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弁護士コラム

2022年05月31日
  • 暴力事件
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正当防衛はどこからどこまで? 過剰防衛になるケースとの境界線

正当防衛はどこからどこまで? 過剰防衛になるケースとの境界線
正当防衛はどこからどこまで? 過剰防衛になるケースとの境界線

故意の行為によって他人にケガをさせたり死亡させたりしたケースでは、通常は傷害罪や傷害致死罪などの犯罪が成立して刑罰を受けることになります。ただし状況によっては正当防衛の成否が問題になり得るでしょう。

正当防衛とは、相手の違法な攻撃から自分や他人を守るためにとっさにした反撃のことをいいます。しかし、どこまでの反撃が正当防衛として認められ、どこからが認められないのかを正しく把握できている方は少ないでしょう。

本コラムでは正当防衛が認められる条件と過剰防衛との境界線、誤想防衛や緊急避難との違いなどについて、弁護士が解説します。

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1、正当防衛とは? 認められれば罪にならない

刑法第36条第1項は、急迫不正の侵害に対して、自分や他人の権利を防衛するためにやむを得ずにした行為は罰しないと定めています。この規定を正当防衛といいます。

ある行為を処罰するためには、その行為が構成要件に該当する違法で有責な行為であることが必要です。構成要件とは違法な行為を類型化して条文に定めたもので、構成要件に該当する行為は違法性が認められることが原則ですが、例外的に違法性が否定される場合があります。この例外事由を「違法性阻却事由」といい、正当防衛は違法性阻却事由の代表的なケースです。

正当防衛が認められれば、たとえ本来は犯罪にあたるような行為でも刑罰を受けることはありません。人に暴行を加えても暴行罪や傷害罪に問われることがなく、人を死亡させてしまっても傷害致死罪や殺人罪に問われることがないのです。

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2、正当防衛が認められるために必要な条件とは

正当防衛が認められるためには、必要な要件があります。どのような要件が必要となるのか、また、認められたらどうなるのかについて解説します。

  1. (1)急迫性がある

    法益の侵害が今まさに存在しているか又は間近に迫っている状況を指します。具体的には、相手が「殺す」と叫びながらナイフを持って襲いかかってくるような状況が考えられるでしょう。過去に受けたいじめに対する報復や、殺人予告があったなど将来の危険があるために先んじてした攻撃は急迫性が認められません。

    なお判例は、あらかじめ予見できた行為であっても、ただちに急迫性を失うとはいえないとの見解を示しています(最高裁判所 昭和46年11月16日 昭和45(あ)2563)。

  2. (2)相手の行為が違法な侵害行為にあたる

    相手方の「不正の侵害」に対する防御であることが必要です。不正の侵害とは、法的に保護すべき権利または利益に対する侵害行為のことをいい、暴行や傷害、強制わいせつ、窃盗など幅広い行為が対象となります。

    法的に保護すべき権利または利益とは人の生命、身体、財産のことです。ここでいう侵害は人の行為によるものに限られるため、物や動物などによる法益侵害に対して正当防衛は成立しません。この場合は後で説明する緊急避難の問題となります。

  3. (3)防衛する意思がある

    防衛する意思とは、相手の侵害行為を排除して、自分や他人の権利を守ろうとする意思のことです

    たとえば、相手が自分を殺そうと企てているのを知り、殺される前に自分から殺してやろうとして実際に殺害した場合は、防衛する意思ではなく積極的な殺意にもとづく行為だと判断されるでしょう。また日頃から恨みを抱いていた相手が攻撃を仕掛けてきたため、その機会に乗じて危害を加えるのも、攻撃しようという意思をもって行われた行為とみなされるため、防衛の意思は認められません。

    ただし、怒りの感情や攻撃の意思が共存していても、それをもって防衛の意思が否定されるわけではありません。

  4. (4)防衛の必要性がある

    その防衛行為が、急迫不正の侵害から自分や他人を守る方法としてやむを得ずにした行為であることをいいます。すなわち、当該行為のほかに取るべき行為がなかった、当該行為が急迫不正の侵害から守る唯一の方法だったといった、という状況が必要です

    逃げようと思えば逃げられた場合や、警察に通報するなど周囲に助けを求める余裕があったのにその方法を採らずあえて反撃に出た場合などは、防衛の必要性が認められません。

  5. (5)防衛行為の相当性がある

    客観的に見て、反撃行為が必要最小限度の行為であったといえることを指します。武器対等の原則ともいいます。したがって、相手の行為に対する行き過ぎた行為は正当防衛とは認められません。

    たとえば相手の攻撃を止めるために身体をロープで縛りつける行為までは正当防衛と認められ得ます。しかし、縛りつけた後に殴る蹴るなどの暴行を加えた場合は、相手がもはや攻撃できない状態になっていることから、必要最小限度の行為とは認められないでしょう。

