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客引き行為の刑罰は? 初犯の場合はどうなる? 逮捕や罰金について解説
キャバクラなどの風俗店だけでなく、居酒屋などの飲食店でも執拗(しつよう)な勧誘や強引な客引き行為をすれば、風営法や都道府県の迷惑防止条例に違反するとして逮捕・処罰される恐れがあります。
違反行為をした当人だけではなく、使用者である店側にも罰則が適用されます。罰金や科料を払って済むわけではなく、店舗への立ち入り調査が行われたり営業停止処分を受けたりすることもあるため、経営に与える影響は少なくありません。
今回は、客引きを取り締まる法律や条例、違反行為をした場合に問われる刑罰、逮捕された後の流れなどについて、弁護士がくわしく解説します。
1、客引きを取り締まる条例と罰金について
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(1)客引きの定義
「キャッチ」とも呼ばれる「客引き」は、「相手方を特定して営業所の客となるように勧誘すること」とされています。具体的には、相手の進路に立ちふさがる、執拗(しつよう)につきまとうなどして、来店を誘う行為のことです。
店前で不特定多数の人に向かって「いらっしゃい! いらっしゃい!」と呼び込みをしたり、道路使用許可を得てチラシやティッシュを配ったりする行為は客引きにはあたりません。
客引き行為を規制する法律は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)と各都道府県が定める迷惑防止条例です。それぞれに規制の対象となる行為と罰則の内容に違いがあります。 -
(2)迷惑防止条例違反の場合
都道府県の迷惑防止条例では、「不当な客引行為等の禁止」として、キャバクラやホストクラブなどの風俗店や飲食店などの悪質な客引きを規制しています。規制の対象となる行為や業態、罰則の内容は都道府県で異なります。
たとえば東京都の迷惑防止条例では、第7条でAV販売店や性風俗店、キャバクラやホストクラブなどのキャッチや客引きを規制するほか、居酒屋などの一般店が人の身体または衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとうなど執拗(しつよう)に客引きをすることを規制しています。
違反した場合には、客引きをした当人は「50万円以下の罰金または拘留もしくは科料」、客引きをさせた使用者は「100万円以下の罰金」に処されます。さらに常習の場合には違反した当人が「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に、使用者は「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられます。
愛知県では、違反行為は「100万円以下の罰金」、常習の場合は「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられます。
栄など名古屋市の一部の繁華街では、名古屋市の条例により、風俗店やキャバクラなどのほか、居酒屋やカラオケなどの一般店の客引きも規制の対象です。違反者には、指導、勧告、命令が行われ、命令に違反した場合には「5万円以下の過料」に処せられます。
大阪府の罰則の内容は東京都と同じですが、大阪市も条例により、キタやミナミなどの繁華街で業態を問わず客引き行為の禁止区域が定められています。違反者には、指導、勧告、命令が行われ、命令に違反した場合には「5万円以下の過料」に処せられるほか、立ち入り調査などが行われます。 -
(3)風営法違反の場合
風営法第22条、第52条により、客引き行為およびつきまといなどの悪質な客引き行為をした場合には「6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」に処せられます。風営法の規制は、風俗店のほか、居酒屋などの飲食店も対象です。迷惑防止条例に比べて重い刑罰が規定されています。
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2、客引き行為が発覚するのはどのようなとき?
客引き行為が発覚して逮捕されるのは、主に次のような場合です。どのようなケースで発覚する可能性があるのか解説します。
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(1)警察官による捜査
繁華街などでは、風営法や条例違反を摘発するために、定期的に私服警官による捜査が行われています。私服警官だと気付かずに目前で不当な客引き行為をした場合はその場で現行犯逮捕されます。
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(2)地元の人の見回り
商店街組合や飲食店組合、町内会などの地元の人々が、安全な街づくりを目的に巡回パトロールを行っている地域もあります。不当な客引きを目撃された場合には、通報されて現行犯逮捕されたり、警察の捜査が開始されたりすることがあります。
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(3)通行人からの通報
不当な客引きを受けたり目撃したりした通行人の通報により、現行犯逮捕されることや、警察の捜査が開始されることがあります。
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(4)待ち伏せや繰り返し行為
客引きを目的に、道路などの公共の場所でうろつく、たむろする、待ち伏せするなどの行為も不当な客引き行為として規制の対象です。
大きな繁華街などでは、複数の居酒屋を紹介するフリーの客引きが増加しており、つきまといなどの悪質な客引きが繰り返し行われて問題となっています。客引きは現行犯逮捕が多いですが、一斉摘発されて常習犯として逮捕される場合もあります。 -
(5)刑法上の罪に問われる場合
悪質な客引き行為は、刑法上の罪に問われる場合もあります。他の店舗に入店しようとした人に「満員」だとうそをついて客引きを行い、偽計業務妨害罪で逮捕されるケースもあります。
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3、初犯の場合は罰金?
迷惑防止条例に違反する客引き行為で逮捕された場合、初犯であれば罰金刑で済むケースもあるでしょう。しかし、不当な客引きは決して軽い罪ではありません。風営法違反が適用されたり、常習性が認められたりすれば、懲役刑となる可能性もあるのです。
罰金刑となったとしても、懲役刑と同じように前科がつくことになります。起訴猶予となっても、逮捕された時点で実名報道されるリスクがあり、警察や検察に前歴が残ります。前科・前歴があることは、将来の就職や結婚などに影響をおよぼすこともあるでしょう。「罰金刑で済むから」「高収入だから」など、軽い気持ちで不当な客引きやキャッチを行わないようにすることが大切です。
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4、客引きで逮捕された後の流れ
客引き行為で逮捕された場合、他の刑事事件と同じ流れで手続きが進みます。
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(1)逮捕
現行犯逮捕または通常逮捕されると、警察に留置されて取り調べを受けます。警察は逮捕から48時間以内に検察へ送致するかどうかを決定します。この間はご家族であっても本人と会うことはできず、本人との面会は弁護士しかできません。
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(2)勾留
送致後は検察官から取り調べを受け、検察官は勾留してさらに取り調べをするかどうかを判断します。検察官は勾留が必要だと判断した場合は、送致から24時間以内に裁判所へ勾留請求します。勾留は原則10日間ですが、延長が認められれば、さらに10日間勾留が延長されます。つまり、逮捕から数えると最大23日間も身柄を拘束される恐れがあるのです。
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(3)起訴
検察官は勾留期限までに、起訴するかどうかを決定します。不起訴処分なら釈放です。起訴されれば1~2か月後に開廷する裁判まで拘置所に留置されることになりますが、保釈請求が認められて保釈金を支払えば保釈されます。
また、100万円以下の罰金刑で、本人が罪を認めている場合には略式起訴となり、罰金を納付すればすぐに釈放されます。
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5、まとめ
近年、客引き行為に対する取り締まりが強化されています。不当な客引き行為は本人だけでなく使用者も罪に問われる場合があり、経営に大きな損害を与える恐れもあります。また、学生などの若者がアルバイト感覚で不当な客引きを行い逮捕される事件も増えています。
もしもご家族や知人、従業員が不当な客引き行為で逮捕された場合には、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が早期釈放や刑の軽減に向けてサポートいたします。
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