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禁錮(禁固)刑と懲役刑の違いとは? 罪の重さや有期刑と無期刑の違い
令和2年版犯罪白書によると、令和元年に確定した裁判のうち無期懲役刑が16人、有期懲役刑が4万6086人、有期禁錮刑が3076人だったそうです。圧倒的に懲役刑の裁判確定人員が多数ですが、禁錮刑の人員も少なくありません。
懲役刑・禁錮刑が確定した場合は、いずれも身体の自由を拘束されますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
本コラムでは禁錮刑と懲役刑との違いや、有期刑と無期刑の違いなどについて弁護士が解説します。累犯との関係や執行猶予付き判決を獲得するための弁護活動についても見ていきましょう。
1、禁錮(禁固)刑と懲役刑の違い
禁錮刑と懲役刑の違い、同じく身体の拘束を伴う拘留との違い、および刑の重さについてまずは確認していきましょう。
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(1)懲役刑とは
懲役刑とは、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰のことを指します(刑法第12条)。「所定の作業」とは刑務作業のことですが、その内容は次の通りです。
● 目的
刑事施設内で刑を執行すると同時に、規則正しい生活や勤労意欲の養成、職業的技能などの付与によって、円滑な社会復帰を促進する
● 実施場所
全国75の刑事施設(刑務所、少年刑務所および拘置所)
● 種類
生産作業、社会貢献作業、職業訓練、自営作業の4種類
● 作業時間
矯正指導を行う時間と合算した1日8時間
● 作業報奨金
1か月あたりの平均支給額は約4260円で、原則として釈放の際に支給されるが、刑務所内で必要となる物品の購入や家族の援助等に使用することも可能 -
(2)禁錮刑とは
禁錮刑とは、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰です(刑法13条)。懲役刑と異なり所定の作業に従事する必要はありません。つまり、規則的労働を義務付けずに身体の拘置を行う自由刑です。
禁錮刑は歴史上、政治犯罪などを対象として行ってきた性質をもつ刑であるため、規則的労働が強制されなかったという経緯にもとづきます。もっとも、禁錮受刑者も希望すれば刑務作業を行うことは可能です。 -
(3)拘留とは
拘留とは、1日以上30日未満の期間、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰です(刑法16条)。禁錮刑と同様、刑事施設内における規則的労働がない自由刑です。禁固刑との違いは、拘置される期間が30日未満であれば拘留、30日以上なら禁錮刑となります。
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(4)罪の重さの違い
主刑の種類と重さは、刑法9条と10条に規定されており、次の通りです。
- 死刑
- 懲役
- 禁錮
- 罰金
- 拘留および科料
これらの主刑以外に、付加刑として「没収」があります。
上記に記載した刑の種類について、それぞれの刑の軽重は、死刑がもっとも重く、上から下に順を追うにつれて刑が軽くなります。原則として懲役は禁錮よりも重い刑として扱われますが、無期の禁錮と有期の懲役に関しては禁錮のほうが重い刑として扱われます。また、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の2倍を超える場合も禁錮のほうが重い刑として扱われます。
なお、刑法における「長期」とは、規定されている刑期の上限をいいます。
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2、有期刑と無期刑の違い
禁錮と懲役には、ともに有期刑と無期刑があります。
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(1)有期刑とは
刑期が有限である場合を、有期刑といいます。
懲役は刑法12条1項、禁錮は同法13条1項において、ともに下限が1か月、上限が20年と定められており、裁判で有期刑を言い渡す場合にはこの期間内で刑期が決められます。ただし、死刑や無期懲役、無期禁錮を減軽して有期の懲役または禁錮にする場合については、期間を30年まで延ばすことができます。
一方、減軽する場合には1か月未満まで短縮することが可能です(刑法第14条2項)。
なお、有期刑の場合、その期間の3分の1を経過した時点で刑期満了前であっても受刑者に改悛(かいしゅん)の情があると認められた場合には、仮釈放制度が認められています(刑法第28条)。 -
(2)無期刑とは
刑期に期限がない場合を、無期刑といいます。期限を決めずに収監するという刑罰で、死刑に次いで重い刑罰です。日本の無期刑については、仮釈放制度により途中で出所する可能性がある点で、仮釈放を認めない終身刑とは異なります。
無期刑で仮釈放を行う場合、要件として拘置後10年の経過が必要です(刑法第28条)。しかし、平成30年に仮釈放が認められた10人については、全員が収容後35年以上経過しているというデータが示す通り、簡単に釈放は認められず死刑に次ぐ重い刑罰であることに違いはありません。
