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廃棄物処理法違反の罰則とは? 該当する主な行為を解説
ひとくちに「廃棄物処理法違反」といっても、この言葉が指し示す範囲は広く、さまざまな行為が当てはまります。解体現場の廃材を地中に埋めて摘発されたケースがあれば、家庭ごみを道路に捨てて摘発されたというケースもあるのです。
「どんな行為が廃棄物処理法違反に問われるのか」ということについて、ご存じでない方も多いでしょう。
本コラムでは、「廃棄物処理法」の規定と、違反する行為の典型例や罰則について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。不法投棄の未遂罪など、廃物処理法違反に関連して問われるおそれのある罪についても、あわせて解説いたします。
1、廃棄物処理法とは
まず、廃棄物処理法がどのような法律であるかについて解説します。
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(1)廃棄物処理法の正式名称や目的
廃棄物処理法の正しい名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」です。
「廃棄物処理法」は、ニュース報道などで用いられる略称です。また、「廃掃法」と呼ばれることもあります。
同法第1条には、法律の目的が明記されています。
「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」がその目的とされています。
高度経済成長に伴う大量消費や大量廃棄によって顕在化したごみ問題や公害問題の解決を目指して制定された法律であり、時代の要請に応えるかたちでこれまでに複数回の改正を経ています。 -
(2)「廃棄物」の定義や種類
廃棄物処理法第2条1項には、「廃棄物」の定義が示されています。
同項によると、廃棄物とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体、その他の汚物または不要物であって、固形状又は液状のもの」となります。
なお、これらのものであっても、放射性物質およびこれによって汚染された物は「放射性廃棄物」となり、この法律によって定義される廃棄物から除外されます。
放射性物質や放射性廃棄物は、放射性物質汚染対処特別措置法という別の法律による規制の対象になります。
また、廃棄物は、さらに次の四つの種類にわけられます。- 産業廃棄物
事業活動によって生じた廃棄物です。 - 特別管理産業廃棄物
産業廃棄物のうち、爆発性や毒性、感染性など、人の健康や生活環境に被害を生じさせるおそれのある廃棄物を指します。 - 一般廃棄物
産業廃棄物にあたらない廃棄物です。 - 特別管理一般廃棄物
一般廃棄物のうち、爆発性・毒性・感染性のある廃棄物が該当します。
廃棄物処理法違反は、これらの廃棄物の収集・運搬・処分などについて、国民や事業者、土地や建物の管理者、国・地方公共団体が同法の規定を守らなかった場合に成立します。
- 産業廃棄物
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(3)「不法投棄」とは
廃棄物処理法第16条は、誰であっても「みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定めています。
廃棄物の処分方法は法律で定められており、一般人が自治体の定めたごみ捨て場ではない場所にごみを捨てた場合や、事業者が産業廃棄物を山中などに捨てたといった場合のほか、自分の土地であっても廃棄せずに野積みしておけば、「不法投棄」にあたる可能性があるのです。 -
(4)不法投棄が発覚する理由と時効
不法投棄が発覚する理由としては、土地の所有者や建物の占有者など、管理者からの通報が典型的です。
通報を受けて現場をパトロールしていた警察官に発見される、投棄された廃棄物から手がかりが発見されるといった場合もあります。
不法投棄の時効は5年です。投棄から5年が経過すると検察官が起訴できなくなるため、罪を問われなくなります。
もっとも、時効があるのは刑事罰であり、行政処分については5年が経過しても行われるため注意が必要です。
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2、廃棄物に該当するかどうかの判断基準
不法投棄の問題を考えるにあたって重要となるのが、投棄された物が「廃棄物」にあたるかどうかという問題です。
この点について、関係省する庁が発出した通知を参考にしながら解説します。
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(1)客観説
廃棄物処理法の制定当初である昭和46年には、「客観説」が採用されていました。
厚生省(当時)は「客観的に汚物または不要物として観念できるものであって、占有者の意思の有無によって廃棄物となり、または有用物となるものではない」と示していたのです。この考え方に従うと、対象物の所有者がもつ「要る」「要らない」という意思は問われません。「客観的にみて、不要物である」と判断されたものは、「廃棄物」となるのです。 -
(2)総合判断説
客観説によって廃棄物が仕分けられてしまうと、例えば客観的に不要物であるとされるだけで資源性が高いリサイクル物質までもが、廃棄物とされるおそれがあります。そのため、昭和52年には「総合判断説」が採用されました。
総合判断説では、「占有者がみずから利用し、または他人に有償で売却することができないため不要になった物」が「廃棄物」だとされています。
総合判断説を示した厚生省(当時)は、占有者の意思やその性状などを総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではないと示して、客観説を否定しています。
