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強制わいせつ罪で前科がある場合、懲役は長くなるのか?
身内が強制わいせつ事件を起こし、しかも前科がある場合、ご家族としては極めて厳しい状況にあると考える必要があります。強制わいせつ罪は罰金刑がない犯罪ですので、起訴されれば懲役刑を受ける可能性が高いでしょう。
しかし適切な弁護によって刑期を短くすることや、刑務所に収監された場合でも仮釈放によって早く社会生活に戻れる可能性はあります。逮捕された後の速やかかつ、適切な対応が非常に大切だといえるでしょう。
この記事では、前科がある場合の強制わいせつ罪について、刑期や刑務所収監までの流れ、服役中にご家族ができるサポートの内容などを解説します。
1、強制わいせつ罪の概要
強制わいせつ罪は、13歳以上の者に対して暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をし、13歳未満の者に対してわいせつな行為をする犯罪です(刑法第176条)。刑罰は6か月以上10年以下の懲役刑と定められています。
懲役刑とは刑事施設内で労役に服させる罰を指すので、強制わいせつ罪では原則として短ければ6か月、長ければ10年、刑務所に収監され刑務作業を行いながら過ごすことになります。
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(1)量刑に影響を与える材料
実際にどの程度の刑期になるのか(量刑)は、検察官による起訴を経て裁判の判決で言い渡されます。「逮捕=懲役確定」と誤解する方がいますが、逮捕された時点では犯人である疑いをかけられているにすぎず、実刑や懲役の長さが確定するわけでもありません。
強制わいせつ事件といっても状況は事件によって大きく異なるため、次のような複数の材料をもとに裁判官が刑の長さを決定します。
- 行為の悪質性
- 結果の重大性
- 示談成立の有無
- 犯行におよんだ経緯、動機
- 加害者の反省の程度
- 同種前科の有無
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(2)前科がある場合の量刑
前科がある者が再び罪を犯すことを一般的には再犯と呼びますが法律上、この再犯という言葉は、懲役刑を受けた者が執行終了または免除を受けた日から5年以内に、有期懲役にあたる罪を犯した場合を意味します(刑法第56条)。
この再犯に該当すると懲役刑の長期の2倍以下となるため、強制わいせつ罪では最長で20年の刑期になります。必ず刑期が長くなるわけではありませんが、初犯の場合と比べて長くなるおそれが生じるのです。
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2、懲役が決まったら刑務所に⼊らなければいけない?
裁判で判決が言い渡されると、控訴の提起をしない限り、14日が経過した後に判決が確定します。強制わいせつ罪での有罪判決はすなわち懲役刑の確定を意味しますが、判決確定後、どのような流れで刑務所へ収監されるのでしょうか。
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(1)在宅事件の場合
在宅のまま捜査を受けていた場合、判決の言い渡しから判決が確定するまでの間に検察庁から呼び出しを受け、そこから刑務所へ収監されます。判決の言い渡しから10日前後してから呼び出され、自ら検察庁へ出頭した後に拘置所へ収容、その後刑務所へ収監されるという流れです。
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(2)身柄事件の場合
身柄事件では、裁判前および裁判期間中も拘置所で身柄を拘束されていますので、判決がでた後もそのまま拘置所にとどめ置かれます。そして判決が確定し、収監先の刑務所が決定してから収監される流れとなります。
どこの刑務所に入るのかは受刑者の状況や刑の内容によって異なるため、いったん拘置所で拘束し、その間に受刑者の適正判断や刑務所の調整が行われます。必ずしも自宅から近い刑務所になるわけではないという点は、ご家族も知っておく必要があるでしょう。
なお、起訴後に保釈された場合はいったん自宅に戻っていますが、実刑判決がでれば保釈の効力は切れて法廷で身柄を拘束されるため、もう一度自宅に戻ることはできません。 -
(3)執行猶予がついた場合
判決で執行猶予がつくと、執行猶予期間中に罪を犯さなければ、刑の言い渡し効力が失われます。猶予期間中は、自宅に帰ることも、仕事に就いて収入を得ることも可能であるため、通常の社会生活を送れます。
もっとも、執行猶予がつくには判決で3年以下の懲役となる必要があります。
また、前に禁錮以上の刑に処せられていないか、そうでなくても刑の執行終了または免除の日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられていないなどの条件もあります。
すなわち再犯の場合は執行猶予がつかない可能性が極めて高いといえるでしょう。
