、法定刑の範囲で実際に言い渡される刑を量刑といいます。横領罪の法定刑と、量刑に影響を与える可能性が高い要素について解説します。
-
(1)横領罪の法定刑
単純横領罪の刑罰は「5年以下の懲役」です。懲役刑のみが規定されているため、略式起訴による罰金となる可能性はありません。
業務上横領罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。単純横領罪と比べて重いのは、業務として他人の物の管理を任されている以上、信頼を裏切る行為は強く非難されるべきと考えられているからです。
遺失物等横領罪の刑罰は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」です。遺失物等横領罪は、もともと人の占有を離れている物を領得する犯罪であって、他人の信頼を裏切るわけではないため、単純横領・業務上横領罪と比較すると刑が軽く規定されています。 -
(2)量刑に影響する可能性が高い要素
横領事件の量刑は次のような要素をもとに決定されます。
- 被害弁済または被害弁済の見込みがあるか
- 横領した期間、回数
- 犯行様態の悪質性、行為の巧妙さ
- 犯行の動機
- 横領した金銭の使い道
- 事件の社会的影響(会社の取引先や債権者、株主などへの影響など)
- 前科前歴の有無
- 本人の反省の有無、度合い
- 更生の可能性(家族の監督体制、再犯防止策の構築など)
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
4、横領罪の判例
横領罪の成立を認めた判例を3つ紹介します。いずれも業務上横領罪が認められた事例です。
-
(1)温泉宿泊施設の従業員が売上金を横領した事例
【事件番号 平成21年(あ)第1831号】
温泉宿泊施設で売上金を着服したとして、元従業員による業務上横領罪の成立が認められた事例です。
第1審では、検察官が主張する被害金額の推計方法では横領被害額を認定できず、また被告人以外の者による犯行が可能であるとして無罪が言い渡されていました。
しかし控訴審では、被害金額の推計方法には十分な合理性があり、被告人が横領したことを疑わせる事情を考慮すると被告人以外の者による犯行とは考えにくいとし、懲役2年6か月の有罪判決が言い渡されました。 -
(2)未成年後見人の立場を利用して甥の預金などを横領した事例
【事件番号 平成29年(あ)第1302号】
甥の未成年後見人に選任されていた被告人は、①3年以上にわたり甥名義の預金や現金を横領し、②甥の母親である姉が死亡しているのに入院していると偽り、姉名義の預金通帳の再発行手続きをしたうえで口座から金員を窃取しました。
被告人は、甥名義の預金・現金を自己の所有する財産である、または他人の財産でも自己のために消費できると誤信したのであって「違法性の認識はなかった」と無罪を主張していました。
しかし裁判所は、①について被告人が管理と所有を混同していたとは到底考えられないとして業務上横領罪の成立を認め、②についても被告人に正当な権限がないのは明らかであるとして詐欺および窃盗罪の成立を認めました。
後見人の立場を悪用した重い事案であるとして懲役6年の実刑判決が言い渡されています。 -
(3)徴税吏員が納税者から徴収した税金を横領した事例
【事件番号 平成30年(あ)第608号】
被告人は徴税吏員として町税に関する調査および徴収業務を担当していたところ、①複数の滞納者から徴収した現金を35回にわたり自分のために使い果たし、②納税義務者の資産などに関して職務上知り得た情報を知人に漏らしたうえで多額の謝礼金を収受したとして、業務上横領、地方税法違反、加重収賄の罪に問われていました。
第1審では、30回以上にわたる税金の着服は常習的犯行というほかなく、厳重に保護されるべき納税者の情報を漏らしたことによる公務員の職務の公平さに対する信頼失墜は甚だしいとして、懲役3年6か月、追徴金650万円が言い渡されていました。
控訴審では、量刑が重すぎるとはいえないとしたうえで、第1審の判決後に被害弁償がなされた事実が考慮され、懲役3年が言い渡されました。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
5、横領罪で逮捕されたら弁護士へ相談すべき?
横領事件を起こして逮捕されたら速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
-
(1)罪を認める場合
罪を認める場合は被害者へ被害弁済を行い、示談を成立させることが極めて重要です。示談が成立すると検察官の起訴・不起訴の判断や裁判官の量刑判断に際して良い事情として考慮される可能性があります。発覚後のごく早い段階であれば、捜査機関への届け出を阻止して刑事事件化の回避も期待できます。
横領事件では、被害弁済を最重要事項と捉え、被害弁済さえなされれば処罰までは望まないと考える被害者が少なくありません。ただし、横領された被害者は加害者に対する不信感を抱いているのが通常であり、また被害者との間で横領金の額についての主張が食い違うケースも少なくないため、示談交渉は難しい面があります。交渉は弁護士に一任するのがよいでしょう。
ほかにも、弁護士は勾留を回避するための活動や取り調べのアドバイスなど、早期釈放や処分の軽減に向けて全面的にサポートしてくれます。 -
(2)無罪を主張する場合
横領をした事実がない場合は、弁護士が検察官・裁判官に対して横領をした証拠がない旨、または横領をしていない証拠の提示を行い、無罪を主張します。
また罪を認めて示談を成立させる場合は民事上の賠償問題も解決されたとみなされますが、無罪を主張する場合は基本的に示談ができないため、そのような解決は見込めません。したがって、刑事・民事の両方で争うことになります。無罪の主張には弁護士のサポートが不可欠なので早期に相談するのが最善策です。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
6、まとめ
横領罪は単純横領・業務上横領・遺失物横領罪の3種類があります。中でも業務上横領罪は最長で10年の懲役を定めている重大な犯罪です。逮捕の回避や不起訴処分を得ることは簡単ではないため、できるだけ早く弁護士へ相談し、示談などの適切な対応を求めましょう。
横領事件の解決実績が豊かなベリーベスト法律事務所の弁護士が全力でサポートします。横領事件を起こしてしまいお困りであれば、まずはご相談ください。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。