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弁護士コラム

2022年01月20日
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保釈金は返ってくるの? 返還されるための条件や金額の相場を解説

保釈金は返ってくるの? 返還されるための条件や金額の相場を解説
保釈金は返ってくるの? 返還されるための条件や金額の相場を解説

芸能人など著名人が逮捕・起訴されるたびに話題となるのが、釈放時に支払われる「保釈金」です。高額な保釈金に驚かされることも少なくありませんが、実は一般的な保釈金の相場は150~300万円といわれています。

保釈金の額は資産の多寡や問われている罪の重さによって変動し、一定の条件を守れば全額が返還されます。ただし、保釈は請求すれば必ず認められるわけではなく、法律で条件が規定されています。

本記事では、どのような場合に保釈が認められ、どのような条件で保釈金が返還されるのかなどについて解説します。

1、保釈金は返ってくるのか

刑事被告人の勾留を解くため裁判所に納めた保釈金は、条件を満たせば全額返ってきます。判決内容は関係ないので、有罪判決が下ったとしても保釈金は返還されます。

保釈金は、被告人を期日通りに裁判に出席させ、逃亡や証拠隠滅を防いで適正に裁判を行うための一時預かり金です。手続きが問題なく終われば、そのまま返還されることになります。

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2、保釈金とは

保釈金の意味や目的、保釈の条件について解説します。

  1. (1)保釈金の定義

    保釈金とは、身柄を勾留されている被告人の身体拘束を解くために必要な保証金のことです。逮捕から刑務所に収監され刑期が終わるまでの間に身体拘束を解くことを広く意味する「釈放」と異なり、「保釈」は起訴から裁判が終わるまでの一定期間に行われる手続きです

  2. (2)保釈金が請求される目的

    起訴から裁判で判決が出るまでの審理期間はケース・バイ・ケースで一概にはいえませんが、長いもので3年を超える場合があります。裁判を適正に行う上で、被告人に逃亡、証拠隠滅などのおそれがあるなら、長期間の勾留に合理性はあるといえるでしょう。
    しかし、そうしたおそれがなく、勾留を続けなくても適正な裁判ができるとしたら、長期の身体拘束に合理性がなくなります。

    刑事訴訟法では、一定の条件下で保釈の請求があれば、裁判所はそれを許可しなければならないと規定しています。そして、召喚されれば出頭することなど、保釈中の約束事を被告人に守らせることを条件として、裁判所は保釈金を受け取ります。裁判が終わるまで、被告人が約束を守り続ければ保釈金は返還され、違反すれば没収の上、再び身柄を拘束されることになります。

  3. (3)保釈が許可される条件とは

    保釈には、権利保釈(刑事訴訟法89条)と裁量保釈(刑事訴訟法90条)の2種類があります。

    刑事訴訟法89条は、保釈を許可しない場合を1号から6号に列挙し、それらに該当しなければ保釈を許可しなければならない旨を定めています。これを権利保釈といいます。

    保釈を許可しない場合は以下の通りです。

    • ① 被告人が死刑、無期懲役または法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮に当たる重い罪を犯した場合(1号)
    • ② 被告人が過去に死刑、無期懲役または法定刑の上限が10年を超える懲役・禁錮に当たる罪で有罪判決を受けた場合(2号)
    • ③ 常習として法定刑の上限が3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した場合(3号)
    • ④ 被告人が証拠隠滅を図ると疑うに足りる相当な理由がある場合(4号)
      したがって、罪を認めていることが保釈の絶対条件ではありませんが、否認しているケースと罪を認めているケースでは、後者の方が保釈の可能性は高いでしょう。
    • ⑤ 被告人が被害者や証人を脅したり危害を加えたりするおそれがある場合(5号)
    • ⑥ 被告人の氏名・住居が分からない場合(6号)


    上記の1号から6号に該当する場合でも、裁判所が諸般の事情を考慮して、裁量で保釈を許可することがあります(刑事訴訟法90条)これを裁量保釈といいます
    逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、被告人が受ける経済上、社会生活上の不利益の程度など、様々な事情が考慮されることになります。責任を持って被告人を監督する身元引受人を立てているかどうかも、重要な要素といえるでしょう。

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3、保釈金の相場と額に影響するもの

刑事訴訟法93条は保釈金の額について「犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない」と定めています。

一般的な保釈金の相場は150~300万円と考えられていますが、特別背任などの罪に問われた大手自動車会社の元会長の保釈金が15億円という事例もあります。元会長はこの後、海外に逃亡したため、保釈金は没収されています。

このように、保釈金の額は年収など保有資産の多寡に応じて変動があります。保釈金は被告人に裁判所への出頭を約束させる保証であるため、約束を破って没収されればダメージとなるような、「没収されたくない」と思わせる金額でなければなりません。
年収などの違いによって「没収されたくない」と思う金額は異なるため、資産が多いほど保釈金は高くなる傾向があります。

また、問われている罪の量刑も保釈金の額に影響します。
量刑が重いほど刑罰を避けたいという心理が働くためで、「裁判から逃れたい」という思いを押しとどめるような金額が相当とされます。想定される量刑が重い犯罪ほど、保釈金の額は上がる傾向があります

