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有罪判決を受けてしまったらどうなる? 刑の種類や罰則を解説
刑事裁判の判決は、大きく分けて「有罪判決」と「無罪判決」があります。罪を犯したのが明白な場合、有罪判決は免れませんが、ひとくちに有罪判決といっても必ずしも刑務所に収監されるわけではありません。また判決の内容によっては、今後の社会生活における影響も変わってきます。
本コラムでは有罪判決の意味や刑の種類を説明したうえで、代表的な刑である罰金と懲役刑を中心に取り上げて解説します。有罪判決を受けた場合の影響や有罪判決を回避するための弁護活動についても確認しましょう。
1、有罪判決と刑の種類
有罪判決とは、起訴された犯罪について被告人が罪を犯したと認められた場合に言い渡される決定のことを指します。
有罪判決は主に、言い渡された刑が執行される「実刑判決」、刑の執行が一定期間猶予される「執行猶予つき判決」、有罪であるが刑は科さない「刑の免除判決」(例:親族相盗例や中止未遂など)があります。
有罪判決で言い渡されるのは、刑法第9条に定められている刑のいずれかです。まずは、刑の種類を確認しましょう。
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(1)罰金・科料
「罰金」と「科料」は、一定の金銭を強制的に徴収される財産刑です。
両者の大きな違いは金額です。
罰金は下限が1万円、上限は各犯罪の条文で定められています。例えば窃盗罪(刑法第235条)は法定刑が「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」なので、罰金の上限は50万円です。
一方、科料の金額は1000円以上1万円未満です。少額ではあるものの、刑罰の1つなので罰金と同様に前科がつきます。
また、罰金には極めて例外的に執行猶予がつく場合がありますが、科料には執行猶予がつかないという違いもあります。 -
(2)禁錮・拘留
「禁錮」と「拘留」は刑事施設に拘置されて自由を制限される自由刑です。
禁錮には刑期の定めがない無期禁錮と、1カ月以上20年以下を定めて言い渡される有期禁錮があります。
一方、拘留は1日以上30日未満の期間で言い渡されるため、無期という概念はありません。また禁錮には執行猶予がつく場合がありますが、拘留には執行猶予がつかないため必ず実刑となります。 -
(3)懲役
「懲役」は禁錮や拘留と同じ自由刑のひとつです。禁錮と同様に無期と有期があり、判決に執行猶予がつく場合もあります。
禁錮・拘留と異なる点は、刑務作業に従事させられるという点です。 -
(4)死刑
「死刑」は人が生きる権利を強制的に剝奪する生命刑です。日本の死刑は「刑事施設内において、絞首して執行する」と定められています(刑法第11条)。
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2、罰金刑で知っておきたいこと
有罪判決の中で言い渡される数がもっとも多いのは、罰金刑です。
『令和3年版 犯罪白書』によると、令和2年における裁判確定人員のうち77.9%が罰金刑を言い渡されています。罰金刑について詳しく見ていきましょう。
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(1)罰金は必ず納めなければならない
罰金は刑罰なので、罰金刑の言い渡しを受けた人は、指定された期日までに納付する義務があります。適切に納付した人との不公平が生じてしまうため、どのような理由があっても納付を免れることはできません。
罰金の納付を怠ると、検察庁から督促を受けます。
これも無視して納付しない場合、給与や預貯金などの財産を差し押さえられる「強制執行」を受けてしまいます。 -
(2)罰金の納付方法
罰金を納付する方法は、検察庁に直接納めるか、検察庁指定の金融機関へ納めるかの2通りがあります。
逮捕・勾留された事件で略式起訴になった場合は、略式命令を受けた後に検察庁で罰金を納付すると釈放されます。身柄を拘束された本人が多額の現金を用意するのは難しいので、通常は弁護士からの指示のもとご家族が用意しておくことになるでしょう。
在宅事件で起訴された場合は、判決が確定した数日後に検察庁から罰金の納付書が送られてくるので、検察庁指定の金融機関に納めます。
なお、罰金は、一括納付が基本です。分割で納めることは原則できません。クレジットカードでの支払いはできません。 -
(3)罰金を納付できない場合の「労役場留置」とは
強制執行するべき財産がない場合や強制執行してもなお罰金を完納できない場合には、労役場で強制労働に従事させられる「労役場留置」となります。
労役場留置は刑罰ではありません。しかし自由を制限されて強制労働に従事するという点で、実質的には懲役刑と同じような扱いになります。
労役の期間は1日以上2年以下の間で、1日あたりの換算額が罰金の額に到達するまでです。1日あたりの換算額は裁判所が言い渡します。例えば、1日あたりの換算額が5000円で罰金50万円の場合は、100日間の労役場留置となります。
なお、労役の途中であっても、罰金の残額をすべて納めれば労役から解放されます。
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3、懲役刑で知っておきたいこと
