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弁護士コラム

2020年10月14日
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たばこのポイ捨ては軽犯罪法違反? 問われる罪とその罰則とは

たばこのポイ捨ては軽犯罪法違反? 問われる罪とその罰則とは
たばこのポイ捨ては軽犯罪法違反? 問われる罪とその罰則とは

日本たばこ産業が行った「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%、女性では8.7%でした。女性の喫煙率は過去50年間でほぼ横ばい状態ですが、男性では約56ポイントも減少しています。
健康被害などの知識が広く浸透したため、たばこ喫煙者の数は大幅に減少していますが、禁止場所での喫煙のほか、いわゆる「ポイ捨て」は依然として大きな社会問題となっています。

たばこのポイ捨ては、ただのマナー違反で済まされる問題ではありません。ポイ捨て行為そのものが犯罪にあたるだけでなく、場合によっては重い刑罰が科せられてしまうこともあるのです。

このコラムでは「たばこのポイ捨て」によって成立する犯罪について解説します。

1、軽犯罪法の概要

たばこのポイ捨てが犯罪になるケースを考える場合に、まず知っておくべき法律が「軽犯罪法」です。軽犯罪法は、刑法などの法令によって特に処罰・規制を受けていないような軽微な秩序違反行為に対して刑罰を科す法律で、昭和23年に制定されて以後、大きな改正もなく現在も適用されています。

  1. (1)軽犯罪法で規制される行為

    軽犯罪法第1条では、1号から34号までの33の行為(21号は削除)について罰則の対象とすることを定めています。
    代表的なものとして、次のような行為が対象です。

    • 正当な理由なく刃物など凶器を隠匿携帯する行為
    • 正当な理由なく刃物など凶器を隠匿携帯する行為
    • 物乞い行為
    • 公共の場所や乗り物における粗野・乱暴な行為
    • のぞき行為
    • 道路でつばを吐く行為 など
  2. (2)ポイ捨ては軽犯罪法違反

    軽犯罪法第1条27号は「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他汚物または廃物を棄てた者」を処罰の対象と規定しています。公園や路上といった公共の場所で、たばこのポイ捨てをすると、同号の規定によって軽犯罪法違反が成立するのです。

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2、軽犯罪法違反での罰則

軽犯罪法に違反すると刑罰が科せられます。

  1. (1)軽犯罪法違反に科せられる刑罰

    軽犯罪法第1条の各号に違反した場合は「拘留または科料」に処されます。

    拘留とは、1日以上30日未満の刑事施設への収容が科せられる刑罰で、短期間とはいえ一般社会から隔離されます。科料とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収される刑罰です。

    拘留・科料は、刑罰としてはもっとも軽いものですが、前科はついてしまいます。

  2. (2)未遂の場合

    軽犯罪法は、未遂を処罰の対象としていません。
    第1条の各号に定められている行為について、実際に行った場合のみに刑罰が科せられます。

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3、軽犯罪法以外にたばこのポイ捨てが該当する罪

たばこのポイ捨てで気を付けたいのが、状況によって軽犯罪法以外の法令にも触れてしまう可能性があることです。

  1. (1)自治体の条例違反

    主に大都市圏では、市区が独自に定める「ポイ捨て禁止条例」や「歩きたばこ禁止条例」に触れてしまう可能性があります。

    東京都千代田区の歩きたばこ禁止条例のほか、各地で同様の条例が制定されています。また、大都市圏のみでなく、たとえば岐阜県白川村のように世界遺産の保護を目的としてポイ捨て禁止条例が設けられているケースもあります。

    自治体の条例違反では、罰則として「過料」が設けられているか、もしくは努力義務としており罰則を設けていないケースもあります。過料とは、秩序違反に対する行政罰のひとつであり、罰金や科料と同じく金銭を徴収されますが、前科がつくことはありません。

  2. (2)失火罪

    たばこのポイ捨てによって火事を引き起こすと、刑法第116条の「失火罪」に問われます。
    失火罪は「過失」で火災を発生させると成立する犯罪で、現住建造物や他人所有の非現住建造物に火災を発生させた場合は、50万円以下の罰金が科せられます。

  3. (3)放火罪

    火災を起こそうと考えてわざとたばこをポイ捨てした場合や、「火事が起きても構わない」という意志をもってたばこをポイ捨てし、火事を発生させた場合は、放火罪に問われます。

    故意に火事を起こそうと考えてたばこをポイ捨てするケースはごくまれかもしれませんが、木造住宅のそばでポイ捨てするなど、火事が起きてしまう危険を十分に認識していれば「未必の故意」が成立し、放火罪に問われる可能性があります。

    放火罪は、人が居住している住宅などを対象とする刑法第108条の「現住建造物等放火罪」と、人が居住に使用していない建物などを対象とする同第109条の「非現住建造物等放火罪」に分けられます。

