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強制わいせつに罰金刑はある? 逮捕後の流れと刑罰について解説
強制わいせつ罪を犯した人やそのご家族にとって、今後どのような処罰を受けることになるのかは重要な問題です。特に、刑期満了まで刑務所で暮らす懲役刑となるのか、刑務所には収監されずに済む罰金刑となるのかは非常に気になる点でしょう。
刑法第9条では刑の種類について「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留および科料を主刑とし、没収を付加刑とする」と述べています。どの刑が適用されるのかは犯罪ごとに異なるため、強制わいせつ罪の場合はどうなるのかを知る必要があるでしょう。
本コラムでは、強制わいせつ罪に適用される刑罰について解説するとともに、被害者との示談を成立させるためにできることを説明します。
1、強制わいせつ罪となる行為
刑法第176条では、次の行為をすると強制わいせつ罪で罰せられると規定しています。
- 13歳以上の者に対する暴行や脅迫を用いておこなうわいせつな行為
- 13歳未満の者に対するわいせつな行為
被害者が13歳以上の場合は暴行・脅迫という手段を用いてわいせつな行為をすると強制わいせつ罪になります。これに対し、被害者が13歳未満の場合は手段を問わず、たとえ同意があったとしても強制わいせつ罪になります。
わいせつな行為とは何でしょうか?人によっては解釈が異なるかもしれませんが裁判所はわいせつな行為を「性欲を刺激・興奮させ、普通人の性的な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」だと述べています。要するに、一般の人がいやらしいと感じる行為を指すわけですが、具体的には次のような行為が該当します。
- 下着の中に手を入れて陰部を触る
- 衣服を脱がせる
- 強引に抱きついてキスをする
- 自分の陰部を触らせる、押し当てる
- 女性の乳房を弄ぶ
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(1)痴漢が強制わいせつ容疑として逮捕に至った事例
平成29年11月、電車内で女性に集団痴漢をしたとして、4人の男が逮捕されたという報道がありました。犯行におよんだのはネット掲示板を通じて集まった初対面の男たちで、女性の服の中に手を入れるなどのわいせつな行為をしたとされています。乗客整理のアルバイトが車内で女性を取り囲むようにして立つ男たちの様子に気づき事件が発覚し、車内の防犯カメラの映像で容疑者が特定されました。
痴漢は都道府県の迷惑防止条例違反で逮捕されるケースがよくありますが、悪質な犯行の場合には強制わいせつ罪となる可能性もあります。
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2、強制わいせつの刑罰とは?
強制わいせつ罪の刑罰は刑法第176条で「6か月以上10年以下の懲役」と規定されています。罰金刑はありませんので、無罪判決を得るか、執行猶予がつかなければ刑務所に収監されることになります。
しかし日本では起訴後の有罪率は99%以上と極めて高いため、裁判で無罪となるのは非常に少ないと言わざるを得ません。執行猶予がつく可能性はありますが、判決が3年以下のケースに限られます。強制わいせつ罪の刑罰は最長で10年の懲役なので、判決によっては実刑も十分にあり得るということです。
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3、強制わいせつ罪は「非親告罪」
強制わいせつ罪は以前、被害者からの告訴がなければ検察官が起訴できない親告罪でした。被害者と示談が成立し、告訴を取り下げてもらえば、起訴を免れることができたのです。
しかし、平成29年7月におこなわれた刑法改正では、強制わいせつ罪を含む性犯罪が厳罰化されました。その中で強制わいせつ罪は、起訴にあたり告訴を要しない非親告罪へと変わっています。被害者が告訴状を提出していない場合や、すでに提出された告訴状が取り下げられた場合でも、検察官の判断で起訴される可能性があるということです。
なお、改正前に強制わいせつ罪を犯していた場合でも、改正前に告訴の取り下げがおこなわれたケースを除き、非親告罪として取り扱われます。
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(1)初犯の場合は刑罰が軽くなる?
