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証拠隠滅等罪の成立要件や刑罰とは? 証拠を隠すと犯罪になるのか
令和3年3月に発生した男性が殺害された事件について、同年6月、犯人の知人である男性ふたりが証拠隠滅等罪で起訴されました。事件当時、凶器の包丁が入ったカバンを持ち去ったり、犯行現場の血だまりを水で洗い流したりしたとみられています。
証拠隠滅等罪は、この事件のように他人が犯した罪の証拠を隠したり、偽造したり、変造したときに問われるものです。
このコラムでは、証拠隠滅の定義や罪の概要、刑罰の重さ、もし証拠隠滅をしてしまったらどう対応すべきかを、弁護士が解説します。
1、そもそも証拠隠滅とは?
まずは、証拠隠滅等罪における“証拠”と“証拠隠滅”という言葉の意味について解説します。
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(1)証拠の定義
刑事訴訟法317条は、「事実の認定は、証拠による」と定めており、刑事裁判における原則としています。
そのため、捜査機関や検察官、裁判官が下記を判断する上で重要なものとして扱われます。- 罪を犯した疑いがある人物(被疑者)を逮捕するか
- 被疑者を起訴するか釈放するか
- 裁判でどのような判決を下すか
刑事事件における証拠とは、“犯罪の事実があったかどうかを判断するための材料”です。証拠には、凶器などの物品や書類などの物的証拠のほか、証人や参考人などの人的証拠も含まれます。
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(2)証拠隠滅の定義
証拠隠滅とは、証拠を隠したり、破壊したり、捨てたりするなど、証拠としての価値をなくしたり減少させることです。
たとえば、凶器を捨てたり、スマホを破壊したり、書類を燃やしたり、血痕を洗い流したり、パソコンなどのデータを消去したりすることは証拠隠滅といえます。また、被告人や被疑者にとって、不利な証言をする証人を海外に渡航させたり、かくまったりして、出頭させないようにする行為も証拠隠滅にあたるでしょう。
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2、証拠隠滅等罪とは
刑法に定められた、証拠隠滅等罪とはどのような罪なのでしょうか。証拠隠滅等罪の内容について、くわしくみていきましょう。
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(1)証拠隠滅等罪の概要
証拠隠滅等罪は、「他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、もしくは変造」したり、「偽造もしくは変造の証拠を使用」したりする犯罪のことで、犯罪を隠す罪として、刑法104条に規定されています。
証拠を隠滅したら証拠隠滅罪、偽装したら証拠偽造罪、変造したら証拠変造罪となります。そのほか、「犯罪を隠す」罪には、刑法103条の犯人蔵匿等罪(犯人をかくまったり、逃がしたりする罪)があります。 -
(2)偽造や変造とは
証拠隠滅等罪は“偽造”と“変造”の罪についても規定しています。
- 偽造とは……実在しない証拠を新たに作成すること
- 変造とは……実在の証拠に変更を加えること
具体的には、他人の業務上横領罪を隠すために、別の帳簿を最初から作成した場合には偽造、一部の帳簿取引に変更を加えた場合には変造です。
また、犯罪と関係のない物を、捜査機関が遺留品(犯罪の手がかりや証拠)と間違えるように、現場などに置いた行為は、偽造となります。
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3、証拠隠滅等罪の刑罰
証拠隠滅等罪の刑罰の重さは、どのくらいなのでしょうか。また、家族のためにと思って証拠隠滅等罪を犯してしまった場合にも、刑罰が科せられるのでしょうか。
ここでは、証拠隠滅等罪の刑罰についてみていきます。
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(1)証拠隠滅等罪の法定刑
証拠隠滅等罪の法定刑は、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」(刑法104条)です。以前は「2年以下の懲役または20万円以下の罰金」でしたが、平成28年6月施行の刑法改正で引き上げられました。
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(2)親族の犯罪に対する特例
