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弁護士コラム

2022年03月10日
  • 交通事故・交通違反
  • 交通事故
  • 量刑

交通事故の刑事責任とは? 被害者が死亡してしまった場合の量刑傾向

交通事故の刑事責任とは? 被害者が死亡してしまった場合の量刑傾向
交通事故の刑事責任とは? 被害者が死亡してしまった場合の量刑傾向

警察庁の発表によると、令和2年中に起きた交通事故で亡くなった人の数は全国で2839人でした。減少傾向にあるとはいえ、決して少ないとはいえない数の人が交通事故で尊い生命を落としており、社会的な責任を問う意味でも加害者は重大な刑事責任を問われます。

本コラムでは、交通事故で被害者を死亡させた場合の刑事責任を弁護士が解説します。どのような法律によって処罰されるのか、どのような刑罰が予定されているのかなどを詳しく学んでいきましょう。

1、交通事故の刑事責任

交通事故の加害者は、三つの責任を負います

  • 刑事責任……罪を犯したことで刑罰を科せられること
  • 民事責任……被害者に与えた損害を賠償すること
  • 行政処分……運転免許の停止・取り消しといった処分が課せられること


ここでは、特に交通事故における刑事責任の考え方に注目して解説します。

  1. (1)交通事故における刑事責任の考え方

    交通事故はいつ誰の身に降りかかってくるのかわからないトラブルのひとつです。自ら望んで交通事故を起こす人はいないでしょう。だからこそ、軽微かつ悪質ではない交通事故については、刑事責任を問わないとするのが司法の考え方です。物的な損壊が生じただけの「物損事故」であれば、飲酒運転や無免許運転といった悪質な違反行為がない限り、刑事責任は問われません。

    一方で、人の死傷が生じた、事故を引き起こした原因や背景に悪質な違反行為があったといったケースでは、刑事責任を厳しく追及されることになります。

    人身事故を起こした場合は「罪を犯した」として刑罰が科せられることがあると心得ておきましょう。

  2. (2)交通事故の発生件数・死傷者数の推移

    令和2年における交通事故による死者数は、冒頭で紹介したとおり2839人でした。人身・物損を問わない全交通事故の発生件数は30万9178件で、うち死亡事故は2784件です。重傷者の数は2万7774人で、いずれの項目においても前年より大幅な減少を記録しています。

    大幅な件数減少は喜ばしいことですが、交通事故が原因で尊い生命を落としてしまった方が多数存在することも事実です。悪質な違反や危険行為による死亡事故がメディアで大々的に取り上げられる機会も多く、世論に後押しされるかたちで、法改正や新法設立による厳罰化が繰り返されてきました。そのなかでも特に注目すべきは、平成26年5月に施行された「自動車運転死傷処罰法」です。

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2、自動車運転死傷処罰法とは

「自動車運転死傷処罰法」について、概要や交通事故の加害者が知っておくべき点を解説します。

  1. (1)「自動車運転死傷処罰法」はどのような法律なのか?

    「自動車運転死傷処罰法」とは、正しくは「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」といいます。「自動車運転処罰法」という略称でも呼ばれており、見聞きしたことがある方も多いでしょう。

    この法律では、人身事故を起こした加害者が問われる三つの罪を規定しています

    • 過失運転致死傷罪
    • 危険運転致死傷罪
    • 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪


    人身事故は、不注意やミスによる「過失運転」によるものか、あるいは法律で定められた「危険運転」によるものかに区別されます。過失運転による人身事故には「過失運転致死傷罪」が、危険運転による場合は「危険運転致死傷罪」が適用されるという仕組みです。

    また、アルコールや薬物の影響によって正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で過失運転による人身事故を起こした場合に、アルコール・薬物の影響の有無やその程度の発覚を免れる目的で、次のような行為をはたらくと「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」となります。

    • さらにアルコール・薬物を摂取する
    • その場を離れて身体に保有するアルコール・薬物の濃度を減少させる
    • そのほか、アルコール・薬物の影響の有無や程度の発覚を免れる行為
  2. (2)刑法が適用されていた事故は自動車運転死傷処罰法で罰せられる

    自動車運転死傷処罰法が創設される以前、人身事故を罰していたのは「刑法」でした。単純な不注意やミスといった過失による人身事故には第211条前段の「業務上過失致死傷罪」が、著しく注意を欠いた人身事故では同条後段の「重過失致死傷罪」が適用されていたのです。

    しかし、業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪に規定された罰則は5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金であり、必ずしも重罪が科せられるとはいえません。そこで、まず平成13年に刑法の一部として危険運転致死傷罪が新設されました。

    さらに平成19年の改正を経て、人身事故の加害者をさらに厳しく罰する目的で自動車運転死傷処罰法が新設されることになったのです。

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3、過失運転致傷罪の量刑

不注意やミスが原因で被害者を負傷させると、自動車運転死傷処罰法第5条「過失運転致傷罪」による処罰を受けます。

  1. (1)「過失運転致傷罪」とは

    過失運転致傷罪は、自動車を運転するうえで必要な注意を怠ったことで人を負傷させてしまった場合に適用される犯罪です。被害者を死亡させてしまった場合は「過失運転致死罪」に問われます。

    人身事故に適用される罪としてもっとも多いのが本罪です。令和2年版犯罪白書によると、令和元年中に自動車運転死傷処罰法で検挙された37万2432人のうち、過失運転致傷罪で検挙されたのは36万7845人でした。

