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強制性交等致死に付加刑はつくのか? 成立要件や刑罰、逮捕後の流れ
家族が強制性交等致死罪で逮捕された場合、残されたご家族が大きな不安を抱えるのが「本人はどのような刑罰を受けるのか」という点でしょう。
強制性交等致死罪は性犯罪の中でも特に重大な犯罪であるため厳しい刑が設けられていますが、具体的にはどのような刑を科せられるのでしょうか。
本コラムでは強制性交等致死罪の刑罰について、犯罪の定義や逮捕後の流れとあわせて解説します。言い渡された刑に「付加刑」がつくのかについても見ていきましょう。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、強制性交等致死罪の定義
強制性交等致死罪とはどのような犯罪なのか、刑罰はどれくらいの重さなのかについて解説します。
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(1)犯罪が成立する要件
強制性交等致死罪とは、以下のいずれかの罪を犯し、それによって人を死亡させる犯罪です(刑法第181条2項)。
- 強制性交等罪(刑法第177条) 13歳以上の者に暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔(こうくう)性交(以下、性交等)をする罪。13歳未満の者に対しては暴行・脅迫を用いなくても成立する。
- 準強制性交等罪(刑法第178条2項) 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をする罪。
- 監護者性交等罪(刑法第179条2項) 18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者であることの影響力を利用して性交等をする罪。
ここでいう死亡は、性交等の行為自体によって死亡させた場合だけでなく、次に例示するような状況で死亡させた場合も含まれます。
- 手段としての暴行によって死亡させた場合
- 被害者が逃げる際に転倒して死亡した場合
- 加害者が逃走するために被害者を突き飛ばして死亡させた場合
刑罰は「無期または6年以上の懲役」です。言い渡される刑罰が3年を超える懲役の場合は、執行猶予はつきません。強制性交等罪で有罪になれば、ほぼ確実に刑務所に収監されます。 -
(2)未遂も罪として成立する
「強制性交等罪」「準強制性交等罪」「監護者性交等罪」のいずれかの罪が未遂であり、性交等の目的を果たせなかった場合でも、人を死亡させる結果が生じていれば、強制性交等致死罪が成立します。
たとえば性交等をする目的で相手に暴力をふるい、死なせてしまったために性交等をすることなく逃げたケースです。
未遂の場合も既遂と同じ刑罰が適用されます。 -
(3)殺意があった場合
相手を殺す意思(殺意)をもって強制性交等罪を犯し、死亡させた場合は、強制性交等致死罪と殺人罪が成立します。
2つの罪は「観念的競合」の関係にあります。観念的競合とは、1つの行為が2つ以上の罪名に触れることをいい、そのうちもっとも重い刑で処罰されます(刑法第54条1項)。
強制性交等致死罪の刑罰は「無期または6年以上の懲役」、殺人罪の刑罰は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」(刑法第199条)となるため、このケースでは殺人罪の刑罰が適用されます。
2、強制性交等致死罪に付加刑はつくのか
強制性交等致死罪の刑罰について「懲役以外の刑が付け加えられることがあるのか?」と気になる方がいるかもしれません。刑法には「付加刑」という刑がありますが、本罪に付加刑はつくのでしょうか。
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(1)主刑の意味と内容
刑法第9条には「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」とあります。
以下、主刑の内容を簡単に説明します。
- 死刑:受刑者の命を絶つ刑
- 懲役:無期または有期(1か月以上20年以下)を定め、刑事施設に収容したうえで労役に就かせる刑
- 禁錮:無期または有期(1か月以上20年以下)を定め、刑事施設に収容する刑
- 罰金:1万円以上の金銭を徴収する刑
- 拘留:1日以上30日未満の間、刑事施設に収容する刑
- 科料:1000円以上1万円未満の金銭を徴収する刑
罪名ごとに適用される主刑は異なり、強制性交等致死罪では懲役刑のみが適用されます。
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(2)付加刑の意味と内容
付加刑とは主刑に付け加えて言い渡される刑罰です。付加刑のみが単独で言い渡されることはありません。
付加刑は現行法では「没収」のみです。没収とは、犯罪行為に不可欠の物や犯罪に使われた物などの所有権をはく奪し、国庫の所有とさせる刑です(刑法第19条)。
