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痴漢は不同意わいせつ罪? 迷惑防止条例違反? 罰則や違いについて


痴漢行為が発覚して家族が逮捕された場合、多くの方が「どうなるのか」「どんな罪に問われるのか」と不安に思われるでしょう。
痴漢行為は、状況によって不同意わいせつ罪や迷惑防止条例違反として罰せられる可能性があります。とくに令和5年の法改正で強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪になったことで、痴漢行為の扱いも大きく変わりました。
不適切な行動によってより重い罰則が適用されるような事態を避けるには、いち早く弁護士へ相談し、適切な対応をすることが重要です。
本コラムでは、痴漢で成立し得る犯罪や具体例・逮捕された際の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、痴漢行為で成立する可能性のある犯罪
痴漢行為は、行為の内容や被害者の状況などによって、不同意わいせつ罪や迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。
それぞれどのような状況で犯罪が成立するのか、また罰則などの違いについて以下で解説していきます。
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(1)不同意わいせつ罪
痴漢行為で成立する犯罪の一つは、不同意わいせつ罪です。不同意わいせつとは、主に被害者の同意を得ていない、または意思表示が困難な状態でわいせつ行為をすることを指します。
刑法では、以下のような行為・事情による不同意のわいせつ行為で不同意わいせつ罪が成立すると規定しています。
- 暴行もしくは脅迫をすること、または被害者がそれらを受けたこと
- 心身の障害を生じさせること、または被害者にそれが生じていること
- アルコールや薬物を摂取させること、または被害者にそれらの影響があること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、または被害者がその状態にあること
- 同意しない意思を形成し、表明しまたは全うするいとまがないこと
- 予想と異なる事態に直面させ恐怖・驚愕させること、または被害者がその事態に直面して恐怖・驚愕していること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること、または被害者にそれが生じていること
- 経済的または社会的な関係の地位にもとづく影響による不利益を心配・不安にさせること、または被害者がその状態にあること
また不同意わいせつ罪は、被害者が不同意であった場合だけでなく、被害者の誤信を利用した場合にも成立します。たとえば、わいせつなものではないと勘違いさせたり、人違いさせたりした状態でわいせつ行為をした場合などです。
また、被害者が13歳以上16歳未満であり、わいせつ行為者が5歳以上年上の場合にも成立します。
不同意わいせつ罪の刑罰は「6か月以上10年以下の拘禁刑」となっており、罰金刑はありません。 -
(2)迷惑防止条例違反
痴漢行為の内容によっては、迷惑防止条例違反が成立する可能性もあります。迷惑防止条例とは、各都道府県が定めている条例で、社会一般の人々に対して著しく迷惑をかける行為を禁じるものです。
痴漢で迷惑防止条例違反となる条件は各都道府県によって異なりますが、おおむね以下のような内容となっています。
公共の場所や乗物において、正当な理由なく身につけるものの上からまたは直接他者に触れ、著しく羞恥させたり不安にさせたりする行為
迷惑防止条例違反の刑罰に関しては、東京都の場合「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。常習して違反した場合は罰則が重くなり、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定されています。
基本的に、比較的軽微な痴漢行為は迷惑防止条例違反、悪質な痴漢行為は不同意わいせつ罪に該当する可能性が高いといえるでしょう。 -
(3)強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪への改正による影響
令和5年度の刑法改正によって、強制わいせつ罪が「不同意わいせつ罪」に改正されました。
従来の強制わいせつ罪は、「暴行または脅迫を用いてわいせつ行為をした者」に対して6か月以上10年以下の懲役を科す犯罪です。しかし、不同意わいせつ罪に改正されたことによって、暴行や脅迫があったかどうかは必ずしも問題視されなくなりました。
かつては「迷惑防止条例違反」で立件されていた事例も、現在は「不同意わいせつ罪」として立件されるケースが増えてきています。
不同意わいせつ罪で有罪判決が下された場合、重い刑罰である6か月以上10年以下の拘禁刑が科されます。そのため、痴漢行為をした場合には、どのような罪に該当するのかを理解した上で早急に対策を講じることが重要です。
2、不同意わいせつ罪に該当する痴漢の具体例
不同意わいせつ罪が成立する条件にはさまざまな規定がありますが、実際にどのような痴漢行為が該当するのでしょうか?
