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強制性交等罪で逮捕された! 逮捕後の流れや量刑判断の基準を解説
「平成31年、香川県警高松西警察署は、強制性交等罪の被疑者を逮捕しました」
……このように紹介すると、きっと多くの方が暴漢が無抵抗な女性を襲った事件を想像するでしょう。ところが、この事件で逮捕された被疑者は、なんと20歳代前半の女性で、被害にあったのは当時12歳の男児でした。
強姦やレイプといえば「犯人は男性だ」というイメージがありますが、この事件は強制性交等罪への改正を強く印象づけるものだといえるでしょう。
以前「強姦罪」と呼ばれていた犯罪は、法改正によって強制性交等罪に姿を変えましたが、変わったのは罪名だけではありません。犯人と成り得る対象や犯罪が成立する行為についても、改正に伴い変化しています。
ここでは、強制性交等罪はどのようなケースで成立するのか、逮捕されてしまった場合にはどのような処罰を受けるのかなどを詳しく解説していきます。
1、強制性交等罪になる行為とは? 罪の重さは?
強制性交等罪とは、平成29年の刑法改正によって旧来の強姦罪が姿を変えた犯罪です。
まず単純には、強姦・レイプといった類いの行為は強制性交等罪に該当するものと考えておけばよいでしょう。
【刑法第177条】
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛(こう)門性交又は口腔(くう)性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
暴行・脅迫とは、単純な殴る・蹴るなどの行為や脅し文句だけを指すわけではありません。相手の抵抗を抑圧する程度であれば足りるとされているので、圧倒的な体格差があるような場合も暴行・脅迫に当たるとされ得ます。
処罰の対象となる行為は「性交等」と規定されています。旧来の強姦罪では「陰茎が膣内に没入すること」という成立要件があり、必然的に加害者は男性、被害者は女性という構図がありましたが、改正後は男女の区別は撤廃されています。また、改正前は純然たる性交渉のみがこれに該当し、類似行為は強制わいせつ罪でしか処罰されないというジレンマを抱えていました。
強制性交等罪では「性交等」なので、従来の性交渉のみならず、口腔性交、肛門性交といった類似行為も同罪の対象となりました。
13歳未満を相手とした加害行為は同意の有無に関係なく強制性交等罪が成立します。
冒頭で紹介した事例では、被害者は12歳の男児でした。この事件では、オンラインゲームを通じて知り合った男女が特段の暴行行為などなく性行為に至ったと報道されていますが、13歳未満であるため逮捕に至っています。
強姦罪が強制性交等罪へと改正されたことで、旧来の準強姦罪も準強制性交等罪へと改正されました。心神喪失・抗拒不能の相手に対する性交等は、準強制性交等罪が成立します。
強制性交等罪・準強制性交等罪、ともに「5年以上の有期懲役」という刑罰が規定されています。有罪判決が下されれば、最低でも5年以上の懲役刑となるため、減刑が認められない限り執行猶予が付けられず、確実に実刑判決となると認識しておく必要があります。
2、厳罰化された強制性交等罪。逮捕されるケースとは?