刑法105条は、「犯人または逃走した者の親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)が、これらの者の利益のために(証拠隠滅等罪を)犯したときは、その刑を免除することができる」と規定しています。
刑の免除とは、有罪ではあるものの刑罰を科せられないということです。
なぜなら、親族が自分の配偶者や親、子どもなどのために証拠隠滅などをすることは自然の人情にもとづくものなので、法に背かずに行動できる可能性(期待可能性)は低いと考えられるからです。
ただし、刑の免除は任意的なもので、必ず免除されるというものではありません。また、刑の免除は有罪判決のひとつなので、免除されても前科がつくことになります。
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4、証拠隠滅等罪の成立要件
証拠隠滅等罪が成立するためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
- ① 他人の刑事事件に関する証拠である
- ② 証拠を隠滅・偽造・変造する、または偽造・変造した証拠を使用する
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(1)“他人の刑事事件”とは
自らが犯した刑事事件に関する証拠を隠滅する行為に対して、証拠隠滅等罪は成立しません。犯人が証拠隠滅などをすることは、黙秘権などと同じように防御の範囲であり、犯罪行為に対する期待可能性も低いとされるからです。
この場合の刑事事件とは、起訴されて刑事裁判にかけられている事件だけでなく、起訴前や捜査中、捜査前の刑事事件も含まれます。また、証拠隠滅などの行為の対象となった刑事事件が不起訴となったり、無罪となったりしても、証拠隠滅等罪の成立には影響しません。
なお、犯人蔵匿等罪は罰金刑以上の刑事事件でなければ成立しませんが、証拠隠滅等罪は軽微な刑事事件の場合でも成立します。 -
(2)“偽造・変造した証拠を使用する”とは
偽造・変造した証拠を使用するとは、裁判所や警察・検察などの捜査機関に偽造・変造した証拠を提出するということです。
なお証拠隠滅等罪は、犯人にとって不利になる証拠だけでなく、無実を証明する証拠など、犯人にとって有利になる証拠を隠滅・偽造・変造した場合にも成立します。 -
(3)犯人に依頼されて証拠隠滅した場合は
犯人に依頼されて証拠隠滅を行った場合にも、証拠隠滅等罪は成立します。
ただし、犯人から脅されて無理やり証拠隠滅の手助けをしてしまった場合は、脅迫された故の行為であることを主張することで罪に問われない可能性があります。
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5、証拠隠滅をしてしまったら、弁護士に早期相談を
親族や友人、知人のために証拠隠滅をしてしまったら、まずは早めに弁護士に相談しましょう。証拠隠滅は、適正な刑事手続を妨げる行為なので、たとえ犯人が不起訴となっても、証拠隠滅した人が有罪となってしまうケースもあります。
証拠隠滅等罪で逮捕・勾留されたら、最長で23日間もの間、身柄拘束を受ける可能性があり、会社や学校など、社会生活に支障をきたすことがあります。
弁護士に依頼すれば、逮捕直後からの接見が可能なため、取り調べに対する適切なアドバイスや捜査機関への主張により、不当に長い勾留を回避することが期待できます。また、今後の見通しについて説明を受けることで精神的にも大きな支えとなるでしょう。
親族の犯罪に対する証拠隠滅については、起訴されても刑の免除となる可能性があります。しかし、起訴される前に弁護士が情状を訴えて起訴が回避できれば、前科がつくこともありません。
逮捕・勾留阻止や早期の身柄釈放、不起訴を勝ち取るためには、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
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6、まとめ
証拠隠滅等罪は、犯罪の方法や内容によっては懲役刑となるおそれもある重大な犯罪です。もし、証拠隠滅をしてしまったら、一刻も早くベリーベスト法律事務所にご相談ください。
刑事事件の実績豊富な弁護士が、警察への同行や取り調べに対するアドバイス、検察官への意見書の提出など、適切かつ柔軟な弁護活動を行い、早期釈放のために全力を尽くします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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