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暴行罪は現行犯以外でも逮捕の可能性あり! 逮捕を回避する方法を解説
令和5年版の犯罪白書によると、令和4年中の暴行罪の認知件数は2万7849件、検挙件数は2万3313件で、検挙率は83.7%となっています。この統計からも暴行罪を犯した場合には、高い割合で検挙されていることがわかります。
他人に殴る・蹴るなどの暴行を振るいその場から逃げたとしても、警察の捜査により被疑者として特定されてしまうと、現行犯以外でも逮捕される可能性があります。暴行事件を起こして、後日、逮捕されてしまうことを避けるには早期に被害者と示談をするなどの適切な対応が求められます。
今回は、暴行罪により現行犯以外で逮捕される流れと逮捕を回避する方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 現行犯逮捕と現行犯以外の逮捕の違い
- 暴行事件を起こしたら、現行犯以外でも逮捕されるのか?
- 逮捕されそうな場合に、弁護士がサポートできること
1、暴行罪による逮捕|現行犯逮捕と現行犯以外の逮捕との違い
まずは、暴行罪の概要と逮捕の種類について説明します。
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(1)暴行罪とは
暴行罪とは、人の身体に対する不法な有形力を行使した場合に成立する犯罪です(刑法208条)。暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
暴行罪の代表的な行為としては、他人を殴ったり、蹴ったりする行為が挙げられますが、以下のような行為も暴行罪に該当します。
- 衣服や胸倉をつかむ
- 威嚇目的で刃物を振り回す
- 相手に唾を吐く
- 耳元で大声をあげる
なお、暴行行為によって相手が怪我をした場合、暴行罪ではなく傷害罪が成立します。
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(2)現行犯逮捕と現行犯以外の逮捕との違い
暴行罪による逮捕には、「現行犯逮捕」と現行犯以外の「後日逮捕」の2つがあります。
現行犯逮捕とは、現に犯罪を行っている状況または犯罪を行った直後に、逮捕状なしで被疑者を逮捕することいいます。たとえば、暴行現場を目撃した人の通報により駆けつけた警察官が逮捕するケースなどが現行犯逮捕の典型的なケースです。
後日逮捕とは、事件発生後、警察などの捜査によって被疑者が特定され、逮捕状に基づき逮捕することをいいます。犯行直後ではなく、後日、警察により逮捕されるため「後日逮捕」と呼ばれています。
現行犯逮捕と後日逮捕は、いずれも被疑者の身柄を拘束するという点では共通しますが、逮捕のタイミングや逮捕状の有無という点で違いがあります。
2、暴行罪は現行犯以外でも逮捕される! 後日逮捕の流れ
暴行罪は現行犯以外でも逮捕される可能性があります。以下では、後日逮捕の流れを説明します。
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(1)被害者や目撃者が警察に通報
暴行現場から被疑者が逃走した場合、被害者が警察に通報し、警察が暴行現場に駆けつける、または暴行現場を目撃していた通行人や近くにいた人などからの通報で警察が来ることもあります。
暴行現場に駆けつけてきた警察官は、現場の状況を確認し、現場周辺で職務質問を行うなどして被疑者の確保を目指すことになります。 -
(2)被害者が警察に被害届を提出
被害者は、犯人の処罰を希望する場合、警察に被害届の提出を行います。被害届を提出するタイミングは、事件の当日または後日のケースもあります。被害届の提出により必ず被疑者が逮捕されるわけではありませんが、事件捜査のきっかけのひとつとなります。
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(3)警察の捜査により被疑者を特定
警察は、被害者や暴行現場の目撃者などからの事情聴取や周囲の防犯カメラ映像の精査などにより、被疑者の特定に向けた捜査を開始します。
事件当日は何とか逃げ切れたとしても、防犯カメラの映像に被疑者の姿が映されていた場合には、警察の捜査により特定され、後日逮捕につながります。 -
(4)逮捕状に基づき被疑者を逮捕
警察の捜査により被疑者が特定されると、警察は、裁判所に逮捕状の請求を行います。裁判所は、逮捕の要件が備わっていると判断すると逮捕状を発付します。逮捕状が発付されたら警察が被疑者の自宅を訪れるなど、逮捕状を提示して被疑者の逮捕を行います。
逮捕後は、警察の留置施設で身柄を拘束され、警察官による取り調べを受けることになります。
暴行罪の公訴時効は3年ですので、暴行事件を起こしてから3年間は逮捕される可能性がある状態となります。現行犯以外において逮捕されるタイミングは、警察の捜査状況により異なりますが、事件から数週間後に警察から連絡がくることもあれば、2~3か月後のこともあります。
時効になるまでの間は、安心して生活ができず、「いつか逮捕されるかもしれない」という不安な毎日を過ごさなければなりません。暴行罪の検挙率は、83.7%と非常に高いため、そのまま逃げ切るのは難しいといえます。そのため、暴行事件を起こしてしまった場合には、次章で述べる対処法を早めに検討することが大切です。
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3、暴行罪の現行犯以外の逮捕を回避するための対処法
暴行罪で、後日逮捕を回避するためには、以下のような対処法が有効です。
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(1)被害者と示談をする
後日逮捕を回避したい場合には、早期に被害者と示談をすることが重要です。
