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身内が盗撮で逮捕されたときに家族ができることは? 法律や行為の概要も解説
スマートフォンの性能進化に加え、ペン型タイプや腕時計型タイプの撮影機器が登場するなど、盗撮の手口は年々巧妙化しています。
一方、平成30年7月には東京都の迷惑防止条例の改正で規制場所が拡大されるなど、盗撮への規制は厳しくなっています。盗撮行為は紛れもなく犯罪行為であり、盗撮をしたのであれば誰でも逮捕される可能性があるのです。
身内が盗撮の容疑で逮捕されたとき、少しでも重すぎる罪を科されないようにするため、残された家族は何ができるのでしょうか。抵触する法令や罰せられる行為も含めて解説します。
1、盗撮行為はどの法律違反にあたるのか
盗撮罪という罪名はありません。ただし、行為様態によって特定の法令違反として取り締まりを受ける可能性がある行為です。規制される場所や行為を中心に見てみましょう。
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(1)迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、盗撮や痴漢行為、ダフ屋行為などを取り締まるために設置された条例のひとつです。条例は、都道府県ごとに定められているため、概要は似ていたとしても詳細がそれぞれ異なります。一般的には、罪を犯した場所(逮捕されたり告訴されたりした場所)の迷惑防止条例に基づいて処罰を受けることになります。
本項では東京都の迷惑防止条例(正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」)をもとに紹介します(第5条1項第2号)。
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<場所>
- 公共の場所、公共の乗り物
- 住居、便所、浴場、更衣室などの私的空間
- 学校、事務所、タクシー、その他不特定または多数の人が利用する場所
- 下着や身体を、写真機その他の機器を用いて撮影する行為
- 上記の目的で写真機その他の機器を差し向ける行為、設置する行為
- 駅のエレベーター内で女性のスカートの中へスマートフォンを差し向ける
- 学校のトイレに小型カメラを設置する
- 会社の更衣室の様子を隠し撮りする
<行為>
<逮捕される可能性がある具体例> -
(2)軽犯罪法違反
軽犯罪法とは、空き家に住み着くことや公園で大小便をした者など、刑法などで取り締まるまでもない秩序違反行為を取り締まる法律です。軽犯罪法では、第1条23号において私的空間におけるのぞき見行為を禁止しており、以下のような条件において行われた盗撮は、軽犯罪法におけるのぞき見行為として取り締まりを受ける可能性があります。
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<場所>
- 人の住居、浴場、更衣場、便所など人が通常衣服をつけないでいるような場所
- 正当な理由なくひそかにのぞき見る行為
- 人の家の庭からお風呂場の中をのぞき込む
- アパートの窓から住人の様子を望遠鏡で見る
- 他人が宿泊中のホテル個室内を撮影する
<行為>
<逮捕される可能性がある具体例>
盗撮行為が軽犯罪法違反に該当する場合、刑法第130条に定められた住居侵入等罪にも該当しているケースがあります。 -
(3)児童ポルノ規制法違反
児童ポルノ規制法の正式名称は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律です。児童に対する性的搾取や性的虐待などを防ぐ目的を持つ法律です。
以下の条件などで盗撮した相手が18歳未満だった場合は、児童ポルノ規制法第7条に規定された、児童ポルノ所持、提供などの行為にあたるため、処罰を受ける可能性があります。
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<場所>
- 犯行場所の要件はなし
- ひそかに児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより児童ポルノを製造する行為
- 小学校の更衣室やトイレ個室内の様子を置き時計型カメラで撮影する
- 公園やプールなどで遊ぶ児童(18歳に満たない者)の下着などを撮影する
- 撮影したものを持ち歩く、頒布する
<行為>
<逮捕される可能性がある具体例> -
(4)著作権法違反
性犯罪だけにとどまりません。映画館、博物館、美術館、書店などで、許可なく創作物を録画・録音するなどの行為も盗撮にあたります。特に映画は「映画の盗撮の防止に関する法律」で盗撮が禁じられており、私的使用目的であっても罪に問われます。
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2、盗撮行為で逮捕されるケース
盗撮で逮捕されるケースには「現行犯逮捕」「通常逮捕」の2つが考えられます。具体例や逮捕の要件を確認しましょう。
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(1)現行犯逮捕されるケース
警察官や検察官などに限らず私人にも可能なのが現行犯逮捕です。現に盗撮を行っている最中や、直後でも盗撮の犯人であることが明白であれば現行犯逮捕される可能性があります。「電車内で盗撮している様子を乗客に目撃され、身柄を駅員に引き渡される」「盗撮に気づいた被害者から取り押さえられる」といったケースが典型的です。
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(2)通常逮捕(後日逮捕)されるケース
通常逮捕の場合、まずは事件が発覚します。たとえば「トイレの清掃員が小型カメラの存在に気づき警察に通報した」「盗撮に気づいた被害者が被害届を提出した」などの経緯が考えられます。その後、証拠が固まると逮捕状の発付、逮捕にいたるという流れです。まずは任意で事情を聴かれるケースもありますが、すでに逮捕状をもっている可能性があるので素直に応じるのが賢明でしょう。
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(3)身柄事件と在宅事件
