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強要罪ってどんな罪? 強要の意味や強要罪の罰則・成立する要件を解説!
強要罪は、脅迫罪や暴行罪、傷害罪などと比べるとなじみのない罪名でしょう。しかし、クレームやパワハラなど日常的な事柄から発展してしまう可能性もある犯罪です。
近年では、カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉を耳にする機会も増えています。令和6年には、大分県で、宅配便が指定日時に届かなかったことに腹を立てた男性が、運送業者に不当な言いがかりをつけ、運送業者の営業所所長に土下座をさせたことで逮捕された事件がありました。この事件では、逮捕された男性が強要罪で懲役10か月・執行猶予3年の有罪判決を受けました。強要罪には罰金刑がなく、重い罰則となっています。
本コラムでは、強要罪とはどのような罪なのか、脅迫罪などとの違い、強要罪が成立するための要件、逮捕された場合の流れや対処方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説いたします。
1、強要の意味とは?
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(1)強要罪とは
強要罪について刑法第223条第1項は「生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した」場合に成立すると規定しています。
また、「親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した」場合にも、同様の罪が適用されます。
罰則は、「3年以下の懲役」で、罰金刑などが設けられていません。脅迫罪の「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」と比較すると重い罪となっています。
未遂についても規定があり、相手が目的の行為をしなかった場合でも罰せられる可能性があります。 -
(2)脅迫罪との違い
脅迫罪について、刑法第222条第1項では「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に成立すると規定しています。
また同条第2項では、「親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合も、脅迫罪が成立することが規定されています。
このように、脅迫の内容や対象が本人だけでなく親族も含まれるという点は強要罪と同じです。
一方で、義務のない行為をさせているか、権利の行使を妨害しているかという点は脅迫罪には含まれません。また、脅迫罪には未遂の規定がありません。 -
(3)恐喝罪との違い
恐喝罪について、刑法249条第1項では「人を恐喝して財物を交付させた」場合に、成立すると規定しています。
脅迫や暴行を用いて要求する点は強要罪と同じですが、金品の提供を目的とする点で違いがあります。また、罰則は「10年以下の懲役」となっており、強要罪よりも重くなっています。恐喝罪にも未遂の規定があります。
2、日常で起こりうる強要行為
実は、強要罪は職場などの日常生活の中でも起こりうる犯罪です。次のような行為は強要罪に問われる可能性があるので注意しましょう。
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土下座での謝罪の要求
飲食店などの店員に対して、接客態度などについてクレームをつけて、土下座での謝罪を要求する場合です。さらに、大声を出して他の客を追い払ったり、店内に入れないようにしたりするなどして営業に支障が出た場合には、業務妨害罪(刑法233条)や威力業務妨害罪(刑法234条)にも問われる可能性があります。
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アルコールハラスメント
飲み会で、部下や後輩に対して「一気飲みをしろ」とあおったり、「俺の注いだ酒が飲めないのか」とどう喝したり、罰ゲームなどで心理的な圧力をかけて飲酒を強要する場合です。
もし、強要された飲酒行為により、急性アルコール中毒で倒れたり死亡したりした場合には、過失傷害罪(刑法209条)または過失傷害致死罪(210条)、飲ませてつぶす意図があった場合には傷害罪(刑法204条)または傷害致死罪(205条)に問われるおそれもあります。 -
パワーハラスメント
パワハラも強要罪に問われる可能性もあります。たとえば、ミスを犯した部下に対して土下座での謝罪を要求したり、「命令に従わなかったら左遷するぞ」などと地位を脅かす言動により、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制したりする場合です。
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セクシャルハラスメント
「付き合わなかったら解雇するぞ」などと脅かして、性的な関係を強いたり、わいせつな行為をしたりする場合です。暴行や脅迫を用いたり、飲酒により相手が酔っている状態であることなどに乗じたりして、相手の同意なく、性交やわいせつ行為をした場合は、不同意性交等罪(刑法第177条)または不同意わいせつ罪(刑法第176条)に問われる可能性もあります。
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退職の強要
上司が部下に対して、「懲戒解雇にするぞ」と脅して、従業員側都合による退職届を提出させるなど、退職を強要する場合です。
3、強要罪となるポイントとは?
