初回相談60分無料

被害者の方からのご相談は
有料となります

0120-359-186
平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

弁護士コラム

2021年11月30日
  • 交通事故・交通違反
  • 追い付かれた車両の義務違反

追いつかれた車両の義務違反とは? 反則金や罰金についても解説

追いつかれた車両の義務違反とは? 反則金や罰金についても解説
追いつかれた車両の義務違反とは? 反則金や罰金についても解説

「あおり運転」を原因に悲惨な交通事故が発生したことを契機に、悪質なあおり運転の処罰を定めた改正道路交通法が施行されました。一方で、あおり運転を誘発する、いわゆる「あおられ運転」「逆あおり運転」の存在も問題になっています。

わざと遅い速度で走行して後続の運転手をいらだたせる、後続車が追越しをしようとしたら加速して妨害するといった行為は、道路交通法の「他の車両に追いつかれた車両の義務」に違反します。

他の車両に追いつかれた車両の義務に違反した場合の反則金や罰則を解説します。

1、追いつかれた車両の義務とは?

道路を走行していると、自分よりも速い速度で追い上げてきた車両から追越しを受ける場面はめずらしくありません。「追越し」の方法について交通ルールが存在することは多くの方が認識しているはずですが「追いつかれた車両」にも一定の義務が生じるという認識をもっている方は少ないでしょう。運転免許を取得する際の学科の中に含まれていますが、復習としてここで確認しておきます。

  1. (1)「追いつかれた車両の義務」とは?

    道路交通法第27条には「他の車両に追いつかれた車両の義務」が定められています

    車両は、最高速度(政令では一般道路で自動車が時速60キロメートル、原動機付自転車が時速30キロメートル)が高い車両に追いつかれたとき、その追いついた車両が当該車両の追越しを終えるまで速度を増してはなりません。また、最高速度が同じか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりも遅い速度で引き続き進行しようとするときも同様です。

    さらに、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合は、できる限り左側端に寄って進路を譲らなければなりません。また、最高速度が同じか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両よりも遅い速度で引き続き進行しようとするときも同様です。

  2. (2)「追いつかれた車両」とは?

    道路を走行していると、自分よりも速いスピードで後続車が追い上げてくることがあります。このような場面において、後続車よりも遅いスピードで走行している先行車が「追いつかれた車両」です。

    また、「追いつかれた」とは、直前の車両等が急に停止したときにおいても追突することを避けることができるために必要な車間距離まで、後続車が接近した場合をいいます。

  3. (3)なぜ追いつかれた側に義務が発生するのか?

    追いつかれた側に加速をしてはならない義務や進路を譲る義務が生じる理由は、道路交通法第1条に定められた「目的」に通じます。道路交通法第1条は、道路交通法が制定された目的について「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」と明示しています。

    追越しを受けている車両が追越しを妨害してしまう事態を防ぐことは事故防止につながり、速度の遅い車両が進路を譲ることで道路交通の安全確保と円滑化が期待できるのです。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

2、追いつかれた車両に義務が生じる条件

追いつかれた車両に加速してはならない義務や進路を譲る義務が生じるのは、次の条件下にある場合です。

  • 車両通行帯の有無にかかわらず、
    ① 最高速度が高い車両に追いつかれた場合、又は
    ② 最高速度が同じか若しくは低い車両に追いつかれて、その追いついた車両の速度よりも遅い速度で進行しようとする場合に、
    ③ 追いついていた車両が追越しをしようとするとき
  • 車両通行帯がない道路で、
    ① 最高速度が高い車両に追いつかれた場合、又は
    ② 最高速度が同じか若しくは低い車両に追いつかれて、その追いついた車両の速度よりも遅い速度で進行しようとする場合に、
    ③ 道路の中央との間に十分な広さがないため、追いついてきた車両が道路の右側部分にはみ出さずに、追い越し又は追い抜くことができないとき


ここでいう最高速度とは、法定の最高速度であり、現実に先行車と後続車の速度がどのくらいであったかという点は関係ありません。

一般道路において政令で定められている最高速度は自動車で時速60キロメートル、原動機付自転車で時速30キロメートルなので、先行車と後続車がともに最高速度で走行していると仮定した場合に想定できる状況は、先行車が原動機付自転車であり、後続車が自動車だった場合に限られるでしょう。

ただし、最高速度が同じか低い車両の場合も同様の義務が生じるので、先行車が時速40キロメートルの自動車であり、後続車が時速60キロメートルの自動車といった場面では、先行車は「追いつかれた車両」になります。

なお、追いつかれた車両の義務が規定されている目的のひとつに「追越しの際の事故防止」が挙げられているため、たとえ後続車が法定速度を超えて追い越しをかけてきても加速しない方がよいでしょう。

