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職務質問は拒否できる? 知っておきたい職質の対処法を弁護士が解説
街頭で警察官に呼び止められて、「何をしているのですか」「バッグの中を見せてください」などと職務質問された場合、拒否してもよいのでしょうか。また拒否すれば逮捕されるのではないかと心配する方もいるでしょう。
職務質問に応じることは任意なので、拒否することも可能です。しかし、対処方法を間違えてしまうと、長時間にわたって引き留められたり、公務執行妨害で逮捕されてしまったりするおそれもあるので、正しい対処方法を知っておくことが大切です。
本コラムでは、職務質問の意味、どのような方が職務質問されやすいのか、職務質問は拒否できるのかといった疑問や、職務質問された場合の対処方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、職務質問とは
まずは、職務質問の意味と法的根拠、どのような方が職務質問の対象者となるのかについて、解説します。
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(1)職務質問を警察が行える法的根拠
職務質問とは、警察官が挙動不審な人物や何らかの犯罪に関係していると思われる人物を路上などで呼び止めて、行き先や用件、住所、氏名などを質問する行為です。
警察官職務執行法(以下、警職法)第2条1項では、「警察官は、異常な挙動やその他周囲の事情から合理的に判断して、次のような者を停止させて質問することができる」と定めています。- 何らかの罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者
- 何らかの罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者
- すでに行われた犯罪について知っていると認められる者
- 犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者
また、警職法第2条2項は、その場で職務質問を続けることが対象者にとって不利であったり、交通の妨げになったりする場合には、「附近の警察署、派出所または駐在所に同行することを求めることができる」と明記しています。
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(2)職務質問の対象者
職務質問は、警職法第2条1項に定める不審事由の要件に該当すると判断した場合に行われます。つまり、警察官が「どこかおかしい」「怪しい」と判断した場合に行われますが、具体的には次のような方が職務質問の対象者となる可能性が高くなります。
- 同じ場所をうろついている
- 引っ越しや配達などの事情はうかがえないのに大きな荷物を持っている
- 体形に合わないスーツや季節に合わない服装など、ちぐはぐな服装をしている
- 夜間、明かりもないのに無灯火で自転車を運転している
- ひと気のない真夜中に一人で出歩いている
- ろれつが回らない
- 暑くない時期に大量の汗をかいている
- 事件の目撃証言などから得られた被疑者の容姿や服装に似ている
- 警察官を避けるような行動をしている
2、職務質問は拒否できるのか
職務質問を拒否できるのか、もし拒否した場合にはどうなるのかについて、みていきましょう。
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(1)職務質問はあくまで任意
職務質問は、逮捕などの強制捜査ではなく、あくまでも警職法第2条1項に定められている不審事由がある場合に行われる任意の警察活動です。職務質問を拒否したことだけを理由に、その場で現行犯逮捕されたり、何らかの犯罪に問われたりするということはありません。
警職法2条3項は、刑事訴訟に関連する法律の規定によらない限り、「身柄を拘束され、またはその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、もしくは答弁を強要されることはない」と定めています。 -
(2)職務質問を断るとどうなるのか
実際に職務質問を受けている場面で、拒否をしてその場を立ち去るのは難しいでしょう。なぜなら、主に以下のような理由があるからです。
① 警察官の疑いをさらに深めてしまう
警察官から職務質問されるということは、挙動不審などの不審事由があると認知されており、何らかの罪を犯しているのではないか、もしくは犯そうとしているのではないかと疑いをもたれている状態と考えられます。
職務質問に拒否したり、すぐに立ち去ろうとしたりすれば、「何かやましいことがあるに違いない」と、警察官は疑いをさらに深めてしまうことになります。さらにしつこく質問を受ける、応援が到着して多数の警察官に取り囲まれるといった状況に発展するおそれが高いでしょう。
② 引き留めるための有形力の行使が認められている
職務質問の目的は、犯罪の予防・鎮圧です。任意だからといって、問いかけるだけで対象者を引き留めることができず、そのまま立ち去ることを認めてしまえば、職務質問の有効性が損なわれてしまうことになります。そのため、対象者が立ち去ろうとした際には、肩に手をかける、腕をつかむなど、強制手段にあたらない範囲で、警察官の有形力の行使が認められています。
どの程度まで有形力の行使を認めるかについては、最高裁は「必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるもの」としています。たとえば、最高裁で職務質問における有形力の行使が認められた行為には、次のようなものがあります。
- 職務質問中に、警察官の隙をみて逃げ出した男を、さらに質問を続けるために追跡して、背後から腕に手をかけて停止させる行為【最高裁 昭和29(あ)101 昭和29年7月15日】
- 交通整理にあたっていた警察官に対してツバを吐いた男に対して、職務質問のために胸元をつかんで歩道上に押し上げた行為【最高裁 平成1(あ)17 平成元年9月26日】
- 覚醒剤中毒をうかがわせる異常な言動を繰り返す男が、自動車を発進させるおそれがあったために自動車のエンジンキーを取り上げた行為【最高裁 平成6(あ)187 平成6年9月16日】
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3、職務質問の内容