また、平成25年には、環境省が次の五つのポイントを示しました。- 物の性状
利用用途に要求される品質を満足し、飛散・流出・悪臭発生など生活環境保全に支障が発生するおそれのないものであること - 排出の状況
排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や管理がなされていること - 通常の取り扱い形態
製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと - 取引価値の有無
占有者と取引相手の間で有償譲渡がなされており、客観的にみて当該取引に経済的合理性があること - 占有者の意思
客観的要素から社会通念上合理的に認定しうる占有者の意思として、適切に利用し、もしくは他人に有償譲渡する意思が認められること、または放置もしくは処分の意思が認められないこと
上記のように、具体的な判断基準が省庁によって示されています。
しかし、個別の事例において、該当の物質が「廃棄物」にあたるかどうかの判断は、いまだ容易ではない場合がある点に注意してください。 - 物の性状
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3、廃棄物処理法違反の主な例と罰則
廃棄物処理法では、廃棄物に関するさまざまな禁止行為が定められています。
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(1)無許可営業
廃棄物の収集・運搬・処分には、法律にもとづいた許可が必要とされます。
- 一般廃棄物処理業……廃棄物処理法第7条1項・6項にもとづく市町村の許可
- 産業廃棄物処理業……同法第14条1項・6項にもとづく都道府県知事の許可
- 特別管理産業廃棄物処理業……同法第14条の4第1項・6項にもとづく都道府県知事の許可
無許可で廃棄物処理業を営業すると、同法第25条1項1号の定めに従って、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
なお、法人の代表者や従業員が、その法人の業務として無許可営業をおこなった場合には、同法第32条1号によって罰金の上限が3億円以下に引き上げられます。 -
(2)措置命令違反
廃棄物の処理基準に適合しない収集・運搬・処分をおこなった処分者・認定業者・排出事業者などには、同法第19条の4・第19条の4の2などを根拠として、市町村や都道府県知事から、その支障の除去や発生防止のために必要な措置を講じるように命令が下されます。なお、措置命令が下されるのは、処理基準に適合しないことに加えて、生活環境を保全するうえで支障が発生している場合に限られます。
措置命令違反には、同法第25条1項5号の定めによって5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。 -
(3)不法投棄
廃棄物をみだりに投棄すると、同法第16条の不法投棄となります。
同法第25条1項14号の定めに従い、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。 -
(4)不法焼却
同法第16条の2には、廃棄物の焼却禁止が定められています。
処理基準にもとづく焼却やほかの法令・処分にもとづく焼却のほか、公益や社会の慣習のうえでやむをえない焼却または周辺の生活環境に与える影響が軽微な焼却として政令で定めるものを除いて、廃棄物の焼却は違法です。
罰則は同法第25条1項15号に定められており、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。 -
(5)無許可業者への運搬委託
事業者が排出した一般廃棄物・産業廃棄物は、それぞれの基準を守って、運搬や処理を委託しなければなりません。無許可業者への委託は、一般廃棄物の場合は同法第6条の2第7項、産業廃棄物の場合は同法第12条6項の違反となります。
罰則は同法第26条1号の定めに従い、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。 -
(6)改善命令違反
各廃棄物の収集・運搬・処分について処理基準に適合しなかった排出事業者や収集・運搬業者や処分業者には、同法第19条の3の規定によって、市町村・都道府県知事・環境大臣からの改善命令が発出されることがあります。
措置命令は「処理基準の不適合と生活環境保全への支障」が条件であったのに対して、改善命令は「処理基準の不適合」のみでも下されるという点に違いがあります。
改善命令に違反すると、同法第26条2号の定めに従って、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方が科せられるのです。
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4、廃棄物処理法違反は未遂でも処罰される
廃棄物処理法違反に該当する行為のうち、不法投棄については「未遂」であっても処罰される可能性があります。
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(1)不法投棄未遂罪の創設
廃棄物処理法による不法投棄の禁止は、「実際に不法投棄がおこなわれた時点」で成立する犯罪です。
逆にいうと、例えば今まさに不法投棄がおこなわれようとしているという状況を現認しても、いまだ不法投棄は既遂に至っていないので処罰されないということになります。
しかし、実際に不法投棄されてからでは原状回復が困難な状況も少なくありません。
また、廃棄物が投棄された状態を放置することで環境保全に支障を生じさせる場合には、自治体が費用を投入して原状回復をする必要が生じてしまいます。
上述したような事情に対処するために、平成15年の改正によって、廃棄物処理法第25条2項に「未遂罪」が創設されたのです。