罰金刑に次いで多いのが懲役刑です。『令和3年版 犯罪白書』によると、令和2年は全体のうち約20%が、無期または有期懲役の有罪判決を受けています。
刑の軽重は、重いほうから死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の順序なので、懲役は日本で2番目に重い刑にあたります。懲役の目的は犯罪の予防と社会の安全性の確保、受刑者への矯正・教育にあるとされています。
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(1)懲役の期間
懲役刑には無期懲役と有期懲役の2つがあります。有期懲役は下限が1カ月、上限が20年ですが、刑の加減によって最長で30年の懲役を言い渡すことが可能です。
実際に言い渡される刑期は、犯罪ごとの法定刑の範囲で裁判官が決定します。例えば刑法246条で規定されている詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」なので、原則として10年の懲役が上限となります。 -
(2)刑務作業に従事する
懲役の実刑判決が言い渡されると、刑務所に収監されたうえで刑務作業に従事しなければなりません。
刑務作業は、主に次の4つです。- 物品を製作する生産作業
- 道路の除雪・除草やゴミ拾いなどを行う社会貢献作業
- 出所後の就労に向けた職業訓練
- 施設内での炊事・洗濯などを行う自営作業
刑務作業については作業報奨金が支給されますが、法務省によると令和2年度は1カ月あたりの平均支給額が約4320円と、決して高いとはいえません。所内の生活で用いる物品購入などに充てるほか、家族の生計援助等に充てることも認められています。
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(3)執行猶予がつく場合がある
禁錮以上の前科がないなど、一定の条件を満たした者が3年以下の懲役の言い渡しを受けた場合、判決に執行猶予がつく可能性があります(刑法第25条)。
執行猶予がつくとすぐには刑務所に収監されず、社会内で更生に努めることができます。猶予期間を何事もなく過ごし終えたときには、刑の言い渡しの効力が失われます(同第27条)。 -
(4)仮釈放される場合がある
仮釈放とは、懲役・禁錮の受刑者を刑期が満了する前に刑務所から出所させ、社会復帰させる制度のことです(刑法第28条)。仮釈放の目的は、改しゅんの情があり、改善更生に期待できる受刑者を社会内で更生させることにあります。
仮釈放期間中は必ず保護観察が付され、順守事項を守りながら社会生活を送ります。あくまでも「仮」の釈放なので、再び罪を犯した場合や順守事項を守らなかった場合などには仮釈放が取り消され、刑務所に戻されてしまいます。
法律上、仮釈放が許されるのは有期刑が刑期の3分の1が経過した後、無期刑は10年が経過した後とされています。しかし、そのような短期間で仮釈放されるケースは皆無に等しく、刑期の多くを過ごし終えてから許可されるのが現実です。
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4、有罪判決を受けたことで生じる影響
罰金や懲役などの有罪判決を受けると「前科」がつきます。前科があると社会生活上、さまざまな不利益を受けると予想されますが、具体的にはどのような影響があるのかを確認していきます。
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(1)資格・職業の制限を受ける
一部の資格・職業は前科が欠格事由にあたるため、希望の職業に就けない場合があります。例えば裁判官や弁護士などの法曹関係の職業、公認会計士や司法書士などの士業、公務員、警備員などが挙げられます。
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(2)就職・転職の際に申告義務が生じることがある
企業への応募に際して賞罰欄がある履歴書を提出する場合は、前科を記載する必要があり、『前科なし』と記載すれば経歴詐称にあたります。また、採用面接で前科の有無を質問された場合も、正直に申告する義務があります。
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(3)パスポートの取得や渡航先への入国制限を受けることがある
前科があり一定の要件に該当する場合、旅券法第13条の規定によりパスポートの発給を拒否されることがあります。また、仮にパスポートが発給されても、渡航先の国によっては前科があるとビザが発行されない場合があります。
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(4)自治体への届け出義務が生じることも
大阪府では、「子どもを性犯罪から守る条例」にもとづき、18歳未満の児童に対する性犯罪で服役していた者が、刑の満了から5年以内に府内に住所を定めた場合は、氏名や住所、連絡先、罪名などを届け出なければならないと規定しています。これらに違反すると、5万円以下の過料と定められています。福岡県にも同じような条例・規定があります。
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(5)前科は消える?
