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勾留状とは? 何の容疑で拘束されたのかがわかる弁護活動の手がかり
刑事事件の被疑者として逮捕されると、その多くが「勾留」による身柄拘束を受けます。勾留は裁判官の許可を必要とする強制処分であるため、裁判官が発付した令状によって執行されなければなりません。その際に発付される令状が「勾留状」です。
本コラムでは、勾留状や勾留の意味、勾留状の記載内容、勾留を回避するための弁護活動についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、勾留状とは
刑事事件の被疑者として逮捕されると後に「勾留状」が発付されることがあります。勾留状にはどのような意味があるのかを理解するためには「勾留」という刑事手続きについて正しい理解が必要です。
勾留状と勾留の関係や勾留の条件などを確認していきましょう。
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(1)「勾留」と「勾留状」の関係
「勾留」とは、被疑者または被告人の身柄を拘束する手続きです。検察官のもとへと送致された被疑者を拘束する勾留と、起訴されて被告人となった者の身柄を拘束する勾留の2種類があります。
勾留された被疑者・被告人は、警察署の留置場や拘置所などに収容されて社会から隔離され、必要に応じて取り調べを受けながら過ごします。勾留期間中は、逮捕直後にはできなかった弁護人以外との接見や国選弁護人の選任ができるようになります。
勾留は、事件捜査や刑事裁判を維持するためという目的があるとはいえ、逮捕と同様で人の自由を大幅に制限する強制処分であるため、裁判官が許可しなければ認められません。裁判官の許可は「令状」の発付によって執行されるため「勾留を許可した」という令状も存在します。これが「勾留状」です。 -
(2)勾留の条件
勾留の条件は次の3点です。
- 犯罪の嫌疑があること
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある - 勾留の理由があること
定まった住居を有しない、罪証隠滅のおそれがある、逃亡のおそれがある - 勾留の必要性があること
勾留によって得られる利益とこれによって生じる不利益を比較し、勾留が必要であると認められる
これらの条件は、被疑者・被告人のどちらであっても同じです。
- 犯罪の嫌疑があること
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(3)勾留と「拘留」の違い
勾留と紛らわしい用語に「拘留」があります。どちらも「こうりゅう」と読むので、混同してしまう方も多いでしょう。
拘留とは、30日未満に限って刑事施設に収容される刑事罰のひとつです。これに対して勾留は、捜査や刑事裁判の段階において逃亡・証拠隠滅を防ぐために用いられる強制処分であり、懲罰としての性格をもっていないという違いがあります。
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2、勾留状でわかること(謄本の交付請求書提出について)
勾留状は、勾留を受ける人に向けて発付されるわけではありません。つまり、被疑者・被告人に勾留状が手渡されるのではないので、勾留状が発付された場合はその内容をすばやく把握する必要があります。
被疑者・被告人が勾留状の記載内容を確かめるには「勾留状謄本交付請求」を利用することになります。この制度を利用することで、勾留状の原本とまったく同じ内容の謄本が入手可能です。
勾留状に必ず記載される内容は、刑事訴訟法第64条1項に定められています。
- 被疑者・被告人の氏名および住居
- 罪名(犯罪の容疑名)
- 犯罪事実・公訴事実の要旨(いつ、どこで、どのような罪を犯したのかの要旨)
- 引致すべき場所または勾留すべき刑事施設
- 有効期間
なお、有効期間内に勾留状を執行できなかった場合は、令状を発付した裁判所に返還しなければならないという内容も付記されています。
勾留状謄本交付請求ができるのは、被疑者・被告人本人です。ただし、実際には弁護士が弁護人として請求するのが一般的で、多くの裁判所が弁護士からの請求に対して迅速に謄本を交付できるように体制を整えています。
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3、勾留状交付前後の流れ
勾留状が発付されるまでの流れを確認していきましょう。
まず、警察に逮捕されると、48時間以内を限度に身柄を拘束されて取り調べを受けます。その後、検察官へと送致され、さらに取り調べが行われます。検察官の持ち時間は24時間以内で、時間内に釈放または勾留請求を決断しなければなりません。
ここで検察官が勾留請求を選択すると、裁判官による「勾留質問」が行われて、勾留の可否が判断されます。裁判官が勾留を決定すると勾留状が発付され、勾留が執行されます。勾留状謄本交付請求が可能になるのはこの段階からです。
被疑者としての勾留の期限は原則10日間と定められています。ただし、10日間の勾留では捜査が尽くせず事実が判明しない場合は請求によってさらに10日間までの延長が可能です。つまり、一部の例外を除き、この段階における勾留の最長は20日間になります。
さらに、起訴されると被告人としての勾留を受けます。被告人段階の勾留は、検察官からの請求ではなく裁判官の職権によって行われますが、勾留状が発付されることに変わりはありません。
この段階の勾留期限は2か月間ですが、1か月ごとの更新が可能です。一部の軽微な犯罪を除いて回数の制限なく更新が可能なので、現実的には「刑事裁判が終わるまで」の身柄拘束を受けることになるでしょう。
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4、勾留されないための弁護活動とは
勾留を受けてしまうと、被疑者段階で最長20日間、被告人段階では刑事裁判が終わるまでという長期の身柄拘束を受けて社会から隔離されます。会社からの解雇や学校からの退学、家族との離縁・離婚といった不利益を招かないためにも、弁護士に相談してサポートを求めましょう。
勾留を回避するためには、検察官が勾留請求するよりも前に被害者との示談交渉などの弁護活動を尽くさなくてはなりません。逮捕された本人はもちろん、家族による示談交渉も困難な場合がほとんどなので、早期に弁護士に一任すべきでしょう。
また、勾留決定に対する不服申立てである「準抗告」をはじめとして、勾留理由開示請求や勾留取消請求といった法的な手続きによる対抗にも、弁護士の助けが必要です。早い段階で弁護士に相談して身柄解放に向けたサポートを依頼しましょう。
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5、まとめ
勾留状は、裁判官が勾留を許可したことを示す令状のひとつです。勾留状が発付されて勾留がはじまると、被疑者段階で最長20日間、被告人段階では刑事裁判が終わるまで身柄拘束を受けることになります。長期の身柄拘束を受けると社会的な不利益を招くおそれがあるため、勾留を回避するための弁護活動は欠かせません。
勾留の回避や勾留決定後の弁護活動は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所におまかせください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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