強制性交等罪へと改正されたことで、強姦罪よりも刑罰が強化されました。強制性交等罪について、罰則強化の面とともに逮捕され得るケースを説明します。
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(1)強制性交等罪における罰則強化
旧来の強姦罪では、法定刑が「3年以上の有期懲役」とされていました。ところが、強制性交等罪では「5年以上の有期懲役」と厳罰化されています。
たった2年の差と思われる方もいるかもしれませんが、この差は非常に大きな意味を持ちます。旧来の法定刑であれば、仮に懲役3年の判決が下された場合、執行猶予の対象となっていました。
刑法第25条の規定により、執行猶予が認められる刑罰の上限は3年です。ところが、強制性交等罪では最低でも5年の懲役が科せられるため、執行猶予は期待できません。
執行猶予が期待できないという点では、懲役の年数が増えたことよりも厳しい処分だといえるでしょう。
また、旧強姦罪では被害者からの告訴がないと検察官が起訴できない「親告罪」として規定されていましたが、改正に伴って非親告罪になりました。たとえ被害者が加害者への処罰を積極的に求めなくても、捜査機関の判断で独自に起訴できるようになったという点は、厳罰化のひとつだといえます。 -
(2)強制性交等罪で逮捕されるケース
強制性交等罪・準強制性交等罪で逮捕される可能性があるケースを例示してみましょう。
- OB訪問に来た就活生に性的暴行して逮捕されたケース 一流企業の社員が、就職活動のためにOB訪問に来た女子大生を泥酔させ、女子大生が予約していたホテルの部屋に侵入し、窃盗と準強制性交の疑いで逮捕されました。
たとえば「ウチの会社に就職できなくなるぞ」などと脅した場合は強制性交等罪で逮捕される可能性もあるでしょう。
- 金銭貸借を理由に性交渉を強いたケース 女性に対して性行為を条件に金銭を貸し付けたとして、村役場の男性職員が出資法違反で逮捕されました。
このような個人間融資では「金銭貸借がある」という弱みにつけこみ肉体関係を強要されるトラブルが多く、金銭貸借や肉体関係を周囲にバラすなど脅迫のうえで性交等に至れば、強制性交等罪が成立する可能性があります。
3、強制性交等罪で逮捕された後の流れ
強制性交等罪で逮捕されると、どのような流れで刑事手続きが進むのでしょうか?
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(1)強制性交等罪で逮捕された場合の刑事手続き
まず、警察に逮捕されると、その時点から行動の自由が制限されます。帰宅は許されず、弁護士を介した伝言を除いては、外部との連絡もできなくなります。
逮捕されると、警察による取り調べがおこなわれ、犯行の動機や手口などに関して厳しく追及されます。
取り調べを経て、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄は検察官に引き継がれます。この手続きを送致といいます。
送致を受けた検察官は、被疑者の取り調べや警察の捜査結果をもとに、被疑者を起訴するか、それとも不起訴とするかを24時間以内に判断します。ただし、強制性交等罪の事件のように事情が複雑な事件では、さらに詳しく捜査するケースが多く、検察官は、裁判所に対して引き続き被疑者の身柄拘束の許可を求めます。これを勾留請求といいます。
裁判官によって勾留請求が認められると、初回は10日間、延長によって10日間の最長20日間にわたる勾留を受ける可能性があります。勾留中、被疑者は警察の留置施設で自由を制限された生活を送りながら捜査が続いていきます。
勾留期間が満期を迎えるまでに、検察官は再び起訴・不起訴を判断します。起訴された場合、被疑者の立場は被告人となり、保釈が認められない限り裁判が結審するまで身柄が拘束されます。
不起訴となった場合は、即日で釈放となります。前科がつくこともありません。 -
(2)強制性交等罪の量刑判断の基準
強制性交等罪は「5年以上の有期懲役」という重たい刑罰が規定されていますが、5年以上20年以下の範囲内でどの程度の量刑が下されるのかは、さまざまな事情によって判断されます。
強制性交等罪の量刑判断では、次の要素が深く関係します。- 犯行の経緯や動機に悪質性があるか?
- 犯行は計画的であるか?
- 加害者と被害者に面識や交際はあるか?
- 加害者、被害者の年齢
- 犯行による被害者の精神的な被害と処罰意思の強さ
- 示談は成立しているか?
犯行の悪質性や被害者の精神的被害などは審理の中でも重視されますが、強制性交等罪では「示談が成立しているか?」といった点も量刑判断に大きく影響すると考えられます。
示談が成立している場合、加害者が真摯(しんし)に謝罪し、被害者がこれを受け入れていると評価されるため、量刑が軽くなることが期待できます。
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4、まとめ
強制性交等罪は、被害者の心と身体に大きく深い傷を残す重い犯罪です。そのため加害者の人生が大きく変わるほどの重い刑罰が規定されています。起訴されてしまえば、ほぼ確実に有罪となり、執行猶予もつかず長い懲役に服することになるので、逮捕された場合には、まずは起訴を回避する弁護活動が必要となり、また起訴されたとしても刑罰の軽減を目指す活動が重要となります。
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