  6. (6)正当防衛が認められたらどうなるのか

    形式上は犯罪に該当する行為でも、検察官が起訴・不起訴を判断する段階で、正当防衛の主張を覆すのが難しいと判断すれば、不起訴になって刑事裁判が開かれない可能性があります。つまり、違法性が阻却され罪に問われないこととなり、罪に問われないため、前科がつくこともありません。

    ただし正当防衛は上記の厳しい条件をクリアした場合にのみ認められるものです。したがって、検察段階で明確に判断できるケースはまれといえます。通常は刑事裁判で争うことになるでしょう。

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3、正当防衛が認められない場合はどうなるのか

正当防衛の条件をひとつでも満たさなかった場合は、正当防衛が成立せずに処罰の対象となります。

  1. (1)通常の犯罪として処罰される

    前述の「急迫性」「不正の侵害」「防衛する意思」のどれかひとつでも満たさない場合は、正当防衛が成立しません。

    つまり、その行為は犯罪として通常通り処罰されます。人に傷害を加えれば傷害罪に、傷害によって死亡させてしまえば傷害致死罪に、殺意があり人を殺害すれば殺人罪に問われることになるでしょう。

    罰則は傷害罪が「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」、傷害致死罪が「3年以上の有期懲役」、殺人罪が「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。

  2. (2)過剰防衛になる

    急迫不正の侵害があり、防衛の意思にもとづいて行った反撃行為であったとしても、防衛の必要性・防衛行為の相当性を満たさない場合には、いわゆる「過剰防衛」として処罰の対象となります。

    過剰防衛は、刑法第36条の第2項に定められています。

    【過剰防衛】
    防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、または免除することができる。


    過剰防衛には「質的過剰」と「量的過剰」があります。質的過剰にあたるのは、素手で攻撃を加えてきた相手に対して凶器で対抗したケースや、相手が自分の財産に向けて攻撃してきたのに身体に向かって反撃してケガをさせたケースなどです。

    量的過剰は、急迫不正の侵害が終わったのに防衛行為を止めなかった場合を指します。すでに攻撃を止めてこちらに背を向けている相手に殴りかかるケースが典型です。

    過剰防衛は犯罪が成立しますが、裁判官の裁量で刑が減軽され、または免除される可能性が出てきます。これは、急迫不正の侵害があったために防衛行為に及んだ状況を考えれば、強い行動に出るのも仕方がない面があるからです。

  3. (3)正当防衛かどうか不明確な場合は刑事手続きが進む

    正当防衛が争われるような事件では人の負傷や死亡などの重大な結果が生じているケースが多い傾向があります。そのため、事件直後から正当防衛だと判断されて解決する可能性はほとんどないでしょう

    正当防衛が認められなかった場合には重い刑罰が予想されること、捜査に時間がかかることなどから、逮捕、勾留されるおそれが高いと考えられます。起訴され刑事裁判にかけられることも覚悟しておくべきです。

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4、正当防衛と誤想防衛、緊急避難の違いは?

正当防衛と混同しやすいケースとして「誤想防衛」と「緊急避難」があります。

  1. (1)誤想防衛との違いは?

    誤想防衛とは、実際には正当防衛の要件に該当する事実がないのに、その事実があると信じて行った防衛行為をいいます

    たとえば女性が夜道をひとりで歩いていたところ、たまたま近くを歩いている男性が自分を付け狙っていると勘違いし、男性がポケットからスマートフォンを出したのを見て凶器を出したと思い込み、自分の荷物を男性にぶつけてケガをさせたようなケースです。

    誤想防衛は違法ですが、急迫不正の事実がないのにあったと誤信したことから、通常は故意がなかったと判断されます。刑法第38条第1項には「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」とあるので処罰されません。

    ただし過失犯の規定がある犯罪の場合は過失の有無が問題になり、過失があったと認められると過失犯として処罰されます。故意も過失もないことが認められれば処罰されることはありません。

  2. (2)緊急避難との違いは?

    現在の危難を避けるためやむを得ずした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に、処罰されません。これを緊急避難といいます(刑法第37条第1項)。

    緊急避難は、本来であれば違法な行為として処罰されるところ、特別な場合に限って処罰されないという点で正当防衛と共通しています。

    しかし、正当防衛は違法な行為をする者に対する行為です。他方、緊急避難は、違法な行為が発生しているかどうかにかかわらず、差し迫った危難を避けるために無関係の第三者の権利を侵害するという点で違いがあります。

    たとえば、電車内でナイフを振り回して乗客に無差別の攻撃を加える犯人がいたので、近くにいた方を押しのけて逃げたところ、押しのけた方が転倒してケガをしてしまった場合、緊急避難が成立する可能性が出てきます。