また、路線バス・乗合バス・トロリーバスなどの乗合自動車等は「追いつかれた車両」には含まれないため、前述のような義務は生じません。なぜなら、乗合自動車等は、一定の運行系統により、一定の予定時刻割に従って運行されるものであるため、あえて、このような義務を課する必要はないからです。

しかし、追いついてきた後続車には乗合自動車等が含まれていますので、乗合自動車等に追いつかれた他の車両は、乗合自動車等が追越しを終わるまで加速してはならない義務が生じます。もっとも、追いつかれた車両と追いついてきた後続車がともに乗合自動車等である場合には、道路交通法第27条に基づく義務は生じません。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

3、義務違反の反則金と罰則

追いつかれた車両の義務に違反すると、どのような法的制裁を受けるのでしょうか?

  1. (1)義務違反の反則金

    追いつかれた車両の義務違反に対する反則金は次のとおりです。


    • 大型車……7000円
    • 普通車……6000円
    • 二輪車……6000円
    • 小型特殊車……5000円
    • 原動機付自転車……5000円


    なお、いずれの場合も反則金に加えて違反点数1点が加算されます。

    交通反則通告制度の対象なので、反則金を納付すれば、違反点数が加算されるだけで刑罰を科されることはありません。ただし、過去に行政処分を受けたことがなくても、違反点数が累積して6点に達してしまうと30日間の免許停止を受けます。

    行政処分の経歴が多ければ累積点数による免許停止はさらに厳しくなり、累積点数が2点となった場合、行政処分の前歴が2回のときは90日間の免許停止、行政処分の前歴が3回のときは120日間の免許停止、行政処分の前歴が4回のときは150日間の免許停止となります。もし行政処分の経歴が2回以上で、シートベルトの非着装などで1点でも累積されている場合は、追いつかれた車両の義務違反だけで、行政処分の前歴回数に応じて90日間から150日間までの免許停止を受けることになるので、注意が必要です。

  2. (2)義務違反の罰則

    反則金を納付せず、刑事裁判で争って有罪判決を受けた場合は、道路交通法第120条1項2号の規定に従い、5万円以下の罰金に処せられます。反則金と比較すると高額になるおそれがあるうえに、罰金とはいえ前科がついてしまうため、明らかな違反があった場合は反則金を納付して交通反則通告制度の適用を受けたほうが賢明です。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

4、追いつかれた車両の義務違反となり得る例

無謀なスピード違反や飲酒運転などと比べると、追いつかれた車両の義務違反は軽微な違反だと思う方が多いでしょう。しかし、交通量の多い道路や片側一車線で見通しの悪い山間部の道路などでは、追いつかれた車両の義務を守らない運転手がいるだけでも大渋滞を引き起こしてしまうおそれがあります。

例えば、車両通行帯の無い一般道路で、道路の中央との間に後続車が通行するのに十分な余地がないにもかかわらず、時速5キロメートルから時速10キロメートルほどの法定速度を大幅に下まわる速度でノロノロと走行し続ける場合には、後続車の追越しを妨害せずに進路を譲る義務に違反することになります。

道路交通法第1条の目的には「交通の安全と円滑」が掲げられているため、道路交通の流れを妨げて渋滞を引き起こす行為は、まさしく道路交通法の目的に反する行為といえるでしょう。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

5、追いつかれた車両の義務違反に関連した罪

追いつかれた車両の義務違反に関連した道路交通法違反を確認しておきましょう。

  1. (1)車両通行帯違反

    車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、原則として、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行する義務があります。追越しのために二番目の車両通行帯を走行することは可能ですが、追越しが完了したら左側端の車両通行帯に戻らなければなりません。

    二番目の車両通行帯、つまり「追越し車線」を走行し続けると「車両通行帯違反」です。低速・高速に関係なく、違反点数1点が加算され、5000~7000円の反則金納付を求められます。反則金を納付せず刑事裁判で有罪になった場合の罰則は5万円の罰金です。

  2. (2)最低速度違反

    自動車は、高速自動車国道の本線車道で、対面通行ではない区間では、法定最低速度が時速50キロメートルと定められており、法定最低速度を下まわって走行してはいけません。また、標識・標示によって最低速度が指定されている区間では、指定最低速度を下まわって走行してはいけません。なお、自動車のみを対象としているため、自動車以外の原動機付自転車、軽車両及び路面電車等はこの義務を負いません

    最低速度を下まわるスピードで走行すると、違反点数1点の加算と6000~7000円の反則金納付を求められます。罰則は5万円以下の罰金です。

  3. (3)妨害運転罪

    あおり運転を規制・処罰するために令和2年6月に新設されたもので、妨害目的の通行区分違反・急ブレーキ禁止違反・車間距離不保持といった行為が処罰の対象です。高速自動車国道においては、他の車両の通行を妨害する目的で最低速度違反を犯した場合も「妨害運転罪」となります。

    妨害運転罪のうち、違反行為によって交通の危険を生じさせるおそれのある場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が処せられます。また、違反行為によって著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

    交通反則通告制度の対象外なので、刑事事件として扱われます

  4. (4)危険運転致死傷罪

    妨害運転をしたり、高速自動車国道で妨害目的の低速走行をしたりして交通事故を引き起こして、相手を死傷させた場合は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条の「危険運転致死傷罪」に該当するおそれがあります。

    人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役という、非常に厳しい罰則が設けられています。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

6、もしも自分が追いつかれたら?

