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弁護士コラム

2021年12月21日
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刑事事件の示談交渉にテクニックは必要? 示談成立のポイントを解説

刑事事件の示談交渉にテクニックは必要? 示談成立のポイントを解説
刑事事件の示談交渉にテクニックは必要? 示談成立のポイントを解説

被害者がいる事件を起こした場合、事件の解決に向けて欠かせないのが被害者との示談交渉です。示談そのものは民事上の和解契約ですが、刑事上の手続きにおいても有利な事情として考慮される可能性が高くなります。そのため加害者本人やご家族は示談を成立させるために、交渉のテクニックを知りたいと考えるかもしれません。

刑事事件の示談交渉においてテクニックは必要なのでしょうか?また加害者本人やそのご家族がテクニックを用いて交渉に臨むことは可能なのでしょうか?

本コラムでは刑事事件の示談交渉をテーマに、示談がもつ意味や交渉の難しさ、弁護士に一任するべき理由について解説します。

1、刑事事件における示談交渉とは?

刑事事件において示談交渉はどんな意味をもつのでしょうか?示談交渉をするべきタイミングとあわせて解説します。

  1. (1)示談交渉の定義

    示談とは、トラブルの当事者が、裁判によらず民事上の賠償問題の解決を図る手続きのことです。示談交渉とは示談を成立させるための話し合い・過程を指します

    刑事事件の示談では、加害者が被害者に謝罪し、治療費や慰謝料などの金銭を含めた示談金を支払い、被害回復を図ります。事件の内容に応じて誓約事項も決めます。たとえばストーカー事件であれば、「被害者を偶然見かけた場合でも一切接触しない」といった決め事をします。

    一方、被害者には被害届や告訴の取り下げを約束してもらう、宥恕(ゆうじょ)意思(加害者を許すという意思)を示してもらうなど、加害者側からの要望も踏まえた交渉を行います。

  2. (2)示談交渉をするタイミング

    示談交渉を開始するタイミングは、被害者の気持ちを考えればできるだけ早く行うのが望ましいでしょう。少しでも早く被害を回復してもらい、民事上の賠償問題を解決させることが、被害者の心身の負担を軽減させることにつながります。

    刑事手続きへの影響という観点からも、示談交渉を開始するタイミングは早いほうが望ましいといえます。早期に謝罪の意思を示せば被害者の納得が得られやすくなり、示談が成立する時期も早まる可能性があります。
    示談の成立時期が早いほど、示談による刑事手続きへの効果が得られやすくなります。

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2、示談交渉をする理由

示談の第一の目的は、被害者に真摯(しんし)な謝罪と賠償を尽くし、被害回復を図ることです。したがって、罪を認めて被害者への謝罪と反省の気持ちをもたなければ、示談交渉を進めることはできません。

一方で、示談は刑事処分を軽くするために必要な行為でもあります。犯した罪は反省することが大事ですが、重すぎる処分を受ければ更生の妨げになってしまい、本人はもとより被害者や社会のためにもなりません。

では具体的に、示談交渉によってどのような効果が期待できるのでしょうか?

  1. (1)不起訴処分の可能性が高くなる

    検察官が起訴・不起訴を判断する前に示談が成立すると、不起訴処分となる可能性が高まります。

    検察官は処分の決定に際して被害者感情を重視します。示談は被害者の処罰感情が一定程度やわらいだことを意味するため、検察官は「被害者が許している以上、起訴して厳しい処罰を与える必要性は低い」と考えるのです。

    不起訴処分になると、事件はそこで終結し、刑事裁判を回避できます。即日で身柄を釈放され、前科がつくこともありません。

  2. (2)早期釈放の可能性が高くなる

    逮捕・勾留された場合、逮捕から最長で23日間もの身柄拘束が続きます。長期の身柄拘束が続くと、会社を解雇されてしまうなど日常生活への影響があるでしょう。

    しかし早期に示談が成立すると、勾留を回避できる可能性が生じます

    勾留は被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止するための措置であって、示談が成立している以上、あえて逃亡や証拠隠滅を図るおそれは低いと考えられるからです。

