- その他
- 任意同行
任意同行とは? 拒否するとどうなる? 逮捕の可能性についても解説
刑事ドラマなどでは、刑事が事件の関係者に対して、『任意同行願います』というシーンがしばしば登場します。しかし実際には、任意同行の法律上の意味や拒否できるのかなど詳しいことを知らない方が多いのではないでしょうか。
もし、警察から任意同行を求められたら、そのまま逮捕されるのではないかと、非常に不安な気持ちになるでしょう。
このコラムでは、任意同行の意味や任意出頭との違いを説明するとともに、任意同行は拒否できるのか、任意同行に応じた場合に逮捕されるおそれはあるのかという点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、任意同行とは
まず、任意同行はどのようなときに求められるのか、任意出頭との違いも含めて解説します。
-
(1)任意同行を求められる2つのケース
「任意同行」とは、刑事事件の捜査のために警察官に認められている権限です。法律上、任意同行には2つのケースがあります。
● 行政警察活動としての任意同行
具体的な犯罪の嫌疑はないものの、路上での挙動不審などを理由に警察官が職務質問を行い、警察署や派出所などへの同行を求めるケースが該当します。
警察官は、その場で質問をすることが本人に対して不利な場合や交通の妨げになると認められる場合には、その者に任意同行を求めることができます(警察官職務執行法2条2項)。
● 司法警察活動としての任意同行
すでに窃盗や殺人など具体的な犯罪の嫌疑がある被疑者に対して、警察官が警察署への同行を求めるケースが該当します。司法警察職員や検察官、検察事務官は、犯罪を捜査するために必要があるときは、被疑者に出頭を求めて取り調べることができるとされています(刑事訴訟法198条)。 -
(2)任意出頭との違い
任意同行と混同されやすいのが「任意出頭」です。
任意出頭とは、被疑者や被疑者以外の参考人が、捜査機関からの電話や呼び出し状などの呼び出しに応じ、警察官などが同行しないで警察署や検察庁に出頭することです。参考人とは、事件に関する何らかの情報を持っている者や、事件についての専門的な知識を有している者などのことをいいます。
任意出頭は自分自身で警察署などに出向くことを指すため、警察官が同行する任意同行と比べると緊急性が低い場合に用いられるでしょう。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
2、任意同行は拒否できるのか?
-
(1)任意同行は拒否することが認められている
任意同行は、拒否することが認められています。たとえば、職務質問をされたうえで任意同行を求められたら、『仕事があるので同行できません』などと、同行できない理由を明確に述べてその場を立ち去ることが可能です。
ただし、逃げようとしたり挑発的な態度をとったりするのは得策ではありません。逃げる際などに警察官に暴行をすれば公務執行妨害罪で現行犯逮捕されるおそれもあります。
また、参考人として任意同行を求められた場合も、拒否することは可能です。なお、事情聴取に応じる意思がある場合は、自宅など自分にとって都合のよい場所や日時を指定すれば、配慮してもらえる場合があります。 -
(2)拒否する場合の注意点
任意同行を拒否することは認められているため、違法行為ではありません。
しかし、犯罪の嫌疑がかかった状態で任意同行を拒否し続けると、より嫌疑が深まり事態が悪化するおそれがあります。逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕される可能性もあるでしょう。
むやみに任意同行を拒否すると、不利な状況になる可能性があることを理解しておきましょう。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
3、任意同行に応じて逮捕される可能性はある?
任意同行に応じた場合、そのまま逮捕されることはあるのでしょうか。
-
(1)任意同行に応じたあとの流れ
任意同行に応じると、捜査機関による取り調べが行われます。
取り調べでは事件前後の行動や被害者との関係など事件に関することを質問されます。目撃者や有識者など単なる参考人として呼ばれている場合は、目撃した事実や専門家としての見解などを質問されるでしょう。
逮捕されたあとの手続きについては、検察官送致までに48時間、送致から勾留請求までに24時間など法律上の期間制限がありますが、任意同行にもとづく取り調べについては法律上の期間制限がありません。任意同行が適法であるか否かは、社会通念上許される限度を超えていないかといった観点で、事案ごとに判断されることになります。
なお、任意同行における取り調べについても、あくまでも任意で応じているという状況に変わりありません。そのため、取り調べを受けている途中であっても、自らの意思で取調室から退去することができます。 -
(2)逮捕されるとは限らない
任意同行に応じて取り調べを受ければ、そのまま逮捕されるのではないかと思う方が多いかもしれません。しかし、必ずしも任意同行後に逮捕されるとは限りません。
逮捕をするには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」ことに加え、「逮捕の必要」があるという要件を満たさなければなりません(刑事訴訟法199条)。
ここでいう「逮捕の必要」がある場合とは、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合を指します。また、被疑事実の法定刑が30万円以下の罰金、拘留、科料のいずれかにあたるときには、逮捕できる場合がより限定されています。そのため、たとえ罪を犯したのが事実であっても、逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合や軽微な犯罪の場合には逮捕される可能性は低いでしょう。
刑事事件では、被疑者が逮捕・勾留されない状態で捜査が行われる事件を「在宅事件」、被疑者が逮捕・勾留されて身柄が拘束される事件を「身柄事件」といいます。つまり、任意同行による取り調べで容疑が固まったとしても、必ず逮捕されて身柄を拘束されるわけではなく、在宅事件として捜査が継続するケースもあります。
なお、罪を犯していない場合は、アリバイなどを主張することで嫌疑が晴らせれば、逮捕されることはありません。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
4、任意同行に弁護士を同行させるべき理由
刑事事件で警察から任意同行を求められたら、すぐに弁護士に相談するのが最善策です。弁護士に依頼することで、次のようなサポートを受けることができます。
-
(1)捜査機関に詳細を確認できる
警察は、被疑者を逮捕する場合には逮捕容疑を明確に示しますが、任意同行を求める際に理由をはっきりと示さないことがあります。これでは被疑者として呼ばれているのか、参考人として呼ばれているのかの判断がつかず、適切な対応をとることが難しくなります。
弁護士であれば、警察に対し、どのような立場で呼ばれているのか、どのような嫌疑がかけられているのか、証拠はあるのかといった情報を教えるよう働きかけることができます。詳細がわかれば、今後の対策を検討することができるでしょう。 -
(2)不当な取り調べを抑制できる
弁護士は任意同行に付き添うことができます。精神的な支えとなるだけではなく、弁護士が付き添うことで、不当な扱いや違法な取り調べを抑止する効果が期待できるでしょう。また、取り調べ中に警察官からの質問に困った場合には、弁護士から助言を受けることもできます。
-
(3)逮捕を回避するためのサポートが受けられる
実際に刑事事件を起こしていた場合、任意同行のあとに逮捕されるおそれがあります。しかし、弁護士が付き添っていれば逃亡や証拠隠滅のおそれがない旨を主張することで、逮捕されずに在宅事件となる可能性を高められます。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
5、まとめ
警察から任意同行を求められた場合は、拒否することができます。しかし、拒否することで嫌疑が深まり、逮捕されるおそれもあるため注意が必要です。それぞれの状況に応じて適切な対応をとることが非常に重要なため、早期に弁護士へ相談するのがよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、刑事事件の実績豊富な弁護士が任意同行への付き添いや取り調べに対するアドバイス、被害者との示談交渉など、事件の解決に向けたサポートを行っています。刑事事件を起こしてしまった方や任意同行を求められてお困りの方は、ぜひご相談ください。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。