- その他
- 爆破予告
- ネット
ネットに爆破予告を書き込んで逮捕! いたずらだったとしても犯罪?
爆破予告事件は全国で発生しています。令和元年11月の神奈川県では、横浜市内の高校に爆破予告の脅迫文が送られました。令和2年5月には、福井県で県庁への爆破予告電話があり、福島県では郡山市役所へ爆破予告文書が送付されました。いずれも容疑者は逮捕されています。
これらの事件では爆破予告に電話や文書が利用されていますが、インターネット上の書き込みも同じく犯罪にあたります。近年はネットの悪意ある書き込みが社会問題となっていますので、いたずら心で書き込みをしてしまい不安になっている人も少なくないでしょう。
この記事では、ネットの爆破予告がどのような犯罪にあたるのか、刑罰の内容や爆破予告をしてしまった際の社会的影響とあわせて解説します。
1、犯罪予告に関するネットの書き込み
サイバー犯罪はマスコミなどでセンセーショナルに報道されることも多いですが、現実はどうなっているのでしょうか? その現状や背景などを解説します。
-
(1)サイバー犯罪は増加傾向に
警察庁のデータでは、サイバー犯罪の検挙件数は増加傾向にあることが示されています。
平成27年から令和元年の5年間の推移をみても年々増加しており、令和元年の検挙件数は9519件と過去最多を記録しています。その内訳は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反や詐欺罪の割合が多いものの、これらに該当しない罪種が多数を占めており、犯罪予告に関する事件も含まれていると考えられます。 -
(2)犯罪予告にあたるネットの書き込みとは
次のような事件は報道などでしばしば取り上げられています。
- 役所、学校など公的機関への爆破予告
- 有名人に対する犯罪予告
- 一般の個人に対する犯罪予告
有名人や一般個人など特定の人物を標的にした犯罪予告には、恐喝や脅迫、誹謗中傷、名誉毀損、ストーカー行為などさまざまな犯罪に関連したものがあります。
-
(3)犯罪予告の書き込みが増えた背景
犯罪予告の書き込みが増えた背景にはネットの発展があります。多くの人がネットを使うようになった現代では、匿名性を武器にした悪意ある書き込みが瞬く間に広がるようになりました。
近年ではフォロワーの獲得や有名になることへの期待感から安易な書き込みをするケースも増えています。そのため書き込まれる場所は、以前は5ちゃんねる(2ちゃんねる)など限られた人が閲覧する掲示板にとどまっていたのに対し、より拡散力の高い会員制交流サイト(SNS)へと移っています。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
2、爆破予告によって成立する犯罪
爆破予告をおこなうと次の罪に問われる可能性があります。
-
(1)威力業務妨害罪
威力を示し、業務を妨害する犯罪です(刑法第234条)。
威力とは相手の自由意思を制圧するほどの強い力や勢いをいい、暴力や脅迫、怒号などが該当します。業務とは社会生活上の立場にもとづき継続しておこなわれる事務・事業です。企業活動などの営利的なものだけでなく、学校の教育活動、政党活動なども含まれます。実際に業務が妨害されていなくても、そのおそれがあれば犯罪が成立します。
威力業務妨害罪の典型例としては、「デパートに爆弾を仕掛けた」「○○学校の生徒を殺す」などの爆破予告や殺人予告があります。
刑罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。なお、威力を示さないものの、虚偽の情報を流し、または偽計(人をあざむく計略、手段)を用いて人の信用を毀損すれば偽計業務妨害にあたります(刑法第233条)。 -
(2)公務執行妨害罪
暴行や脅迫を用いて公務員の職務を妨害する犯罪です(刑法第95条1項)。
公務員が現実に職務をおこなっている際に、暴行や脅迫によってその職務を妨害すると成立します。爆破場所として役所や警察署などの公的施設を指定した場合などに公務執行妨害罪とみなされる可能性があります。
刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。 -
(3)脅迫罪
被害者またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知して脅す犯罪です(刑法第222条)。
特定の人物に対して「お前の家に爆弾を仕掛けてやる」などと書き込んだ場合に成立する可能性があるでしょう。
刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。 -
(4)強要罪
人に義務のないことをさせ、または権利の行使を妨害する犯罪です(刑法第223条)。
被害者またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知し、脅迫または暴行を用いて人に義務のないことをさせると成立します。「要求をのまなければ爆破するぞ」などの爆破予告をした場合に問われる可能性があります。
