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少年刑務所と少年院は何が違う? 刑事施設としての役割について
14歳以上20歳未満の少年が刑事事件を起こすと家庭裁判所での審判に付されるのが原則ですが、殺人や強盗などの重大な事件では成人と同じく刑事裁判による審理を受ける場合があります。
刑事裁判で懲役などの実刑判決を言い渡された少年は、刑事施設である少年刑務所に収容されることになります。しかし、少年刑務所がどのような施設なのかを詳しく知っている方は少ないかもしれません。
少年刑務所と少年院を混同されている方もいるようですが、両者は全く異なる目的・役割をもった施設です。本コラムでは少年刑務所の目的や役割、刑務所内での生活などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、少年刑務所は刑事施設
少年刑務所の概要や目的、少年院との違いについて解説します。
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(1)刑事施設とは
少年刑務所は刑事施設のひとつです。刑事施設とは、刑事裁判で懲役や禁錮、拘留に処せられた者や死刑の確定判決を受けた者や勾留されている被疑者・被告人を収容する施設をいいます。
原則として、勾留を受けてから起訴され、刑事裁判で刑が確定するまでは「拘置所」、実刑判決が確定した後に「刑務所」に収容されます。 -
(2)少年刑務所とは
少年刑務所は、刑事裁判で実刑判決を受けた16歳以上20歳未満の少年が収容される刑事施設です。川越少年刑務所や函館少年刑務所など、全国に6か所の少年刑務所があります。
少年刑務所は、少年受刑者に対して刑を執行するための施設です。
成人受刑者と同様に刑罰として刑務作業を行わせ、自分が犯した罪の重さや責任について充分な自覚と反省を促すとともに、社会復帰への意欲を呼び起こし、それを手助けする矯正処遇を目的にしています。
なお、刑事裁判で実刑判決を受けた少年のうち、14歳以上16歳未満の少年は、少年刑務所ではなく少年院に収容されます。また、少年刑務所には未成年受刑者だけではなく26歳未満の青年受刑者も収容されています。したがって、少年刑務所への入所後に20歳に達した場合であっても26歳になるまで継続して少年刑務所に収容されることになります。 -
(3)少年院との違い
少年院は、非行を行った少年に対して改善更生のための処遇を行う矯正施設です。規律ある生活の中で、さまざまな教育や訓練を行い、社会に適応できるように保護し、社会復帰させることを目的としています。
少年院は、少年刑務所のように刑罰を科すための施設ではないため、刑務作業に従事することはありません。
これに対して、少年刑務所は刑罰を執行することが第一の目的の刑事施設です。矯正施設としての性格は副次的なものといわざるをえないでしょう。
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2、少年事件の流れ
次に、少年が事件を起こして逮捕されてから少年刑務所に入所するまでの流れについて見ていきましょう。
なお、14歳未満の少年は刑事責任能力に欠けることから刑罰を受けることがなく、少年刑務所に入所することはありません。そこで、ここでは14歳以上の少年を想定して解説します。
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(1)逮捕から送致、勾留決定
少年を逮捕した警察は、事件を検察庁または家庭裁判所に送致します。
- 検察庁への送致
法定刑が懲役、禁錮などの重い罪(殺人や強盗、強制性交等罪など)を犯した場合は検察庁へ - 家庭裁判所への送致
法定刑が罰金以下の罪(過失傷害、軽犯罪法違反など)を犯した場合は直接、家庭裁判所へ
検察庁へ送致されると、検察官が引き続き少年の身柄を拘束する必要があるかを判断し、送致から24時間以内に「勾留請求」「勾留に代わる観護措置」のいずれかを裁判所に請求します。
勾留請求が認められると、10日間の身柄拘束を受けるのが原則で、多くの場合、さらに10日間身柄拘束期間が延長されます。
「勾留に代わる観護措置の期間」は10日間で、延長はありません。
これらの検察官による捜査の後、嫌疑がない事件を除くすべての少年事件は、家庭裁判所に送致されることになります。 - 検察庁への送致
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(2)家庭裁判所への送致
送致を受けた家庭裁判所はまず、少年を観護措置にするかどうかを検討します。観護措置とは、家庭裁判所が審判を行うために必要があるときに、少年を少年鑑別所に収容し、少年の心身の鑑別などを行う措置のことです。
観護措置が決定すると、原則2週間、最長で8週間、少年鑑別所に収容され、知能検査や心理テストなどを受けながら生活することになります。観護措置がとられなかった少年は在宅のまま、指定期日に調査官と面談するなどして調査を受けます。 -
(3)逆送になるケース
家庭裁判所に送致された後、家庭裁判所での調査・審判中に20歳になった場合や殺人、放火などの重大事件を起こして刑事裁判にかけることが相当であると判断された場合には、検察官送致(逆送)されます。
