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弁護士コラム

2021年05月17日
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警察と検察の事情聴取の違い、刑事事件と行政処分の聴取の違い

警察と検察の事情聴取の違い、刑事事件と行政処分の聴取の違い
警察と検察の事情聴取の違い、刑事事件と行政処分の聴取の違い

ニュースなどの報道に目を向けると「事情聴取」という用語が登場する機会が多くあります。令和3年3月には、愛知県知事のリコール運動をめぐる署名の偽造疑惑で、県内の市議会議員が警察からの事情聴取を受けていたと報じられました。

このような報道が多いため、事情聴取には「事件に関与した」という印象がありますが、そのほかにも交通違反の行政処分が下される時に「意見の聴取」の機会が設けられます。そのため、聴取という用語に込められた意味を理解するのは難しいでしょう。

このコラムでは「事情聴取」や「聴取」がもつ意味や内容、警察による事情聴取と検察の事情聴取の違い、刑事事件と行政処分の聴取の違いを弁護士が解説します。

1、刑事事件における事情聴取(取り調べ)では何を聞かれるのか?

冒頭で紹介した事例のように、刑事事件の容疑をかけられた人や何らかの事情を知っていると思われる人が警察や検察により「事情聴取」を受けることがあります。捜査機関から「事情聴取をしたい」と要請されると、どのようなことを尋ねられるのか不安を感じる方も多いはずです。

まずは、刑事事件における事情聴取について解説します。

  1. (1)事情聴取の対象となる人

    事情聴取とは、刑事事件について何らかの「事情」を知っている人に対して、その事情を警察や検察が「聴取」することを意味します。事情聴取の対象となるのは、刑事事件の被疑者と参考人です。

    ● 被疑者に対する事情聴取
    犯罪の容疑をかけられている被疑者は、犯罪を認めるか否かなどを含めた事情聴取の対象となります。

    ● 参考人に対する事情聴取
    参考人とは、事件の被害者・目撃者のように犯罪の状況を知っている人のほか、事件について知識をもつ専門家などを指します。これらの人も事情聴取の対象です。
  2. (2)事情聴取では何が行われるのか

    事情聴取では、事件について知っていることを質問されます。被疑者であれば犯罪の認否や動機、方法、経緯、関与などについて厳しく取り調べられることになるでしょう。参考人は、各人が知っていると思われる点についてそれぞれ詳しく事情を尋ねられます。

    事情聴取において述べた内容のうち、犯罪の立証に有効な供述がある時は、供述が録取され供述調書が作成されます。供述調書とは、警察官や検察官(検事)が被疑者・参考人から聴き取った内容を整理して一人称で作成する捜査書類のひとつです。

    警察官や検察官が作成し、読み聞かせ、供述人が内容を閲覧したうえで誤りがないことを確認し、署名・押印したうえで警察官や検察官が作成者として官職氏名を記入した供述調書は公文書となります。

  3. (3)任意の事情聴取

    事情聴取は警察や検察から求められて任意に対応するものと、逮捕・勾留によって身柄を拘束された状態で対応するものがあります。

    たとえば警察から電話がかかってきて、「聞きたいことがあるので、警察署に来てください。」と出頭を頼まれたら、それは任意の事情聴取です。任意なので、被疑者は警察署への出頭を拒んだり、出頭しても、事情聴取の途中いつでも退去することができます(刑事訴訟法198条1項)。

    もっとも任意であるからといって、事情聴取を拒み続けていると、罪証隠滅や逃亡の可能性があると判断され、逮捕される可能性が高まります。

  4. (4)身柄を拘束されている際の事情聴取

    逮捕・勾留によって警察署内の留置場等で身柄拘束を受けた状態でも事情聴取は行われます。

    警察署や検察庁の取調室などで行われることになり、警察であれば1名の被疑者に対して1~2名の警察官が同室するのが一般的です。

    身柄拘束を受けての事情聴取といえば、早朝・深夜に関係なく一日中行われるようなイメージがあるかもしれませんが、犯罪捜査規範168条3項の規定に基づいて時間が管理されています。

    ● 1日につき8時間を超える事情聴取
    ● 午後10時から午前5時までの間の事情聴取


    この要件に当てはまる事情聴取は、やむを得ない理由があり、事前に警察本部長または警察署長の承認を受けていないと認められません。

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2、黙秘や録音は可能?

事情聴取では「黙秘」や「録音」が認められるのでしょうか?

  1. (1)黙秘は当然の権利として可能

    事情聴取において、被疑者には黙秘することは日本国憲法38条1項によって保障された権利として認められています。事情聴取で全てを黙秘することも、一部を黙秘することもできます

    黙秘権を行使した方がよいか否かは事案によります。罪を犯していないのに容疑をかけられている、いわゆる冤罪事件での事情聴取であれば、黙秘を貫くほうがよい場合もあります。自身の犯罪を認めている事件であれば、黙秘せずに反省を言葉で示す方がよい場合もあります。

    黙秘をするべきか迷ったら、事前に弁護士に相談しましょう。

  2. (2)録音も違法ではない

    事情聴取の様子を録音することは、違法ではありません。ただし、事情聴取の場で「録音してもよいか?」と尋ねても、警察官・検察官は捜査の秘密を理由に許可しないことが多いでしょう。施設自体が録音機器の持ち込みを認めていない場合もあります。

