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弁護士コラム

2021年09月30日
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刑事事件の時効とは? 公訴時効と刑罰の消滅時効について解説

刑事事件の時効とは? 公訴時効と刑罰の消滅時効について解説
刑事事件の時効とは? 公訴時効と刑罰の消滅時効について解説

「時効が成立すれば罪に問われない」という法律の定めは多くの方が知っているはずですが、逃亡生活を続けることは容易ではありません。

実際に、昭和57年8月に発生した強盗殺人事件では、容疑者が整形手術を受けたうえで14年11か月もの長期にわたり逃亡し続けた挙げ句、時効成立の21日前で逮捕されています。

しかし、世の中には実際に今日も時効を迎えてこれ以上は責任を追及されなくなった事件が存在しているのも事実です。

本コラムでは、罪を犯してどのくらいの時間が経過すれば時効が成立するのか、犯罪ごとの時効期間や時効成立の効果、重大犯罪の時効延長・撤廃の経緯などについて解説します。

1、刑事事件における時効とは

刑事事件における「時効」という用語は、おもに「公訴時効」を指して使われます。まずは公訴時効とはどのような制度なのか、なぜ公訴時効が設けられているのかなどを確認していきましょう。

  1. (1)「公訴時効」とは

    「公訴時効」とは、検察官が事件を起訴できるまでの時効を指します。

    刑事訴訟法第337条の規定によると、時効が完成した場合は刑事裁判が打ち切られます。これを「免訴」といい、刑事裁判が打ち切られるため刑罰を科せられることはありません。この規定が存在するため、刑事訴訟法のうえでは明文化されていないものの、検察官が事件を起訴する際には「時効が完成していないこと」が要件となっています。

    起訴できなければ、刑事裁判が開かれることも、判決が言い渡されて刑罰を受けることもありません

  2. (2)なぜ公訴時効が設けられているのか

    「時間が経過すれば罪には問われない」という、被疑者にとって有利な制度の存在に疑問を感じている方は少なくないでしょう。法律上あきらかになっているわけではありませんが、公訴時効が設けられているのは次の2つの理由があるからだと解釈されています。

    • 事件から時間が経過することで有力な証拠が散逸してしまい、正確な事実認定が難しくなってしまうため
    • すでに時間が経過していれば、被害者や社会一般が犯人に対して抱く処罰の感情が薄れるため


    これらの理由のほかにも、犯人が一定期間にわたって訴追されないことでその状態を尊重するという考え方や、あらぬ疑いをかけられてしまう方の不安定な状態を解消するために存在するという考え方もあります。

  3. (3)刑の「消滅時効」とは

    刑事事件における時効には、公訴時効に加えて刑の「消滅時効」も存在します。

    刑法第31条は、死刑を除き刑の言い渡しを受けた者について、時効によりその執行の免除を得ると明記しています。刑事裁判で刑の言い渡しを受けても、一定期間にわたってその刑が執行されなかった場合は消滅時効によって刑が免除されるという制度です。

    同法第32条には、刑の種類に応じた消滅時効が定められています。

    • 無期の懲役・禁錮……30年
    • 10年以上の有期懲役・禁錮……20年
    • 3年以上10年未満の懲役・禁錮……10年
    • 3年未満の懲役・禁錮……5年
    • 罰金……3年
    • 拘留・科料・没収……1年


    ただし、刑の言い渡しがあったのに執行されないまま時効が成立してしまうケースはきわめてまれであり、現実的に刑の消滅時効が適用されることはほとんどありません

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2、民事事件における時効との関係

刑事事件における時効を考えるうえで無視できないのが「民事事件における時効」です。

  1. (1)民事事件にも時効が存在する

    たとえば、他人に暴行を加えてケガをさせた場合は、刑法の傷害罪が成立します。一定期間が経過しても検察官が起訴しなければいずれは公訴時効が成立するため、罪を問われることはなくなります。

    ただし、刑事上の公訴時効が成立しても、ケガに対する治療費や精神的損害に対する賠償責任を請求する権利の時効が成立していなければ、損害賠償請求を受けるおそれがあります

  2. (2)民事事件の時効期間

    刑事事件に関連する民事事件の時効は、民法第724条および第724条の2に規定されています。

    【民法第724条】
    不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    • 1 被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき。
    • 2 不法行為の時から20年間行使しないとき。

