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共犯とは? 共同正犯・教唆犯・幇助犯が成立するケースを解説
複数人が犯罪に関与することを、共犯といいます。一般的な会話のなかでも、共犯という用語が使われることがありますが、法律用語としての共犯とは意味が違います。どのようなかたちで犯罪に関与したのかによって種類や罪の重さが異なるのです。
本コラムでは、共犯の意味や種類、成立要件や刑罰などに触れながら、具体的な罪名別に共犯が成立する典型的なケースを例示していきます。あわせて、共犯事件で弁護士に相談するべき理由を確認しましょう。
1、共犯とは
まずは「共犯」の意味を法的な角度から確認しましょう。
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(1)「共犯」の意味
共犯とは、複数の人物が不法・不正な行為をすることを広く指す用語です。一般的な会話では、秘密を共有した人やいじめ・セクハラ・パワハラなどの事実を知っているのに知らぬ顔をしている人のことも共犯と呼ぶことがあります。
しかし、法律上の共犯とは「2人以上の者がひとつの犯罪に関与すること」を指しています。つまり、不正とはいえ犯罪に至らない行為については、法律上の共犯とはいえません。 -
(2)必要的共犯と任意的共犯
法律上の共犯には「必要的共犯」と「任意的共犯」の2つがあります。
必要的共犯とは、法律によってそもそも複数人が犯罪に関与することが予定されている犯罪です。たとえば、刑法第106条の騒乱罪は「多衆で集合して」という要件があり、単独による犯行は実現しないので、必要的共犯となります。
もうひとつの任意的共犯とは、単独による犯行が想定される犯罪において、複数の者が犯罪に関与することを指します。たとえば、複数人が協力して人を殺害した場合、適用されるのは殺人罪です。刑法の条文では殺人罪について複数による犯行を要件としていないので、任意的共犯にあたります。
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2、任意的共犯の分類
任意的共犯は、関係者がどのように犯罪に関与したのかによって次の3つの種類にわけられます。
- 共同正犯
- 教唆犯
- 幇助犯
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(1)共同正犯
2人以上が共同して犯罪を実行した場合は「共同正犯」になります。
共同正犯の関係にある場合は「すべて正犯」です。正犯とは「主犯」と同じとされ、犯罪を実行して刑事責任を科せられる者を指します。つまり、共同関係のない単独犯であれば「単独正犯」です。
共同正犯は、犯罪に関与した全員が正犯=主犯として扱われます。全員が「自分の犯罪」として実行する意志をもっていることになるため、たとえば複数人で協力してひとりを殺害した場合でも、誰が致命傷を与えたのかに関係なく全員が処罰されます。 -
(2)教唆犯
人を教唆して犯罪を実行させるのが「教唆犯」です。
教唆は「そそのかす」という意味で、自分の犯罪を他人に実行させるという悪質性の高さから、正犯と同じ扱いを受けます。 -
(3)幇助犯
正犯者を幇助すると「幇助犯」となります。
幇助とは、正犯の行為を手助けして犯罪遂行を容易にさせる行為です。実際の犯行行為に関与していなくても、犯行用具を調達して渡したり、逃走用の車や資金を用意したりといった行為は幇助犯として罰せられます。
教唆犯が人に犯罪の実行を決意させるのに対し、幇助犯はすでに犯罪の実行を決意している人を手助けするという違いがあります。
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3、共犯率の高い犯罪とは?
共犯による事件について考える際、無視できないのが未成年の少年による共犯事件の割合(共犯率)です。
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中の成人のみによる事件に占める共犯事件の割合は10.0%でした。一方で、少年のみによる事件に占める共犯事件の割合は21.8%です。この数字に示されているとおり、少年事件は共犯性が高く、事件の関係者が複数人になりやすいという特徴があります。
特に共犯率が高いのが恐喝罪で、実に55.1%が2人組以上の共犯事件です。そのほか、共犯率の高い犯罪については次のようなものがあります。
- 強盗罪……41.7%
- 詐欺罪……36.9%
- 器物損壊罪……30.0%
- 住居侵入罪……27.9%
- 窃盗罪……25.1%
- 傷害罪……21.2%
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4、共犯の成立要件と刑罰
任意的共犯の3種類について、さらに成立要件と科せられる刑罰を確認していきましょう。
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(1)共同正犯の場合
共同正犯が成立するのは、2人以上の複数で共同して犯罪を実行した場合です。ここでいう「共同」が認められるには、各人が「自分の犯罪行為である」という認識をもつ共同実行の意思と、実際に共同で犯罪を実行した事実を要すると解釈されています。
ただし、実行行為の事実がない場合でも、事前に共謀が存在し、共謀にもとづいて犯罪が実行されれば、共同による実行行為がなくても共同正犯となります。これを「共謀共同正犯」といいます。
刑法第60条によると、共同正犯は「すべて正犯」なので、共同正犯者は全員が犯人として厳しく罰せられます。 -
(2)教唆犯の場合
教唆犯は、教唆行為によって正犯者が犯罪を実行することで成立します。教唆行為とは、犯罪の実行を決意させたり、犯行方法や手口をくわしく教えたりする行為が該当します。ただし、教唆行為があっただけでは足りず、正犯者が犯罪を実行しなければ教唆犯は成立しません。
刑法第61条には、教唆犯について「正犯の刑を科する」と明記されているので、犯罪の実行行為がなくても正犯者と同じように処罰されます。 -
(3)幇助犯の場合
