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少年審判における付添人とは? 役割や必要性、誰がなれるのかを解説
成人が事件を起こすと刑事裁判で審理されますが、20歳未満の未成年が起こした少年事件では原則として家庭裁判所へ送致されて少年審判を受けます。その際、少年の人権を擁護し、更生に向けてサポートする役割を担うのが「付添人」です。
適切な付添人を選任できるか否かによって、少年の処遇や更生への道筋が左右されるといっても過言ではありませんが、その必要性や役割はあまり知られていません。
そこで本コラムでは、少年事件の付添人とは何か、どのような役割を担うのかについて解説します。
1、付添人とは
付添人とは、少年事件が家庭裁判所に送致された後に、少年の人権を守り、立ち直りをサポートする役割を担う人です。少年や保護者が選任する「私選付添人」と、裁判所が選任する「国選付添人」があります。
成人の刑事事件では、捜査が終了して検察官が起訴すると、犯した罪の重さに対して刑罰を科すことを目的に刑事裁判が進められます。刑事裁判では裁判官、検察官、被告人、被告人の弁護人が出席し、最終的に裁判官が有罪・無罪の認定と量刑を決定します。
一方、少年事件では、捜査が終了するとすべての事件が家庭裁判所へ送致され、少年審判が開かれます。少年は成人と異なり、処罰よりも教育による更生改善を目指すことから、専門的な調査機能をもつ家庭裁判所が主導し、少年の更生改善にもっとも適した処分とするのが相当であると考えられているためです。
少年審判では家庭裁判所裁判官と書記官、少年、少年の保護者、付添人などが出席します。原則として検察官は出席しません。
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2、付添人の役割
付添人は具体的にどのような活動を行うのでしょうか。付添人の主な役割について解説します。
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(1)少年との面会
少年が家庭裁判所に送致されると付添人の選任が認められます。
家庭裁判所への送致後、裁判官は少年を少年鑑別所に収容して心身の鑑別を行う「観護措置」にするか否かを決定します。観護措置が決定すると外部との接触が制限されてしまうため、まずは観護措置を回避する活動が必要です。そのためには、裁判官に対して、少年が事件と向き合って深く反省しており、再非行のおそれがなくなっていると言えるだけの状況が整っていることを示さなければなりません。
しかし、少年の多くは精神的な未熟さから事件を起こしているため、ひとりで事件と向き合うのは難しいでしょう。そのため、付添人は、少年と面会して丁寧に話を聞き、事件の原因を一緒に考えることで、事件に向き合わせて内省を深めるためのサポートを行います。
観護措置が決定した場合も、付添人が少年との面会を継続して事件と向き合う手助けをするとともに、少年の事件に対する認識や事実関係を把握したうえで的確な活動を展開し、重すぎる処分を防ぐよう努めます。 -
(2)裁判官や調査官などとの交渉
付添人は審判の開始前に、裁判官や調査官などとの交渉を進めます。
家庭裁判所の裁判官が処分を決定する際には、教育や心理の専門家である調査官の意見を重視するため、調査官への働きかけは重要です。付添人は調査官と面会して調査官の認識を確認すると同時に、事件の背景や少年の心境の変化、更生への意欲などを調査官に伝えます。
また、複数回の審理が必要な場合や非行事実を争う場合の証人尋問などについて裁判官と協議することもあります。 -
(3)被害者の感情を少年に伝える
事件の背景に複雑な事情やトラブルが絡んでいた場合は、『相手が悪いのに自分が逮捕された』などと、被害者のつらさを理解できないケースも少なくありません。そのままでは反省につながらず再非行に走るおそれが高いため、付添人は少年に対し、被害者の感情や、事件後の状況を伝えます。
少年が、自分の犯してしまったことを認識し、被害者にどのように償うべきかを考えるようになることで、内省を深めるきっかけとなることが期待できます。 -
(4)環境調整
環境調整とは、家庭や学校、会社、交友関係など、少年を取り巻く環境を整えることを言います。
保護者との関係調整も、そのひとつです。少年事件では、保護者との関係に問題を抱えており、そのことが事件のきっかけにつながっていることも少なくありません。
付添人は、少年と保護者の双方から話を聞き、お互いの思いを伝えたり、保護者に非行の原因を考えてもらったりすることで、家庭環境の改善に向けた働きかけを行います。
また学校や会社への対応として、学校や職場に問題はなかったのか、教師や雇用主に対して、再犯防止のために何ができるのかなどを考えてもらいつつ、退学や解雇処分が検討されないように働きかけを行います。