  2. (2)過失運転致傷罪の罰則と量刑判断の基準

    過失運転致傷罪の罰則は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪と比較すると懲役・禁錮の上限が2年も引き上げられており、世論をくんだ厳罰化が実現しているといえます。

    ただし、厳罰化されたからといって、不注意・ミスが原因で事故に至ったケースや、被害者にもある程度の過失が存在するケースまで、必ず厳しく罰せられるわけではありません。

    その証拠に、過失運転致傷罪を定める条文には「その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる」と明記されています。つまり、被害者の負傷程度が軽く、悪質な違反や危険な行為がないといった事故であれば、刑罰を科せられない可能性があるのです。

    一般的に、過失運転致傷罪に問われて刑事裁判で言い渡される量刑は、次のような要素が考慮されます。

    • 被害者の負傷程度
    • 事故の原因となった違反の悪質性や危険性
    • 加害者の過失の程度
    • 被害者の過失の有無・程度
    • 事故前後の状況
    • 負傷者への救護の有無
    • 事故・違反の前歴
    など


    被害者が軽傷で済んだ事故では、これらの要素において特に不利なものがない限り、法律が定める最大限の刑罰が科せられる可能性は高くないと考えられます。

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4、危険運転致死傷罪の量刑

人身事故のうち、法律で定められている「危険運転」によるケースでは、自動車運転死傷処罰法第2条・第3条の「危険運転致死傷罪」が適用されます。

  1. (1)「危険運転致死傷罪」とは

    「危険運転」とは、単純に「危ない」と感じられるような運転を指す用語ではありません。対象となる行為は法律で厳密に定められています。

    【第2条】
    • アルコールまたは薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
    • その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
    • その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
    • 人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、そのほか通行中の人・車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る)の前方で停止し、そのほかこれに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
    • 高速自動車国道・自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、そのほかこれに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行させる行為
    • 赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

    【第3条】
    • アルコール・薬物の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、そのアルコール・薬物の影響によって正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合
    • 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その病気の影響によって正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合
  2. (2)危険運転致死傷罪の罰則と量刑判断の基準

    危険運転致死傷罪は、危険運転の態様によって第2条・第3条のいずれかが適用され、被害者が負傷・死亡した場合を区別して、それに応じた罰則を用意しています

    【第2条】
    • 被害者を負傷させた場合……15年以下の懲役
    • 被害者を死亡させた場合……1年以上の有期懲役(最長20年)

    【第3条】
    • 被害者を負傷させた場合……12年以下の懲役
    • 被害者を死亡させた場合……15年以下の懲役


    危険運転致死傷罪が適用される事例はあまり多くありません。
    令和元年中は、第2条による検挙が347人、第3条による検挙が263人で、過失運転致傷罪の検挙人員と比較すると格段に少ないことがわかります。

    捜査機関や裁判所は、「危険運転」の適用に対して慎重な判断を行う傾向があると言えます。単に「危ない」「無謀だ」というだけでなく、客観的な証拠から第2条・第3条に合致する危険運転といえるのかどうかが判断されます。

    例えば「その進行を制御する技能を有しない」とは、単純には無免許運転が考えられますが、過去に運転免許の交付を受けていた、一度も免許交付を受けていないが長年にわたって無免許運転をしていたといったケースでは「運転技能を有する」と判断されることがあるのです。

    危険運転致死傷罪の量刑判断の基準は「結果の重大性」と「運転行為の危険性・悪質性」に照準が当てられます。軽傷よりも重傷、重傷よりも死亡という結果を招くことで、厳しい量刑が言い渡されることになるでしょう。また、危険運転の態様や継続した時間・距離なども量刑判断に影響を与える可能性が高いと言えます。

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5、弁護士による弁護活動

人身事故を起こしてしまい、厳しい処分を回避したいと考えるなら、弁護士のサポートが欠かせません。

  1. (1)不起訴・無罪判決を目指した弁護活動

    人身事故を起こして警察沙汰になったからといって、必ず刑罰を受けるわけではありません。刑事裁判を提起する権限は検察官のみに与えられており、検察官が不起訴とすれば刑事裁判は開かれないので、刑罰を受けることもないのです。

    弁護士に相談し、適切な弁護活動が行われることによって、検察官が「罪を問う必要はない」と判断して不起訴となる可能性が高まります。また、特に危険運転致死傷罪を立証するハードルは高いため、検察官が危険運転致死傷罪ではなく過失運転致死傷罪として起訴することもあります。これらの罪に科されるそれぞれの刑罰には大きな差があることは前述のとおりです。

    したがって、弁護士に弁護活動を依頼することは、処分の軽減といった意味では極めて効果的といえるでしょう。

  2. (2)被害者との示談交渉

    人身事故を穏便に解決できる最善策は被害者との示談交渉です。被害者や遺族に対して真摯(しんし)に謝罪をしたうえで民事的な賠償を尽くすことで、刑罰の回避や軽減が実現できる可能性が高まるでしょう。

    ただし、交通事故の被害者や遺族は、加害者に対して強い怒りの感情を抱えています。加害者個人では示談交渉に応じてもらえないケースも少なくないので、被害者感情に配慮しながら穏便な解決を図るためにも弁護士を代理人とした交渉が最善です

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6、まとめ

交通事故はあくまでも「事故」であり、故意に起こすものではありません。ただし、被害者に死傷という結果を与えてしまった場合は、自動車運転死傷処罰法が適用され、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪として刑罰を受けるおそれがあります。特に「致死」となった場合は厳しい量刑が言い渡される危険が高いため、適切な弁護活動と被害者・遺族との示談交渉が必須です

人身事故を起こしてしまった場合には、交通事故・刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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