幇助犯は、正犯者への幇助行為によって正犯者の実行行為が容易になり、正犯者が犯罪を実行した場合に成立します。幇助行為は、犯行用具や逃走資金といった物理的な幇助を提供した場合はもちろん、正犯をもくろんでいる者に対して助言や励ましを与えるなどの精神的な方法で幇助する行為も含みます。
刑法第62条によると幇助犯は「従犯」であるとされており、さらに同法第63条には従犯について「正犯の刑を減軽する」と明記されています。刑法第68条に規定されている減軽の方法は次のとおりです。- 死刑……無期の懲役もしくは禁錮または10年以上の懲役もしくは禁錮
- 無期懲役・禁錮……7年以上の有期懲役・禁錮
- 有期懲役・禁錮……その長期および短期の2分の1
- 罰金……その多額および寡額の2分の1
- 拘留……その長期の2分の1
- 科料……その多額の2分の1
減軽されると、犯罪に対する法定刑がここで挙げたとおりに減じられ、減じられた刑罰を上限として量刑が言い渡されます。
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5、強盗・恐喝・詐欺で共犯が成立するケース
少年事件における共犯率が高い犯罪として挙げた強盗罪・恐喝罪・詐欺罪は、いずれも成人事件においても共犯が成立しやすい犯罪です。各犯罪において共犯が成立する具体的なケースを挙げていきましょう。
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(1)強盗罪
強盗罪はグループで敢行することが多い犯罪であり、共犯率も高くなっています。
複数人で店舗などに押し入る、見張りや逃走係を用意するといったケースでは全員が共同正犯です。相手を脅したり金品を奪ったりする役割ではなくても、厳しく処罰される可能性は否めません。
強盗をおこなうようにそそのかせば教唆犯です。たとえば「お金がないならコンビニでも襲えばいい」と提案された者が実際に強盗を敢行すれば、教唆した者も強盗罪で罰せられます。
強盗行為には加担しなくても、犯行のために武器や変装用具を与えたり、逃亡するための資金を提供したりといった行為があれば幇助犯です。実行犯ほどの悪質性はないものの、幇助行為がなければ強盗や逃亡の成功が難しかったようなケースでは、刑を減じられたうえで処罰されます。 -
(2)恐喝罪
恐喝罪は、少年事件においてもっとも高い共犯率を示している犯罪です。
不良グループがいわゆる「カツアゲ」行為によって金品を奪う行為では、実行犯のほかにも見張り役などが存在するケースが多く、共同正犯が成立しやすくなります。
また、ある人物を指して「あいつは脅せばお金を出すだろう」などと恐喝をすすめれば教唆犯に、恐喝のために連絡用のSNSアカウントを用意するなどの行為があれば幇助犯として罰せられるおそれがあります。 -
(3)詐欺罪
詐欺罪で共犯となる典型的なケースが、振り込め詐欺などの特殊詐欺事件です。
犯行を計画した中心人物らや詐欺であることを知っていてうその電話をかける「かけ子」などは、役割を分担していても全員が詐欺の共同正犯となるでしょう。
また、特殊詐欺の方法をレクチャーした者は教唆犯となります。特殊詐欺の犯行そのものには加担していなくても、携帯電話や架空口座などの犯行ツールを用意したり、潜伏先に生活費を送ったりすると幇助犯として処罰される危険が高いでしょう。
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6、共犯事件は早期に弁護士相談を
共犯事件は、単独による犯行と比べると事案が複雑です。また、思いがけず共犯として容疑をかけられてしまうケースも少なからず存在するので、早期に弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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(1)共犯事件における3つの障壁
共犯事件には3つの障壁があるといわれています。
- 利益対立が生じるおそれがある
- 身柄拘束が長期化するおそれがある
- 接見禁止がつくおそれがある
共犯事件では、関係者同士が自らの利益を守るためにうその供述に徹してしまうことがあります。関係者の供述がそろわなければ、捜査機関側に「誰かがうそをついている」と疑いをかけられてしまうため、勾留による身柄拘束も長引きやすくなるでしょう。
ほかの共犯者への連絡を防ぐために接見禁止もつきやすいため、家族や友人との面会も難しくなってしまいます。 -
(2)弁護士に依頼すべき理由
弁護士に相談してサポートを得ることで、自らの供述や主張を裏付ける証拠の収集を依頼できます。証拠が集まれば、利益対立が起きて関係者との供述がそろわない状況でも「真実を述べている」と評価されやすくなります。
なお、取り調べにおいて真実を述べることは、反省の意思を強く示し、有利な情状が得られる材料となりえます。接見禁止がついている状況でも、弁護士であれば時間や回数の制限なく面会が可能なので、細かなアドバイスを得て、取調べにも適切に対応できるでしょう。
また、早期の釈放と処分の軽減を目指すなら、被害者との示談交渉は欠かせません。被害者との示談交渉も弁護士に一任できるので、素早い社会復帰を目指すならただちに弁護士にサポートを求めましょう。
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7、まとめ
ひとくちに「共犯」といっても、刑法の定めに従えば共同正犯・教唆犯・幇助犯の3種類にわけられます。積極的に犯行に加担した場合は共犯として容疑をかけられても当然ですが、思いがけず犯行を教唆・幇助したと疑いをかけられてしまうケースもあるので注意が必要です。
共犯事件では、複数で計画的に犯行に及んだと評価されやすく、身柄拘束や刑罰において厳しい対応を受ける危険も高まるので、弁護士のサポートは欠かせません。共犯事件で身柄拘束からの早期解放や刑罰の軽減を目指したいと考えるなら、共犯事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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