  3. (3)刑事処分が軽くなる可能性が高くなる

    起訴された後でも、裁判官が示談を評価して刑を減軽する可能性があります。

    裁判官は量刑を決める際、犯行様態や被害結果の軽重などさまざまな要素をもとに判断しますが、被害者との示談が成立しているかどうかも重要な要素として考慮されます。

    示談によって深い反省が認められ、被害者も厳罰を望まないのであれば、社会の中で更生を目指すことが妥当だとして執行猶予つき判決がくだる可能性があります。また、実刑判決となった場合でも、示談が有利な事情として考慮されたうえで刑期が短くなる可能性があるでしょう。

  4. (4)民事上の責任を問われる可能性が低くなる

    刑事責任と民事責任はまったく別のものなので、加害者が刑事処分を受けても被害者の損害が回復されるわけではありません。そのため刑事手続きが終了しても、加害者は被害者から民事上の責任として損害賠償を請求されるおそれが残ります。

    しかし示談が成立すると、今後、被害者から示談金以外の金銭を請求されることがなくなります。通常、示談書には、示談によって決定した請求権以外の債権・債務がお互いになくなったことを示す清算条項を入れます。これにより、当事者における民事上の賠償問題が解決したことになるのです。

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3、示談交渉にテクニックは必要なのか?

刑事事件の示談交渉でテクニックは必要なのでしょうか?示談交渉の難しさとあわせて解説します。

  1. (1)示談交渉にテクニックは必要なのか?

    弁護士が示談交渉をする場合、テクニックが不要だとはいいません。しかし加害者本人やそのご家族がテクニックを身に付けたからといって、交渉を成功させるのは困難だといわざるを得ないでしょう。示談交渉をすること自体が物理的に困難な場合があり、そうでなくても本人・ご家族による直接の交渉には多数のリスクが存在するからです。

    示談交渉は弁護士へ一任するのが最善の選択です。なぜ弁護士へ相談するべきなのかは重要なポイントなので次章でお伝えします。

  2. (2)示談交渉の難しさ① 被害者と連絡が取れない

    加害者本人やご家族による示談交渉はなぜ難しいのでしょうか?

    まず、本人やご家族には被害者の連絡先を入手することが困難です。捜査機関に尋ねても連絡先を教えてくれることはありません。捜査機関は、加害者側に被害者の連絡先を教えれば、被害者に危害を加えたり脅迫して証拠隠滅を図ったりするおそれが高いと考えるからです。

    また本人が逮捕・勾留されている場合には、外部の人と自由に連絡を取ること自体が不可能です。

  3. (3)示談交渉の難しさ② 被害者が示談交渉に応じてくれない

    被害者の連絡先を知っている場合でも、被害者が示談交渉に応じない可能性が高いでしょう。

    被害者は加害者に対して恐怖心や処罰感情を抱いているため、話し合いをすること自体に拒否反応を示す場合が多々あります。無理に接触を試みれば別の犯罪として通報されるおそれもあるでしょう。ご家族が相手であっても加害者側の立場となるため、交渉は難しいと考えられます。

  4. (4)示談交渉の難しさ③ 示談金が相場よりも高すぎる

    話し合いに応じてもらえた場合でも、相場よりも高い示談金を請求されてしまうおそれがあります。加害者の立場であることから、強くいえずに法外な示談金でも応じてしまうケースや、示談金が高すぎることで支払いが困難であるとして示談が成立しないケースがあります

  5. (5)示談交渉の難しさ④ 示談成立後の手続きに不備がある

    示談は民事上の手続きなので、示談の成立が直ちに刑事処分に影響するわけではありません。刑事手続きの中で評価してもらうためには、示談書に宥恕意思が含まれていること、示談の結果を的確に検察官・裁判官に伝えることなどが必要です。賠償問題の蒸し返しを防ぐために示談書に清算条項を含める必要もあります。