ここでは、不同意わいせつ罪に該当する可能性のある具体的な痴漢のケースを解説します。
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(1)下着の中に手を入れた・自分の体に触らせた
直接体を触る行為や、無理やり自分の体を触らせる行為は、不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。
たとえば、下着の中に手を入れて直接臀部を触ったり、被害者の手をつかみ自身の陰部に触らせたりする行為などです。
なお、触るだけでなく膣や肛門に指を挿入するような行為をした場合は、より重い「不同意性交等罪」に該当する可能性もあるでしょう。 -
(2)長時間にわたって何度も触り続けた
服の上からであったとしても、長時間にわたって痴漢行為を続けた場合は不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。長時間の痴漢行為は、被害者が抵抗できない状態であることを狙って行われていると想定されるためです。
たとえば、身動きが取れない満員電車で被害者の体に何度も触る、執拗に触り続けるなどの行為が挙げられます。
直接的に体を触る痴漢行為ではなくても、具体的な状況によっては不同意わいせつ罪となるケースもある点は理解しておきましょう。 -
(3)眠っている・酔っている状態を狙って触った
眠っている・酔っている状態にあることを利用したわいせつ行為も、不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。アルコールの摂取や睡眠で意識が明瞭でないことは、刑法で規定されている不同意わいせつ罪の条件に含まれるためです。
具体的な例としては、泥酔して眠っている被害者を狙って胸や臀部を触るケースなどが挙げられます。
このようなケースは、被害者が意思表示や抵抗ができない状態であることを利用した悪質な行為といえるでしょう。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、痴漢事件で逮捕された後の手続きの流れと影響
痴漢事件で逮捕された場合に適切な対処をするためには、逮捕直後からの流れを把握しておくことが重要です。以下では、痴漢事件で逮捕された後の刑事手続きの流れや生活への影響について確認していきましょう。
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(1)逮捕された後の刑事手続きの流れ
痴漢行為の場合、犯行したそのときに逮捕される「現行犯逮捕」と、後日に令状の発行を受けて逮捕される「後日逮捕」があります。現行犯逮捕と後日逮捕のどちらであっても、刑事手続きは以下のように進行するのが一般的です。
- 逮捕から48時間以内に送致(検察官へ引き継ぎ)される
- 送致から24時間以内に勾留(身柄拘束処分)の必要性が判断される
- 勾留が決定すると最大20日間勾留され、期間満了までに起訴・不起訴が判断される
- 起訴されると刑事裁判に移行し、審理の結果判決が下される
逮捕後に勾留されると、逮捕直後から最大で23日間身柄を拘束されることになります。身柄拘束されている期間中はスマートフォンや携帯電話は没収され、家族であっても自由に連絡をとることは認められません。
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(2)逮捕による生活への影響
逮捕は被疑者本人だけでなく、家族や生活にも影響を及ぼします。考えられる主な影響は以下のとおりです。
- 長期間身柄を拘束される
- 事件がニュースで報道される可能性がある
- 会社に解雇される可能性がある
- 有罪判決によって前科がつく可能性がある
勾留が決定すると身柄拘束される期間が延びるため、生活への影響も大きくなります。痴漢事件では早期に弁護士に相談し、対処することが重要です。
4、不同意わいせつ罪や迷惑防止条例で逮捕されたらすべきこと
痴漢行為によって不同意わいせつ罪や迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されたら、迅速かつ適切な対応が必要です。逮捕後にとるべき具体的な行動について、以下で解説していきます。
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(1)すぐに弁護士に相談する
不同意わいせつ罪・迷惑防止条例違反で逮捕された場合にもっとも重要な行動となるのは、弁護士への相談です。刑事手続きにおいては、逮捕後に勾留が決定・請求されるまでの72時間がとくに重視されています。
早めに弁護士に相談することで、取り調べ時の対応などにおけるサポートや弁護活動が可能です。適切な弁護活動によって、勾留や起訴を回避できる可能性が高くなります。
容疑について身に覚えがあるかどうかにかかわらず、逮捕された際には早期に弁護士へ相談しましょう。 -
(2)被害者との示談
逮捕後に重要となるもうひとつの要素は、被害者との示談です。刑事事件における示談とは、加害者が被害者に対して謝罪や示談金の支払いを行い和解することです。
被害者と示談が成立すると当事者間で和解していることの証明となり、起訴を回避できる可能性が高まります。起訴を回避できれば、不起訴となり前科はつきません。
しかし、痴漢事件では被害者側が「加害者とは直接会いたくない」と示談を拒否するケースも少なくないのが現状です。このような場合には、弁護士が間に入ることで取り合ってくれる場合があります。
弁護士に依頼すれば示談の交渉や示談書の作成など一連の手続きを任せられるため、被疑者本人が直接対応する必要はありません。
5、まとめ
痴漢行為は、迷惑防止条例違反ではなく不同意わいせつ罪で逮捕されるケースも少なくありません。不同意わいせつ罪が成立すると、重い刑罰が科される可能性があります。
重い刑罰や処分を避けるためには、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが重要です。適切なサポートによって被害者との示談を成立させられれば、起訴処分や前科がつくことを回避できる可能性も高まるでしょう。
ベリーベスト法律事務所には元検事の弁護士が所属しており、刑事事件の専門チームが連携して問題解決に取り組みます。痴漢事件でお困りの際は、全国対応が可能で解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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