    【民法第724条の2】
    人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。


    この規定に従うと、たとえば傷害事件の場合は「相手がどこの誰かを知っている」というケースでは5年間で民事上の時効が成立することになります。一方で、通り魔的な犯行により「犯人がどこの誰なのかわからない」というケースでは、20年間にわたる時効期間が設けられています。

  3. (3)民事事件の時効は「更新」される

    民事事件の時効には「更新」があります。

    更新とは、時効期間の進行が阻止されたうえで、さらに時効がゼロにリセットされる制度です。裁判での請求や支払督促、強制執行や担保権の実行などが終了しても債権が残っている、債務を承認するという3つの事由のいずれかに該当すると、時効が更新されます。
    つまり、刑事事件の被害者が定期的にいずれかの方法を取ることで、民事事件の時効は完成しないことになります。

    時効の更新は民事事件の時効にのみ設けられている制度であり、刑事上の公訴時効には存在しない考え方です。

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3、時効成立直前でも逮捕される?

刑事ドラマや映画などでは、事件の犯人が時効成立の直前に逮捕されるといったシーンが描写されることがあります。たとえば「あと数日で時効が成立する」といった状況でも逮捕されるおそれはあるのでしょうか?

  1. (1)時効直前に逮捕されることはあるのか?

    現実的に、時効があと数日で成立するといった状況で逮捕されるおそれはきわめて低いでしょう。

    通常、刑事事件の被疑者として逮捕されると、警察段階で48時間、検察官の段階で24時間、さらに勾留によって原則10日間、延長によってさらに10日間、合計すると23日間以内の身柄拘束を受けたうえで起訴されます。
    逮捕後の取り調べなどはこの23日間のなかで実施されるため「あと数日」という段階で身柄を確保できても取り調べなどの捜査を尽くす時間的な余裕はありません。

    刑事手続きは刑事訴訟法などの法律に基づいて厳格におこなわれるものです。時効成立が目前であることを理由に省略・短縮が認められるはずもありません。たとえ逮捕に踏み切っても起訴に間に合わないことを考えれば、時効成立が目前の段階で逮捕されるおそれはほとんどないでしょう

    このように考えると、冒頭で挙げた「時効成立の21日前の逮捕」という事例は、法律に則って正しい刑事手続きを経ることができる限界での逮捕だったといえます。

  2. (2)時効直前に起訴された場合はどうなるのか?

    公訴時効は「検察官が起訴できるまでのタイムリミット」です。公訴時効の成立を1日でも超えてしまえば検察官は起訴できなくなりますが、1日でも前の段階で起訴できれば時効は成立しません。

    時効成立前に起訴された場合は、たとえその後に刑事裁判が長引いて刑が確定するまでに何年もの歳月がかかったとしても、時間経過による刑の回避は期待できないことになります。

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4、公訴時効の期間

公訴時効の期間は、刑事訴訟法第250条に規定されており、犯罪ごとに定められた法定刑に応じて決まります。

【人を死亡させた罪であって死刑にあたる犯罪】

  • 公訴時効の適用なし


【人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑にあたる犯罪(死刑にあたるものを除く)】

  • 無期懲役・禁錮にあたる犯罪……30年
  • 長期20年の懲役・禁錮にあたる犯罪……20年
  • 上記2つにあたらない犯罪……10年


【それ以外の犯罪】

  • 死刑にあたる犯罪……25年
  • 無期懲役・禁錮にあたる犯罪……15年
  • 長期15年以上の懲役・禁錮にあたる犯罪……10年
  • 長期15年未満の懲役・禁錮にあたる犯罪……7年
  • 長期10年未満の懲役・禁錮にあたる犯罪……5年
  • 長期5年未満の懲役・禁錮・罰金にあたる犯罪……3年
  • 拘留・科料にあたる犯罪……1年
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5、公訴時効の起算点

公訴時効を計算するうえで重要となるのが起算点です。起算点の考え方を理解していないと、正しい時効期間を計算することはできません。

  1. (1)公訴時効の起算点

    刑事訴訟法第253条1項は、時効の起算点について「犯罪行為が終わったときから進行する」と定めています。つまり、時効の起算点は「犯罪行為が終わったとき」です

    既遂に達した犯罪は、犯罪による結果が発生した時点で犯罪行為が終わったと考えられます。また、未遂に終わった犯罪は、実行行為が終了した時点が起算点となります。

    なお、単独人による犯行ではまさに犯罪行為が終わったときが起算点となりますが、複数の共犯者が存在する場合は、同法第253条2項の規定に従いすべての共犯者に対して「最終の行為が終わったとき」を起算点とします。たとえば、複数の共犯者のうち1人だけが日をまたいで犯行を継続していた場合でも、その1人の犯罪行為が終わったときをもって全員の時効の起算点が決まります。