たとえ退学や解雇になってしまった場合でも、保護者と連携して新しい学校や職場を探すなどし、更生しやすい環境を整えられるようにサポートします。 -
(5)付添人意見書の提出
付添人意見書とは、付添人の活動の成果や意見を伝えるための書類のことです。観護措置が不要である旨の主張をするときや、少年の更生に適した処分を求めるときに、付添人は家庭裁判所に付添人意見書を提出します。
具体的には、非行の原因や非行に至った経緯、少年の反省の度合いや気持ちの変化、保護者の監督体制、環境調整の結果などを丁寧に書いていきます。 -
(6)審判期日への立ち会い
付添人は審判期日に立ち会い、あらためて再非行のおそれがない旨の主張などをし、少年が社会内で更生できるよう後押しします。
少年審判では、少年が自分の考えをうまく伝えることができない場合や、裁判官の質問の意味を理解できない場合も少なくありません。そのため付添人が少年へ質問しながら、少年の反省の気持ちや更生への意欲を適切に伝えられるようサポートします。 -
(7)試験観察中のフォロー
処分には少年院送致や保護観察などのほか、いったん処分を留保して少年の様子を観察したうえで処分を決める「試験観察」があります。付添人は終局審判までに少年と面会を重ね、保護観察などの社会内処遇を目指してサポートを行います。
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3、誰でも付添人になれるのか?
付添人になるために特別な資格は不要なので、誰でも付添人になることができます。ただし、弁護士以外が付添人になるには裁判所の許可が必要なので(少年法第10条)、弁護士が務めるのが一般的です。
付添人の役割を福祉的な観点から見たときは、保護者や雇用主など少年の身近な大人が付添人としての資質を備えている場合も多いでしょう。しかし身近な人ではどうしても感情的な対応になってしまい、少年が心を開けずに適切にサポートができないという結果になるおそれがあります。
少年の権利保護や適正な手続きの実現という観点から見れば、付添人には法律知識や経験が不可欠なので、弁護士がもっとも適任です。専任する弁護士については、少年事件の知見が豊かであり、かつ少年に寄り添いながら冷静な対応ができる人物が望ましいでしょう。
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4、付添人の利用選任状況
付添人は少年事件において極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、実際に付添人が選任されている事件は多くありません。
『2021年版(令和3年版)弁護士白書』によると、令和2年中に家庭裁判所が扱った少年保護事件の総数に対して、付添人が選任された事件の割合は25.4%にとどまっています。
成人の被告人段階の刑事事件における刑事弁護人の選任率が例年100%近くに達している状況と比較すると、少年への支援が不足していると言わざるを得ません。
付添人の選任率が低い理由として、少年自身に弁護士を選任する資力がなく、少年の保護者にも十分な資力がないケース、付添人の役割についての理解不足から付添人を選任することに消極的な保護者がいることが挙げられます。
なお、費用の問題で付添人を選任できない場合は、「国選付添人制度」の利用を検討するとよいでしょう。
これは、少年審判を受ける少年が国費で弁護士を付添人に選任できる制度です。平成26年4月の少年法改正により対象事件の範囲が拡大されたため、以前に比べて利用できるケースは増えています。ただし、国選付添人を選任できるのは、一定の要件を満たした場合に限定されるため、すべての事件で利用できるわけではありません。
国選付添人制度が利用できないケースでは、日本弁護士連合会が運営する法律援助制度として、弁護士費用を援助してもらえる「少年保護事件付添援助事業」や、少年鑑別所にいる少年と1回に限り無料で面会が可能な「当番付添人制度」の利用が検討できます。
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5、まとめ
付添人は少年の処分の決定や更生の実現を左右する極めて重要な存在です。裁判所が許可すれば誰でも付添人になることは可能ですが、役割の重要性や効果を踏まえれば弁護士がもっとも適任でしょう。未成年の子どもが刑事事件を起こしてしまった場合、弁護士を付添人に選任することは、保護者ができる重要なサポートのひとつといえます。
付添人の選任をはじめ、少年事件のサポートを希望される場合は、少年事件の対応実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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