有罪判決が確定すると、すべての前科が検察庁のデータベースに、罰金以上の前科は市区町村の「犯罪人名簿」に記録されます。
検察庁のデータベースに記録された前科は削除されないため、前科そのものは一生消えることはありません。
一方、犯罪人名簿に記載の前科は「刑の消滅」によって削除されます。
刑の消滅とは、禁錮以上の刑を終えてから10年、罰金以下の刑を終えてから5年の間に、罰金以上の刑に処せられなかった場合に、法的には前科がないものとして扱われる制度です(刑法第34条の2第1項)。
すなわち、資格・職業や海外渡航の制限、履歴書への記載義務など法律上の不利益がなくなります。
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5、有罪判決を回避するために弁護士ができること
有罪判決を回避するためには、被害者との示談成立や捜査機関へのはたらきかけが重要になるため、弁護士のサポートが不可欠です。
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(1)示談交渉を任せられる
日本の司法における起訴後の有罪率は99%以上と極めて高いため、起訴されると有罪判決は、ほぼ免れません。そのため有罪判決を回避するには起訴されないこと、すなわち不起訴処分を目指すことが大切です。
刑事訴訟法第248条には、検察官は犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況により起訴しないことができると規定しています。年齢や境遇、犯罪の軽重などを事件後に変えることはできませんが、犯罪後の状況は変えられます。
その代表的な方法が被害者との示談交渉です。
示談が成立すると、被害は回復されており被害者の処罰感情もなくなったとみなされるため、検察官が不起訴処分と判断する可能性が高まります。
ただし、刑事事件の被害者は加害者に対して強い処罰感情を抱いているケースが多く、加害者本人やご家族が接触すれば脅迫を疑われたり被害者感情を逆なでしたりして事態を悪化させるおそれがあります。
そのため、刑事事件における示談交渉は、弁護士に一任するべきといえます。客観的な第三者の立場で守秘義務もある弁護士からの働きかけであれば、示談に応じてもらえる可能性も高まるでしょう。 -
(2)早期釈放を目指すことができる
逮捕された事件では、弁護士が検察官や裁判官への意見書の提出や面会を通じて勾留の必要性がない旨を主張するなど、早期の釈放に向けた活動を行います。
釈放されて在宅事件に切り替われば、再犯防止に向けた具体的な行動を起こしやすくなります。例えば、性障害や窃盗症の疑いがあれば、治療のために専門の施設に通う、ご家族の監督のもとで規則正しい生活を送り誠実に仕事へ取り組むなどです。
更生に向けた対策・行動をとっていることを、客観的事実を元に示すことで、検察官が再犯のおそれは低いと判断し、不起訴処分と判断する可能性もあるでしょう。
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6、まとめ
有罪判決を言い渡された場合、罰金や懲役などの刑罰を受けるだけではなく前科の履歴が残るので、長い期間さまざまな不利益が生じることになります。そのため、刑事事件を起こしてしまった場合は、弁護士のサポートを得て不起訴処分を目指すことが大切です。
家族などの身近な方が刑事事件の被疑者となってしまったときは、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が有罪判決の回避に向けて力を尽くします。
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