  2. (2)犯罪によって3種類の起算点が存在する

    公訴時効の起算点は「犯罪行為が終わったとき」ですが、犯罪によって「いつ犯罪行為が終わったのか」が異なります。犯罪行為の終了時期については、次の3つの考え方があります。

    ● 即成犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、それと同時に犯罪行為が終了する犯罪です。即成犯では、犯罪終了後には法益損害の状態が残りません。もっとも典型的な犯罪は殺人罪です。

    ● 状態犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、それと同時に犯罪行為が終了するものの、法益侵害の状態は継続する犯罪です。法益侵害の状態が継続していても、構成要件の範囲内であれば犯罪が終了します。窃盗罪や詐欺罪は、犯人の手に金品が渡るという法益侵害の状態が継続しつつも、構成要件の範囲内で犯罪が終了するため、状態犯の典型例だといえます。

    ● 継続犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、結果が継続する間は犯罪行為が継続する犯罪です。違法な状態が継続している間は犯罪が終了せず、違法な状態が解消されることで犯罪が終了します。監禁罪や不退去罪といった犯罪が典型例です。

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6、公訴時効の計算方法

実際に公訴時効の期間を計算してみましょう。

公訴時効の計算方法は、刑事訴訟法第55条に定められています。
刑事訴訟法では、期間の計算をする場合は初日不算入の原則にのっとって計算をしますが、公訴時効の場合は、例外的に初日を1日目とする初日参入で期間を計算します。
また、公訴時効は「日」で計算するため、起算点となる初日は時間を論じないで「1日」です。犯罪終了が午前0時0分であっても、午後11時59分であっても、同一日のうちは時間を考慮しないという点に注意しましょう。

【想定事例】
令和3年6月1日午後6時に傷害事件を起こした場合。

犯罪が終了したのは傷害の結果を発生させた令和3年6月1日午後6時です。公訴時効の起算点は初日を算入したうえで時間を論じないので「令和3年6月1日」になります。

傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金なので、上限は15年の懲役です。これを刑事訴訟法第250条の規定に照らすと、公訴時効の期間は「10年」になります。すると、令和3年6月1日を起算点に10年が経過した段階で公訴時効が成立することになりますが、公訴時効は「日」で計算するため、日付変更をもって時効成立を迎えます

つまり、この事例で時効が成立するのは、令和3年6月1日から10年が経過した「令和13年6月1日」を迎えた瞬間です。

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7、公訴時効の停止

刑事事件の公訴時効には、民事事件の時効のように更新の概念がありません。ただし、一定の要件を満たす場合は「停止」によってその進行がストップします。

  1. (1)公訴時効が停止される要件

    公訴時効が停止される要件は、刑事訴訟法第255条1項に定められています。

    犯人が国外にいる、または犯人が逃げ隠れているため、有効に起訴状の謄本の送達もしくは略式命令の告知ができなかった場合は、国外にいる期間や逃げ隠れている期間について時効の進行が停止します。

  2. (2)公訴時効の停止が適用された事例

    平成30年12月、私的な投資で生じた損失を自身が会長を務めていた会社に付け替えた容疑で、前会長だった男が逮捕されました。容疑は会社法に定められている特別背任の罪です。特別背任の法定刑は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科なので、公訴時効は7年になります。

    実際に損失の付け替え行為があったのは平成20年であり、すでに10年が経過していたため、本来は公訴時効が成立していたはずです。ところが、逮捕された前会長の男は外国籍であり、海外への渡航歴も頻繁であったことから、東京地検特捜部が渡航歴を調べたところ、時効停止の期間を算入すると公訴時効が未成立であることが判明し、逮捕にいたりました。

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8、時効に似た制度 親告罪の告訴期間とは

公訴時効と似た制度として「告訴期間」が存在します。

  1. (1)「告訴期間」とは

    告訴期間とは、犯罪の被害者などが刑事告訴できるまでのタイムリミットを指します。告訴期間が経過してしまうと、たとえ公訴時効が成立していない段階でも告訴ができなくなるため、犯人は罪を問われません