職務質問では、「何をしているのか」「どこに行くのか」と質問されたり、免許証など身分証の提示を求められたりすることがあるでしょう。そのほかにも、所持品検査や検査のために尿の提出を求められたり、警察署などへの任意同行を求められたりする場合があります。
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(1)所持品検査
薬物の所持や使用、窃盗、強盗などが疑われる場合には、荷物の中やポケットの中に入っているものの確認を求められる場合があります。職務質問における所持品検査については、警職法に規定があるわけではありませんが、対象者の承諾を得たうえで、所持品検査を行うことが認められているのです。
ただし、必要性や緊急性があるときなど、一定の場合においては、承諾を得ないで所持品検査を行うことが許容されています。たとえば、銀行強盗の嫌疑が濃い男を職務質問している際に、鍵のかかっていないバッグのチャックを開けて中身を見る程度の行為は、適法であると最高裁の判例で認められています(最高裁 昭和52(あ)1435 昭和53年6月20日)。 -
(2)尿検査・提出
挙動不審だったり、言動がおかしかったり、所持品検査で薬物らしきものが発見されたりするなど、薬物使用の疑いが重大である場合には、警察署への任意同行に加えて尿の提出を求められる場合があります。
尿の提出はあくまでも任意ですが、拒否し続けると、警察は裁判所に強制採尿するための捜索差押令状の発付を求めます。令状が発付されると、病院などの採尿に適する場所で強制採尿を受けることになります。 -
(3)職務質問によって逮捕に至った事例
警察の活動には、犯罪の予防・鎮圧を目的とする行政警察活動と犯罪の訴追・処罰の準備のための捜査を目的とする司法警察活動があります。中でも職務質問は行政警察活動にある行為です。
しかし、職務質問と捜査は密接な関係にあり、職務質問を端緒として被疑者として逮捕される件数は少なくありません。「警察白書」(警察庁)によれば、令和4年の地域警察官による刑法犯の検挙人員は11万1877人で、警察による刑法犯の総検挙人員の66%が職務質問から検挙されています。
職務質問によって逮捕に至った例としては、過去、次のような報道がありました。- 夜に無灯火で自転車に乗っていた女に職務質問したところ、常時携帯すべき在留カードを携帯していなかったので、入管難民法違反の疑いで逮捕した。
- 通報があった男に対して職務質問したうえで警察署に任意同行して尿検査を実施したところ薬物反応が出たので、麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。
- ミニバイクに乗った男による連続下着窃盗事件が起きていた管内で、警察官がミニバイクのナンバープレートを隠した男を目撃し、追跡して職務質問したところ女性の下着を所持していたので、任意同行して逮捕した。
4、職務質問を受けた際の対処法
職務質問に応じるかどうかは任意ですが、拒否をすることで、警察官が疑念を強く抱くおそれがあります。腕に手をかけるなどの停止行為が認められているので、その場を立ち去るということも難しいでしょう。職務質問を受けた際には、次のように対処するのが賢明です。
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(1)素直に応じるのが賢明
職務質問された際には、やましいことがない限り、警察官の質問に素直に答えましょう。必要以上に拒否をすればするほど疑念を深めてしまい、余計な時間と労力を費やしてしまうことになります。
もし、仕事などで急いでいる場合には、その理由を述べて名刺など連絡先が書いてあるものを渡すことを提案するのも有効です。
職務質問では、バッグの中身など「所持品を見せてほしい」と言われる場合があります。すみずみまで確認させる義務はないので、自分が見せてもよいと思う範囲で所持品を提示すればよいでしょう。 -
(2)警察官に触れてはいけない
やましいことをしていないのに警察官から職務質問を受けたら腹を立ててしまうこともあるかもしれませんが、冷静に対応することが大切です。立ち去ろうとした際につかんできた手をはらったりして、誤って顔面を叩いたかたちにでもなれば、公務執行妨害罪で現行犯逮捕されるおそれもあります。
公務執行妨害罪は、職務の執行にあたっている公務員に対して「暴行または脅迫」を行った場合に成立します。警察官の身体に触れるほか、職務質問中に次のような行為をした場合には、公務執行妨害罪に問われる危険があります。- 警察官にツバを吐く
- パトカーを蹴る
- 警察官の足元に荷物を投げる
- 警察官につかみかかる
- 警察官に暴言を吐く
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(3)職務質問をした理由を聞いてみる
執拗に職務質問されることを避けるためには、任意の活動であることを確認したうえで、「なぜ自分が疑われているのか」と理由を尋ねてみましょう。威圧的な警察官に対しては、スマートフォンやボイスレコーダーで職務質問の状況を録音したり、動画を撮影したりといった対策で、不当な任意同行・所持品検査・逮捕を抑止できる可能性があります。
職務質問の違法性を裁判で争うことになれば、重要な証拠にもなるでしょう。 -
(4)弁護士を呼ぶ
長時間引き留められたり、複数の警察官に取り込まれたり、無理やり所持品検査が行われたりするなど、不当と感じる職務質問を受けた際には、その場で直ちに弁護士に電話をかけて相談しましょう。
職務質問中に対象者が弁護士や家族など外部の方と連絡することを、警察官が妨げる法的根拠はありません。弁護士に状況を説明し、対処方法についてアドバイスを受けたり、警察官と直接話してもらったりすれば、警察官も慎重になり、そのまま解放してくれる可能性も高くなります。
もし、任意同行を求められたり、逮捕されそうになったりした場合にも、すみやかに弁護活動を開始することが可能です。
5、まとめ
職務質問に応じることは任意なので、拒否することは可能です。しかし、警察官も犯罪を防ぐために職務質問を行っているので、できる限り素直に応じたほうがよいでしょう。
警察官によっては、対応が執拗だったり、威圧的だったりする場合があります。不当な職務質問を受けた際には、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が速やかに対応します。
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