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保釈とは? 逮捕~保釈までの流れと保釈される条件、弁護士への依頼
保釈とは、保釈保証金の納付を条件に、起訴された被告人の勾留を一時的に解く制度です。しかし保釈は請求すれば必ず認められるわけではなく、請求できるタイミングや条件があります。
速やかな保釈を実現させるためには、ぜひこの記事を読んでください。保釈制度の重要性や保釈金、条件について、保釈請求を弁護士に依頼した方が良いのかについても、理解を深めることができます。
ベリーベスト法律事務所 刑事弁護専門チームの弁護士が「保釈」について解説します。
「保釈」が認められるのはいつ? 逮捕から保釈までの流れ
「保釈」についてのみ解説しても、警察に逮捕された後の流れを知らなければ、イメージをするのは難しいと思います。そこで、まずは逮捕から裁判まで、どのような流れで進むのか、そしてどのタイミングで保釈を請求できるのかを説明します。
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逮捕された後の流れ 逮捕~起訴・不起訴
刑事事件の犯人(被疑者)として逮捕されると、警察および検察官から72時間を上限に取り調べを受けます。検察官は、捜査結果を受けて起訴するか、不起訴にするかを判断します。
しかし72時間では十分に捜査が尽くされなかった場合は、検察官が裁判官に対して、被疑者の身柄を引き続き拘束する許可を求めます。これを『勾留請求(こうりゅうせいきゅう)』といいます。
勾留とは、刑事事件の被疑者・被告人の身柄を拘束する手続きです。あくまでも逃亡または証拠隠滅を防ぐための措置であり、刑罰ではありません。
勾留されるのは、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、刑事訴訟法第60条に規定されているいずれかに該当した場合です。
刑事訴訟法第60条- 定まった住居を有しないとき
- 証拠隠滅を図るおそれがあるとき
- 逃亡を図るおそれがあるとき
裁判官が請求を認めると、被疑者は勾留されることになります。
起訴前の勾留期間は原則勾留請求の日から10日間ですが、やむを得ない事情があると10日間の延長が認められるため、最長で20日間です。勾留期間の満期を迎える前に、検察官は再び起訴・不起訴を判断します。
ここまでが逮捕から起訴・不起訴までの一連の流れです。
不起訴になれば、刑事手続きは終了です。前科もつきません。一方、起訴されると刑事裁判で、有罪か無罪かを判断されることになります。 -
保釈が認められるタイミングは起訴の後
起訴されると被疑者から被告人へと呼び名が変わり、刑事裁判を待つ身となります。起訴後の勾留期間は原則2か月間ですが、証拠隠滅のおそれがある場合などには1か月ごとの更新が認められています。更新回数に制限はないため、起訴後の勾留は実質的に期限がありません。
仮に裁判で実刑判決がくだると、逮捕から刑期を終えて出所するまで一般の社会生活には戻れなくなってしまいます。そこで請求できるのが保釈です。保釈は起訴後の勾留段階に入ってからのみ請求でき、起訴前の勾留段階では請求できません。
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保釈と釈放は違うもの?