なお、不法投棄だけでなく不法焼却も、未遂罪による処罰の対象となります。 -
(2)未遂罪の罰則
不法投棄・不法焼却の未遂罪に対する罰則は、既遂の場合と同じです。
未遂であっても、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
実務上、実際に未遂罪で処罰されるケースでは、既遂の場合と比べると実害が少なくなるために、刑事裁判で言い渡される量刑は軽くなる場合が多いとは言えます。
ただし、不法投棄が発覚する経緯を考えれば、「たまたま、不法投棄しようとしていたところを警察官に現認されてしまって、未遂となった」いったケースよりも、「以前から不法投棄が通報されており、警察に警戒されていた」といったケースのほうが多いでしょう。そのような場合には過去の不法投棄も加えて立件されてしまうおそれがあるため、「未遂だからといって軽い処分で済まされる」と考えないほうがよいでしょう。
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5、廃棄物処理法違反以外に罪が成立する可能性も
廃棄物処理法違反に問われるケースでは、他の犯罪があわせて成立するおそれもあります。
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(1)住居侵入罪・建造物侵入罪
廃棄物を不法投棄するため、あるいは不法焼却するために、他人の住宅・建物・敷地などに無断で立ち入った場合には、刑法第130条の住居侵入罪・建造物侵入罪が成立します。
不法投棄と住居侵入罪や建造物侵入罪があわせて成立するケースとしては、「他社の資材置き場などに無断で侵入して、産業廃棄物を投棄する」「廃墟などに無断で立ち入って、家庭ごみなどの一般廃棄物を捨てる」といった行為が考えられます。
住居侵入罪・建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。 -
(2)道路法違反
不法投棄と関連しやすい犯罪として、「道路法」の違反があります。
道路法とは、道路網の整備を図るために必要な事項を定めることで交通の発展と公共の福祉増進を目的とする法律です。
同法第43条2号には、みだりに道路に物件を置くことで交通に支障をおよぼすおそれのある行為を禁止しています。
例えば、粗大ごみになったタンスなどの家具類を道路脇に置き去りにして交通に支障を生じさせてしまえば、同法第102条3号に従って1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるのです。
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6、廃棄物処理法違反にあたるか心配な方は弁護士へ相談を
廃棄物処理法は細かな規定が多く、適法に努めているつもりでも違反してしまうおそれのある法律です。また、不法投棄をはじめとした悪質な行為があれば逮捕や勾留をされたうえで、厳しい刑罰が科せられてしまう危険も高いでしょう。
廃棄物処理法違反にあたるかどうか不安を感じているなら、直ちに弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
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(1)土地所有者との示談成立を目指す
不法投棄をした場所が他人の土地や敷地であった場合でも、所有者や管理者が被害者になるわけではありません。
廃棄物処理法は特定の被害者を想定しない法律であるため、刑法における窃盗・詐欺・暴行・傷害などの場合とは異なります。
ただし、土地や敷地の所有者や管理者に謝罪したうえで、原状回復にかかる費用などを賠償すれば、検察官による不起訴処分、刑事裁判における処分の軽減や執行猶予につながる可能性が高まります。
所有者や管理者の感情に配慮した示談交渉を適切に進行するためには、弁護士に任せることをおすすめします。 -
(2)処分の軽減を目指した弁護活動が期待できる
不法投棄や不法焼却、無許可営業といった違反行為では、厳しい刑罰が言い渡される可能性があります。
とはいえ、廃棄物処理法の考え方は非常に難しく、「廃棄物にはあたらないものと思って処分していた」「処分の方法の解釈に誤りがあった」など、違法性の認識に乏しいケースも多いものです。
また、「日ごろ利用している処分業者が多忙で使えなかったために、やむをえず別の業者に委託したら無許可だった」など、常習性のない事例である場合もあります。
このような事情があるからといって、刑事裁判において、必ずしも被告の有利にはたらくわけではありません。しかし、違法性・悪質性・常習性が高くないことを合理的に主張する材料にはなるため、処分が軽減される可能性が残されているとは言えるのです。
弁護士がこれらの主張を検察官・裁判官にはたらきかけることで、執行猶予つき判決や罰金の減額といった有利な結果が得られる可能性があります。
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7、まとめ
廃棄物の不法投棄をはじめとした廃棄物処理法違反には、厳しい刑罰が課される可能性があります。
特に事業者が違反を問われた場合は、対外的な信用にも大きな打撃を受けてしまうため、容疑をかけられた時点で、解決を図るために素早く対応することが重要になるのです。
廃棄物処理法違反の容疑をかけられている、あるいはご自身や自社の行為が廃棄物処理法に違反しているのではないかと不安を感じている場合は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所にまでご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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