道路を走行中に、高速で近づいてきた後続車に追いつかれてしまったら、どのように行動するべきなのでしょうか?道路交通法の規則に照らしながら確認します。

  1. (1)車を左に寄せて道を譲る

    道路交通法第27条2項の規則に従うと、自分よりも最高速度が高い又は最高速度が同じか若しくは低い車両に追いつかれて引き続き相手の車両よりも遅い速度で進行する場合は、できる限り道路の左側端に寄り一時停止又は徐行して進路を譲らなくてはなりません。自分の車両と中央線との間に追越しのための十分な余地があっても、できる限り車両を左に寄せて進路を譲ったほうが安全です。追越し車線を走行中だった場合は、すみやかに走行車線である左車線に車線変更しましょう。

    ただし、左側端に歩行者が通行している場合や道路工事等による障害がある場合など、左側端に車両を寄せることでかえって交通に危険が生じる場合もあります。このような場面では、できるだけすみやかに安全な場所を探して進路を譲りましょう。進路を譲る意思があることを示すには、ウインカーやハザードランプの活用が効果的です。

  2. (2)相手の追越しが終わるまで加速しない

    急速に追い上げてきた後続車が車間距離を詰めてきた、パッシングやクラクションで威嚇してきたといったケースでは、思わず腹を立ててしまい、追越しを妨害したくなるかもしれません。しかし、道路交通法第27条1項の規定に従うと、最高速度が高い後続車に追い越される車両は追越しが終わるまで速度を増してはなりません

    後続車が追越しを開始した場合には、追越しを妨害して並走するかたちになると、対向車との衝突や、対向車を避けようとして接触するといった事故を誘発してしまうため、相手の追越しが終わるまで加速はしないようにしましょう。妨害を受けた相手車両の運転手とトラブルになり、暴行・傷害といった事件に発展する危険もあるので、ゆとりをもった運転を心がけることが大切です。

  3. (3)前の車がゆっくり走っていた場合

    前方を走行している車両が低速度で進路を譲る気配がない場合でも「追いつかれたのだから進路を譲る義務がある」ということだけを考えて行動するのは危険です。追越し禁止や追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の区間では、先行車が低速であっても追い越した方が違反になります。また、追越し可能な道路でも、妨害を受けたり、逆上されてあおり運転を受けたりするかもしれません。

    無理に追い越そうとして事故やトラブルに巻き込まれると、目的地への到着はかえって遅くなります。妨害目的で走行している可能性がありますので、あえて自分が路肩に一時停止する、コンビニなどに立ち寄るなどの方法で距離を取ったほうが賢明です。また、先行車が低速度であるために後続車に追いつかれてしまい、挟まれた状態になった場合も、やはり後続車に進路を譲ったほうが安全でしょう。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

7、追いつかれた車両の義務違反をしないために心がけるべきこと

日常的に車を運転していると、高速度で追い上げてきた後続車に追いつかれてしまう場面はめずらしくありません。自分では安全運転に努めているつもりでも、追いつかれた車両の義務を理解していないと思いがけず違反を犯してしまうおそれがあります

追いつかれた車両の義務違反を犯さないためには、制限速度を守り、前方を注視しているだけでは足りません。周囲の交通の流れを把握し、自らの運転が円滑な交通を阻害していないか、あおり運転を誘発していないかに配慮しながらハンドルを握る心構えが大切です。追いつかれたことに腹を立てて進路を譲らない、並走するなどの危険な運転はせず、思いやりの気持ちをもって譲り合いの運転を心がけましょう。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

8、まとめ

追いつかれた車両には、後続車の追越しが終わるまでは加速をしてはならない義務又は後続車に進路を譲る義務があります。これらの違反だけにとどまらず、追越しを妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法をとったり、著しい交通の危険を生じさせた場合には刑事罰を受けることもあるでしょう。

追いつかれた車両の義務違反により事故を起こして逮捕されてしまった場合は、早期釈放や刑罰の回避に向けて、弁護士のサポートが欠かせません。交通事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にすぐにご相談ください。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ
監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

弁護士コラムトップにもどる

その他の交通事故・交通違反のコラム

事件の種別から探す