初犯の場合に法定刑が変更になるという規定はないため、初犯であっても刑法第176条に従い「6か月以上10年以下の懲役」の範囲で刑罰が決まります。実際にどのような刑罰を科せられるのか(量刑)は、犯行の悪質性や被害の大きさ、被害者の処罰感情、加害者の反省の有無などによって異なります。
たとえば次のようなケースは初犯であっても厳しい判決がくだる可能性があるでしょう。- 計画性が高い、凶器を使って脅した、犯行が執拗(しつよう)
- 被害者がケガをしている、精神的ダメージが大きい
- 被害者の処罰感情が高い、示談を拒否している
- 加害者に反省の色が見られない、証拠があるのに犯行を否定している
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(2)執行猶予がつくためには
強制わいせつ罪で起訴され有罪になっても、執行猶予がつけば直ちに刑務所へ収監されることはなく、猶予期間中に何ごともなく過ごすことができれば刑の効力が失われます。
しかし、当然ながらどのような場合にも執行猶予がつくわけではありません。犯行様態の悪質性が高くなく、被害者から一定の許しも得られているなどの事情が必要です。すでに起こした事件の内容を変えることはできないため、重要なのは被害者との示談の成立です。
示談が成立し、被害者が許すとの意思を得られていれば、裁判官もこれを考慮し、執行猶予がつく可能性があるでしょう。
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4、強制わいせつ罪の示談成立のためにできること
強制わいせつ事件の被害者は恐怖心や嫌悪感情などから加害者側との接触を拒むケースが多いため、示談交渉が難航するケースは多々あります。難しい示談を成立させるために何をするべきなのでしょうか。
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(1)刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に依頼
一般の方が強制わいせつ事件の示談を成立させるのは困難なので、示談交渉は弁護士へ依頼するべきです。加害者本人やその家族が直接示談交渉に臨む場合、被害者感情を逆なでしてしまうことがあります。
また、見ず知らずの相手が被害者だった場合、示談交渉をしようにも加害者が被害者の連絡先を入手することはできません。捜査機関も積極的に被害者の連絡先を教えることはまずあり得ないため、弁護士が捜査機関を通じてはたらきかけ、被害者の許可を得たうえで連絡先を入手するしか方法がありません。このように弁護士の力なくして示談を成立させるのは難しいのです。 -
(2)被害者に対して誠心誠意謝罪する
誠心誠意をもって謝罪することはとても大切です。被害者が謝罪を受け入れ、示談金を受け取ってくれることで示談が成立となります。
もちろん、形式的な謝罪で被害者が納得してくれることはないため、言い訳をせずに自らが犯した罪を認め、謝意を誠実に伝える必要があります。被害者が受けた傷や感じた恐怖などをしっかりとイメージし、心から申し訳ないという気持ちが大切です。
もっとも、加害者が被害者に面と向かって謝罪することは通常できませんので、謝罪文を書き、弁護士を通じてお渡しするという方法が一般的です。謝罪文の書き方については弁護士からアドバイスを受けることができます。 -
(3)再発防止のためクリニックに通う
犯罪だとわかっていても自分では性的欲求や衝動をコントロールできない場合は、性依存症の可能性があります。この場合はいくら刑事罰を受けても再び犯罪に手を染めるおそれがあるため、病気の治療を通じて再犯防止の努力を伝え、被害者に安心してもらうことが大切です。性依存症の専門医や心療内科医がいるクリニックに通院し、同時に被害者との交渉を粘り強く続けることで示談にしてもらえる可能性があります。
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5、まとめ
強制わいせつ罪は罰金刑がなく、有罪になれば必ず懲役刑になる犯罪です。起訴後の有罪率が高い点を踏まえれば、懲役刑を回避するには不起訴処分を得ることが重要だといえます。
しかし、刑事事件の手続きには時間的な制限があり、何も対処せずにいれば状況はあっという間によくない方向へと進むおそれがあります。逮捕され、勾留ともなれば、社会生活への影響も深刻です。したがって加害者のご家族としては一刻も早く弁護士へ相談し、弁護士を選任することが重要といえます。
家族が強制わいせつ罪に問われてお悩みの方はベリーベスト法律事務所へご連絡ください。性犯罪における加害者弁護の経験豊富な弁護士がサポートします。
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