たとえば殺人罪において殺人行為に使われた銃と弾丸、覚醒剤取締法違反において被告人が所持していた覚醒剤などが没収の対象になります。
強制性交等致死罪の場合は、被害状況を撮影した記録媒体などが没収の対象となる可能性があります。
なお、没収は刑罰なので裁判官しか言い渡すことができません。警察官などが事件に関係する物を提出させたり差し押さえたりする「押収」とはまったく別のものです。
3、強制性交等致死罪で逮捕された後の流れ
逮捕されてから裁判で判決がでるまでの流れ、性犯罪の非親告罪化について解説します。
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(1)逮捕〜判決まで
逮捕されると、48時間以内に警察官からの取り調べを受けて検察庁へ送致され、そこから24時間以内に検察官からの取り調べを受け、勾留されるかどうかが決まります。
勾留とは、さらなる捜査の必要があるために引き続き被疑者の身柄を拘束する手続をいい、最長で20日間にわたります。
勾留期間が終わるまでに起訴・不起訴の判断がなされ、起訴されると刑事裁判まで身柄拘束が続きます(起訴後の勾留)。起訴からおよそ2か月後に刑事裁判が開かれ、審理を経て判決が言い渡されます。
強制性交等致死事件は重大事件であり、重い判決が下ると予想されるため、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると認められやすくなります。そのため勾留を受ける可能性が高く、起訴後の勾留を含めると長期にわたり身柄が拘束される場合もあるでしょう。 -
(2)非親告罪化した性犯罪
性犯罪について「親告罪ではないのか?」と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。親告罪とは、被害者側の告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。以前の刑法では、性犯罪は親告罪と定められていました。
しかし、平成29年の刑法改正により、強制性交等罪などの性犯罪は非親告罪化されています。つまり被害者の告訴がなくても起訴される可能性があるということです。
もっとも、強制性交等致死罪に関しては、改正前(旧:強姦致死罪)から非親告罪だったため、告訴がなくても起訴される可能性が高いでしょう。
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4、強制性交等致死罪で逮捕されたときに、弁護士に相談すべき理由
身内の方が逮捕されたのであれば、残されたご家族はすぐに弁護士を手配しましょう。刑事事件では制限時間の中で次々に手続きが進められるため、できる限り早い段階で、弁護活動を依頼することが重要です。
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(1)逮捕直後から面会が可能
逮捕直後の72時間はご家族であっても本人と面会できません。勾留段階に入ると通常は面会できるようになりますが、接見禁止がついて会えない場合があります。
これに対し、弁護士は接見禁止がある場合でも捜査のため必要があるとき以外は本人と面会できます。特に逮捕直後の72時間以内に行われる取り調べで、どのような供述をするのかは極めて重要です。弁護士が早期に面会し、取り調べ対応のアドバイスをします。 -
(2)状況に応じた弁護活動を依頼できる
勾留期間が長引けば日常生活への影響が懸念されるため、弁護士が裁判官に対し、証拠隠滅や逃亡のおそれがない点などを主張して早期の身柄釈放を求めます。
刑事裁判でも性依存の治療やご家族の監督環境の整備、遺族との示談などさまざまな活動を通じて刑の減軽を訴えます。強制性交等致死罪は原則として執行猶予がつきませんが、刑が減軽されたうえで、執行猶予がつく可能性はゼロではありません。 -
(3)裁判員裁判制度の対象事件である
強制性交等致死罪は裁判員裁判の対象事件です。裁判員裁判は一般市民の感情・感覚が反映されることもあり、裁判官による裁判よりも刑が重くなる傾向があります。たとえば裁判官による裁判(平成21~22年)では懲役7年以下の割合が全体の61.6%だったのに対し、裁判員裁判の累計(平成21~26年)では48.6%にとどまっています。
裁判員裁判では、弁護士が一般市民にわかりやすい言葉で矛盾のないように説明し、適切な判断をうながす必要があります。弁護士の果たす役割が非常に大きいため、ご家族は早期に依頼し、できる限りの準備をしてもらうべきでしょう。
5、まとめ
強制性交等致死罪は、社会的に厳しい目を向けられている犯罪です。平成29年の法改正で厳罰化されており、裁判員裁判の対象事件でもあるため弁護士のサポートが不可欠です。早急かつ慎重な対応が求められるため、ご家族はできるだけはやく弁護士に相談しましょう。
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