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令状が発付されたらどうなる? 令状が発付されたときの対応策も解説
警察・検察官といった捜査機関には独立した捜査権が与えられていますが、捜査目的であれば何でも許されているわけではありません。法令を根拠に任意で進められる捜査がある一方で、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査には、裁判官が発付する「令状」が必要となります。
令状の代表的なものとして挙げられるのが「逮捕状」ですが、裁判所によると、令和2年中には通常逮捕状が7万5498通、緊急逮捕状が6323通、合計で8万1821通が発付されています。単年だけでこれほど多くの逮捕状が発付されていることに驚く方は少なくないでしょう。
本コラムでは、「令状」の種類や目的、逮捕状が発付された場合の流れや対抗策を解説します。
1、令状とは
刑事ドラマや小説などでは、たびたび「令状」という用語が登場します。警察に詰め寄られた容疑者が「令状を見せろ!」と求めたり、刑事が「令状が出ているぞ」と告げたりするシーンを見たことがある方は多いでしょう。
このようなシーンで登場する「令状」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
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(1)「令状」とは
「令状」とは、警察・検察官といった捜査機関からの請求によって、裁判官が捜査の方法や範囲を定めて認める許可状を指す用語です。
捜査のなかには、犯罪の嫌疑がかかっている人の身体や自由を制限しないと達成できないものがあります。警察や検察官にはそれぞれ独立した捜査権が与えられていますが、国民の権利や自由を不当に侵すものであってはなりません。
そこで、一定の強制捜査については、事前に裁判官による審査を受けたうえで、裁判官が発付する令状がなければ捜査が認められないと定められています。これを「令状主義」といい、日本国憲法第33条・第35条において厳格に定められた大原則です。 -
(2)令状が必要な捜査
令状が必要となる捜査は、国民に認められている権利や自由を強く制限する内容の強制捜査です。
犯罪の嫌疑がかかっている人の身体(身柄)を拘束して、警察署等で留置する「逮捕」や、住居などに立ち入って証拠品を捜す「捜索」、身に着けている衣服などから証拠品を捜す「身体検査」、証拠品を押収する「差し押え」などは、原則として令状がなければ認められません。
ただし、目前で犯罪が起きた場合の「現行犯」や、逮捕現場における「捜索・差し押え」のように、強制捜査であっても令状を不要とするものも存在します。
また、聞き込みや張り込み、刑事訴訟法において別に定める捜査関係事項照会などのように、任意のもとでおこなわれる捜査は令状を必要としません。 -
(3)令状の種類
裁判官が発付する令状には、次のようなものがあります。
● 逮捕状
被疑者の身柄拘束を許可する令状です。刑事事件における令状とは逮捕状を指すことが多く、俗称として「切符」などとも呼ばれています。
● 捜索差押許可状
被疑者の居宅など、関係先に立ち入って証拠品を押収することを許可する令状です。俗称として「ガサ状」とも呼ばれています。
● 身体検査令状
被疑者が身に着けている衣服のポケットや身体そのものに対する捜索を許可する令状です。
このほかにも、検証許可状・鑑定処分許可状・勾留状などがあります。なお、聞き込みなどの任意捜査に対して「捜査令状」の提示を求めるケースも散見されますが、任意捜査に応じない人に対して強制的に従わせるような効果をもつ令状は存在しません。
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2、逮捕状が発付されたらどうなる?
裁判官が発付する令状のなかでもっとも代表的なものが「逮捕状」です。
逮捕状が「逮捕を許可するもの」であることは明らかですが、実際に逮捕状が発付された場合はどのような流れで令状が執行され、どのような手続きを受けるのでしょうか?