保釈と混同しやすい言葉に「釈放」があります。
釈放とは、刑事事件の被疑者・被告人・受刑者が、身柄の拘束を解かれることを幅広く指す言葉です。保釈も釈放の一部といえますが、釈放と比べると限定的な範囲で認められる制度です。
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保釈と釈放の違い①|タイミング
【釈放】
逮捕後や勾留後、刑の執行が終わった後などさまざまにあります。
刑事手続の中で釈放されるタイミングとしては、次のようなケースが考えられるでしょう。
- 逮捕の後に誤認逮捕だと分かったため釈放された
- 逮捕されたが勾留されずに在宅捜査に切り替わった
- 逮捕・勾留されたが勾留の理由や必要性がなくなったため釈放された
- 逮捕・勾留されたが不起訴処分になったため釈放された
- 逮捕・勾留の後に起訴されたが略式起訴だったため罰金・科料を納付したうえで釈放された
- 逮捕・勾留の後に起訴され有罪判決となったが執行猶予がついたため釈放された
- 受刑者が刑の満期前に仮釈放された
- 受刑者が刑の満期を迎えて釈放された
【保釈】
起訴された後から裁判で判決が出るまでの間のみです。 -
保釈と釈放の違い②|身柄拘束を解かれる期間の違い
【釈放】
一時的である場合も、永久的である場合もあります。
たとえば逮捕されたが勾留されずに在宅捜査に切り替わったときは、刑事裁判で懲役の実刑判決を受ければ再び身柄を拘束されるため「一時的な釈放である」といえるでしょう。
これに対して勾留されたが不起訴処分になったときは、そこで刑事手続が終了し、同じ事件で再び身柄を拘束されることはありません。つまり「永久に釈放された」といえます。
【保釈】
裁判で判決が出るまでの一時的なものであり、永久に続くことはありません。裁判で実刑判決がくだった場合や、保釈期間中の遵守事項に違反した場合には再び身柄を拘束されます。 -
保釈と釈放の違い③|請求の有無
【釈放】
釈放されるかどうかは検察官や裁判官などの決定にかかっています。被疑者や被告人が請求したから釈放されるという性質のものではありません。
【保釈】
被告人の権利として請求することができます。 -
保釈と釈放の違い④|保釈保証金の有無
【釈放】
金銭の支払いは必要ありません。
【保釈】
保釈されるには保釈保証金が必要です。
保釈の目的とは
「保釈」という言葉を聞いたことはあっても、詳しい意味までは分からない方が多いかもしれません。また、保釈制度には、どういった目的があるのでしょうか。
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保釈とは
保釈とは、保釈保証金の納付を条件に、起訴された被告人の勾留を一時的に解く制度です。
保釈について「お金を払って許してもらえる制度」と誤解しているケースがあるようですが、保釈されたからといって犯した罪が消えるわけでも、刑が免除されるわけでもありません。
保釈中の遵守事項を守らなければ保釈が取り消されますし、保釈中に開かれた刑事裁判で実刑判決がくだれば身柄を拘束され、刑務所へ収監されます。 -
なぜ保釈させる? 保釈の目的
保釈の目的は、被告人の社会生活を維持しながら、裁判所への出廷を確実なものとすることです。
刑事裁判では、有罪が確定するまでは「罪を犯していない人」として扱わなければならないとする原則があります(無罪推定の原則)。しかし起訴後の勾留は、起訴から初公判までのおよそ2か月に加え、判決が出るまで続くことになります。
数か月、数年単位で身柄を拘束されることになるため、被告人が受ける心身への負担と社会生活への影響は甚大です。会社へ行くことはできず、場合によっては解雇され生活の基盤を失うおそれもあります。
本来であれば、無罪推定の原則によって「罪を犯していない人」として扱われるはずにもかかわらず、このような長期にわたって身柄拘束を受け、職を失うおそれまで生じるのは非常に酷な扱いだといえるでしょう。また、起訴されると基本的に取り調べは実施されないため、出廷さえ約束されれば、身柄を拘束する必要性は小さくなります。
そこで、裁判所への確実な出廷を条件に、裁判で判決が出るまでの期間は暫定的に身柄を釈放しようとするのが保釈の趣旨です。
保釈が認められると長期の身柄拘束を回避し、会社へ行くこともできるため、社会復帰が円滑に進みやすくなります。 -
保釈期間中は普通の生活できる? 保釈中の制限
保釈期間中は基本的に普段どおりの生活を送ることができます。家族と自由に過ごせますし、会社や学校に行くことも可能です。弁護士と打ち合わせをするなど刑事裁判に備えることもできます。
ただし完全に自由というわけではなく、必ず遵守するべき事項が設けられています。違反すれば保釈保証金を没取されたうえで保釈を取り消されるので注意が必要です。
刑事訴訟法第96条では、保釈を取り消すことができる5つのケースを定めています。
【保釈を取り消すことができる5つのケース】
- 裁判所からの呼び出しがあったのに正当な理由なく出頭しない
- 逃亡を図るおそれが生じた
- 証拠隠滅を図るおそれが生じた
- 事件の関係者やその親族の身体・財産に危害を加えようとし、または畏怖させる行為をした
- 住居の制限など、裁判所が定めた条件に違反した
たとえば保釈中に引っ越しをする場合や、長期の出張や海外旅行、3日以上の国内旅行をする場合には、事前に裁判所に申請する必要があります。また、被害者に謝るために会いに行ったり、共犯者と接触を試みたりすることも、禁止されています。
