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訴えるとは? 訴えられたらどうなる? 刑事事件の起訴や告訴の意味
トラブルの相手から「訴える」と言われれば、多くの人は漠然とした不安を抱えるものです。たとえばSNSで誹謗中傷をした相手から「名誉毀損で訴える」と言われてしまい焦っている……。昨今ではこのようなケースも少なくないでしょう。
では「訴える」とは、そもそもどんな意味なのでしょうか?訴えられると何が起こり、訴えられた人は今度どうなるのでしょうか?
本コラムでは「訴える」の法的な意味や訴えられた後の流れ、訴えられた場合の対応方法について、起訴や告訴などの法律用語を交えながら分かりやすく解説します。
1、刑事事件と民事事件における「訴える」の意味
「訴える」という言葉は法律用語ではなく口語表現なので、実際に何をするつもりなのかは相手方の意思を確認しなければ分かりません。
ただし、一般には「紛争を解決するために裁判所で審理してもらう」といった意味合いを含んでいると考えられます。したがって「訴える」を法律用語に言い換えるのなら、相手には「訴訟を起こす」という意向があるものと推測できます。
訴訟には、刑事訴訟と民事訴訟の2種類があります。
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(1)刑事事件における「訴える」の意味
刑事訴訟とは、犯罪をしたと疑われる人について、有罪か無罪か、有罪ならばどのような刑罰を科すのかの決定を求める手続きのことです。刑事訴訟で訴えられた人を「被告人」と呼びます。
裁判所に対して刑事訴訟を提起することを「起訴」といい、起訴できるのは「検察官」だけです。刑事事件の被害者が、刑事訴訟を提起できるわけではありません。
では被害者は何も行動を起こせないのかと言えばそうではなく、「被害届の提出」や「告訴」によって捜査の発動を求めることが可能です。
被害届の提出や告訴は、警察による捜査を開始するきっかけとなります。警察が犯罪の捜査をしたときは検察官に事件を送致するので、送致を受けた検察官が「訴訟を提起する必要がある」と判断して起訴すると、刑事裁判が開かれることになるのです。
したがって、あなたが刑事事件の加害者であり、被害者から「訴える」と言われた場合は、被害者が被害届の提出や告訴を示唆しているのだと考えればよいでしょう。 -
(2)民事事件における「訴える」の意味
民事訴訟とは、原則的には私人の間で起きたトラブルについて、裁判所に解決を求めるための手続きです。金銭問題や離婚問題、労働問題などのさまざまなトラブルがあります。
民事訴訟で訴えられた人を「被告」、訴えた人を「原告」といいます。刑事訴訟と異なり、民事訴訟は誰でも提起できます。
あなたが犯罪以外のトラブルの相手から「訴える」と言われた場合は、相手が民事訴訟を検討していると考えればよいでしょう。
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2、刑事事件で訴えられた場合どうなる?
刑事事件の加害者が被害者から「訴える」と言われた場合、どのような流れで刑事裁判に至るのかを見ていきましょう。
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(1)刑事裁判が開始されるまでの流れ
刑事事件の被害者が訴える、つまり被害届の提出や告訴をすると、警察が事件の捜査を開始します。警察が被疑者を特定すると、逮捕や取り調べをおこない、事件を検察官へ送致します。
送致を受けた検察官も取り調べを実施し、逮捕している場合には、必要に応じて裁判官へ勾留(身柄拘束のこと)を請求します。検察官は勾留期間の満期までに起訴・不起訴を判断し、起訴すれば刑事裁判が開かれるという流れです。
なお、公然わいせつ事件や薬物事件のように、被害者が存在しない事件の被疑者となった場合は、被害届の提出や告訴なしに立件されます。警察は通報や内偵調査などによって被疑者を特定し、独自に認知したものとして事件を送致します。その後の流れは被害者がいる事件と同様です。 -
(2)在宅捜査の場合
刑事事件の被疑者になると必ず逮捕されるわけではなく、逮捕されずに捜査が進められる場合もあります。これを「在宅捜査」といい、被疑者は普段どおりの生活を送りながら、警察や検察官からの呼び出しにその都度応じて、取り調べを受けることになります。
在宅捜査の場合でも警察は検察官に事件を送致しますが、逮捕した事件のように被疑者の身柄を拘束しているわけではないため、関係書類のみを引き継ぎます。これは書類送検と報道されることがあります。
在宅捜査となった場合でも、逮捕されたときと同様に、検察官が起訴すれば刑事裁判が開かれます。
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3、告訴が訴訟要件となっている親告罪とは
検察官が刑事訴訟を提起するために被害者の告訴が必要な犯罪があります。「親告罪」といい、たとえば名誉毀損(きそん)罪(刑法第230条)や侮辱罪(第231条)、器物損壊罪(第261条)などの犯罪が該当します。
親告罪には「告訴期間」が設けられており、被害者などの告訴権をもつ人が犯人を知った日から6か月です(刑事訴訟法第235条)。
つまり親告罪では、被害者などが犯人を知ってから6か月以内に告訴しない限り検察官は起訴できず、刑事裁判が開かれることはありません。これに対して非親告罪では、被害者が告訴しなくても検察官が起訴する可能性があります。
なお、そもそも告訴とは、告訴権をもつ人が捜査機関に対して犯罪の被害を申告し、かつ犯人の処罰を求める意思表示のことです。被害の申告にすぎない被害届の提出と異なり、告訴は処罰意思が含まれている強力な手続きであり、必ず捜査が始まって送致されます。
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4、刑事事件で訴えられそうなら弁護士へ早急に相談を
親告罪、非親告罪のいずれにしても、捜査が開始されれば逮捕・起訴される可能性が生じます。これを回避するためには早急に弁護士へ相談し、サポートを求めることが大切です。
弁護活動の一例として、被害者がいる事件で有効なのは示談交渉です。刑事事件の示談とは、被害者に謝罪と被害弁済をおこない、許しを得ることをいいます。
示談は加害者本人がすることも可能ですが、被害者に直接接触すれば脅迫と捉えられかねず、そもそも被害者の連絡先を知らないケースも多数です。弁護士であれば検察官を通じて被害者の連絡先を入手し、被害者の警戒心を和らげたうえで示談交渉を進めることができます。警察が事件を認知する前に、被害届や告訴状を提出しない旨の約束を含めて示談が成立すれば、事件化を回避できる可能性が高まります。
ほかにも、警察から事情を聴かれたときの対応方法や今後の見通しをアドバイスする、捜査機関に対して被疑者の有利な情状を示して逮捕・勾留を回避するなど、訴訟を提起される前に弁護士ができる活動は多岐にわたります。
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5、まとめ
「訴える」は「訴訟を提起する」という意味で使われることが多い言葉です。ただし刑事事件で訴訟を提起できるのは検察官だけなので、被害者から「訴える」と言われた場合は、被害届の提出や告訴をするという意味だと考えられるでしょう。刑事事件で訴えられると逮捕・起訴の可能性が生じるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、適切な対応をとる必要があります。
「訴える」と言われてお困りならベリーベスト法律事務所へご相談ください。事件化や逮捕の回避に向けて、全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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