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結果的加重犯にあたるのはどんなケース? 成立要件などについて解説
知人と口論になり、殴り合いのけんかに発展して顔面を殴打したところ、知人がよろけて転倒し、打ち所が悪くて亡くなってしまった……。
このような場合、暴行罪や傷害罪ではなく傷害致死罪が成立することになりますが、これを「結果的加重犯」といいます。結果的加重犯とは何を指し、どのようなケースで成立するのでしょうか?
本コラムでは結果的加重犯をテーマに、結果的加重犯が成立する具体的なケースを交えながら概要を解説します。
1、結果的加重犯とは
結果的加重犯とはどのようなことを指すのでしょうか?
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(1)結果的加重犯の成立要件
結果的加重犯とは、基本となる犯罪が成立したあとに、「その犯罪よりも重い犯罪結果が生じた場合に、基本となる犯罪よりも重く処罰する」という考え方をいいます。
たとえば相手の足元に向かって石を投げると暴行罪が成立する余地があります。しかしながら、自分の予想に反して石が相手の身体に当たって怪我をさせてしまった場合は傷害罪が成立することになります。
このように「行為者が意図していた結果以上の重い結果が生じた」場合に結果的加重犯が成立します。 -
(2)予見可能性不要
結果的加重犯が成立するために、「意図していたよりも重い結果が発生することを予見できたことまで必要か(結果について過失は必要か)」については争いがあります。
刑法の考え方には、違法行為をしたことについて行為者を非難できる場合でなければ罰しないという基本原則があります(責任主義)。責任主義の観点からいえば、重い結果が発生することを予見できない場合には処罰されないことになります。
しかし判例は、結果的加重犯が成立するためには、基本となる犯罪の構成要件に該当する行為と重い犯罪結果との間に因果関係があれば足り、重い結果について予見できたことまでは不要という立場を取っています(最高裁判決昭和26年9月20日)。
したがって、行為者が重い結果が生じることを予見できなかった場合でも、結果的加重犯は成立します。
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2、結果的加重犯にあたるケースや判例
どのような場合に結果的加重犯となるのか、実例を交えて解説します。
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(1)結果的加重犯にあたるケース
結果的加重犯の典型は、傷害罪と傷害致死罪です(刑法第204条、205条)。
- 傷害罪……人の身体を傷害した場合に成立し、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。
- 傷害致死罪……人の身体を傷害し、もって死亡させた場合に成立し、「3年以上20年以下の懲役」に処せられます。
たとえば、「怪我をさせてやろう」との意図で相手を殴り、実際に怪我をさせるにとどまった場合は傷害罪が成立します。
一方、殴ったはずみで相手が倒れて地面に頭を打ちつけて亡くなった場合は、本来意図していた傷害の結果よりも重い死亡の結果が生じているため、結果的加重犯が成立します。つまり傷害罪よりも重い傷害致死罪で処罰されることになります。
ほかにも、強盗については強盗致死傷、強制わいせつについては強制わいせつ致死傷といった犯罪が結果的加重犯にあたります。 -
(2)結果的加重犯となった実例
被告人はAほか1名と共謀のうえ、ドラッグストアで化粧品などを窃取したところ、被告人らの犯行に気づいた店長が被告人を追跡し、被告人と店長はもみ合いになりました。被告人はAに助けを求めたため被告人とA、店長の三者がもみ合いになり、その中での暴行により店長は全治14日間を要する傷害を負ったというものです。
第一審は、被告人とAによる2人がかりの暴行の様態は店長の反抗を抑圧するに足りるものであり、被告人とAは逮捕を逃れる目的で店長に暴行を加える旨を共謀したうえで暴行したとして、被告人とAに対し、強盗致傷罪の共同正犯の成立を認めました。
これに対して第二審は、被告人とAは店長に暴行がおよぶことについて意思を相通じたとは認められるが、店長の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えることまでも意思を相通じたとは認められないとし、Aには強盗致傷罪が成立するものの、被告人については、窃盗罪のほか、暴行の結果的加重犯としての傷害罪の限度で共同正犯が成立するとしました。
しかし最高裁は、店長に対して暴行を加えることについての意思にとどまらず、店長の反抗を抑圧するに足る程度の暴行を加えることについても認識認容しつつ、Aと意思を相通じたものと認められるとして、第二審の事実認定は合理性を欠くとして差し戻しの決定をしています。
【補足解説】
窃盗犯が逮捕を免れる目的などで暴行・脅迫をしたときは強盗として扱われます(事後強盗罪)。また強盗罪が成立するには、暴行・脅迫の程度が相手の反抗を抑圧する程度に達している必要があります。
さらに強盗が人の身体に傷害を与えたときは、結果的加重犯として強盗致傷罪が成立します。
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3、結果的加重犯に当たりそうな場合にすべきこと
自分の行為が予期せずに重い結果を生じさせれば、結果的加重犯として重い刑罰を受けるおそれがあります。そのため自分の行為に何らかの犯罪が成立し得る場合はもちろん、結果的加重犯が成立しそうな場合は早期に弁護士に相談し、適切な対応を求めることが大切です。
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(1)不起訴処分や刑の減軽を目指した活動
結果的加重犯では基本となる犯罪が成立していることが前提なので、もともとの行為に故意がなかった場合には、犯罪が不成立となり、不起訴処分を得られる可能性が残されています。
また重い結果が生じることは想定できなかった場合には、犯罪は成立しても、起訴猶予を理由とする不起訴処分になる可能性があります。
客観的証拠をそろえ、検察官に対して説得力をもって主張する必要があるため、弁護士のサポートが不可欠です。 -
(2)被害者との示談交渉
被害者との示談交渉も重要です。示談が成立すると検察官の起訴・不起訴の判断や、裁判官の量刑判断に際して有利な事情として扱われる可能性があります。
しかし結果的加重犯が成立する場合、多くのケースでは被害者の傷害や死亡など重大な結果が生じているため、被害者・遺族の処罰感情が強く、本人やそのご家族による示談交渉は難しいでしょう。
公正な第三者の立場である弁護士が間に入り、粘り強く交渉することで、被害者や遺族に謝罪や被害弁済を受け入れてもらえる可能性が高まるため、示談交渉は弁護士に一任するべきです。
被害者と加害者が全く面識のないような場合において、加害者側が謝罪や被害弁償をしようにも、被害者の連絡先が分からないことがあります。このような場合、弁護士であれば、捜査機関から弁護士限りということで被害者側の連絡先を教えてもらえる場合があります。
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4、まとめ
結果的加重犯とは、基本となる犯罪が成立し、意図しなかった重い結果が生じた場合により刑罰が重い犯罪として処罰することをいいます。
重い結果が生じることを予期できなくても成立する可能性があるため、自分の行為が結果的加重犯に当たりそうな場合は早急に弁護士に相談し、被害者との示談交渉や不起訴・刑の減軽に向けた活動を求めましょう。
刑事事件の対応実績が豊富なベリーベスト法律事務所が全力でサポートします。自分や家族が刑事事件を起こし、結果的加重犯の問題でお悩みであれば、まずはご相談ください。
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