被害者が警察に被害届を提出する前に示談を成立させることができれば、警察に事件を知られることはありませんので、逮捕される可能性はほとんどないでしょう。また、被害者が被害届を提出した後であっても、早期に示談を成立させることができれば、被害届の取り下げにより、逮捕されるリスクを減らすことができます。
ただし、被疑者と被害者が面識のない者同士だった場合には、被害者の連絡先がわからず、示談をしたくても連絡ができません。このような場合には、被疑者だけでは示談を行うことが難しいため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)捜査機関に自首をする
捜査機関に自首をすることも逮捕を回避するための方法のひとつです。
自首とは、捜査機関に犯罪事実が発覚する前に、自ら犯罪事実を申告することをいいます。「犯罪事実が発覚する前」とは、犯罪事実がまったく発覚していない場合だけでなく、犯罪事実は発覚しているものの、犯人が誰であるかが判明していない場合も含まれます。そのため、被害者により被害届が提出された後であっても、被疑者が特定されていない段階であれば自首をすることが可能です。
警察が被疑者を逮捕するためには、罪を犯したことが明らかであるということ以外に、逃亡のおそれがあること、または証拠隠滅のおそれがあることという要件が必要になります。被疑者が自首をすることで、捜査機関に対して、逃亡する意思がないことや証拠隠滅の意思がないことを示すことができますので、逮捕のリスクを減らすことができます。
ただし、自首は、被疑者自ら犯罪事実を捜査機関に申告する行為になりますので、自首しなければ事件化されずに済んだ事案も事件化されてしまうリスクがある点には注意が必要です。そのため、自首をするかどうかは、自分だけで判断するのではなく、弁護士に相談しながら対応する必要があるでしょう。
4、暴行罪での逮捕が不安な方は早期に弁護士に相談を
暴行罪での逮捕が不安な方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)被害者との示談交渉を任せることができる
暴行罪での逮捕を回避するためには、早いうちに被害者との示談交渉を成立させることが大切になります。
しかし、被疑者本人から被害者に連絡をしても、暴行を受けた被害者は、被疑者に対して、恐怖心や嫌悪感を抱いていますので、連絡を無視されたり、示談を拒否されてしまったりする可能性が高いでしょう。また、お互いに面識がないと相手の連絡先がわからず、示談をしたくても連絡手段がないということも少なくありません。
しかし弁護士であれば、被疑者の代わりに被害者と示談交渉を行うことができますので、被害者自身も直接被疑者とやり取りをしなくて済む分、示談交渉に応じてくれる可能性が高まります。また、被害者の連絡先がわからないという場合でも、弁護士であれば捜査機関を通じて被害者と連絡を取れる可能性があり、被害者の同意があれば連絡先を入手することも可能です。
弁護士に示談交渉を任せることで、被害者との示談成立の可能性が高くなりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)自首に同行してもらえる
前述のとおり、自首も暴行罪での逮捕を回避する手段のひとつですが、自首をするかどうかは慎重に見極めなければなりません。
弁護士に相談をすれば、自首をすべきかどうかのアドバイスが受けられますので、不用意な自首により事件化されるリスクを回避することができます。自首をする場合にも弁護士から事前に取り調べのアドバイスを受けられますので、安心して取り調べに臨むことができます。
また、弁護士が警察署に同行することで、「弁護士がついているのであれば逃亡のおそれはない」と判断されやすくなりますので、逮捕の可能性を下げることができます。 -
(3)逮捕されたとしても早期の身柄解放を実現できる
逮捕された場合、逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及びます。そのため、長期間の身柄拘束で被疑者本人が受ける不利益は非常に大きなものとなります。また、検察官により起訴されてしまうと、有罪判決を言い渡される可能性が高くなり、前科がつくことにもなってしまいます。
このような不利益を回避するためには、逮捕後であってもすぐに弁護士に相談することが重要です。早い段階で弁護士による適切な弁護活動を行うことで、早期の身柄解放や不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。 -
(4)否認の方針決定を適切に行える
暴行は、違法な有形力の行使と定義されるため、あらゆる同意のない接触は暴行として検挙されうることから、典型的な暴力とは異なる内容で事件化することもあります。この場合、犯罪が成立しないという評価も十分ありうるため、逮捕などのリスクへのケアが十分にできれば、躊躇なく自身の主張を行いやすくもなります。
5、まとめ
暴行罪の検挙率は、83.7%と非常に高いため、暴行現場から逃げ切ることができたとしても、現行犯以外で、後日逮捕される可能性があります。いつ逮捕されるかわからないという不安を抱きながら生活をするのは非常に苦しいため、暴行事件を起こしてしまったときはすぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士が被害者との示談交渉などの適切な弁護活動を行うことで、逮捕のリスクを最小限に抑えることができます。暴行現場から逃走してしまい不安な毎日を過ごしているという方や暴行事件を起こして警察から連絡がきている方、家族が暴行罪で逮捕されたという方はベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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