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4、保釈金の納付から返還までの流れ

保釈金の納付方法や返還までの流れについて説明します。

  1. (1)裁判所に現金で納付(電子納付も可能)

    一般的に保釈金は、弁護士が本人や家族からお金を預かり、裁判所の出納課に現金で納付するケースが多いでしょう。弁護士でなければならない決まりはなく、事前登録すれば電子納付も可能です。

    出納課で保釈許可決定書に領収印を押してもらい、それを担当部署に提出すれば、あとは被告人の身柄が解かれるのを待つだけです。出納課での納付時に、あわせて保釈金の返還先口座を記入した保管金提出書も提出します。

  2. (2)保釈金の納付に期限はない

    裁判所が保釈許可を決定してから、保釈金の納付までに期限はありません。仮にお金を準備するのに時間を要したとしても、そのことを理由に決定が取り消されることはありません。しかし1日も早い釈放を望むのであれば、少しでも早くお金を準備する必要があります。

    領収印が押された保釈許可決定書を受け取った裁判所は検察庁に連絡し、実際に身体拘束が解かれます。これもケース・バイ・ケースですが、保釈金の納付から釈放までに数時間はかかるとされています。また、保釈金を納付する前段階の、保釈を請求してから裁判所が保釈許可を決定するまでの期間は、審査があるため数日から長くて1週間程度かかるとみられています。

  3. (3)釈放後は逮捕前と同じ暮らしも

    釈放後は、裁判所から示された条件に違反しない限り、逮捕前と同じように暮らせます。制限住居といって、裁判所から居住場所を指定される場合もあるので、指定されたときは無許可で移転しないようにしましょう。もっとも、外出や仕事は可能です。

    保釈中に裁判が開かれ、証拠調べや弁論などの手続きを経て判決が言い渡されます。条件に違反することなく裁判が終われば、保釈金は保管金提出書に記入した口座に振り込まれます。判決が出てから数日~1週間程度かかることが多いようです。

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5、保釈金が返還されるための条件

保釈金が返還されるためには、裁判が終わるまで保釈許可が取り消されていないことが重要です。保釈が取り消されずに保釈金が返還されるためにはいくつかの条件を守らなければならず、刑事訴訟法96条にどのような場合に保釈が取り消しとなるかが示されています。

  1. (1)裁判に出席している

    保釈金の返還を受けるためには裁判にきちんと出席していることが重要な条件です。裁判所は適正に裁判が行えることを前提に保釈を許可しているため、正当な理由なく裁判に出頭しない場合には保釈が取り消されるおそれが大きくなります。

  2. (2)逃亡とみなされる行為が見当たらない

    保釈中は逃亡を疑われる行為をしないことも大切です。逃亡、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき、裁判所は保釈を取り消すことができます。保釈金は没収され、身柄を再度拘束されることになります。

    保釈中は外出や仕事が可能ですが、被告人にそのつもりがなくても、長期の旅行などは逃亡とみなされかねません。保釈を取り消されないためにも裁判所の許可を得た方がよいでしょう。

  3. (3)証拠隠滅を図っていない

    保釈中に証拠隠滅を図ってはいけません。共犯者と連絡を取りあい、口裏を合わせることも証拠隠滅とみなされます。

  4. (4)被害者などの関係者と接触していない

    被害者や証人など事件関係者に危害を加えたり怖がらせたりすることも保釈の条件に反します。

  5. (5)住居の制限など定められた条件を守っている

    保釈の際に裁判所から居住場所を指定されるなど、条件を言い渡される場合があります。身元引受人の住所を指定されるケースが多いようですが、裁判所の許可なく住居を変更すれば、保釈が取り消されるおそれがあります。住居の制限を守り、変更するときには裁判所の許可を得ましょう。

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6、保釈金を用意することが難しい場合の対応

裁判所が保釈を許可しても、保釈金を用意できないケースがあるかもしれません。そういった場合はあきらめるしかないのでしょうか。

そのようなケースでは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は保釈金の額について、裁判官と交渉できます。資産が少ないことや執行猶予が見込まれていることなどは、保釈金の額を下げる要因になります。ほかにも、日本保釈支援協会が保釈金の立て替え制度を用意しており、最大で500万円まで立て替えが可能です。

また、全国弁護士協同組合連合会(全弁協)の保釈保証書発行制度を利用すれば、全弁協が発行する保釈保証書が保釈金の代わりになります。被告人の身元引受人など、保証を委託する人は資力審査を受けなければなりませんが、審査を通れば保証委託者の負担分は薬物事案を除き、保証料(保証金額の2%)のみですみます。

被告金が没収された場合は全弁協がいったん、裁判所に保証金を支払います。保証委託者はその後、全弁協に保証金分を支払っていくことになります。

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7、まとめ

保釈金は、被告人が身体拘束を解かれても逃亡や証拠隠滅をせず、裁判にきちんと出席することを担保するためのお金です。被告人が保釈の条件を守り、無事に裁判が終われば返ってくるものですが、条件を破ると没収される場合があります。

保釈の手続きには請求から保釈金の納付まで段階があり、一刻も早い被告人の釈放を望むのであれば、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。保釈の条件など必要事項を確認し、保釈金が返還されなくなるリスクを下げていくことが重要です。

保釈に関してお困りのことがあれば、刑事事件の対応経験が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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