    現住建造物等放火罪では、死刑または無期、または5年以上の懲役という非常に重たい刑罰が科せられます。非現住建造物等放火罪では、他人所有の場合で2年以上の懲役、自己所有で6か月以上7年以下(ただし、公共に危険が生じなかった場合は罰しない)、が科せられます。

  4. (4)過失傷害・過失致死

    たばこのポイ捨てで火事が起きて人が傷害を負った場合や、火のついたタバコが人に当たるなどして怪我をさせてしまった場合は、刑法第209条1項の「過失傷害罪」が、死亡した場合は同第210条の「過失致死罪」に問われる可能性があります。

    過失傷害罪の法定刑は30万円以下の罰金または科料、過失致死罪は50万円以下の罰金です。

  5. (5)そのほかの犯罪

    車の運転中に窓からたばこをポイ捨てする行為は、「道路交通法」第76条4項の4号または5号の違反となり、5万円以下の罰金が科せられます。

    また、河川にたばこをポイ捨てした場合は、「河川法施行令」第16条の4違反として、3か月以下の懲役または20万円以下の罰金が規定されています。

    さらに、たばこのポイ捨て行為は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第16条にも違反します。廃棄物処理法違反には、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という非常に重い刑罰が規定されています。

    なお、これらに該当するのはたばこだけではなく、ごみのポイ捨てなどでも該当し得る犯罪です。

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4、ポイ捨て行為で逮捕されることはある?

たばこのポイ捨てを「ただのマナー違反」だと考えてはいけません。犯罪にあたる行為なので、場合によっては逮捕されてしまう可能性があります。

  1. (1)軽犯罪法違反の場合

    軽犯罪法に違反した場合は、氏名不詳・住所不定・逃亡のおそれがあるという条件を満たす場合でなければ、現行犯逮捕されることはあまり考えられません。また、軽犯罪法違反を被疑事実とする通常の逮捕(逮捕状に基づく逮捕)については被疑者が住所不定の場合や、正当な理由なく警察からの呼び出しに応じないといった場合に、行われることがあるかもしれません(刑事訴訟法 第199条・217条)。

  2. (2)廃棄物処理法違反の場合

    廃棄物処理法第16条は「何人(なんぴと)も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と規定しています。
    平成31年2月には、福岡県で、ジョギング中に使用済みティッシュを、数年にわたり民家の駐車場に投げ捨てていた男が、廃棄物処理法違反の容疑で逮捕される事案が発生しています。たばこのポイ捨てについても、この件の様に長期にわたり繰り返す等、悪質とみなされた場合は廃棄物処理法違反として逮捕される可能性があると考えるべきでしょう。

  3. (3)道路交通法違反の場合

    車の窓からたばこをポイ捨てした場合は、道路交通法第76条4項の4号または5号の違反となりますが、直ちに逮捕されるケースはまれでしょう。ただし、警察官からの質問に対して氏名・住所などを明らかにしない、その場から立ち去ろうとするなどの状況があれば逮捕される可能性があります。

  4. (4)重大な事件に発展した場合

    ポイ捨てが原因で火災が発生するなど重大な事件に発展した場合は、たとえ故意でなかったとしても、逮捕される可能性が高いと考えておくべきでしょう。

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5、ポイ捨て行為が罪に問われたときの対応

たばこのポイ捨てで罪に問われた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

  1. (1)謝罪と原状回復

    たばこのポイ捨てが問題となった場合、重要なのは謝罪した上で、原状回復をすることです。すみやかに原状回復することによって、罪に問われるほどの大問題に発展してしまう事態を回避できる可能性があります。

  2. (2)不起訴処分を目指す

    たばこのポイ捨てによって逮捕されたとしても、検察官が不起訴処分を下せば刑罰を受けることも前科がつくこともありません。
    弁護士に相談し、捜査機関に対して適切な弁護活動を行うことで、悪質性が高い、被害が甚大になったというケースでなければ、検察官が不起訴処分を下す可能性があります。

  3. (3)示談交渉

    汚損・焼損した箇所や建物について被害者が存在する場合は、被害者との示談交渉も大切です。示談交渉を成立させ、被害届・告訴の取り下げがなされれば、検察官が不起訴処分を下す可能性が高まるでしょう。

    なお、逮捕されてしまったケースでは、本人は自由に行動ができなくなるので、弁護士に依頼して示談交渉を進めていく必要があります。

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6、まとめ

たばこのポイ捨ては犯罪です。軽犯罪法のほか、自治体の条例や廃棄物処理法など、状況に応じてさまざまな法律が適用されますが、火の不始末によって火災が発生してしまえば重い刑罰が科せられることもあります。

たばこのポイ捨てが問題となって罪に問われてしまった場合は、弁護士に相談して対策を講じるのが賢明です。刑事事件の弁護実績を豊富にもつ、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、あなたを全力でサポートしますので、まずはご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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