何らかの強要をしても、即座に犯罪となるわけではありません。強要罪が成立するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
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(1)生命・身体・名誉・財産に害を与える告知
生命・身体・自由・名誉・財産に害を与えることを、相手に対して口頭や文章、態度により示すことです。インターネットの掲示板などへの書き込みも含まれます。
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(2)脅迫または暴行を用いる
脅迫とは、一般人が畏怖するに足る程度の害悪の告知をいいます。具体的には、次のような場合です。
- 生命に対するもの······「殺すぞ」「突き落とすぞ」などと脅す
- 身体に対するもの······「殴るぞ」「蹴るぞ」などと暴行を加えるそぶりを見せる
- 自由に対するもの······「この部屋から出さない」などと脅す
- 名誉に対するもの······「職場にバラしてやる」などと脅す
- 財産に対するもの······「家に火をつけるぞ」などと脅す
暴行とは、身体に対する不法な有形力の行使をいいます。具体的には、殴る蹴るのほかに、腕や胸倉をつかむ、髪の毛をひっぱる、物を投げるなどの行為も暴行と判断される可能性があります。 -
(3)義務のない行為・権利行使の妨害
強迫または暴行により、意思活動(行動)の自由が現実に侵害したことが必要であり、義務のないことの強制・権利行使の妨害が生じなければ強要罪は既遂になりません。
具体的に、義務のない行為とは、土下座での謝罪や強制された飲酒、いわゆる押し売りなどです。
権利行使の妨害とは、借金の帳消しを求めたり、退職を強要したり、反対に退職届を出している従業員に対して退職を引き留めたりする場合などです。
上司と部下、顧客と店員など、力関係からして拒否できないと思って強要すると、罪の意識のないままに犯罪となってしまうことがあるため注意を要します。
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4、強要罪で逮捕されたらどうなる?
強要罪は、ほとんどの場合、被害者が加害者の脅迫や暴行に対して畏怖し、強要されて義務のない行為をしたと感じた場合に被害届が出されて立件されます。つまり、ご自身は冗談のつもりで言ったことでも、被害者が「脅迫された」と感じて被害届を出せば立件される可能性があるのです。
逮捕された場合、警察の取り調べの後、検察へ送致され、さらに勾留が決定すれば最大23日間も身柄を拘束されてしまうことになります。
強要罪は、執行猶予中の犯罪などよほど不利な条件でなければ、初犯の場合には執行猶予つきの判決となる可能性が十分にあります。しかし、たとえ執行猶予つきの判決となっても前科はついてしまうことになります。
そこで前科のつかない不起訴処分を目指したいところですが、そのためには示談を成立させることが重要です。被害者との示談が成立していれば、検察への送致や勾留請求、起訴・不起訴などの処分を決定する上で有利に働きます。示談の成立は、被害者に対して反省と謝罪の気持ちを示し、被害者も許していると判断されるからです。
しかし、被害者は加害者に対して恐怖心などを抱いていることがあるため、加害者から被害者に対して直接示談を申し入れても、拒否されるケースが多いでしょう。そのような場合、弁護士から働きかけることで示談に応じてもらえる可能性が高まり、スムーズな示談交渉を期待できます。また弁護士が警察・検察と適切に交渉することで早期釈放や不起訴処分の可能性が高まります。強要罪の疑いをかけられたときには、すぐに弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
強要罪とはどのような罪か、事例や成立要件などについて解説いたしました。強要罪は、職場など日常生活のささいな言い争いなどが原因で発生してしまうことがある犯罪です。ご自身は意図していなくても、相手方の捉え方次第では加害者となってしまうおそれがあります。
また、罰金刑のない比較的重い罪ですが、被害者と示談が成立していれば、早期釈放や不起訴処分になる可能性も高くなります。弁護士なら、代理人として示談交渉を進めるとともに、取り調べに対する適切なアドバイスも可能です。
強要罪で逮捕されそうなときや逮捕されたときには、すぐにベリーベスト法律事務所までご連絡ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が早期釈放や不起訴処分、減刑に向けて全力でサポートいたします。
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