    このように示談は成立した後にも必要な手続きがあり、弁護士ではない一般の方が漏れなく進めることは困難です。個人で行おうとすれば手続きに不備が生じ、刑事処分に際して有利に扱われない、被害者から損害賠償を請求されてしまうといった事態になりかねません。

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4、示談交渉前に弁護士へ相談すべき理由

自分や家族が刑事事件の加害者になってしまった場合は、ご家族だけで示談を進めようとするのではなく、弁護士へ相談することが大切です。

  1. (1)被害者の連絡先を教えてもらえる可能性が高まる

    本人やご家族が被害者の連絡先を入手することは困難ですが、弁護士が代理人となれば連絡先を入手できる可能性が高まります。

    弁護士が示談交渉を進める場合、まずは検察官を通じて被害者に謝罪や示談の意思を伝え、連絡先を教えてもらえないか交渉します。被害者の了承を得られると、検察官は弁護士にのみ連絡先を教えてくれます。弁護士には守秘義務があり、加害者側に被害者の情報が漏れることはないため、被害者が連絡先を教えてくれるケースは少なくありません。

  2. (2)示談交渉に応じてくれる可能性が高まる

    本人やご家族が直接の相手となる場合と比べ、弁護士が示談交渉の窓口になったほうが示談交渉に応じてもらえる可能性が高まります。弁護士は公平中立な立場の第三者であり、守秘義務もあるため、被害者の警戒心がやわらぐ可能性が高いからです。

  3. (3)適正な示談金で交渉してもらえる

    本人やご家族のみで示談交渉に臨むと適正な示談金の額がわからないため、法外な示談金を要求されても応じてしまうリスクや、反対に少しでも安く済ませようとして被害者感情をさかなでしてしまうリスクがあります。

    弁護士であれば、法律・判例の知識や示談交渉の経験をもとにした相場感があるため、被害者に対して適正な示談金で説得することができます。被害者感情をさかなですることなく、かつ不当に高い示談金の支払いを回避できる可能性が高まります。

  4. (4)示談が早期に成立しやすい

    本人やご家族では、示談交渉といっても何から始めればよいのか、どこに注意すればよいのかなどわからないことだらけでしょう。仮に、何とか示談が成立したとしても時間がかかりすぎてしまい、刑事処分に対する効果を最大限に得られなくなります。

    弁護士であれば示談交渉の流れや法的な注意点を熟知しているため、スピード感のある交渉が可能です。結果的に示談が早期に成立しやすく、刑事処分に対する効果も大きくなります。

  5. (5)示談成立後のサポートをしてもらえる

    弁護士であれば示談が成立した後の手続きも不備なく行うことが可能です。

    刑事責任・民事責任への影響を考慮し、法的に効果がある示談書を作成できます。検察官・裁判官に対して示談書の控えを提出し、なぜ不起訴処分や刑の減軽が妥当なのかを説得的に主張することも可能です。弁護士のサポートにより、刑事手続きに際して有利な事情として扱われ、民事上の賠償問題も解決できる可能性を高められるでしょう。

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5、まとめ

被害者との示談が成立すると、不起訴処分や執行猶予など有利な処分がくだされる場合があります。しかし加害者自身が示談交渉を進めるのは、連絡先を入手できない、被害者から拒否されるなど複数の事情から困難です。交渉のテクニックを調べてむやみに示談交渉を進めようとすれば不要なトラブルを招きかねず、本来希望していた結果にならないおそれが大きいでしょう。

示談交渉は弁護士へ一任するのが最善の方法です。ベリーベスト法律事務所の経験豊富な弁護士が示談交渉をサポートします。自分や家族が刑事事件を起こしてしまいお困りであればまずはご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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