    また正当防衛は人の行為に対する行為が対象ですが、緊急避難は物や動物による法益侵害に対する行為でも成立します。たとえば津波が迫っていたため、たまたま近くに置いてあった自転車を使って逃げたようなケースです。本来であれば他人の自転車を勝手に使うと窃盗罪が成立しますが、津波によって自身の生命に危難が迫っているため、緊急避難が認められて処罰を受けません。

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5、正当防衛かどうか判断が難しいケース

正当防衛の成否については事件の当事者が容易に判断できるものではありません。裁判所でさえも判断が分かれるケースが存在します。

  1. (1)相手を死亡させてしまったケース

    相手方の加害行為が手拳で殴打する程度だったのに対して、被告人がくり小刀を用い、さらに相手の左胸部を突き刺した行為が、「防衛行為として必要な程度を越えた」と判断されて、正当防衛は認めず過剰防衛としたケースがあります(最高裁判所 昭和46年11月16日 昭和45(あ)2563)。

    一方、素手で襲いかかってきた相手に対し、薪で頭部を殴打して死亡させた行為が「防衛行為としてやむを得ない」として正当防衛を認めたケースもあります(最高裁判所 昭和26年3月9日 昭和25(れ)1856)。

    このケースでは、相手が薪を持って襲いかかってきたので薪を奪ったところ、相手がなお素手で襲いかかってきたこと、相手が強暴だとうわさのある人物でどう猛な人相をしており、被告人のような者が2人がかりでかかっても素手では到底かなわないと思われるような男であったことも考慮されました。

  2. (2)ケンカを発端としたケース

    ケンカは基本的には正当防衛が認められません。

    判例も、いわゆるケンカとは攻撃や防御が繰り返される連続的行為を指すので、ある瞬間は一方がもっぱら防御のみに終始することはあっても、別の瞬間には逆の立場になっているのであって、正当防衛を適用するべき余地がない場合があるとしています(最高裁判所 昭和23年7月7日 昭和23(れ)73)。そのため、ケンカの最中に相手を殴ってケガをさせれば傷害罪が、死亡させてしまえば傷害致死罪が成立します。

    ただし、素手でしていたケンカの中で相手が突然ナイフを持ちだしてきたので反撃したケース、こちらは殴るのを止めたのに相手がなおも攻撃を続けるので反撃したケースなどでは、正当防衛が成立する可能性が出てくるでしょう。

  3. (3)もともとの原因が自分にあるケース

    相手方がした攻撃について、もともとの原因が自分にあると正当防衛が認められない場合があります。このようなケースを「自招侵害」といいます。

    被害者と口論になった被告人は、被害者の頰を突然殴打して走り去ったところ、被害者が自転車で追いかけてきて水平に伸ばした右腕で被告人を殴打したため、護身用の警棒で数回殴打する暴行を加えて被害者に傷害を負わせました(最高裁判所 平成20年5月20日 平成18(あ)2618)。

    このケースで被告人は警棒で殴打した暴行について正当防衛を主張しました。しかし、裁判所は、被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから、被害者の攻撃が被告人による最初の暴行の程度を大きく超えるものではないという事情のもとでは、被告人が警棒で殴打した暴行は正当とはいえないとして、正当防衛の成立を否定しました。

    もっとも、このような状況でも、被害者の攻撃が被告人による最初の暴行の程度を大きく超えていた場合には、正当防衛が成立する余地があります。

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6、正当防衛の主張をする際は弁護士に相談を

一般的な認識からすると、相手が先にしてきた攻撃に対する反撃は、すべて正当防衛が認められるように感じるかもしれません。しかし本来なら違法な行為を処罰しないという概念なので極めて厳格な条件を満たす必要があり、そう簡単に認められるものではありません

その成否は裁判所でも判断が分かれるなど、難解で複雑な検討を要する問題なので、一般の方が安易に判断することはできないでしょう。そのため、まずは弁護士に相談するのが最善です。弁護士に相談すると、そもそも自分の行為や状況が正当防衛にあたるのか、これからどのような対応が必要なのかといったアドバイスを受けられます。

また正当防衛が認められないとしても、急迫不正の侵害があったとして過剰防衛を主張して刑の減軽や免除を求める方法もあります。こうしたアドバイスや判断は法的知識がある弁護士にしかできないので、早急に弁護士に相談してサポートを求めることをおすすめします

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7、まとめ

どこからが正当防衛として認められるのかは個別の事件によって判断が分かれるため一律に定義することはできません。自分では正当防衛だと思っても、厳格な要件を満たす必要があること、状況によっては過剰防衛や自招侵害にあたる場合もあることなどを知っておく必要があります。

自分や家族のした行為が正当防衛にあたると考えているのでその旨を主張したい、不起訴処分や刑の減軽を求めたい方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の知見が豊富な弁護士が力を尽くします。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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