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組織犯罪処罰法とは? 対象となる団体や刑罰の重さ・定義を解説
犯罪組織の一員として犯罪に関与すると、「組織犯罪処罰法」が適用され刑法が定める刑罰よりも重い刑に処せられる場合があります。たとえば殺人や詐欺、恐喝などよく知られた犯罪が組織的に行われたケースでは、個人が行ったときよりも刑が加重されることになるのです。
本コラムでは、組織犯罪処罰法の概要と主な違反行為、刑罰の内容について解説します。あわせて、平成29年の改正法により新設された「テロ等準備罪」の構成要件や改正の背景も確認しましょう。
1、組織犯罪処罰法とは
組織犯罪処罰法は正式名称を「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」といいます。暴力団の抗争や、犯罪収益を用いた、法人による事業経営の支配などが社会問題になったことを受け、平成11年に制定された法律です。
この法律で規定しているのは、主に3つです。
- 一定の組織的犯罪を行った場合には刑法の規定より重い刑を科すこと
- 犯罪組織の資金源断絶やマネーロンダリング(資金洗浄)の防止を目的に、犯罪収益の流れを規制すること
- 組織的犯罪によって得た収益を没収・追徴すること
たとえば、振り込め詐欺集団の一員になって詐欺行為をはたらいたなど、組織ぐるみの犯罪に関わった場合には、個人が単独で犯罪をした場合よりも重く処罰されることになります。
また、平成29年6月には「テロ等準備罪」の新設を含む改正法が成立しています。テロ等準備罪とは、組織犯罪処罰法第6条の2に規定されている「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」の罪のことです。
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2、組織犯罪処罰法の対象となる団体
組織犯罪処罰法第2条1項によれば、同法の処罰対象となる「団体」は、次のような組織体です。
- 共同の目的を有する多数人の継続的結合体であること
- その目的または意思を実現する行為の全部または一部が、組織により反復して行われるもの
具体的には、暴力団やテロ集団、薬物密売組織、特殊詐欺集団、悪徳商法集団などが該当します。不良仲間がグループを作り恐喝行為などを繰り返した場合なども、組織犯罪処罰法における団体とみなされる場合があります。
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3、組織犯罪処罰法の主な違反行為と刑罰
組織犯罪処罰法第3条では15の犯罪類型について、①団体の活動として、②その罪にあたる行為を実行するための組織により行われたときには、刑を加重する旨を定めています。
15のうち主な罪をピックアップし、単独犯の場合と比べてどのくらい刑が重くなるのかを確認してみましょう。
罪にあたる行為 | 単独犯の場合 | 加重された場合 |
---|---|---|
常習賭博 | 年以下の懲役 | 5年以下の懲役 |
殺人 | 死刑または無期 もしくは5年以上の懲役 |
死刑または無期 もしくは6年以上の懲役 |
逮捕および監禁罪 | 3か月以上7年以下の懲役 | 3か月以上10年以下の懲役 |
強要罪 | 3年以下の懲役 | 5年以下の懲役 |
身代金目的略取等罪 | 無期または3年以上の懲役 | 無期または5年以上の懲役 |
威力業務妨害罪 | 3年以下の懲役 または50万円以下の罰金 |
5年以下の懲役 または50万円以下の罰金 |
詐欺罪 | 10年以下の懲役 | 1年以上20年以下の懲役 |
恐喝罪 | 10年以下の懲役 | 1年以上20年以下の懲役 |
建造物等損壊罪 | 5年以下の懲役 | 7年以下の懲役 |
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4、テロ等準備罪新設の背景
改正法の成立にともない、なぜテロ等準備罪が新設されたのでしょうか。その背景について解説します。
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(1)法改正の背景
日本は安全な国というイメージがありますが、過去にはいくつものテロ事件が起きています。こうした背景から、日本でもテロ集団やその他の組織的犯罪集団による犯罪についての規定を整備する必要があったため、組織犯罪処罰法の改正が検討されてきました。
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(2)TOC条約の締結に必要だった
近年、犯罪の国際化・組織化が進み、世界各地でテロ事件が相次いで発生しています。増大する国際的な組織犯罪に対処するために、平成12年11月の国連総会でTOC条約が採択されました。