保釈の条件
保釈には「権利保釈」「裁量保釈」「義務的保釈」の3種類があります。それぞれ保釈が認められる条件は異なります。
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権利保釈が認められる条件
権利保釈とは、法律上の除外事由に該当しない限り、必ず認められる保釈をいいます。
具体的には、6つの要件にひとつも該当しなければ認められます。ひとつでも当てはまれば認められません(刑事訴訟法第89条)。
・重大犯罪であること
死刑または無期懲役もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯したものであるとき
・重大犯罪の前科があること
前に死刑または無期懲役もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮にあたる罪で有罪判決を受けたことがあるとき
・常習犯であること
常習として長期3年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯したものであるとき
・証拠隠滅のおそれがあること
罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
・被害者や証人などに危害を加えるおそれがあること
被害者や証人、その親族の身体や財産に危害を加え、または畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
・被告人の氏名または住居が分からないこと
ホテルに仮住まいしていたり、知り合いの家を泊まり歩いていたりなど、定まった住居地がないこと
たとえば、初犯で殺人や強盗などの重大事件ではない、同居の家族がいる、示談が成立しており被害者からの許しを得ている、といったような場合には、これらの要件に該当せず権利保釈として認められることもあります。
ただし注意が必要なのが「証拠隠滅のおそれがあること」です。この点については検察官や裁判官は幅広く捉えるため、事件を否認している場合などで該当する可能性があります。もちろん、事実でないことを認める必要はありませんが、事実なのにむやみに否認すれば、保釈が認められにくくなる可能性があるわけです。 -
裁量保釈が認められる条件
権利保釈が認められない場合でも、裁判所の職権により保釈が認められる場合があります。これを「裁量保釈」といいます(刑事訴訟法第90条)。
裁判所が裁量保釈を認めるかどうかは、犯罪の軽重や前科前歴、身元引受人の有無や職業、健康状態など、さまざまな点を考慮して決定します。たとえば勾留されると持病が悪化するおそれがある、会社の経営者なので経営が立ち行かなくなるといった事情がある場合には、裁量保釈が認められる可能性があります。 -
義務的保釈が認められる条件
義務的保釈とは、勾留が不当に長くなったときに、被告人や弁護士などからの請求により、または裁判所の職権により認められる保釈をいいます(刑事訴訟法第91条)。
もっとも、勾留を許可するのは裁判官なので、勾留が不当に長くなるケース自体が考えにくいものです。そのため義務的保釈が認められるケースはほとんどありません。 -
保釈金(保釈保証金)の支払い
保釈の種類を問わず、原則として保釈金の支払いが必要です。
保釈金は、被告人を期日どおりに裁判に出席させ、逃亡や証拠隠滅を防いで適正に裁判を行うための一時的な預かり金です。判決内容は関係ないため、たとえ有罪判決がくだったとしても、条件を満たせば全額が返還されます。 -
身元引受人は必要?
法律上、保釈における条件に身元引受人は含まれていません。しかし、適切な身元引受人がいれば逃亡や罪証隠滅を図るおそれがないと示せます。そのため、身元引受人がいることは、保釈における事実上の条件ともいえるでしょう。
保釈の手続き
保釈の手続きは起訴された後から開始します。
裁判所に対し、保釈請求書を提出します。その際に身元引受書や示談書の写し、親族や会社関係者からの嘆願書などの書類も添付します。
・裁判官による審査
次に裁判官が保釈の可否を決定するために審査します。このとき担当の検察官に対し、保釈に関する意見を求めます。弁護士と面会する場合もあります。
検察官の意見も踏まえ、裁判官が保釈の可否を決定します。決定が出る時期は事件や請求のタイミング、判断する裁判所の事情などによって異なりますが、請求した翌日から2日程度、土日祝日をはさむと1週間程度かかることもあります。
・保釈の決定
保釈が許可されると、保釈保証金の金額と保釈中の制限事項が伝えられます。弁護士を通じて裁判所に保釈保証金を納付し、保釈されるという流れです。
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保釈金(保釈保証金)の額は、どのように決まる?
保証金の額は被告人の経済力や想定される判決によって大きく異なります。
被告人にとって逃亡を思いとどまらせる金額である必要があるため、被告人の経済力に左右されます。たとえば年収1億円の被告人と年収200万円の被告人を比べたときには、前者の保証金が高額になりやすいということです。
また重大事件や再犯で厳しい量刑が予想される場合には、逃亡したいとの考えに至りやすいため高額になります。 -
保釈金が支払えないときは、どうすれば良い?