    無用なトラブルを招かないためにも、隠れて録音するのは控え、不安な場合には取り調べの前に弁護士へ相談し、取り調べに対して準備をしたほうがよいでしょう。

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3、行政処分の聴取と刑事事件の聴取

一口に「聴取」といっても、刑事事件における事情聴取と行政処分に関する聴取とでは意味合いが異なります。聴取の種類やそれぞれの違いを確認しましょう。

  1. (1)事情聴取と取り調べは同じもの

    刑事事件における「事情聴取」とは、法律で定められた用語ではありません。刑事訴訟法においては、197条1項が「捜査については、その目的を達するため必要な取り調べをすることができる。」と定めており、これに基づいて警察官や検察官は被疑者や参考人に対して事情徴収を行っています。

    つまり、刑事事件における事情聴取は、法律用語での「取り調べ」と同意義です。取り調べといえば、犯人に対して厳しく行われるものというイメージがつきまといますが、参考人への事情聴取も取り調べの一種です。

  2. (2)行政処分における聴取とは

    刑事事件の事情聴取とは別に、行政処分に関して「聴取」が行われることがあります。交通違反・交通事故による違反点数が累積し、免許取消や免許停止90日以上の行政処分を受ける際には、公安委員会による「意見の聴取」が実施されます。

    意見の聴取は、刑事事件における事情聴取のように「知っていることを話す」のではなく、予定されている行政処分について、異議や個人の事情などの意見や弁明を自由に述べる場です。意見の聴取の結果によっては、行政処分が軽減されたり変更されたりする可能性があります。

    意見の聴取においては、代理人を出席させることができます。代理人となれるのは弁護士に限られませんが、意見の聴取に経験のある弁護士に依頼すると有利といえます。

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4、警察と検察の事情聴取(取り調べ)の違い

犯罪の被疑者になった場合には、警察官・検察官による事情聴取を段階的に受けることになります。警察による事情聴取と、検察による事情聴取の違いを確認しましょう。

  1. (1)警察と検察の事情聴取の違い

    警察も検察も刑事事件の捜査を行う機関である点では共通しています。もっとも警察は刑事事件を第一次的に捜査し、被疑者の特定や証拠の収集といった捜査を進めます。これに対し検察庁は刑事事件を起訴・不起訴とするか決定するために捜査を行う点で違いがあります。

    警察と検察は別の組織ですが、検察は警察から送られてきた事件記録を確認したり、警察を指揮して補充捜査を行わせたりするなどして連携しています。

    被疑者を起訴した検察官は、公開の法廷において被疑者の罪を証明し、裁判所に適正な裁判を求めます。裁判の執行について指揮監督をするのも検察官の役割です。

    このように、警察も検察も、同じ事件について事情聴取を進めるとしても、その目的は組織がもつ役割によって異なるのです。

  2. (2)警察による事情聴取

    刑事事件の容疑をかけられた被疑者は、まず警察による事情聴取を受けることになります。任意の場合は身柄拘束されないまま事情聴取が続きますが、逮捕されると検察官送致までの48時間という限られた時間のなかで、厳しく取り調べられるでしょう。

    逮捕後の限られた時間で聴取できる内容は多くありません。この段階では、主に逮捕事実についての認否や動機・経緯を確認されたうえで、自身の生い立ちや経歴などの身上関係について取り調べられます

  3. (3)検察による事情聴取

    警察から被疑者の身柄と捜査書類を送致された検察官は、さらに自らも被疑者への事情聴取を行います。ここでの事情聴取は、警察で尋ねられた内容とあまり変わりません

    検察官は、送致を受けてからすぐの24時間以内に起訴か不起訴か判断することは困難です。そのため、被疑者をこのまま身柄拘束を続けて捜査を続けるか、釈放して在宅事件とした上で捜査を続けるか検討し、勾留の必要があると考える場合は、裁判所に勾留請求をします。

    裁判官が勾留を許可すると、原則10日間、延長によってさらに10日間、合計で最長20日間まで身柄拘束が延長されます。その間、警察や検察がさらに詳しく事情聴取を進め、最終的に検察官が起訴・不起訴の判断を下すための材料や証拠を集めます。

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5、事情聴取の前に弁護士に相談するべき理由

事情聴取の対象となり、捜査機関からの出頭要請を受けた場合は、直ちに弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

弁護士に詳しい事情と自らが知りうる情報について説明すれば、どのような点を重点的に聴取されるのか、何をどの程度まで話すべきなのか、被疑者であれば黙秘をするべきなのか、アドバイスが得られるでしょう。

また、犯罪の被疑者として事情聴取を受ける場合は、弁護士に依頼することで逮捕や勾留、不当に重い刑罰を科せられるといった不利益を回避できる可能性があります。被害者との示談交渉を進める、検察官・裁判官に本人の深い反省を示す、弁護士の意見書を出してもらう、といった、はたらきかけが有効です。

なお、弁護士に依頼すれば、行政処分に関する意見聴取の代理人として、出席も可能です。免許取消・免許停止を受けてしまうことで仕事に支障をきたすなど、重い処分を回避する必要がある場合には、弁護士に依頼することで処分が軽減できる可能性があります

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6、まとめ

事情聴取は、刑事事件の被疑者や参考人に対して行われるものであり、犯罪の認否や事件に関して知っている情報について、尋ねられる「取り調べ」と同義です。刑事事件に関する事情聴取では、警察・検察と段階的に行われます。

また、似ているものとして、免許取消・免許停止の行政処分に対する意見の聴取が存在しますが、処分について自由に意見や弁明を述べる場であり、その結果、処分が軽減される可能性があります。

刑事事件に関する事情聴取や、行政処分についての意見の聴取を受ける際は、どのように対応すべきなのかを弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

ベリーベスト法律事務所では、豊富な解決実績をもとに事情聴取や意見の聴取に際して、最善の対応についてアドバイスを提供しています。事情聴取では弁護士による任意同行、意見の聴取では弁護士による代理人としての出席も可能なので、まずはお気軽にご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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