TOC条約の正式名称は「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(略称:国際組織犯罪防止条約)です。テロ組織を含む組織犯罪を未然に防止し、これに立ち向かうための国際的な枠組みをいいます。
テロなどの組織的犯罪から国民の生命・安全を守るため、また、国際社会との連携を強化するためにも日本がTOC条約に加盟することは急務でした。
TOC条約では締約国に対し、「重大な犯罪を行うことの合意」または「組織的な犯罪集団の活動への参加」を処罰できるようにするよう義務づけています。しかし、TOC条約加盟以前の日本の法体制では、重大犯罪の計画が明らかになっても、原則として犯罪が実行され、結果が発生するまで処罰することはできず、例外的に未遂罪がある場合でも、実行の着手があるまで処罰することができませんでした。
これでは条約を締結するための条件を満たさなかったため、犯罪の計画・準備段階での処罰を可能とする法整備が必要だったのです。 -
(3)TOC条約が締結された効果
テロ等準備罪の成立を受けて条約締結の要件を満たしたことから、日本は平成29年7月に条約を締結しました。これにより、組織的犯罪の被害の発生を未然に防止することや、国際的な組織犯罪に関する共助要請に、迅速かつスムーズに対応することなどが可能となりました。
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5、テロ等準備罪の構成要件
テロ等準備罪の成立に対して一部では反対意見もあげられました。同罪の成立要件とあわせて、反対意見がでた背景について解説します。
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(1)構成要件
テロ等準備罪の構成要件は、次のとおりです。
- 「組織的犯罪集団」が関与すること
- 重大な犯罪の実行を2人以上で「計画」すること
- 計画をした者のいずれかが計画にもとづき「実行準備行為」をすること
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(2)処罰範囲
テロ等準備罪の処罰範囲は、非常に限られています。処罰されるのは、3つの要件をすべて満たした場合であり、かつ「故意」であることが必要です。また、各要件にはさらに厳格な要件が設けられており、すべてを満たす必要があります。
● 「組織的犯罪集団」とは
① 多人数の継続的な集団である
② 犯罪実行部隊のような組織を有している
③ 重大な犯罪等の実行を目的として集まっている
● 「計画」とは
① 団体の活動として組織犯罪処罰法に規定された対象犯罪を実行するものであること
② 具体的かつ現実的な合意をする
● 「実行準備行為」とは
① 計画とは別の行為であること
② 計画にもとづく行為であること
③ 計画を前進させる行為であること -
(3)共謀罪との違い
共謀罪とは、テロ等準備罪が成立する前に国会に提出されたものの廃案になった法案のことです。共謀罪の構成要件を変更し、さらに政府が呼称を変えたものがテロ等準備罪です。
共謀罪については、次のような問題点が指摘されていました。- 処罰対象を「団体」と定義しているため、犯罪を目的とする団体以外(例:一般の会社や労働組合など)も処罰されるおそれがある
- 対象となる犯罪が多すぎる
- 計画段階で処罰するのは人の意思や内心を処罰することになる
そのため改正法では、処罰対象とする団体を「組織的犯罪集団」に限定し、対象犯罪を絞り込みました。さらに、計画に加えて準備が行われて初めて処罰できるよう変更されています。
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(4)テロ等準備罪に反対の声も
共謀罪法案は、過去に3度国会に提出されたものの廃案になっています。テロ等準備罪も野党などが廃案を求めて強く反発しましたが、与党が強行採決する形で決着しました。しかし日弁連や弁護士会などは、テロ等準備罪は共謀罪と本質的に変わらず、市民の人権や自由を侵害するおそれが強いものとして反対の姿勢を示しています。
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6、まとめ
組織犯罪処罰法は、一定の犯罪が組織的に実行された場合に、刑法の規定よりも重い刑を科す旨を定めた法律です。平成29年の改正ではテロ等準備罪が新設され、犯罪の計画・準備段階で処罰できるようになりました。
もし自分や家族が組織ぐるみの犯罪に関与してしまった場合は、逮捕・起訴され、重く処罰されるおそれがあるため早急に弁護士へ相談しましょう。刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力になります。まずは、ご相談ください。
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