刑罰は「3年以下の懲役」です。罰金刑はありません。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
3、いたずらだとしても罪に問われる
いたずらのつもりでネットに爆破予告を書き込み、実際に爆破事件にはいたらなかった場合でも罪に問われます。
爆破予告そのものが威力業務妨害罪における威力にあたりますし、脅迫罪における脅迫行為にも該当するでしょう。爆破予告は、爆発物を仕掛けたかどうか、爆破事件が起きたかどうかに関係なく犯罪として成立するのです。
警察庁は平成31年3月に、ネット上の犯行予告への対応について、あらゆる機会を通じた広報啓発やウェブサイト運営者への通報要請などの内容の通達をだしています。警察は犯罪予告を未然に防止し、早期発見・対応につなげるため、非常に警戒を強めている状況です。
具体的には、警察庁が積極的な情報収集活動をおこなっているほか、都道府県の警察でも広報啓発活動がおこなわれています。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
4、爆破予告が与える社会への影響
爆破予告をする前に、社会へ与える影響を考えてみることが大切です。
爆破予告がなされれば警察による周辺地域の警戒や捜査がおこなわれます。爆破予告以外にも日々犯罪が起きているにもかかわらず、それらの事件に人員を割くことができず、事件の解決が遠のくおそれも生じます。
加えて地域の住民は大変な不安を抱え、場合のよっては大規模な避難も必要となってくるでしょう。近隣店舗は営業を停止しなくてはならないため、その間の収益も失われます。
単なるいたずらのつもりであっても、爆破予告があった地域に関係するあらゆる人や施設の活動に悪影響をおよぼし、甚大な損害を与えることになるのです。
通報されれば匿名による書き込みでも犯人として特定されます。有罪になった際には刑罰を受けるだけでなく、民事上の損害賠償責任も問われます。爆破予告の場合、避難を余儀なくされる人や営業の停止を強いられる店舗は多数にのぼると想定されるため、莫大(ばくだい)な損害賠償金を請求される可能性もあるでしょう。
到底自分だけで支払える金額ではないでしょうから、家族などの大切な人たちにも迷惑をかけることになります。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
5、爆破予告を書き込んでしまったときにすべきこと
万が一爆破予告を書き込んでしまった場合は次の行動を検討しましょう。
-
(1)自首をする
刑法第42条には、自首をした者に対する刑は減軽されると示されています。犯罪事実や犯人として捜査機関に発覚する前に自首をすれば、罪を認めて反省していると評価され、刑が減軽される可能性があります。書き込みの削除も検討する必要があります。
-
(2)被害者との示談交渉を試みる
特定の人に対して爆破予告をおこなった場合は、真摯(しんし)に謝罪をし、示談交渉を試みましょう。示談が成立した事実は検察官や裁判官から「被害者から許しを得られた」と評価され、あえて起訴や重い刑を科す必要性が少ないと判断されやすくなります。
民事上の損害賠償責任についても、示談金の支払いをもって解決とする旨の約束をすれば、新たに損害賠償を請求されることがなくなります。 -
(3)弁護士に相談する
ネットで爆破予告をした以上は、逮捕・勾留される、実名報道されるなどの事態に発展する可能性が生じます。
事件が明るみにでる前の早い段階で弁護士のサポートを受け、自首や被害者への謝罪、示談交渉などを進めれば、事件が早期に解決する可能性が高まります。爆破予告事件では示談の相手方が複数におよぶケースが多いため交渉が複雑化しますが、弁護士であれば解決の糸口をみつけられる期待があります。
逮捕された場合でも、弁護士のサポートによって深い反省の意思や再犯のおそれがない点が伝わりやすく、重すぎる処分を回避できる可能性が出てきます。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
6、まとめ
ネットを使った爆破予告は犯罪行為です。いたずらのつもりでも社会を大きな不安に陥れ、甚大な損害を与えるでしょう。匿名での書き込みであっても個人の特定は可能です。罪に問われ刑罰を受ける、損害賠償を請求されるといった可能性は否定できません。
しかし早い段階で適切な行動を起こせば、社会への影響を少しでも減らすことができます。速やかに弁護士へ相談し、今後の対応を検討するのがよいでしょう。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所でご相談をお受けします。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。