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通行帯違反の罰金が支払えないと逮捕? 交通違反で逮捕される可能性
内閣府が公表している、令和2年度交通安全白書によれば、令和元年中における道路交通法違反(罰則つき違反)の取り締まり件数は571万1488件でした。このうち交通反則通告制度が適用されたのは549万5784件と、全体の96.2%を占めています。
交通反則通告制度とは、反則金を納めることで刑事処分を免除されるという趣旨の制度ですが、反則金を納付しないと反則者はどうなるのでしょうか?
本コラムでは、通行帯違反をしたケースを中心に取り上げ、反則金を納付しない場合の影響や交通違反で逮捕される可能性について解説します。捜査機関からどのような対応を受けるのか、反則金と罰金の違いなどについても確認しましょう。
1、道路交通法で定められている通行帯違反
通行帯違反の概要と、通行帯違反で適用される交通反則通告制度について解説します。
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(1)通行帯違反とは
道路交通法第20条は「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない」と規定しています。
高速道路などでは、片側2車線の場合は左側の車線が、片側3車線の場合は一番左と真ん中の車線が走行車線となり、車両は走行車線を走行するのが原則です。一番右側の車線は前の車両を追い越すために設けられた追越車線なので、追い越しが終われば走行車線に戻らなくてはなりません。
追い越しが終わり、走行車線に戻れるにもかかわらず、追越車線を走行し続ける行為は「通行帯違反」に該当します。
通行帯違反をすると、いわゆる青切符が切られ、交通反則通告制度による反則金の納付を求められます。 -
(2)交通反則通告制度とは
交通違反を犯すと、本来であれば刑事手続きの対象となり、起訴されれば刑事裁判で刑罰を言い渡されることになります。
しかし、社会では日々多くの道路交通法違反事件が発生しており、すべての違反を原則的な刑事手続きで処理しては人員や時間がかかりすぎてしまいます。そこで軽微な違反に関しては刑事手続きを開始させず、反則金の納付で事件を終了させるのが交通反則通告制度です。 -
(3)交通反則通告制度が適用されるケース
交通反則通告制度は、①反則者がした②反則行為に対して適用されます。
① 反則者
反則行為をした者であって、「無免許運転者」「飲酒運転者」「交通事故を起こした者」のいずれにも該当しない者をいいます。
② 反則行為
違反点数6点未満の違反行為のうち、反則金の納付が予定されているものをいいます。通行帯違反以外にも一時停止違反や車間距離不保持など多くの違反が該当します。 -
(4)罰金と反則金の違い
罰金は、刑事裁判で言い渡される刑罰です。これに対して反則金は、交通反則通告制度が適用された場合に反則者が任意で納付する金銭であり、行政上の制裁金です。
罰金の場合は、前科がつきますが、反則金については前科がつくことはありません。
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2、反則金を支払わないとどうなるのか
通行帯違反による反則金の金額は、普通車・二輪車で6000円、大型車で7000円です。
もしこの反則金を支払わないと、どのような事態に発展するのでしょうか。
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(1)告知書で反則金を支払わなかった場合
交通反則告知書(青切符)の納付期限は、警察官から告知書を渡された日の翌日から7日以内です。
告知書の期限までに反則金を支払わなかった場合は、告知書に記載された期日までに警察の交通反則通告センターへの出頭、または送付により交通反則通告書を手に入れる必要があります。通告書に従って納付すれば、その時点で手続きが終了します。
なお、送付により通告書の交付を受けた場合は郵送料が加算されるため、告知書の時点で支払う場合よりも金額がわずかに高くなります。 -
(2)通知書で反則金を支払わなかった場合
交通反則通告書の納付期限は、通告日の翌日から10日以内です。
この時点でも反則金を支払わないと、通常通り刑事手続きへと移行するおそれがあります。
納付をうっかり忘れていただけで支払う意思があるような場合は、まずは交通反則通告センターへ相談してください。事情によっては特例的に納付できる場合があります。
納付の意思がなく刑事手続きに移行した場合、検察官が起訴の判断を下せば刑事裁判が始まり、裁判官が有罪か無罪かを判断し、判決が言い渡されます。
なお、道路交通法違反事件では略式手続きにもとづき、罰金刑を求刑されるケースが多くあります。略式手続きに同意すれば、正式裁判ではなく書類のみで審理される略式裁判となり、罰金の納付をもって刑事手続きが終了します。 -
(3)反則金の支払いが難しい場合はどうすれば良い?
単に仕事の都合などで、納期までに金融機関などへ行く時間がないという人もいるでしょう。反則金は反則者の意思にもとづく限り代理による納付も可能です。家族などに現金を渡して納付してもらってください。
反則金を支払う経済的余裕がない場合は、交通反則通告制度を利用できないため刑事手続きが進められます。起訴されると多くは略式裁判による罰金刑を言い渡されますが、経済的な理由で反則金が支払えない以上、罰金も支払えないはずです。
罰金を支払えない場合は、財産に対して強制執行が行われます。強制執行する財産がないときは、最終的には労役場留置となり、刑事施設内で罰金の額に到達するまで労働しなくてはなりません。
もっとも、罰金を支払えない事情がある場合、徴収主任(検察事務官)に対して事情を説明し認められれば、分割払いや納付期限を延長できる可能性があります(徴収事務規定第16条)。
支払えない事情はもちろんのこと、いつまでにいくらずつであれば支払えるのかも含めて、丁寧に説明する必要があるでしょう。
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3、通行帯違反で逮捕される可能性
通行帯違反によって、逮捕される可能性はあるのでしょうか。
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(1)通行帯違反で直ちに逮捕されるわけではない
逮捕は、刑事訴訟法にもとづく刑事手続きのひとつです。これに対して交通反則通告制度は、刑事手続きに先行して反則金を納付させ、刑事手続きを免除するという趣旨の制度です。したがって交通反則通告制度が適用されている間に逮捕されることはありません。
つまり、通行帯違反のみで、直ちに逮捕される可能性は低いといえるでしょう。 -
(2)通行帯違反で逮捕の可能性があるケース
通常であれば、基本的には逮捕されることのない交通違反でも、住居不定や逃亡・証拠隠滅のおそれがあるなどのケースでは逮捕の可能性が生じます。
たとえば警察官が反則金切符を作成している間に逃げ出すなどすれば逮捕されるおそれがあるでしょう。
実際に令和2年7月には、沖縄において通行帯違反で取り締まりを受けた男性が、容疑を否認したうえで、免許証の提示を拒んだため、証拠隠滅のおそれがあるとして現行犯逮捕されています。 -
(3)故意に反則金を納付しないと逮捕される?