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3、強制わいせつ罪で執⾏猶予中の制限や注意点
強制わいせつ罪で執行猶予となった場合には、医師や教員、公務員など一部の職業に就けないなどの制限がかかります。また海外旅行については前科があると入国を拒否される国があるため、あらかじめ確認が必要です。
とはいえ、多くの人にとっては特別な制限と呼べるものはなく、会社や学校に通う、引っ越しする、国内旅行をするといった自由な生活が可能です。
ただひとつ、再び罪を犯さない点だけは気をつけなければなりません。執行猶予中の犯罪は、執行猶予が取り消され、前に受けるはずだった懲役の刑期に新たな罪の刑期が追加されます。
更生の機会を与えられた以上、罪を犯すことなど想定しないでしょうが、気をつけたいのは車の運転です。駐車違反などの罪で執行猶予が取り消されるわけではありませんが、飲酒運転や人身事故などの悪質な交通違反では懲役刑もあり得るため、運転は控えるのが望ましいでしょう。
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4、服役中に家族ができるサポート
強制わいせつ罪で服役中にも、ご家族は本人の精神面、生活面でサポートを行えます。主に考えられるサポートの内容や注意事項を解説します。
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(1)面会
受刑者にとってご家族との面会は大きな心の支えとなるでしょう。足を運び、顔を見せてあげるだけでも励ましになります。
ただしいつでも自由に会えるのではなく、一定の制限があります。
面会できる頻度は、毎月2回以上で施設が定める回数です。受刑者の優遇区分によって面会できる回数が変わります。
優遇区分とは、受刑態度に応じて5段階に分けられる優遇制度を指します。受刑態度が良い受刑者には、面会の回数や使用可能な日用品の範囲を広げるなどの優遇が与えられます。
面会時間は、原則として平日の午前8時30分から午後4時まで、30分を下回らない時間とされていることが多いです。ただし施設の状況によってすぐに面会できない場合や、30分未満に制限される場合もあります。 -
(2)差し入れ
刑務所内でもある程度快適な生活を送れるように、現金、日用品、書籍などの差し入れも可能です。
ただし、施設ごとに差し入れられる品目や量に制限があり、これを超えた分は引き取りや受刑者への廃棄を求められる場合があります。事前に確認や相談をし、必要最小限の差し入れにとどめましょう。また食料品の差し入れはできません。
差し入れは面会場所で直接行うのではなく、差し入れ窓口で所定の申込用紙に記載のうえ手続きします。身分証明書や印鑑など必要なものを事前に施設へ問い合わせておきましょう。 -
(3)手紙の送付
面会がなかなか難しい場合でも、手紙で本人を励ましたり、差し入れに必要なものは何かを聞いたりすることができます。
手紙の発受について、ご家族側から送る回数に制限はありませんが、内容についてはあらかじめ施設の検査が行われる場合があります。
本人側から送る回数は、毎月4通以上で施設が定める回数ですが、面会と同様に優遇区分に応じて変わってきます。
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5、刑務所内の⽣活態度が良いと仮釈放の可能性もある
受刑態度が良い場合には、仮釈放措置を受け、刑務所から出られる可能性が生じます。
強制わいせつ罪の場合は刑期の3分の1を経過すると仮釈放を得るための最低条件を満たします(刑法第28条)。
もちろん、3分の1が経過すれば誰でも仮釈放になるのではなく、重罪である強制わいせつ罪においては、3分の1程度で仮釈放となるケースはほとんどありません。
また、改悛(かいしゅん)の情が認められ、つまり罪を悔い改め深く反省しており、更生の意欲があり、再犯のおそれもないといった点をクリアし、さらに審査を通過する必要があります。
仮釈放中は保護司との面談や就労など、刑務所長の判断で遵守事項が設けられます。これに違反したり、再度罪を犯したりすると、仮釈放が取り消され、再び刑務所へ収監される可能性が高いでしょう。仮釈放中の日数は刑期に算入されません。
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6、まとめ
強制わいせつ罪における懲役刑の概要やご家族ができるサポートを中心に解説しました。
強制わいせつ罪は最長で10年の懲役刑を科される犯罪ですが、3年未満の判決ならば執行猶予がつく可能性もあります。刑務所に収監されても面会や差し入れなどのサポートができますし、本人の受刑態度が良好であれば仮釈放の可能性もゼロではありません。
ただし、前科がある場合に執行猶予つき判決を得ることや、早期に仮釈放されるには極めて高いハードルが待ち受けています。弁護士のサポートは必須ですので、ぜひベリーベスト法律事務所までご相談ください。強制わいせつ事件をはじめとする刑事事件の実績豊富な弁護士が力を尽くします。
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