  2. (2)親告罪の告訴期間

    刑事訴訟法第235条は「親告罪の告訴は、犯人を知った日から6箇月を経過したときは、これをすることができない」と明記しています。

    親告罪とは、検察官が起訴する際に被害者からの告訴を要する犯罪です。名誉毀損罪や器物損壊罪といった親告罪にあたる犯罪では、被害者による告訴がないと検察官は起訴できません。

    さらに親告罪には「犯人を知った日から6か月」という告訴期間が設けられています。犯人を知った日は、犯人の氏名や住所までは正確に特定できていなくても「誰が犯人なのか」を特定できる程度に認識できた時点をもって起算点とします
    一方で、たとえば「いたずらで車を傷つけられたが、どこの誰が犯人なのかわからない」といった状況では「犯人を知った日」が到来しないため、公訴時効の範囲内で告訴期間が継続します。
    また、告訴期間の計算の際には、刑事訴訟法の原則通り初日不算入で計算をします。したがって、「犯人を知った日から6か月」の起算日は、犯人を知った翌日となります。

    公訴時効の期間と親告罪の告訴期間は、期限も起算点も異なるため注意が必要です。

  3. (3)非親告罪の告訴期間

    親告罪にあたらない犯罪を非親告罪といいます。

    非親告罪には、告訴期間が設けられていません。つまり、公訴時効が成立していない限り、いつでも告訴が可能です。ただし、告訴を端緒として捜査を開始する事件では、告訴の形式的な要件の確認や犯罪事実の精査を要するため、一般的な事件と比べると正式な受理までに時間がかかります。
    公訴時効が成立する数週間前に被害者が告訴を望んだとしても、受理の可否の検討や捜査に要する時間的な余裕を考慮すると、受理されない可能性が高いでしょう。

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9、主な犯罪の公訴時効

とくに発生件数が多い犯罪の公訴時効を確認していきましょう。

  1. (1)窃盗罪

    窃盗罪は刑法第235条に規定されている犯罪です。他人の財物を窃取した場合に成立し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

    窃盗罪の刑の上限は10年なので、公訴時効の期間を計算するうえでは「15年未満の懲役」にあたります。これを刑事訴訟法第250条に照らすと、公訴時効は7年です。

    窃盗事件では、指紋・DNAなどの鑑識資料が現場に遺留されるケースが多く、防犯カメラの映像といった証拠も残りやすいので、7年にわたって捜査の手から逃れるのは容易ではないでしょう。

  2. (2)詐欺罪

    詐欺罪は刑法第246条に規定されています。他人を欺いて金品をだまし取ることで成立する犯罪で、10年以下の懲役が科せられます。公訴時効は7年です。

    他人を信頼させて金品をだまし取る犯罪なので、電話番号やメールアドレス、偽の契約書や請求書といった書類から個人が特定されやすい傾向があります。組織的な特殊詐欺などではグループ全員が一斉に摘発されることもあるので、やはり時効成立を期待するのは難しいでしょう。

  3. (3)横領罪

    横領罪は刑法第252条に規定されている犯罪で、他人から預かり保管中の金品を着服することで成立します。法定刑は5年以下の懲役で「10年未満」にあたるため、公訴時効は5年です。

    業務上預かり保管中の金品を着服すると、さらに刑罰が重い業務上横領罪が成立します。法定刑は10年以下の懲役なので、公訴時効は7年です。

    横領罪・業務上横領罪はいずれも被害者と加害者の間に信任関係があるケースが多いので、犯人として特定されやすく公訴時効の成立を待って罪を逃れるのは難しいでしょう。

  4. (4)暴行罪

    他人に殴る・蹴るなどの暴行を加えて相手に負傷がない場合は、刑法第208条の暴行罪となります。法定刑の上限は2年以下の懲役なので、「5年未満」にあたるため、公訴時効は3年です。

    典型的な事例としては、友人や恋人同士、知人の間で口論となって暴行をはたらいてしまったというケースですが、犯人として特定されている以上はいつ事件化されてもおかしくありません。このような関係のうえでは、3年も時効の経過を待つのは非常に難しいので、交渉による和解が必要です。

