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冒頭陳述とは? 検察側と弁護人が行う冒頭陳述の内容とそれぞれの役割
刑事裁判の内容を報じるニュースなどで「冒頭陳述」という用語が登場することがあります。
たとえば、令和3年11月に起きた新幹線放火事件では、検察官が冒頭陳述において『被告人は生活苦に嫌気がさして自殺を企てて犯行を決意した』などと述べたと報道されました。
では、このようなやり取りには、どのような意味があるのでしょうか。また、なぜ冒頭陳述が注目されるのでしょうか。本コラムでは「冒頭陳述」の意味や内容、弁護士の役割について解説します。
1、冒頭陳述とは
刑事裁判は、刑事訴訟法の定めに従って進められますが、被告人に対する人定質問や罪状認否などの後で行われるのが「冒頭陳述」です。
冒頭陳述では、検察官が事件の経緯や内容などを説明し、これから証拠によってどのような事実を証明するのかを述べます。わが国の刑事裁判制度では、被告人に刑罰を科すよう裁判官へ求める立場の検察官に事実を証明する責任があるため、冒頭陳述の義務を負うのは検察官だけです。このように、事実を証明する責任を負うことを「立証責任」といいます。
ただし、「公判前整理手続き」に付された事件については、公判期日の前に検察官・弁護人がそれぞれ証拠開示を経て争点と証拠を整理します。そのため、弁護人も冒頭陳述をしなければなりません。
公判前整理手続きは、複雑な刑事裁判を迅速化するために創設された制度です。無作為に抽出された市民が参加する「裁判員制度」の対象事件では、すべて公判前整理手続きが行われます。
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2、冒頭陳述の内容
冒頭陳述では、一般的には4つの項目に関して述べられることが多いといえます。具体的な内容をみていきましょう。
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(1)被告人の家庭状況・経歴
裁判官は、これまでに会ったこともない被告人を審理する立場になるので、被告人がどのような人物なのかを知りません。そこで検察官は、取り調べを経て判明している被告人の生い立ちやこれまでの学歴・職歴、家庭環境などの、身上や経歴について簡単に説明します。
また、過去の犯罪経歴や前科についても言及されます。 -
(2)犯行に至る経緯
裁判官は、検察官が起訴状に示している内容でしか事件の内容を知りません。起訴状には、被告人がいつ・どこで・どのような行為をはたらき・どのような被害を生じさせたのかという事実が記載されていますが、詳細な情報までは記載されていません。
起訴状の記載された事実を見ただけでは、なぜ被告人が犯行に及んだのかを知ることは難しいでしょう。
そこで、なぜ被告人が犯行に及んだのかを示すために、動機や背景といった犯行への経緯が述べられます。検察官としては、自身の欲を満たすための身勝手な犯行であるとか、素行不良者による悪質な犯行であるなどといった状況を示す目的があります。 -
(3)具体的な犯行の状況
検察官が示した事実は、刑法などに明記されている犯罪の構成要件を満たす程度の客観的な情報に過ぎません。これだけでは裁判官がどのような事件だったのかを把握できないので、検察官自身によってさらに具体的な犯行状況が説明されます。
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(4)そのほか情状
刑事裁判で犯罪の事実が証明され「有罪」になると、『◯年以下の懲役』『◯万円以下の罰金』といった量刑が言い渡されます。どの程度の量刑が適切なのかを判断する材料となるのが「情状」です。
検察官の冒頭陳述では、『その他情状』とだけ述べられることが多いです。
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3、通常の刑事裁判の場合|冒頭陳述は基本的には検察官が行う
窃盗事件や暴行事件など、一般的な刑事事件における冒頭陳述には、次のような特徴があります。
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(1)基本的には検察官のみ冒頭陳述を行う
一般的な刑事事件における冒頭陳述は、検察官のみが行います。前述したように、刑事裁判を提起した検察官には、事実を証明する立証責任が存在するため、検察官による冒頭陳述は義務として定められているのです。
検察官のみと聞くと、被告人側としては不公平に感じるかもしれませんが、そうではありません。被告人とその弁護人である弁護士は、冒頭陳述の内容によって検察官が証明しようとしている内容を把握し、どのような防御策を講じるのかの方針を立てていくことができます。 -
(2)弁護側が冒頭陳述を行うケースとは
決して多くはありませんが、検察官だけでなく弁護側が冒頭陳述を行うこともあります。ただし、一般的な刑事事件では基本的に検察官だけが冒頭陳述を行うため、弁護側が冒頭陳述を希望する場合は、あらかじめその旨を請求しなくてはなりません。
弁護側による冒頭陳述には、弁護側が主張しようとしている事実を早い段階で裁判官に示す効果があります。特に無罪を主張する否認事件や、複雑な事件では、弁護側による冒頭陳述が効果的です。
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4、裁判員裁判の場合|弁護人も冒頭陳述を行う
一般市民が審理に参加して、有罪・無罪の判断やどの程度の量刑が適当かを意見する「裁判員裁判」では、検察官だけでなく弁護人も冒頭陳述を行います。まずは検察官が冒頭陳述し、そのあと弁護側の冒頭陳述が行われる流れです。
一般的な事件の冒頭陳述では、冒頭陳述要旨以外に資料などの配布はなく、検察官が口頭で読み上げるだけですが、裁判員裁判では検察官・弁護人のそれぞれが資料を作成・配布します。刑事裁判の序盤から検察官の主張に肩入れされてしまわないためには、説得力が高いだけではなく、簡潔でわかりやすい資料を作成することが必要です。
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5、冒頭陳述の重要性
一般的な刑事事件における冒頭陳述は、検察官が証明しようとしている内容を裁判官や弁護人が把握できる最初の一歩です。ある証拠について、どのような事実を証明しようとしているのかを明らかにするためにも、冒頭陳述は極めて重要な意味をもつといえます。
また、前述したように、裁判員裁判の場合は、検察側だけではなく弁護士による冒頭陳述も行われます。検察官・弁護人はどちらも豊富な図表や資料を活用するなど、わかりやすく簡潔な主張立証が必要になるほか、アイコンタクトや発言の抑揚などで裁判員を引き込む法廷技術も求められます。
冒頭陳述の内容は被告人の印象を左右するといっても過言ではないため、裁判の結果にも影響を及ぼすといえます。そのため、裁判員裁判の対象になる刑事事件を起こしてしまった場合には、裁判員裁判の経験が豊富な弁護士に依頼することが大切です。
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6、まとめ
一般的な刑事裁判における「冒頭陳述」は、被告人側が防御方針を定めるための道しるべになる手続きです。また、弁護人による冒頭陳述によって、無罪を主張する被告人側のストーリーを示す機会となります。特に、裁判員裁判においては、弁護人による冒頭陳述によって公判の序盤から好印象をもってもらうための重要なチャンスともいえます。
有利な処分を得るためには、十分な力量を備えた弁護士のサポートが必須です。
刑事事件の被告人になってしまった場合は、刑事事件の解決実績・裁判員裁判の知見が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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