反則金の納付は任意なので、反則金を支払わないことを理由に逮捕されるわけではありません。
ただし、支払いを拒んだことで刑事手続きに移行し、警察からの出頭要請に応じない場合は逮捕される可能性が生じます。平成30年には、東京都内で交通違反をしたにも関わらず反則金を納めず、再三の出頭要請にも応じなかったとして、実に525人が警視庁に逮捕されています。
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4、交通違反に対する捜査機関の対応
交通違反をした場合に捜査機関の取り調べを受ける可能性があるのか、そして、どのように処分が決まるのかを見ていきましょう。
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(1)取り調べを受ける可能性がある
道路交通法は特別刑法に分類されるので、原則として違反すれば犯罪にあたり、警察と検察による取り調べを受ける可能性があります。在宅捜査の場合は、自宅で日常生活を送りながら、取り調べの要請があればその都度応じることになるでしょう。
逮捕された場合は警察の留置場に身柄を拘束され、まずは警察官による取り調べが実施されます。この段階での取り調べは48時間が上限です。その後、事件は検察官へ送致されます。検察官も24時間を上限として取り調べを行い、引き続き身柄を拘束する必要があれば勾留請求が行われ、勾留の必要がないと判断された場合は釈放されます。 -
(2)どのように処分が決まるのか
取り調べの結果、検察官が不起訴処分を下した場合、在宅事件・身柄事件のいずれの場合も事件はそこで終了します。
検察官に起訴された場合は、刑事裁判へと移行します。略式裁判が選択されると罰金の略式命令が言い渡され、罰金を支払うことで事件は終了します。
罰金の金額は裁判官が決定しますが、通行帯違反の場合は最大で5万円です(道路交通法第120条)。
一方、罪を認めない場合は略式裁判によらず、公開の正式裁判によって審理されることになります。
また刑罰とは別に、免許の取り消しや停止など公安委員会による行政処分も決定します。通行帯違反は違反点数1点なので、それだけで取り消し・停止にはなりませんが、累積点数が高い場合やほかの違反行為がある場合は、この限りではありません。
意見聴取や聴聞などの意見を述べる機会が与えられたうえで、最終的な行政処分が決定します。 -
(3)逮捕されるとどのような影響があるのか
前述したように、逮捕段階で最長72時間の身柄拘束を受けることになり、この間は弁護士以外との面会は許可されないため、家族にも心配をかけるでしょう。会社や学校に行くこともできません。
また重大・悪質な交通事件を起こした場合は、最長で20日間の勾留がつく場合もあります。会社・学校を長期間休むことになり、車両を運転する職種の場合などは会社から解雇などの重い処分を受ける可能性も出てくるでしょう。
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5、交通違反で弁護士に相談すべきケース
通行帯違反などの交通違反をしてしまった場合、どのようなケースで弁護士のサポートが必要になるのでしょうか。
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(1)交通違反の判断に納得できないケース
反則金の納付を求められたものの、そもそも交通違反の判断に納得ができない場合は、反則金の納付に応じず、刑事裁判で事実を争うことができます。裁判で無罪判決が下れば、反則金や罰金を支払う必要はありません。
ただし、裁判では交通違反に納得ができないという事実について、根拠のある主張をしなければなりません。そのため、弁護士のサポートは不可欠といえるでしょう。 -
(2)反則金を支払わずに刑事事件に発展してしまったケース
故意に反則金を支払わず、刑事事件に発展してしまったケースも弁護士のサポートが必要です。弁護士は取り調べの対応に関するアドバイスを行う、捜査機関に対して逮捕の必要性がない旨を主張するなど、本人が不利にならないようにサポートします。
逮捕直後の72時間以内はたとえ家族であっても本人と面会できませんが、弁護士だけは唯一制限なく面会できます。本人と家族との橋渡しとなり、会社・学校から不利益を受けないための連絡・交渉なども行えます。 -
(3)罰金の分割や納付期限の延長を希望するケース
罰金の分割や期限の延長は簡単には認められないため、弁護士に対応方法を相談する、徴収主任との交渉を依頼するなどの方法もあります。ただし、通行帯違反の罰金は5万円以下なので、弁護士費用とのバランスは慎重に考えたほうが良いでしょう。
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6、まとめ
高速道路などで追越車線を走行し続けると通行帯違反にあたり、交通反則通告制度の対象となります。普段から気をつけて運転するのはもちろんですが、違反してしまった場合は反則金を速やかに支払うのが賢明な行動でしょう。
もし反則金の納付期限を過ぎてしまい警察から呼び出しを受けているなどの状況でお困りであれば、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が力になります。
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