  5. (5)過失運転致死傷罪

    自動車を運転している最中に、不注意などの過失によって人身事故を起こすと自動車運転処罰法第5条に規定されている過失運転致死傷罪に問われます。

    被害者が負傷した場合の法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。公訴時効の期間を計算するうえでは「10年未満の懲役」にあたるので、公訴時効は5年です。軽症で済んだ場合は情状によって刑が免除される可能性もあるため、正しく自己処理を受ければ厳しい処罰を受けることはほとんどないでしょう。

    ただし、被害者が死亡してしまった場合は「人を死亡させた罪」にあたるため、公訴時効は10年に引き上げられます。

    ひき逃げ事故を起こした場合は、被害者が負傷していれば5年、死亡すれば10年もの長期にわたって捜査の手を逃れなければならないので、時効成立を期待するべきではないでしょう。

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10、殺人罪に公訴時効がない理由

冒頭で紹介した事例では、強盗殺人事件を起こした女が時効成立を目前にして逮捕されていましたが、現在の法律においては殺人罪の公訴時効が撤廃されています。殺人罪をはじめとした凶悪犯罪は、公訴時効という制度の対象外です。

  1. (1)刑事訴訟法改正の経緯

    公訴時効の制度が設けられたひとつの理由として挙げられるのが「時間経過による被害者の処罰感情の低下」です。たしかに、長い時間が過ぎれば、被害者に対する怒りの感情は薄れてしまうのでしょう。しかし、故意の犯罪によって家族が死にいたらしめられた遺族にとっては、怒りや悲しみの感情が癒えることはありません。むしろ、公訴時効という制度があるために「犯人が無罪放免となるのは許せない」と怒りをあらわにする遺族も少なくありませんでした。

    そこで、平成16年の改正刑事訴訟法では、それまで「死刑にあたる罪」についての公訴時効が15年であったところを25年に延長し、さらに平成22年の改正によって「人を死亡させた罪であって死刑にあたる罪」の公訴時効を撤廃しました。改正時点で公訴時効が完成していない犯罪についても改正後の公訴時効が適用されるため、従来であれば犯人の処罰をあきらめなければならなかった事件でも、犯人の処罰が可能となったのです。

  2. (2)公訴時効の撤廃を受けた犯罪

    平成22年の刑事訴訟法改正によって公訴時効が撤廃されたのは、人を死亡させた罪のうち、法定刑の上限が死刑である犯罪です。

    公訴時効が撤廃された犯罪には、次のようなものがあります。

    • 殺人罪(刑法第199条)
    • 強盗致死罪(刑法第240条)
    • 強盗・強制性交等致死罪(刑法第241条3項)


    これらの犯罪は、いずれも法定刑が「死刑または無期懲役」であり、人を死亡させた罪であって法定刑の上限が死刑なので、公訴時効の対象から除外されています。

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11、刑事事件の被疑者になってしまったら

ご自身や家族の誰かが罪を犯し、刑事事件の被疑者となってしまった場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。

殺人罪などの凶悪犯罪を除けば、時間の経過によって公訴時効が成立し、罪に問われない可能性があることは確かです。しかし、捜査の手を逃れながら日常生活を送るのは困難であり、逃亡が長引けば悪質だと判断されてより厳しい刑罰が科せられてしまうおそれがあります。

また、公訴時効の起算点や期間を正確に算出するのは容易ではなく、公訴時効の成立を主張しようにも計算間違いを起こしてしまう危険はゼロではありません。

弁護士に相談すれば、事件の状況から公訴時効の主張が可能なのかのアドバイスが得られるだけでなく、被害者との示談交渉や自首といった前向きな解決方法でのサポートも得られます。早い段階で弁護活動を尽くせば、逮捕された場合の早期釈放や不起訴処分・執行猶予といった有利な処分も期待できるので、ただちに弁護士に相談するのが得策です。

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12、まとめ

「公訴時効」が成立した犯罪は、検察官が起訴できなくなるため罪に問われません。過去に事件を起こしたことで不安を抱えているなら、正確な時効期間の算出や時効成立の可能性についてアドバイスを得るためにも、まずは弁護士への相談をおすすめします。

時効完成にいたらない事件でも、被害者との示談交渉などの弁護活動を尽くせば厳しい刑罰を回避できる可能性があります。捜査の手から逃れながら不安な生活を送るよりも、弁護士のサポートを得て前向きな解決を図るほうが賢い選択となるでしょう。

過去の事件について公訴時効が成立しているのか知りたい、公訴時効の成立を待たずに事件を解決したいと考えるなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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