逮捕は身柄を拘束されたまま捜査が進められる手続きであり、身柄事件と呼ばれます。一方、罪を犯したが逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合は在宅事件として、身柄は拘束されないまま捜査が続けられる可能性があります。在宅事件扱いとなれば、日常生活は送れますが、捜査機関から呼び出しを受ける都度対応しなければなりません。
逃亡や証拠隠滅のおそれについては、確定した住所や同居人、身元引受人の有無や職業、罪を認めているか否かといった点が判断基準となります。たとえば「証拠があるのに取り調べで否認する」「撮影した画像を隠そうとする」などの行為をすると逮捕のおそれが高まるでしょう。
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3、身内が盗撮で逮捕された後の基本的な流れ
身内が盗撮で逮捕されると、次のような流れで刑事手続きが進められます。
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(1)逮捕から72時間以内
逮捕後、まずは警察が捜査・取り調べを行い、48時間以内に被疑者の身柄と事件の資料を検察庁へ送ります(送致)。ここでさらに検察官による取り調べが行われ、送致から24時間以内に起訴・不起訴の決定を下します。
時間内に適切な決定をするだけの材料がそろわなかった場合、検察官は裁判官へ勾留請求を行います。裁判官は本人と面談し、勾留するか却下するかを判断することになります。
ここまでの72時間はご家族であっても本人と面会できません。 -
(2)最長20日間の勾留
裁判官が勾留を認めると最長で20日間の身柄拘束が続きます。もっとも、勾留が認められるのは住所不明の場合や、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に限られます。同居のご家族がいて、本人も罪を認めて捜査に協力しているようなケースでは、最長の20日間勾留される可能性は高くないでしょう。
万が一交流が決定してしまったとしても、接見禁止がつかない限り、勾留段階に入れば本人と面会できるようになります。少しでも早く身柄を解放されるためにも、ご家族は本人と面会して励ますとともに反省を促すことも必要です。 -
(3)起訴された後
起訴されると、保釈が認められない限り裁判まで引き続き身柄を拘束されますが、略式命令の場合はすぐに身柄が解放されます。盗撮事件ではよほど悪質なケースを除き、略式命令となる可能性は十分にあるといえるでしょう。
ただし、たとえ罰金刑であっても刑罰ですから、当然、前科がつきます。前科がつくと一定の職業で制限がかかる、解雇事由となり得るなどの影響が考えられます。
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4、身内が盗撮して逮捕された場合、家族にできること
身内が盗撮で逮捕された場合にはご家族の協力が欠かせません。ご家族だからこそ可能な、具体的なサポート内容をお伝えします。
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(1)弁護士への依頼
ご家族は、事件が発覚した時点で速やかに弁護士へ依頼することをおすすめします。
もし逮捕されてしまったら、何の心構えもなく取り調べに対応することになるでしょう。場合によっては、不用意な発言で不利な状況を生み出すおそれがあります。そのため、まずは取り調べ対応についてのアドバイスを受けておいたほうがよいものです。
しかし、逮捕後72時間はご家族や友人などが、逮捕された本人に会うことや、電話で話をすることはできません。しかし、弁護士は唯一制限なく被疑者との接見が行えるため、依頼を受ければご本人と接見して状況を伺ったり、アドバイスを行ったりすることができます。
依頼を受けた弁護士ができることは、ご本人に対してアドバイスするだけではありません。検察官へ意見書を提出するなど、勾留請求の回避に向けた活動を行います。無実の罪で逮捕された場合にも、証拠集めや、被害者・目撃者証言の矛盾をつくなどの弁護活動を続けます。 -
(2)示談交渉のサポート
盗撮被害者との示談が成立すると不起訴処分となる可能性が高まります。起訴された場合も罰金刑や執行猶予つき判決となり、刑務所へ収監されずに済む可能性があるでしょう。なぜなら、警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。
ただし盗撮の被害者は加害者へ嫌悪感情を抱くケースが一般的です。また本人が被害者の連絡先を知らないケースは多々あり、警察など捜査機関も当然のことながら加害者に対して被害者の情報を伝えることはありません。そのため、本人やご家族が示談を進めることは困難です。相手が弁護士なら応じると考える被害者は少なくないため、示談交渉は弁護士へ一任するべきでしょう。
ご家族は弁護士へ示談交渉を依頼すると同時に、逮捕された本人に代わり示談金の準備をすることも必要です。 -
(3)精神的な支えとなる
本人を精神的に励まし支えとなるのも、ご家族の大事な役目です。逮捕された本人は外部との連絡を遮断され、今後の不安にかられます。精神的なダメージから、取り調べでやってもいないことまで供述してしまうおそれもあるでしょう。勾留段階に入れば面会や差し入れも可能ですが、その前にも弁護士を通じて励ましの言葉を伝えるなどして支えとなりましょう。
弁護士と相談しながら会社への対応をしておくのも、本人を安心させる材料になります。
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5、まとめ
盗撮は迷惑防止条例や軽犯罪法などで規制される行為です。身内が逮捕された場合、ご家族は速やかに弁護士へ依頼するとともに、示談金の用意や会社への連絡対応、本人の精神的サポートをしましょう。場合によっては、カウンセリングなどの医療機関のサポートが必要なこともあります。少しでも早い行動が早期の釈放や不起訴処分の可能性を高め、日常生活への影響を最小限に抑えることにつながるのです。
身内が盗撮容疑で逮捕されたときや、警察から連絡が来ていてお悩みのときは、ベリーベスト法律事務所へご連絡ください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が全力でサポートします。
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