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(1)逮捕状の記載内容
逮捕状には、刑事訴訟法第200条に基づき次の事項が記載されます。
- 被疑者の氏名・住居
- 罪名
- 被疑事実の要旨
- 引致すべき官公署その他の場所
- 有効期間およびその期間経過後は逮捕することができず令状を返還しなければならない旨
- 発付の年月日
- 裁判官の記名・押印
また、これらに加えて夜間・早朝の執行を許可する旨が記載されることもあります。
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(2)逮捕状が発付されるまでの流れ
警察が犯罪を認知して捜査したうえで、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合は、逮捕状を請求する準備が進められます。
被害届や被害者・参考人の供述調書、各種の捜査報告書や証拠品の謄本などが集められたうえで、警部以上の階級にある司法警察員による逮捕状請求書を添付して、裁判所に逮捕状の発付を請求します。
逮捕状請求を受けた裁判官は、警察が提出した逮捕状請求の形式的な要件や捜査書類を吟味したうえで、逮捕の「理由」と「必要性」を判断します。
逮捕の理由とは被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることを意味し、逮捕の必要性とは被疑者が逃亡・証拠隠滅を図るおそれがあることを意味します。
逮捕の理由と必要性は裁判官が逮捕状を発付するうえで求められる要件であり、これらを満たさない請求については刑事訴訟規則第143条の3の規定に基づいて却下しなければなりません。
ただし、裁判所によると、令和2年における通常逮捕状の発付率は捜査機関が取り下げた件数を含めても約98.5%であり、裁判所が却下した割合は0.1%にも達しません。
捜査機関が逮捕状を請求した場合は、ほぼ確実に裁判官が発付を認めると考えておいたほうがよいでしょう。 -
(3)逮捕状が発付されたあとの流れ
逮捕状が発付されると、有効期間内に通常逮捕が執行されます。
逮捕された被疑者は、まず48時間以内を限度に警察によって身柄を拘束され、警察署の留置場で留置されたうえで取り調べを受けます。
さらに、逮捕から48時間以内に検察庁へと送致され、そこでも検察官による取り調べを受けます。検察官は、送致から24時間以内に被疑者を釈放するか、あるいは勾留を請求しなければなりません。
被疑者の身柄をさらに拘束する必要があると判断すれば、検察官は勾留を請求します。裁判官が勾留を認めると、初回は10日以内、延長請求によってさらに10日以内、合計20日以内を限度に身柄拘束が延長されます。
勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を判断します。起訴に踏み切れば被疑者の立場は被告人へと変わり、刑事裁判を受ける身としてさらに勾留を受けます。保釈が認められない限り、被告人の身柄は刑事裁判を終えるまで釈放されません。
一方で、不起訴となれば直ちに被疑者の身柄は解放されます。刑事裁判は開かれないので、刑罰を受けることも、前科がつくこともありません。
逮捕はあくまでも被疑者の身柄を拘束して適法な刑事手続きを受けさせるための強制処分であるため、逮捕状が発付されて逮捕されたからといって、必ず刑罰が下されるわけではないのです。
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3、令状が発付された場合は弁護士に相談を
自分自身や家族が犯罪の嫌疑をかけられてしまい、令状が発付された場合は、どのように対応するべきなのでしょうか?
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(1)個人での対応は困難!直ちに弁護士に相談を
逮捕状をはじめとした令状は、裁判官が強制捜査を許可した証しです。
令状を手にした捜査員を前に個人がどれだけ対抗をしても、捜査機関が令状の執行を取りやめることはありません。
個人での対応は困難であること、抵抗した場合には、公務執行妨害で現行犯逮捕される可能性もあるため、直ちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。 -
(2)逮捕後は素早い接見が重要
逮捕状が執行されると、逮捕による72時間以内の身柄拘束を受けます。この期間は、たとえ家族であっても面会が認められません。なぜ逮捕されたのか、どのような嫌疑をかけられているのかといった疑問を感じている家族にとっては、もどかしい時間が続くでしょう。
逮捕後の72時間以内に逮捕された被疑者と接見できるのは弁護士だけです。まずは弁護士に依頼して素早い接見を求め、逮捕事実の有無や逮捕の理由について把握しましょう。
逮捕された本人にとっても、早い段階で弁護士のサポートを得ることで、警察・検察官による取り調べに対する正しい行動や、今後の刑事手続きに関する助言が得られます。逮捕されて強い不安を感じている被疑者にとって、精神的に大きな支えとなるでしょう。 -
(3)違法捜査を防ぐためにも弁護士のサポートは必須
逮捕のほかにも、令状が登場する場面は数多く存在します。自宅や勤務先の捜索や証拠品の検証などでは各種の令状が必要となります。ただ、捜査機関が令状によって許可されている範囲を逸脱して違法捜査を進めるケースも散見されるので注意が必要です。
たとえば、捜索差押許可状には「差し押さえるべき物」が記載されており、裁判官が許可していない物品の押収は認められません。裁判官が許可していない物品を捜索差押許可状に基づいて押収すれば違法となります。
また、本来は身体検査令状を要するのに、無令状で衣服のポケット内を捜索し、証拠品を押収するなどの違法捜査も考えられるでしょう。
弁護士のサポートを得ることで、捜査機関の違法捜査を指摘して押収品の証拠能力を否定し、不当に重い刑罰を回避したり、無実の事件で無罪を目指すことのできる可能性が高まります。
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4、まとめ
逮捕状をはじめとした令状は、すべて裁判官が厳しく審査したうえで発付するものです。裁判官が強制捜査を認めた許可状であるため、令状を手にした捜査員を前に抵抗しても執行を拒むことはできません。
令状に基づいて逮捕されてしまった被疑者は、逮捕・勾留による身柄拘束を受けます。直ちに逮捕事実の確認や取り調べに対するアドバイスを得る必要があるので、弁護士のサポートは欠かせません。
自分自身やご家族に対する令状が発付され、逮捕されてしまった場合は、直ちに刑事事件の対応実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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