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不同意性交等罪とは? 「合意のうえ」のはずが訴えられた場合の対処法
酒を飲んだ勢いで性行為をして、後日相手から「同意していなかった」と訴えられた場合には、犯罪として逮捕されてしまうのでしょうか。
相手の意思に反して無理やり性行為をした場合には、令和5年に新たに定められた、「不同意性交等罪」に問われる可能性があります。
そこで、本コラムでは、不同意性交等罪の概要や、性行為の同意の証明方法、もし逮捕されたときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 不同意性交等罪とはどのような犯罪?
- 「合意がなかった」と訴えられたら逮捕されるのか?
- 逮捕された場合に取るべき対応
1、不同意性交等罪はどんな犯罪か?
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(1)改正のポイントとは?
令和5年6月に「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」が公布され、令和5年7月に施行しました。
この改正により、従来「強制性交等罪」と規定されていた犯罪は、新たに「不同意性交等罪」と改められました。
改正の大きな概要としては、以下の4つがあげられます。
- ① 構成要件の改正
- ② 性交に同意する年齢の引き上げ
- ③ 性交等の定義の拡大
- ④ 公訴時効(刑法上の時効)の延長
① 構成要件とは?
まず、「構成要件」とは、刑法の条文に記載されている犯罪が成立するための要件のことを指し、犯罪とは構成要件に該当する違法で有責な行為のことを指しています。したがって、この構成要件に該当していない行為については、行為者を刑法上の罪に問うことはできません。
そして、旧刑法における強制性交等罪が成立するためには、「暴行」・「脅迫」・「心神喪失」・「抗拒不能」という構成要件に該当する必要がありました。しかし、これでは本来ならば罪に問うべきケースで罪に問うことができないという問題が発生していました。
そこで、性行為に同意できない状態とはどんな状態なのかはっきりさせ、裁判官によって判断のばらつきが生じないような内容に改められました。
② 年齢の引き上げ
また、今回の改正で性交に同意する年齢が13歳から16歳に引き上げられました。さらに、後述のように性交等の定義が拡大され、不同意性交等罪の公訴時効(刑法上の時効)は、10年から15年に延長されました。 -
(2)不同意性交等罪の構成要件と罰則
不同意性交等罪の構成要件は、「一定の事由」により、
- 性交に同意しないと本人が自分で決めることが難しい状態
性に関する判断能力や前提知識がないことで、相手と性交等をするか否かの意思を持つこと自体ができない状態 - 同意しないと決めても、その意思を相手に伝えることが難しい状態
同意しない意思を持つことまではできるが、それを相手に伝えることが難しい状態 - 自分の意思を全うすることが難しい状態
同意しないと伝えることができるが、その意思に従って、行動することが難しい状態 - 上記3つの状況に便乗する
という状況下で、性交等を行うことです。
ここでいう性交等とは、「性交、肛こう門性交、口腔くう性交または膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」をいいます。
そして、「一定の事由」として規定されているのは、以下の8つです。
- 暴行、もしくは脅迫すること、または暴行や脅迫を受けたこと
- 心身の障害を発生させる、または心身の障害があること
- アルコールもしくは薬物を取らせること、またはそれらの影響があること
- 睡眠その他、意識がはっきりしない状態にさせること、またはその状態にあること
- 同意しないという意思を伝える時間を与えないこと
- 予想と違う事態に直面させて怖がらせ、もしくは驚かせること、
- または予想と違う事態に直面して、怖がったり、驚いていること
- 虐待が原因で、わいせつな行為に同意せざるを得ないと本人に思わせること
- 相手の経済的又は社会的地位に基づく影響力によって、断った場合に受ける不利益をほのめかすこと。または、相手がほのめかさなくても本人が断ったら不利益を被るかもと思っていること
したがって、飲酒により眠り込んでしまっている状態や、歩くのもやっとで自分の意思を表明することができない状態の相手を、自宅やホテルなどに連れ込んで性行為に及んだ場合には、「不同意性交等罪」に問われる可能性があります。
この不同意性交等罪が成立した場合には、「5年以上の有期拘禁刑」が科されることになります(刑法第177条1項)。
また、- 行為が「わいせつなものではない」と、勘違いをさせる
- 行為をする者について、人違いをさせる
- 勘違いや人違いをしていることを訂正せずに利用して、性交等をした
という場合や、
- 「16歳未満の者に対し、性交等をした」場合(相手が13歳以上16歳未満の子どもで行為者が5年以上年長である場合のみ)
にも、同罪が成立します。
- 性交に同意しないと本人が自分で決めることが難しい状態
2、「合意がなかった」と訴えられると逮捕される?
それでは、性行為の相手から事後的に「合意がなかった」と訴えられると逮捕されてしまうのでしょうか。
一般的に性犯罪の容疑で逮捕されるきっかけとなるのは、相手が被害届や告訴によって警察に被害を申告した場合です。
このような場合に逮捕されるか否かは、警察の判断次第です。容疑者を逮捕するためには一定の条件が必要となるため、その要件がすべて満たされていると判断された場合には逮捕される可能性があります。
捜査機関が被疑者を逮捕するためには、逮捕の理由と必要性が認められなければなりません。捜査機関は、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、「逮捕の必要」がある場合には、逮捕が可能です(刑事訴訟法第199条1項2項)。
具体的には、
- 不同意性交等罪など特定の犯罪の存在している
- 被疑者が当該犯罪を行ったという関連性がある
- 被疑者の逃亡・証拠隠滅のおそれがある
という場合には、逮捕される可能性がありますというのが形式論ですが、被害を主張する人と加害者が連絡可能であれば罪証隠滅のおそれは認められ、不同意性交罪の法定刑は逃亡のおそれを推定するのに十分な重さですので、結論としては、捜査機関が逮捕をしようとすればほとんどの事件で逮捕は可能です。
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3、性行為の同意を証明するためには?
