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恐喝は不起訴処分になる? 加害者の家族としてできることは?
令和元年10月、モデルとして活動していた女性芸能人が恐喝容疑で書類送検されたニュースが流れました。夫が起こした恐喝事件において本人もその場に同席しており、夫との共謀があったのではないかとの容疑をかけられての送検でしたが、その後に不起訴処分が下されています。
恐喝罪はれっきとした犯罪行為であり、厳しい刑罰も規定されています。ただし、必ずしも有罪となり刑罰に処されるというわけではありません。
このコラムでは、恐喝事件で不起訴処分が下される可能性や、本人が逮捕されてしまった場合に残された家族が取るべき行動について弁護士が解説します。
1、恐喝罪とは? 恐喝行為となる例とあわせて解説
まずは「恐喝罪」がどのような犯罪なのかを確認しておきましょう。
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(1)恐喝罪とは
恐喝罪は、刑法第249条に規定されている犯罪です。条文には「人を恐喝して財物を交付させた者」が恐喝罪に問われると明記されています。
いわゆる「カツアゲ」と呼ばれる行為や、古くから存在する「美人局(つつもたせ)」などのほか、近年では盗撮犯を恐喝のターゲットにする「盗撮ハンター」と呼ばれる行為は、すべて恐喝罪の態様のひとつです。 -
(2)恐喝罪の成立要件と刑罰
恐喝罪が成立するのは、次の4点を満たす場合です。
- 暴行・脅迫を用いた
- 被害者が「畏怖」を感じた
- 被害者が畏怖を感じたことで金銭などの財物を交付した
- 金銭などの財物が加害者・第三者の手に渡った
「暴行・脅迫」とは、殴る・蹴るといった具体的な暴力のほか、「金を出さないと痛い目にあうぞ」などと脅す行為が該当します。
「畏怖」とはつまり「恐怖」を指します。被害者が金銭などの財物を差し出した理由は「恐怖」の感情に基づくものでなければなりません。
そして、これらの要件を満たしたうえで、金銭などの財物が加害者や第三者の手に渡ったとき、恐喝罪が成立します。もしこれらの要件のうちひとつでも欠ければ、恐喝罪は成立しません。
恐喝罪が成立した場合は「10年以下の懲役」が科せられます。懲役刑のみが規定されており、罰金刑は設けられていません。つまり、有罪判決であれば、間違いなく懲役刑が下されることになり、執行猶予が得られなければ刑務所に収監されるほかありません。この点に注目すれば、恐喝罪は非常に刑罰が重い犯罪だといえるでしょう。 -
(3)未遂に終わった場合の刑罰
被害者が恐怖におびえながらも金銭を差し出さなかった、金銭を差し出す前に警察に届け出たなど、恐喝罪が成立せず未遂に終わった場合でも、刑法第250条の規定によって罰せられます。
未遂だからといって刑罰が科せられないわけではありません。刑罰は既遂と同じ「10年以下の懲役」の範囲で決定します。
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2、恐喝罪で不起訴処分は望めるのか
冒頭で挙げた事例のように、恐喝罪の加害者として書類送検されても不起訴処分が下されるケースがあります。不起訴処分を受けた場合は、刑事裁判にかけられることもなければ、刑罰が下されることもありません。
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(1)不起訴処分とは
刑事事件の容疑をかけられると、警察の捜査を終えたのちに検察官へと引き継がれます。この手続きを「送致」といい、マスコミなどでは「送検」、身柄なしで書類のみが送致されることを「書類送検」と呼んでいます。
送致を受けた検察官は、被疑者を刑事裁判にかけて罪を問うべきか否かを判断し、罪を問うべきと判断されれば「起訴」されますが、罪に問う必要がないと判断されれば「不起訴処分」が下されます。
不起訴処分となれば、刑事裁判にかけられることはありません。刑事裁判にかけられないため、刑罰が下されることもありません。 -
(2)不起訴処分 4つの種類
不起訴処分には、4つの種類があります。
- 犯罪不成立 詳しく調べた結果、犯罪が成立していないというケースです。構成要件(犯罪が成立するための原則的な要件)を欠いた場合や、正当防衛・緊急避難が認められる場合などが該当します。
- 嫌疑なし 真犯人が判明するなど、疑いが完全に晴れた場合にとられる処分です。
- 嫌疑不十分 検察官が起訴するにあたって、犯罪を立証するだけの十分な証拠が見当たらない場合にとられる処分です。
- 起訴猶予 罪を犯したことは間違いなく、起訴するにも十分な証拠がそろっていても、さまざまな状況を総合的に判断して起訴を見送る処分です。
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(3)「不起訴処分=無罪」ではない
不起訴処分のうち、犯罪不成立や嫌疑なし以外は、犯罪の容疑が完全に晴れたとはいえません。釈放されても「無罪放免」というわけではないことを心得ておくべきでしょう。
また、たとえ不起訴処分が下されて前科がつかなかったとしても、警察には事件の被疑者としての「犯罪経歴」が記録されます。
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3、初犯の場合に想定される処分は? 実刑判決の可能性も
これまでに刑罰を受けたことがない「初犯」の場合では、どのような処分となる可能性があるのでしょうか?