少年法第20条第2項では、事件を起こしたときに16歳以上の少年で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件(殺人や傷害致死など)については、原則として検察官送致することとしています。
逆送された少年は原則として起訴され、成人と同じく公開による刑事裁判を受けます。刑事裁判で執行猶予が付されない実刑判決となった場合には、16歳以上の者は少年刑務所へ、16歳未満の者は16歳になるまで少年院に入所することになります。
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3、少年刑務所での生活
少年刑務所では、自らの罪の重さを自覚させ、立ち直る意欲を喚起させるために、規則正しい生活を送らせながら、教育や職業訓練など更生のための各種指導が行われています。
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(1)規則正しい生活を送る
少年刑務所では規則正しい生活を送ります。
1日のスケジュールは少年刑務所ごとに違いがありますが、たとえば一般的な就業日の1日は、6:50に起床して8:00から16:40まで就業、21:00に就寝といったスケジュールで過ごします。
朝・昼・夕の食事と読書やテレビの視聴といった余暇時間も設けられています。 -
(2)教育
社会生活を送るうえでの基礎学力が不足し、社会復帰に支障をきたすと思われる受刑者に対しては小・中学校の義務教育に準ずる教育・指導が、学力のさらなる向上をめざす受刑者のためには高等学校教育が行われています。
たとえば、松本少年刑務所では中学校の分校、盛岡少年刑務所では高等学校の通信課程が設置されています。 -
(3)職業訓練
函館および川越、佐賀の少年刑務所が総合訓練施設に指定されるなど、各少年刑務所では円滑な社会復帰のための農業や木工、縫製、理容などさまざまな職業訓練を行っています。
また、できる限り社会復帰のための職業訓練を行い、一般の刑務作業を行う場合でも有用な作業に従事させるなど、少年という特性に対する配慮がなされています。 -
(4)家族などとの面会
入所中には家族と面会することができます。家族以外にも、恩師や雇用主など、受刑者に対する矯正処遇に支障ないと判断された相手との面会が許可される場合もあります。
ただし、面会の回数は月2回以上の範囲、面会時間は1回30分以上の範囲で、それぞれの刑事施設が定める時間という制限が設けられています。
施設の面会希望者が多いときは5分以上30分未満の面会になってしまうなど、必ずしも思うように面会できるわけではありません。
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4、少年刑務所収容を回避するためには、早期の弁護士相談が大切
未成年の子どもが少年刑務所に収容されるおそれのある事件を起こした場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。
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(1)早期の身柄解放
少年が逮捕・勾留されると最長で23日間もの身柄拘束を受けるため、退学や解雇などの不利益を受けてしまうおそれがあります。
そのため弁護士が検察官に対して勾留請求しないよう求める意見書を提出する、裁判官に対して勾留を認めないよう働きかけるなど、早期の身柄解放に向けて活動します。 -
(2)観護措置の回避
家庭裁判所への送致後に観護措置が決定すると、逮捕・勾留段階での身柄拘束期間に加え、2週間~8週間もの間、少年鑑別所に収容されます。少年の肉体的・精神的負担が大きくなるだけでなく、退学や解雇などの不利益を受けるおそれもさらに高くなるでしょう。
そのため弁護士が裁判官に対して観護措置の必要性がない旨の意見書を提出するなど、観護措置を回避するよう活動します。 -
(3)示談交渉の代理
被害者との示談が成立すると刑事裁判の量刑判断でよい事情として考慮される可能性が生じます。判決に執行猶予が付けば少年刑務所への収容を回避し、社会の中での更生を図ることが期待できます。
しかし被害者感情を考えれば、少年や保護者が直接被害者と交渉するのは避けるべきです。弁護士であれば被害者感情に配慮した繊細な交渉を行えるため、示談に応じてもらえる可能性が高まるでしょう。
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5、まとめ
少年が重大事件を起こすと刑事裁判によって審理される場合があり、判決次第では少年刑務所に入所することになります。
少年刑務所では刑罰のほかに教育や職業訓練なども実施されますが、少年院とは異なり完全に更生のための教育指導が行われるわけではありません。事件によっては刑罰ではなく保護処分が適しているケースもあるため、早急に弁護士に相談することが大切です。
少年事件の解決実績豊富なベリーベスト法律事務所が全力でサポートしますので、まずはご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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