保釈金の支払いは保釈が認められるための要件となるため、支払えない場合、当然ながら保釈は認められません。
ただし、支払いが難しい場合に利用できる制度として、「日本保釈支援協会」の立て替え制度や「全国弁護士協同組合連合会」の保釈保証書発行事業があります。
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保釈を請求できるのは弁護士だけ?
保釈の請求ができるのは、被告人本人または弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族もしくは兄弟姉妹です(刑事訴訟法第88条)。
本人や親族が保釈の請求をすること自体は可能ですが、法的な要件などを精査する必要があるので、現実的には難しいでしょう。保釈を請求する法的な理由を明らかにしたうえで、裁判官に逃亡・証拠隠滅のおそれがない旨を理解してもらう必要があるからです。
本当に保釈を望むのであれば、手続きは弁護士へ依頼するべきです。弁護士であれば保釈が認められやすい請求書の書き方を理解し、身元引受人の用意など保釈に有効な対策も心得ています。担当の裁判官と面接して意見を述べ、保釈の可能性を高めることもできます。 -
保釈が却下されたら諦めるしかない?
裁判官が保釈請求を却下した場合は、準抗告による対抗が可能です。
準抗告とは、裁判官が下した決定に対して不服申し立てを行う手続きで、準抗告が認められれば保釈が許可されます。
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実際に保釈が認められている割合は?
法務省が発行している「令和5年版犯罪白書」によると、令和4年の保釈率は次の通りです。決して高い割合ではないですが、地方裁判所は平成15年を境に、簡易裁判所は平成16年を境に、保釈率は上昇傾向にあるようです。
- 地方裁判所:保釈人員 9891人(保釈率32.2%)
- 簡易裁判所:保釈人員 285人(保釈率17.9%)
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保釈してほしい。弁護士に依頼するときに知っておきたいこと
保釈を望むのであれば、手続きは弁護士へ依頼するべきといえます。しかし、どのように弁護士を探せばいいのか、分からない方が大半でしょう。弁護士を探すために、最低限知っておきたいことを説明します。
弁護士には、国選弁護人と私選弁護人がいます。
国選弁護人は「国選弁護人制度」に基づき、資力が乏しく、私選弁護人を依頼できない被疑者・被告人に関して、国が費用を負担し、裁判所または裁判官によって弁護士を選任します。起訴されている場合に選任されるのは「被告人国選弁護人」です。
一方、私選弁護人とは、本人やその配偶者などの家族、法定代理人などが選任する弁護人です。費用はすべて自己負担となるため、どの弁護士を選ぶのかも、依頼するタイミングも、すべて自由に決めることができます。
私選弁護人の場合は、刑事事件の経験が豊富で実績がある弁護人を選ぶことができますが、国選弁護人の場合は、指定することはできません。そのため、保釈請求をした経験がほとんどない、刑事弁護は専門外といった弁護人が選任される可能性もあります。
保釈請求だけではなく、その後に控えている刑事裁判を見据えると、費用はかかりますが私選弁護人に依頼するのが望ましいでしょう。弁護士に依頼する場合、費用としては着手金と報償金が発生するのが通常です。
保釈請求を依頼する場合、刑事弁護もあわせて依頼するのが一般的ですが、起訴されている事件の場合は費用が高くなる傾向にあります。
どのタイミングで依頼したか、どのような事案かなど、個別ケースごとに金額に幅があるため、初回の相談時に全体でかかる費用の内訳をしっかりと確認することが大切です。不明な点は、弁護士へ質問してください。
ベリーベスト法律事務所の刑事専門チーム
ベリーベスト法律事務所には、刑事事件を得意とする弁護士による刑事事件専門チームがあり、定期的な勉強会、事件処理の検討会などを通じて、経験やノウハウが共有されています。こういった体制が、専門性の高い刑事弁護を行うことができる理由のひとつです。
また、刑事事件の手続きや流れを知り尽くした元検事の弁護士が在籍しているので、保釈請求はもちろんのこと、裁判時に検察側がどのような主張をしてくるか、予測しながら対策を講じることができます。
「保釈してほしい」「保釈できるのか知りたい」「裁判が不安」などのご状況にいる場合は、ぜひベリーベスト法律事務所 刑事専門チームへご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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