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脅迫罪と恐喝罪の違いを解説。行為の内容や刑罰は? 未遂罪はある?
刑事ドラマなどでよく耳にする「脅迫」や「恐喝」という言葉ですが、2つは法律で異なる罪として定められています。
人を脅すような行為をした場合、それが脅迫なのか恐喝なのかによって罰則も大きく異なりますので、注意が必要です。
今回は脅迫罪と恐喝罪について、それぞれの特徴を紹介するとともに、その違いを解説します。どのような行為をすると脅迫や恐喝になるのか、罰則はどの程度なのか、また不起訴処分や減刑ための対処法についても確認しましょう。
1、脅迫罪とは
脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知をして脅す犯罪です(刑法第222条)。
口頭や文書、メールといった手段は問いませんので、ネットで「お前の自宅に火をつけてやる」などと書き込むことも該当します。腕を振り上げるそぶりを見せるなど態度で示すことも、脅迫行為となることがあります。
危害を加える対象者は本人および親族です。たとえば「お前の子どもを誘拐する」と手紙を送るような行為です。一方、恋人や友人は対象外です。
また、実際に被害者が畏怖したかどうかは問題になりません。客観的に見て、危害を加える告知をした時点で犯罪となってしまうのです。
未遂罪はなく、刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。
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2、恐喝罪とは
恐喝罪は、脅迫や暴行によって財産を脅しとり、また財産上の利益を不法に得る犯罪です(刑法第249条)。
「殴られたくなければ金をだせ」と脅す、いわゆる「カツアゲ」や「たかり」が典型例です。運転手を脅してタクシーを無賃乗車するような行為や、人の弱みにつけこんで借金の返済を免除させるような行為も該当します。
恐喝罪は、恐喝行為によって相手が怖がり、相手自身の意思で財物が移転し又は不法の利益を得させ、相手に損害が発生したときに成立します。実際に財物の交付がなされなかった場合は未遂罪となります。また、相手が何ら怖がらなかった場合にも未遂罪となります。
刑罰は「10年以下の懲役」となり、未遂罪も同じ刑罰が適用されます。
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3、脅迫と恐喝の違い
2つの犯罪は一見すると同じように見えますが、いくつもの違いがあります。
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(1)行為の内容
脅迫罪は、害を加える旨の告知をして脅すだけで成立します。比較的容易に成立する点は知っておかなくてはなりません。
対して、恐喝罪は、脅迫行為等が財物の交付に向けて行われる必要があります。つまり、相手方に生じた財産的被害の有無が大きな違いとなります。 -
(2)害悪の対象
脅迫罪で害を加える対象となる人は、本人と親族のみです。
一方、恐喝罪ではこのような制限がありません。
たとえば「金を渡さないとお前の恋人を殺すぞ」と言って怖がらせた場合、恐喝罪が成立する可能性があります。 -
(3)刑罰の軽重
脅迫罪の罰則は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が規定されていますが、恐喝罪は10年以下の懲役です。懲役の上限は、2年と10年という大きな違いがあります。
また、脅迫罪には罰金刑があるため略式起訴で済む可能性がありますが、恐喝罪は起訴された場合、公開の場で刑事裁判にかけられます。 -
(4)未遂罪の有無
脅迫罪は害悪の告知をすれば犯罪となるため未遂罪は予定されていません。
一方、恐喝罪は恐喝行為によって相手が恐怖を感じ、財物が実際に交付されるという段階を経ることになります。したがって恐喝行為に着手した時点で財物の交付がなくとも、未遂罪が成立します。
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4、金銭トラブルでの脅迫は、恐喝とみなされる可能性がある
脅迫罪では相手を脅す行為にとどまり、経済的な被害は生じていませんので、比較的軽い量刑で済むこともあります。
しかし、金銭トラブルにおいて強い言葉を投げかけてしまうと、恐喝罪が認められるケースがあります。特に金銭が絡む事件では注意が必要です。
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(1)借金返済を強く迫るケース
人にお金を貸したのであれば、その返済を要求することはごく当たり前の行動です。しかしその行動が行き過ぎてしまえば恐喝になってしまうおそれがあります。
たとえば「早く返さないと痛い目に遭わせる」などと自宅に押しかけて怒鳴りちらし、返済を強制したようなケースです。 -
(2)示談交渉で強気に出過ぎてしまうケース
たとえば、事故や事件の被害者として相手方と示談交渉を行い、その返済を要求する過程で行き過ぎた行為をしてしまうケースです。不相当に高額の示談金を執拗に請求し、捜査機関への告訴をちらつかせるような行為も、場合によっては恐喝罪になるおそれがあります。
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(3)恐喝で訴えられたときの対処法は?