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3、禁錮刑と累犯の関係
有罪判決を受けた後に再び罪を犯すと刑罰が重くなる場合があり、このことを累犯加重(るいはんかちょう)といいます。
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(1)累犯とは
累犯とは、一般的には犯罪を繰り返すことをいい、刑法上では再犯と三犯以上の累犯があります。
● 再犯
懲役に処せられた者が、その執行が終了した日またはその執行の免除を得た日から5年以内に、さらに罪を犯して有期の懲役刑に処せられる場合のことです(刑法第56条1項)。
● 累犯
再犯が3回以上続く場合のことです(同法59条)。
再犯や累犯にあたる場合、その刑は各犯罪規定に定められた懲役の長期の2倍以下で決められます(刑法第57条)。
なお、執行猶予期間中に罪を犯した場合は累犯とはなりません。この場合は前刑の執行猶予を取り消しの上、新たな犯罪の刑も加算されます。 -
(2)禁錮刑は累犯加重にあたらない
累犯刑罰が適用されるのは、以前に懲役刑に処せられ、なおかつ新しい罪についても懲役刑に処せられる場合に限定されます。つまり、前刑が禁錮や罰金であった場合、あるいは新しい犯罪についての刑が禁錮や罰金であった場合には累犯加重の適用はありません。
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4、執行猶予に向けた弁護活動が大切な理由
懲役・禁錮刑にあたるような重罪を犯すと、起訴を避けられないケースが少なくありません。日本の司法における起訴後の有罪率は極めて高いため、起訴されると懲役・禁錮刑の言い渡しはほぼ免れないと考えるべきといえます。しかし判決に執行猶予が付けば、社会の中での更生を図ることができます。
では、どのようなケースで執行猶予を獲得できる可能性があるのでしょうか。
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(1)執行猶予とは
執行猶予とは、刑の執行を一定期間猶予し、その期間中に再び罪を犯さないことを条件に刑罰権を消滅させる制度です。執行猶予が付いた場合、禁錮刑や懲役刑であっても刑務所に入る必要はありません。判決後も従来通りの日常生活を営みながら、社会の中で改善更生に励めるという大きな利点があります。
ただし、執行猶予を獲得できるのは、前科がない場合、前に禁固以上の刑に処せられたことがない場合、前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処さられたことがない場合等の一定の条件に当てはまり、かつ、今回言い渡される刑が、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金刑にあたる場合のみです(刑法第25条)。 -
(2)弁護士に相談し示談を進める
犯罪を行い逮捕され起訴を免れない場合、執行猶予付き判決を得られるかどうかは最大の焦点になるともいえます。
執行猶予は裁判官が情状によって決めることになりますが、情状に含まれる事項には次のような事柄が挙げられます。
● 被害者との示談
被害者がいる事件の場合、示談が成立したという事実は、犯罪の被害が回復されたことを示すと同時に、被害者が加害者を許しただろうこともうかがえます。そのため、示談が成立したかどうかは、情状面で非常に重視される点でしょう。
ただし被害者は、処罰感情や嫌悪感情により加害者やその家族からの示談交渉を拒むケースが多いため、加害者が直接示談交渉を行うのは困難であり、新たなトラブルの火種にもなりかねません。示談の成立を目指すなら、弁護士に一任して進めるのが賢明です。
● 贖罪寄付(しょくざいきふ)
被害者がいない、あるいは被害者との示談ができない刑事事件などについては、反省し心を入れ替えたことを示すために「贖罪寄付」を行うことも検討できます。
● 再犯防止に向けた環境整備
家族や職場の上司などの適切な人材が被告人を監督することを約束すること、また再犯防止に向け、治療や専門家によるカウンセリングを受けることを誓約するのも有効です。
これらの取り組みを効果的に行うには、弁護士と相談しながら計画的に進めていく必要があります。
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5、まとめ
禁錮刑が言い渡された場合、懲役刑と同様に身柄を拘束され、社会から隔離された生活を送ることになります。ご自身はもとより、ご家族の人生にも大きな影響を与えることは必須です。
刑事裁判において懲役・禁錮刑のどちらが選択されるのか、さらに執行猶予が付くのかについては裁判官の判断にゆだねられます。執行猶予の獲得や刑の減軽に向けた取り組みは弁護士のサポートが不可欠なので、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することが得策といえます。
刑事事件を起こしてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご相談ください。
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