被害者が、性交等に同意しないと決めたり、相手に伝えたり、そのために体を動かしたりすることが難しい状態で性交等をした場合には不同意性交等罪に問われうることになりますが、罪に当たるのかどうか判断するうえで重要になってくるのが「性行為の合意」の有無です。
しかし、性行為は通常、密室において当事者のみで行われるものであるため、性行為の同意の合意を証明することは簡単ではありません。そのため、内心の問題である合意の有無については、性交等がなされた当時の状況、やり取りの内容や行動など客観的な事情を総合的に考慮して判断されることになります。
具体的には、
- 被害者の身体に暴行を受けた形跡がある
- 当時の精神状態がどうだったか
- 抵抗した形跡があるか
などを考慮して、合意があったかどうかが判断されることになります。
ただ、一定の事由が認められ、同意の意思表示ができないような客観的状態であったと評価を受けた時点で、同意はなかったとみなされるような運用が今後も強くなっていくのではないかとも考えられます。
4、不同意わいせつ罪、準強制性交等罪とは?
上記構成要件にあてはまらず、不同意性交等罪とはならずとも、不同意わいせつ罪に問われることもあります。
これは、前述の8つの原因によって、性行為に同意していない相手に、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法第176条1項)。
相手が酒で酔っている状態にあるにもかかわらず、胸やお尻など身体を触ったり、抱き着いたりキスをしたりする行為は「わいせつな行為」にあたります。
不同意わいせつ罪が成立した場合には、「6月以上10年以下の拘禁刑」に科されることになります。
また、令和5年7月12日以前に起こったわいせつ事件においては、準強制わいせつ罪が適用される可能性もあります。
準強制わいせつ罪とは、「心神喪失・抗拒不能に乗じて」または「心神喪失・抗拒不能にさせて」わいせつな行為を行う犯罪です。
例えば、
- 被害者が眠っていたり酔っていて、わいせつな行為をされていると分からない
- 被害者を物理的・心理的に抵抗できない
- 上記のような状態にあることを悪用する
というような状況で、わいせつな行為をすると準強制わいせつ罪に問われる場合があります。
準強制わいせつ罪が成立した場合には、「6か月以上10年以下の懲役」が科されることになります。
5、不同意性交等罪などで逮捕された場合の対処法
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(1)弁護士への相談
もし不同意性交等罪の疑いをかけられて、逮捕された場合、その後72時間は家族であっても原則として面会することはできません。
しかし、弁護士であればいつでも被疑者と面会することが可能ですので、早期に弁護士へ依頼することで、取り調べに対するアドバイスを受けることができます。
また、あらかじめ弁護士からアドバイスを受けることで、不用意な発言や事実とは異なる証言で調書を作成されることを防ぐことも可能です。
逮捕後、多くの方は非常に不安を抱えている状態だと考えられますので、早期に弁護士と接見し、今後について相談したりアドバイスを受けたりすることは、とても大きな意義があるでしょう。
不同意性交等罪などで逮捕された、もしくはその不安があるなら、まずは弁護士へ相談し、今後の対応についてアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。 -
(2)被害者との示談
不同意性交等罪などの容疑で逮捕された場合には、被害者との示談を成立させることが重要です。
被害者との示談が成立した場合には、被害届や刑事告訴が取り下げられる可能性があるからです。また、示談が成立した事件については違法性が減少したとして、検察官が不起訴処分とする可能性も高まります。仮に起訴された場合であっても、被害者との示談が成立したことは、被告人にとって重い罪に問われる可能性が少なくなる要素のひとつとなります。
ただ、加害者本人が被害者と謝罪や示談しようと思っても難しいことが大半です。この点、刑事弁護を依頼された弁護士であれば、第三者の立場から示談交渉のために被害者に働きかけることも可能です。 -
(3)家族との連携
逮捕は、いきなりされてしまうことも多く、たとえば職場に対して無断欠勤になってしまうなどの不利益を抱えることになります。そのような時、家族は被疑者と自由に面会できないことから、被疑者は弁護士を通して家族と連携をとる必要が出てきます。
逮捕された時点では、いつまで拘束されているかは確定しておらず、場合によっては罪に問われずに終わる可能性もあるため、ひとまず休むなどの対応でしのげる場合もあるでしょう。 -
(4)監督体制・生活環境の改善
身体拘束から解放されるためには、逃亡や罪証隠滅、さらに再犯のおそれがないことを検察官に説明することが重要となります。
そのため、同居の親族による監督体制や生活環境の改善などを誓約する身元引受書や陳述書などを提出することが有効です。
具体的な弁護方針については、弁護士としっかりと話し合って決めることになります。
6、まとめ
以上、不同意性交等罪の概要、合意の立証方法などについて解説してきました。
ベリーベスト法律事務所は刑事事件について、拠点数の多さ、スピード対応、元検察官の弁護士が在籍しているといった強みがあります。
不同意性交等罪など性犯罪の疑いで逮捕されそうで不安だという方は、すぐにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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