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(1)不起訴処分の可能性
初犯の場合は、検察官が「刑罰を下さなくても更生が期待できる」と判断する可能性があります。逮捕されてしまっても、不起訴処分となれば刑罰を受けることはありません。
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(2)初犯でも実刑判決を受ける可能性がある
初犯であっても、検察官が起訴に踏み切り、刑事裁判で実刑判決を受けてしまうおそれもあります。「初犯であれば起訴されない」と考えて対応を軽んじるのは賢明ではありません。
恐喝事件の起訴・不起訴や量刑の判断は、これまでの前科前歴のほか、事件の態様、悪質性、被害金額、被害者の処罰感情などをもとに、総合的に判断されます。
初犯であっても特に悪質な場合や被害額が多額におよぶ場合は、検察官に起訴され、刑事裁判で実刑判決が下されてしまうこともあります。
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4、家族が恐喝罪で逮捕されたときにできる対応
家族が恐喝事件の被疑者として逮捕されてしまった場合に、残された家族としてはどのような対応を取るべきなのでしょうか?
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(1)警察からの連絡に慌てない
被疑者を逮捕した警察は、本人の家族などに「逮捕した」という一報を入れます。連絡ひとつなく帰宅もしないで姿を消してしまうので、行方不明など無用な心配をかけないための措置ですが、そのほかにも本人との面会や差し入れができることを伝えるためでもあります。
突然の警察からの連絡であり、しかも「家族を逮捕した」という内容なので動揺してしまうのは仕方ありませんが、決して慌ててはいけません。まずは冷静に連絡事項を聞き、可能な範囲でどのような容疑で逮捕されたのかを尋ねましょう。 -
(2)すぐに弁護士に相談する
家族が逮捕されたことが判明したら、すぐに弁護士に相談しましょう。
逮捕直後の72時間はたとえ家族であっても本人との面会は認められませんが、弁護士であれば接見が可能です。弁護士による接見がかなえば、本人に対して取り調べのアドバイスを伝え、家族も詳しい状況を知ることができるでしょう。
また、弁護士が代理人となって被害者との示談交渉を進めることも可能です。被害者との示談が成立すれば、初犯であれば不起訴処分となる可能性も高まるでしょう。
状況を冷静に整理し、適切なアドバイスを受けるためにも、直ちに刑事事件の解決実績が多い弁護士へ相談しましょう。
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5、まとめ
これまでに前科のない初犯であれば、恐喝事件を起こしても不起訴処分が得られる可能性は高いでしょう。ただし、初犯であるからといって、間違いなく不起訴処分となるわけでもありません。恐喝事件を起こして不起訴処分を得るには、被害者との示談交渉を含めた適切な弁護活動が重要です。
家族が恐喝事件の被疑者として逮捕された場合には、素早くアクションを起こさなければなりません。すぐにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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