恐喝罪で逮捕されてしまったら、速やかに対処することが大切です。10年以下の懲役刑しか用意されていない重罪ですので、逮捕されて起訴されると重い刑罰を科される可能性があります。
逮捕されたら、まずは不起訴処分を得ることが重要です。不起訴処分になれば刑罰を受けることも、前科がつくこともありません。
万が一起訴されてしまった場合は、減刑を目指した対応が不可欠です。量刑次第では執行猶予がつきますので、日常生活を送りながら更生を目指すことも可能となります。
いずれの場合も被害者との示談成立が大きな鍵を握りますので、速やかに示談交渉を開始する必要があります。
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5、不起訴・減刑を目指す場合は、早めに弁護士へ相談を
脅迫罪と恐喝罪のどちらの場合でも、逮捕されてしまったらまずは弁護士に相談されることをおすすめいたします。次では、ご自身やご家族にとって有効な弁護活動を説明いたします。
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(1)示談交渉をスムーズに進める
被害者は加害者に対して、当然恐怖心を抱いています。そのため、連絡先を教えてもらえず交渉が難航するケースは少なくありません。また連絡先を知っていたとしても、安易に接触を試みれば余計に怖がらせてしまう可能性があります。
弁護士であれば、捜査機関を通して条件付きで被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。連絡先を教えてもらうことができれば、まずはそこから交渉を進めることができますので、弁護士を通しての和解が期待できます。 -
(2)事実関係を明らかにする
起訴されて刑事裁判へ進むと、最終的に裁判官が有罪か無罪かを判断します。裁判官は量刑判断の場面において、犯行の動機や事件の内容など、あらゆる事情を総合的に判断し、慎重に決定します。つまり、事実関係を詳細まで明らかにすることで、量刑が考慮される可能性があるのです。
たとえば、加害者本人に恐喝する意図はなかったにもかかわらず恐喝罪に問われているケースでは、弁護士が逮捕された本人やご家族に代わって事実関係を明らかにして、くむべき事情があることを主張します。 -
(3)取り調べに対するアドバイスをする
捜査機関から厳しい取り調べを受けると、むやみに反抗的な姿勢を示したり、うそをついたりして、その後の刑事手続きにおいて被疑者が不利な状況に置かれてしまうことも少なくありません。あるいは、精神的な疲労から、やってもいない罪を供述して自白調書をとられてしまうおそれもあるでしょう。
弁護士へ依頼することで、取り調べの際の適切な対応や注意点を弁護士がアドバイスすることが可能です。
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6、まとめ
今回は脅迫罪と恐喝罪の違いを中心に解説しました。つい、吐いてしまった暴言が脅迫罪となってしまう場合があり、さらに行き過ぎた行為をすれば恐喝罪に問われてしまう場合もあります。いずれも重い罰を受けることがあるため、適切な対応が求められます。
脅迫・恐喝の罪で逮捕されてしまった、前科をつけたくないといった場合は、速やかに弁護士へご相談ください。不起訴および減刑となるための活動は弁護士にしかできませんし、活動の開始時期は早いほど有利にはたらきます。
ベリーベスト法律事務所では刑事事件のご相談をお受けしています。加害者弁護の実績豊富な弁護士がお話を伺い、最善の結果となるようサポートいたしますので、ぜひ一度ご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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